追放鍛治師の成り上がり〜ゴミスキル『研磨』で人もスキルも性能アップ〜家に戻れ?無能な実家に興味はありません

秋田ノ介

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公爵家付き工房

第26話 婚約破棄

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僕は思い悩んでいた。

すでに工房を借りてから、一月以上が経っていた。

……僕の実力が少しも上がっていない。

それは由々しきことだった。

剣のような形をした何か……その領域を突破できないでいたのだ。

もちろん、研磨をすれば、一級品という価値が付くみたいだ。

親父の店もそれで大いに繁盛しているみたいだが……。

とても満足がいく結果ではない。

この辺りで、打開をしなければならない。

だけど、どうやって……。

考えられることは色々と試してみてはいる。

だが、どれもいい結果を残せていない。

どうしよう……

三年後に控える王国コンテスト……それまでに僕の満足のいく武具を作りたいんだけど……。

工房で一人、座り込みながら考えていると辺りがちょっと騒がしくなっていた。

あれは……。

僕はフラフラとした足取りで、公爵屋敷に向かった。

やっぱり……というべきかどうか。

ベイドが立っていた。

馬車にはウォーカー家の家紋が刻まれていたので、遠目でもよく分かった。

しかし、何しに来たんだ?

というか、前回のことがあったのに、よく平気で顔が出せたな。

その大胆さと言うか、無神経ぶりに感心してしまうほどだ。

父上も来ていたのか。

デルバート様に頭を何度も下げ、挨拶でもしているのだろうか?

まぁ、僕には関係ないかな。

さて、戻るか……。

ん?

あれは……フェリシラ様……だよね?

いつものようなドレスではなく、なんというか……病人服?

肌が見えない、厳重な作りの服。

しかも、顔にも貴婦人がつけるような帽子をかぶっているせいで、見ることが出来ない。

それでもなんとなく、フェリシラ様と分かるのが不思議だ。

彼女はデルバート様の横に立ち、ただ静かにしているだけだった。

僕に気づいたのか、すこし、こちらを向いて微笑んだ……ような気がした。

ちょっと、この後が気になるな……。

「この度は、我が息子、ベイドを3年間の修行に赴かせます。そのご挨拶に参りました」

へぇ……あいつ、修行に行くのか。

「うむ。その話は聞いている。確か、メレデルクの工房だったな」

なん、だと?

メレデルクといえば、父上と肩を並べるほどの名工。

その人のもとで修行……なんて、羨ましいんだ。

くそっ!! 僕だったら、泣いて喜ぶほどだっていうのに……。

「ベイドよ。修行を励み、ウォーカー家の名に恥じぬ、鍛冶師になるのだぞ」
「……はい」

アイツの態度は何だ。

3年と言わず、5年でも10年でも教えて欲しいよ。

それくらいメレデルクというのは凄い名工だ。

「ウォーカー家を継げるほどの実力をつければ、我が妹も安心して、ベイドのもとに嫁がせることが出来るな」

「ベイドさん。道中、お気をつけて」

やっぱり、フェリシラ様だったか。

さてと、もう話は終わりかな?

さっさと戻って、鍛冶計画を見直さないとな。

奴はメレデルク名工の技術を学んでくるんだから……。

それに負けないほどの修行をしないとな。

「ふっざけるな! そんな化物を俺の嫁にするわけ無いだろ!」

うわっ……最悪だな。

前のことに全く懲りていないんだな。

「どういう事かな? ベイド」
「公爵様。言わせてもらいますけど、俺にだって嫁を選ぶ権利がある。こんな化物と結婚なんて出来るわけがないでしょ!!」

終わった……アイツ、終わったな。

「ほお。我が妹を化物呼ばわりをするとは……。ふむ。たしかに君の言う通りだ。我が妹は周知の通り、傷物だ。それを男爵に押し付けるような形にしたことは詫びよう」

意外だな。

フェリシラ様のこととなると見境が無くなるデルバート様が。

「だったら、俺との婚約なんて破棄してくれよ。頼む!」
「ふむ……ウォーカー男爵。本人はこう言っているが?」

さすがに父上もベイドの発言に冷や汗ものだろうな。

こんな無礼な言葉を公爵当主に対して、男爵の息子が言うのだから。

最悪……なんてこともあるよな。

「やむを得ません。ベイドが言っている以上は……」

折れた?

いや、まさか……。

この縁談はウォーカー家にとっては千載一遇だと言うのに。

ベイドの意見を尊重するなんて、考えられない。

といいながらも、僕はちょっと嬉しかった。

これで……フェリシラ様とベイドの婚約は終わりだと……。

「ふむ……実に残念だ。私としては、是非に、とも思ったんだが……もう一度、確認するが……フェリシラとは結婚する気はないんだな?」
「いいのか? 本当に結婚しなくても……親父!!」

ベイドのやつ、メチャクチャ、いい笑顔だな。

そんな顔を向けられても父上も困るだろうに。

「お前の好きにするがいい」
「じゃあ、結婚の意志はありません!! やったぁ!! よし、やったぁ!! これでマリアちゃんと一緒になれるぜ!!」

マリアちゃん?

誰だ、それ。

まぁいいか。

とにかく、これで話は終わりだな。

ん? フェリシラ様?

「ベイドさん……婚約が出来なくて、とても残念でしたわ」

そういって、帽子をすっと取った。

相変わらず、おキレイで……。

「あ……ああああ……」

ん?

ベイドの様子が可怪しい。

ああ、そうか。

こいつはフェリシラ様が治ったことを知らなかったのか。

「それではお元気で。再び、お会い出来ないことを切に願っていますわ」
「ちょ……やっぱ、結婚!! 結婚します!! すぐに……」

「それではな。ウォーカー男爵。また、会おう」
「はっ!!」
「ちょ……離して……俺はフェリシラ様と結婚するんだぁ!」

ベイドは無理やり馬車に押し込まれ、去っていった。

「ふぇりしらさまぁぁぁぁ」

鳥のさえずりと共に、不調和音が響いていた……。

しかし……。

これってどう言う事だ?

フェリシラ様とベイドの婚約は無くなったと見ていい。

それは間違いないと思う。

だけど、それをよくデルバート様が承知したな。

あの人はどうしてもウォーカー家を手中に入れると言っていた。

ベイドを諦め、違う方法で取り入れようとしているということだろうか?

それともすでに父上との間で密約でもあるのか?

わからない。

だけど……。

僕はベタッと地面に座った。

「よかったぁぁぁぁ」
「私がフラレて、そんなに嬉しいんですか? これで二度目ですよ。私って魅力がないのかしら?」

横にはフェリシラ様がイタズラをした子供のような顔で笑っていた。

「えっと……フェリシラ様はとても魅力的ですよ。二人が見る目がないんですよ」
「そう? じゃあ、ライルが私と結婚してくれるかしら?」

「からかわないでくださいよ。本気にしちゃうじゃないですか!」
「……」

彼女は何かを言った気がしたが、聞き取れなかった。

どうして、すぐに頷けなかったのか……悔しくて、今夜は眠れそうもありません。
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