追放鍛治師の成り上がり〜ゴミスキル『研磨』で人もスキルも性能アップ〜家に戻れ?無能な実家に興味はありません

秋田ノ介

文字の大きさ
18 / 69
地方コンテスト

第15話 鍛冶は大金が転がり込む商売です

しおりを挟む
武具屋『ブーセル』の前には長蛇の列が並んでいた。

路地裏では収まりきらず、表の通りにまで人が集まってきていた。

これは……。

「とにかく、中に入ってくれ」

……商品が……ない。

「これは……」
「原因はライルさんなんだろ?」

……?

まったく、見に覚えがない。

「ライルさん、コンテストで優勝したんだろ?」

へぇ、さすがに耳が早いな。

評価されたみたいでちょっと嬉しいな。

「まぁ、偶然が重なった結果ですけどね……」

「それはどうでもいい」

あ、そうですか。

「ライルさん、その時にうちから買ったって言わなかったか?」

そんな記憶は……

「ああ、申込みの時に購入店にこの店を書きましたよ。それが?」

「それが? じゃない!! そのおかげで店は大繁盛なんだ! 本当に感謝しても、しきれない。ライルさんは神様だよ」

なんか、恥ずかしいな。

「それは良かったですね。ああ、そういえば、僕の修繕した武具なんですけど……」

折角だ。

ここで売ってもらえないか聞いてみよう。

他の所で一応は約束しているけど、店は多いほうがいいもんな。

ん? 急に手を握られたぞ。

「あ」
「あ?」

「あるのか? ライルさんの武具が!」
「え? ええ。たくさん……」

まぁ、ここで手に入れた中古武具の半分はナマクラになっちゃったけど……。

「売ってくれ!!」
「いいの?」

「ええい! 言い値で買う。だから、すぐに持ってきてくれ。いや、それじゃあ遅い。手伝いを出す。すぐに行ってくれ!!」

なんだか、いい方向に話が進んでいるみたいだ。

しかも、言い値でいいだって!?

これがコンテスト優勝の効果ってやつなのかな?

ん? アリーシャ?

「ダメ!! それは私の仕事。奪うの、絶対にダメ」
「アリーシャ。今回は……」

「絶対にダメ! 仕事が無くなったら、一緒にいられなくなる。だから、ダメ」

……アリーシャ。

「安心しろ。お前には別の仕事を与えるつもりだ。荷物持ちばかりだと、面白くないだろ?」
「ううん。お兄ちゃんと一緒にいられれば、いつも楽しいよ」

……かわいい。

いやいや。

現実に戻ってくるんだ。

「今回は別の人に頼もう。そうだ!! 親父、中古の武具はないか?」
「あん?」

結局、店の人に武具は取りに行ってもらうことにした。

そして、僕は一本の短剣を手にしていた。

「ライルさんに全部渡したからな。今はそれぐらいしかないんだ」

随分と肉厚な短剣だな。

持った時から、ずっしりとした重みを感じていた。

重さだけなら、普通の剣と変わらない。

だが、直感的には悪い武器ではないと思う。

「アリーシャ。悪いが、店の方の手伝いをしてやってくれ」
「いいの?」

ん? 何を心配しているんだ?

……ああ。

「アリーシャを獣人だってバカにするやつはいないさ。宿屋の人も変わっただろ?」
「そう、かな? じゃあ、やってみる」

さて……。

短剣の刃になぞるように砥石を走らせる。

何度も何度もやってきた当たり前の動作を繰り返していく。

……これはすごそうだな。

今まで取り扱った武具の中でも最高の輝きを放っている。

「これは鉄ではないよな?」

普通の短剣ではまず、虹色に輝くなんてことはない。

変わった一品が手に入ったものだな……。

さてと……お店のほうがどうかな?

アリーシャはちゃんと手伝えているかな?

「アリーシャ。店の方は……」

これは……

店の中が戦場のように武具の取り合いが始まっていた。

我先にと、列からはみ出るように飛び出す客。

すごいな……。

だが、他に視点を変えると別の戦場が出来上がっていた。

その中心にいるのが……アリーシャだった。

「なに、この子。すごく可愛い!!」
「美少女だ!! 獣人の美少女がいるぞ!」
「ぶってくれ!! その冷たい視線で俺をぉぉぉ」

なんだ、この状況は。

「あわわわわ。お兄ちゃぁぁぁん。助けてぇ」
「今、助けに行くぞ!」

まさか、こんな展開が待っているとは思ってもいなかった。

アリーシャを店の奥に引っ込ませ、僕が客の対応をすることになった。

その時のブーイングは相当なものだった。

チラチラと見えるアリーシャの姿を拝むものさえ出てくる始末。

……一体、どうなっているんだ?

「さあ、茶だ。飲んでいきな」
「ああ、ありがとうございます」

嵐のような客達は姿を消した。

全ての商品が嘘のように消え、残るのは空っぽになった店内だけだった。

「こんなに売れたのは初めてだ」
「そう、ですか」

親父は店内を眺めながら、感動に浸っているみたいだ。

僕はその間、ずっと仕入れのことを考えていた。

中古武具をどうやって手に入れるか。

……どこかで大量に手に入ればいいんだけど。

「あの」
「ん? なんだ?」

「中古の武具を手に入れたいんですけど」
「それは修繕用か!!?」

僕は頷いた。

というよりは親父の迫りくる顔に声が出なかっただけだけど。

「俺が調達してやる。その代わり……独占で買い取らせてもらえないか?」

ふむ……。

悪くない話だと思う。

「そうだ。今日の買い取りのお金を渡していなかったな。ほら」

ほらって……僕は受け取った袋で体のバランスが崩れてしまった。

なんだ、この重さは。

まさか、中身は銅貨ってことはないよね?

「金貨800枚。それが今日の支払いだ」

……うそ、だろ。

「で? どうだ?」

そんなの答えは決まっている。

「よろしくお願いします!!」

僕と親父はがっちりと握手を交わした。

中古武具の調達と販売を親父が。

武具の手入れを僕が……。

そういう条件で話が決まった。

だが、後でもう一つの条件が加わった。

「獣人のお嬢ちゃん! 頼む。店の手伝いを……いや、いるだけでいい。金貨10枚払うから!!」

アリーシャを店番にすると売上が倍になる……

そんな噂が領都アグウェルに広がることになる。

「アリーシャに店番をやらせません」

それが新たに加わった条件だ。

でも、そのおかげだろうか……アグウェルでは獣人を忌避する人が減った気がする。

……。

僕達はそんな日々を繰り返していた。

「随分とお金が溜まったな」

中古武具の調達を頼んだが、手に入るのは日に数個程度だった。

それを修繕して、親父の店に売る。

一日、金貨50枚程度になれば、いいくらいだ。

大抵は20枚くらいだ。

それでも何日も続ければ……

金貨2000枚へとなっていた。

アリーシャへの給金アップも検討しないとな。

今渡している金貨3枚なんて、アリーシャの胃袋の前ではないに等しい。

「えへへへ。お小遣い、増えるの嬉しい」

お小遣いではないんだけど……。

まぁいいか。

すると、コンコンと控えめなノックが聞こえた。

親父の店の人かな?

最近は景気がいいせいか、人を雇ったみたいだからな。

「あれ? どうなさいました?」

宿屋の女性だ。

「あの……公爵様の使いの者と名乗る人がライルさんとアリーシャちゃんを連れてこいって。それとこれを」

公爵からの手紙?

僕に一体、何の用が。

忘れてかけていたフェリシラ様の顔が浮かぶ。

同時に胸が痛む。

「……分かりました。すぐに向かいます」
「お願いします。アリーシャちゃん、今日も可愛いわね!!」

それだけを言って、扉を閉めた。

手紙にはこう書かれていた。

『ウォーカー男爵家族が来訪する。すぐに来てくれ』

……なんで、僕が……。

「アリーシャ。出掛けるよ」
「うん!!」

会いたくない家族に再び、会うのか。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

処理中です...