追放鍛治師の成り上がり〜ゴミスキル『研磨』で人もスキルも性能アップ〜家に戻れ?無能な実家に興味はありません

秋田ノ介

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公爵家付き工房

第24話 女神

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五日目……。

フェリシラ様の体から浅黒い部分は徐々に減っていった。

顔……首……手……脚の順番で治療をしていった。

あとは胴体を残すのみとなっていた。

「さあ、ライル。覚悟が出来ましたわ!!」

フェリシラ様の声が屋敷に響き渡った。

……。

デルバート様とも何度も話し合った。

僕がフェリシラ様の裸を凝視してもいいかどうかについて。

そして、結論が出た。

「妹が良いと言えば、私からは何も言うつもりもない。妹が許すならば、ライル君が妹の肌に触れることも許そう……だが、許さなければ……君を処刑しなければならない」

なんて、理不尽なんだ。

治療は僕から名乗り出たわけではない。

どうして……処刑覚悟で治療をしなければならないんだ。

しかし、当の本人であるフェリシラ様は全く気にしていない様子だった。

さすだが……。

治療と割り切る姿勢は是非とも、デルバート様も見習ってほしいものだ。

だが、始める直前になった途端……。

「本当に脱がなければなりませんか?」

……僕は頷くしかなかった。

僕が見立てた訳ではないが、病気は隙間もないほど全身に広がっている。

胸や股にまで及ぶ。

治療をするためにはどうしても、服を脱いでもらわなければならない。

そして、ようやく……覚悟が決まってみたいだ!

だからって……脱ぎ捨てるように服を脱がなくても……。

「さあ、始めて頂戴。その……胸から始めて……ください」

最初だけだ。

僕が緊張するのは……。

始まってしまえば、周りも見えないほど集中してしまう。

だけど、その最初がもっとも辛い。

浅黒い肌だが、大きく盛り上がった胸が目の前に広がる。

固くなった皮膚だが、その下から伝わる弾力が妙に生々しくて……

参ったな……手が震える。

こんな事は初めてだ。

研磨をすることに、こんなに臆してしまうとは。

「大丈夫? ライル」
「ええ。それにしてもフェリシラ様って胸が大きいんですね」

僕は一体、何を言って……。

「バカっ!!」

なんだか、ちょっと落ち着いてきたな。

さて……。

シュッ……シュッ……。

これだ。

この音を聞いた瞬間、僕の目の前から胸は消えた。

そこにあるのは研ぐべき対象があるだけ。

ひたすら研ぐ……。

ラインを崩さないように丁寧に研ぐ。

「あん……そこ……」

時々聞こえる甘い声が時々、僕の集中力を遮る。

だが、大丈夫だ。

シュッ……シュッ……。

この音さえ聞こえていれば……。

「終わりましたよ。フェリシラ様……って、大丈夫ですか?」
「ええっ……とっても刺激的な時間でしたわ」

一体、何が起きたんだ。

と、とにかく医者を連れてこないと。

今まで、こんなに赤くなっているフェリシラ様を見たことがない。

「医者を」
「いいえ。大丈夫です。本当に大丈夫ですから。ただ、ちょっと……寝かせてもらいますね」

そう言って、フェリシラ様は眠りについた……。

えっと……。

僕は美しい肌に戻った胸が曝け出されているのに気付き、すぐにシーツをかぶせた。

危なかった……。

あれを見続けていたら、間違いない……

僕の首が飛ぶような事態になっていた。

「お姉ちゃん、すごく大きな声だったね」
「ん? 何の話だ?」

やめてくれ……。

そんな話を聞いたら、僕まで恥ずかしくなってくる。

明日から股をやるんだぞ……。

出来なくなるじゃないか……。

……翌日。

おそらく、今日が最後となるだろう。

だが、一番の難関だ。

股は立体的な形をしている。

そのため、新たに砥石を追加した。

小さな砥石だ。

全部をきれいに磨くためにはどうしても必要なものだ。

「ねぇ、ライル。どこまでやるの?」
「え? 全部ですよ」

「そう……じゃあ、今日もお願いね」
「任せて下さい!!」

もはやフェリシラ様に迷いはなかった。

僕も恥ずかしがっている場合ではないな。

シーツをずらすと、最後に残された浅黒い肌が姿を現す。

まずはお腹から……。

「んっ……あん……」

どうしても声が聞こえてしまう。

集中だ……。

シュッ……シュッ……。

脚の付け根……。

ここからは大きく股を広げてもらわないと……。

「フェリシラ様。失礼します」
「はい……」

シュッ……シュッ……

「ハァハァ……んっ……クッ」

彼女の甘い吐息が聞こえてくる。

それでも手を止めるわけにはいかない。

次は……。

彼女の股間に手が伸びる。

ここで……最後だな。

ピタピタと手を濡らしながら、研磨を続ける。

最後の仕上げだ……。

小さな砥石をぐりっと穴に入れた。

「終わった……」

気づくと、シーツには濡れた跡が広がっていた。

えっと……。

僕はすかさず、着ている服を脱ぎ、彼女の体に掛けた。

「えっ……ライル? ダメよ。私達……まだ、早いわ」

ん?

一体、何のことだ?

「皆のもの、ライル君を捕らえろ!! 拷問に掛けるんだ!!」
「えっ? いや、あの……ちょっと!!」

……。

僕は椅子に座っていた。

目の前にはデルバート様が土下座していた。

「本当に済まなかった。妹の恩人に酷いことをしてしまった。許してくれ」
「本当ですよ。僕がフェリシラ様に手を出すわけないじゃないですか! どうしてくれるんですか?」

僕は怒っていた。

この理不尽な扱いに。

どうして、拷問まで受けなければならなかったんだ。

始まってすぐにフェリシラ様が間に入ってくれたから良かったけど……

あのままだったら、僕は死んでいたかもしれない。

「フェリシラも何か言ってくれ!!」
「なぜ、私が……その、まずはお礼をしますわ。本当にありがとうございました」

フェリシラ様はドレスを身にまとっていた。

それは本当に美しくて……見るのも眩しいくらい……

ってあれ?

本当に光っていないか?

「眩っ……!!」
「ライル君。君はとんでもないことをしてくれたな」

何の話だ?

「愛する妹が女神になってしまったではないか!! おお、女神様ぁ」

何を言っているんだ?

妹に崇拝の姿勢を見せる兄というのは……ちょっと不気味だ。

「お兄様!! 冗談はやめてください」

でも、本当にきれいだなぁ。

白く透き通るような肌だ。

前の浅黒い肌が嘘のようだ。

「ライル。どうかしら……久しぶりにドレスに袖を通してみたんだけど」
「ええ。とっても美しいですよ。フェリシラ様」

治療は終わった。

研磨で彼女の病気はすっかり治ってしまったんだ。

僕はとっても嬉しかった……と同時に悲しくもあった。

彼女はあのベイドと……。

それを考えると素直に喜べない自分がいたんだ……。
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