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鍛冶の街 グレンコット
第27話 屋敷を出る
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僕は決意した。
この屋敷を出るんだ。
ここではどうしても限界がある。
工房での繰り返しの作業。
それはとても充実のある時間だ。
だが、これ以上の成長は見込めない。
それがここで一年、やってきて分かったことだ。
残りは二年。
その時間も同じ方法で過ごしていたら、今と何も変わらない。
「アリーシャ。出掛ける支度をしておいてくれ。僕はデルバート様と話をしてくる」
「はぁい」
アリーシャは鍛冶の仕事をかなり覚えてくれた。
センスが光る……ということはないが、力仕事で大いに役立っている。
このまま、ずっと一緒に仕事が出来ればいいと思っているけど……。
そのうち、アリーシャもやりたいことを見つけて旅立ってしまうのだろうか?
そんなことを考えながら、屋敷に足を運んでいた。
「あら? ライル。屋敷に来るなんて、珍しいですわね」
相変わらず、キレイなフェリシラ様。
「ええ。今日はデルバート様に大切な話があって……」
「大切な話……それは私も聞いてもいい話ですか?」
正直、聞かれたくない。
これは僕の成長に限界を感じたから話すことなんだ。
フェリシラ様は前に僕を格好いいと言ってくれた。
それは鍛冶に打ち込む姿を言ってくれたんだと思う。
だけど、僕は……。
「申し訳ありません。今回は二人で話がしたいのです」
「そう……ですか」
僕は一礼をして、デルバート様と面会を求めた。
「やあ、ライル君。今日は随分と浮かない顔だね。どうしたのかな?」
「デルバート様に一時の別れを告げに参りました」
外からカタッと音がしたけど、気のせいだよね。
「それはどういうことかな? 君さえ良ければ、ずっと居てもいいんだよ。フェリシラも喜ぶからね」
本当にいい人だ。
だけど……。
「僕は鍛冶を極めたいと思っています。ただ、ここにいれば自ずと限界が来ます。それを乗り越えるために……」
「ここを出ていくと?」
僕は頷いた。
「ふむ。それはフェリシラも悲しむだろうな」
そうだろうか?
庶民の僕がいなくなっても、特に悲しむようなことはないと思うけど。
むしろ、男がうろうろとこの敷地をうろつくほうがフェリシラ様にとっては害悪なんじゃないだろうか?
「それにね。君の使った武具は我が領の名産になりつつある。それを手放すのは少々勿体無いと思ってしまうのだ」
親父からも僕の武器の評判は高いを聞いている。
だけど、やっぱり……。
「満足の出来る武具を作りたいんです」
「そうか……それで? これからどうするつもりなんだ?」
僕は考えている事を全て、デルバート様に言った。
それを真剣な表情で聞いてくれた。
こんな庶民の僕の言葉に耳を傾けてくれる公爵がいるだろうか?
本当に尊敬できる人だと思う。
「なるほど……話は分かった。だが、どうだろう? 今日は止めて、明日の早朝に出ては?」
確かにすでに日は高い。
出発するなら、早朝のほうがいいだろう。
「フェリシラとはしっかりと別れを告げていくといい。その方がショックを受けずに済む」
そうかな?
でもデルバート様の言う通りにしよう。
「分かりました。後で……」
僕が部屋を出ると、少し離れた所でフェリシラ様が泣いていた。
どうしたんだろう?
「フェリシラ様……どうされたのですか?」
どうして、僕をそんな目で……。
「私を置いて行かれるんですね!!」
それだけを言って、僕から離れていった。
きっと、彼女は話を盗み聞きしていたのかもしれないな。
……後で謝ろう。
結局、フェリシラ様とは会うことは出来ずに次の日を迎えた。
「アリーシャ。準備は出来たか?」
「うん。馬車もバッチリ!!」
まさか、馬車を貸してもらえるとは思わなかったな。
しかも、公爵家の家紋入りだ。
これならどこに行っても、簡単に街に入れてもらえるな。
それに色々と……。
さて……。
馬車に乗り込もうとした時、二人の影が見えた。
フェリシラ様とデルバート様だ。
わざわざ見送りに……。
「すみません、わざわざ……」
二人は対象的な表情をしていた。
フェリシラ様は涙を流しすぎたのか目を真っ赤にしていた。
一方、デルバート様は無表情だが、少しニヤついた笑いを浮かべている気がした。
「いや、気にしなくていいよ。フェリシラ。ライル君に言いたいことがあるんだろ?」
なんだろう?
それにフェリシラ様は一体、何に涙を?
フェリシラ様はぎゅっとドレスを握ったまま、下を俯いたままだった。
……時間だけが流れいく。
「あの、フェリシラ様?」
「私も連れて行って下さい!! ライルの居ない生活なんて、退屈ですの」
……へ?
えっと……。
「デルバート様?」
さすがに護衛もなしに公爵令嬢を連れて行くのはどうなんだろう?
「フェリシラの気持ちを酌んでくれると助かる。君さえ良ければ……」
……。
「フェリシラ様? 本当に付いてくるんですか?」
「ダメ、ですわよね? 修行の旅ですものね。私なんて、邪魔なだけでもすもの」
???
何を言っているんだ?
「えっと……修行の旅ってなんですか? 僕はただ道具を買いに行こうと……」
「は? お兄様? どういうことですの?」
「えっ? あっはっはっは。あれ、可怪しいな。そうだったかな? いや、私としたことが」
なんとなく分かってしまった。
この人は……
「お兄様のバカァァァァ!」
僕がこの屋敷を出ていく……もう戻らないと言ったらしい。
僕がただアグウェルで手に入る道具に問題があると思ったんだ。
やはり、最高の品を使わないと……。
だからこそ、鍛冶の街に出向こうと。
あそこまでは、ここから一週間はかかる道のりだから、挨拶に行ったんだけど。
「どうします? 来ますか?」
「もちろんよ。言い出したんだもの、引き下がれないわ」
別に意地になるようなことでもないだろうに。
「そうそう、これを冒険者ギルドのマスターに渡してくれないかな?」
「分かりました」
手紙を受け取り、馬車を走らせた。
デルバート様はどこまでも追いかけてきた。
「フェリシラぁぁぁぁ。一日に一回は手紙を書くんだぞぉぉぉ」
誰がそんなに頻繁に書くんだ?
まったく……。
「全く……ですわね」
デルバート様を見て、これしか感想は出ないだろう。
「長旅ですけど、よろしくお願いしますね」
「ええ。なんだか、楽しみね」
僕もとても楽しみだ。
フェリシラ様との旅……。
「アリーシャもいますよ?」
「もちろんだ。途中で食べ歩きをしようか」
「はい!!」
これから始まる旅に心が踊った……。
ヤバイ……親父に休むことを伝えるのを忘れてた……。
この屋敷を出るんだ。
ここではどうしても限界がある。
工房での繰り返しの作業。
それはとても充実のある時間だ。
だが、これ以上の成長は見込めない。
それがここで一年、やってきて分かったことだ。
残りは二年。
その時間も同じ方法で過ごしていたら、今と何も変わらない。
「アリーシャ。出掛ける支度をしておいてくれ。僕はデルバート様と話をしてくる」
「はぁい」
アリーシャは鍛冶の仕事をかなり覚えてくれた。
センスが光る……ということはないが、力仕事で大いに役立っている。
このまま、ずっと一緒に仕事が出来ればいいと思っているけど……。
そのうち、アリーシャもやりたいことを見つけて旅立ってしまうのだろうか?
そんなことを考えながら、屋敷に足を運んでいた。
「あら? ライル。屋敷に来るなんて、珍しいですわね」
相変わらず、キレイなフェリシラ様。
「ええ。今日はデルバート様に大切な話があって……」
「大切な話……それは私も聞いてもいい話ですか?」
正直、聞かれたくない。
これは僕の成長に限界を感じたから話すことなんだ。
フェリシラ様は前に僕を格好いいと言ってくれた。
それは鍛冶に打ち込む姿を言ってくれたんだと思う。
だけど、僕は……。
「申し訳ありません。今回は二人で話がしたいのです」
「そう……ですか」
僕は一礼をして、デルバート様と面会を求めた。
「やあ、ライル君。今日は随分と浮かない顔だね。どうしたのかな?」
「デルバート様に一時の別れを告げに参りました」
外からカタッと音がしたけど、気のせいだよね。
「それはどういうことかな? 君さえ良ければ、ずっと居てもいいんだよ。フェリシラも喜ぶからね」
本当にいい人だ。
だけど……。
「僕は鍛冶を極めたいと思っています。ただ、ここにいれば自ずと限界が来ます。それを乗り越えるために……」
「ここを出ていくと?」
僕は頷いた。
「ふむ。それはフェリシラも悲しむだろうな」
そうだろうか?
庶民の僕がいなくなっても、特に悲しむようなことはないと思うけど。
むしろ、男がうろうろとこの敷地をうろつくほうがフェリシラ様にとっては害悪なんじゃないだろうか?
「それにね。君の使った武具は我が領の名産になりつつある。それを手放すのは少々勿体無いと思ってしまうのだ」
親父からも僕の武器の評判は高いを聞いている。
だけど、やっぱり……。
「満足の出来る武具を作りたいんです」
「そうか……それで? これからどうするつもりなんだ?」
僕は考えている事を全て、デルバート様に言った。
それを真剣な表情で聞いてくれた。
こんな庶民の僕の言葉に耳を傾けてくれる公爵がいるだろうか?
本当に尊敬できる人だと思う。
「なるほど……話は分かった。だが、どうだろう? 今日は止めて、明日の早朝に出ては?」
確かにすでに日は高い。
出発するなら、早朝のほうがいいだろう。
「フェリシラとはしっかりと別れを告げていくといい。その方がショックを受けずに済む」
そうかな?
でもデルバート様の言う通りにしよう。
「分かりました。後で……」
僕が部屋を出ると、少し離れた所でフェリシラ様が泣いていた。
どうしたんだろう?
「フェリシラ様……どうされたのですか?」
どうして、僕をそんな目で……。
「私を置いて行かれるんですね!!」
それだけを言って、僕から離れていった。
きっと、彼女は話を盗み聞きしていたのかもしれないな。
……後で謝ろう。
結局、フェリシラ様とは会うことは出来ずに次の日を迎えた。
「アリーシャ。準備は出来たか?」
「うん。馬車もバッチリ!!」
まさか、馬車を貸してもらえるとは思わなかったな。
しかも、公爵家の家紋入りだ。
これならどこに行っても、簡単に街に入れてもらえるな。
それに色々と……。
さて……。
馬車に乗り込もうとした時、二人の影が見えた。
フェリシラ様とデルバート様だ。
わざわざ見送りに……。
「すみません、わざわざ……」
二人は対象的な表情をしていた。
フェリシラ様は涙を流しすぎたのか目を真っ赤にしていた。
一方、デルバート様は無表情だが、少しニヤついた笑いを浮かべている気がした。
「いや、気にしなくていいよ。フェリシラ。ライル君に言いたいことがあるんだろ?」
なんだろう?
それにフェリシラ様は一体、何に涙を?
フェリシラ様はぎゅっとドレスを握ったまま、下を俯いたままだった。
……時間だけが流れいく。
「あの、フェリシラ様?」
「私も連れて行って下さい!! ライルの居ない生活なんて、退屈ですの」
……へ?
えっと……。
「デルバート様?」
さすがに護衛もなしに公爵令嬢を連れて行くのはどうなんだろう?
「フェリシラの気持ちを酌んでくれると助かる。君さえ良ければ……」
……。
「フェリシラ様? 本当に付いてくるんですか?」
「ダメ、ですわよね? 修行の旅ですものね。私なんて、邪魔なだけでもすもの」
???
何を言っているんだ?
「えっと……修行の旅ってなんですか? 僕はただ道具を買いに行こうと……」
「は? お兄様? どういうことですの?」
「えっ? あっはっはっは。あれ、可怪しいな。そうだったかな? いや、私としたことが」
なんとなく分かってしまった。
この人は……
「お兄様のバカァァァァ!」
僕がこの屋敷を出ていく……もう戻らないと言ったらしい。
僕がただアグウェルで手に入る道具に問題があると思ったんだ。
やはり、最高の品を使わないと……。
だからこそ、鍛冶の街に出向こうと。
あそこまでは、ここから一週間はかかる道のりだから、挨拶に行ったんだけど。
「どうします? 来ますか?」
「もちろんよ。言い出したんだもの、引き下がれないわ」
別に意地になるようなことでもないだろうに。
「そうそう、これを冒険者ギルドのマスターに渡してくれないかな?」
「分かりました」
手紙を受け取り、馬車を走らせた。
デルバート様はどこまでも追いかけてきた。
「フェリシラぁぁぁぁ。一日に一回は手紙を書くんだぞぉぉぉ」
誰がそんなに頻繁に書くんだ?
まったく……。
「全く……ですわね」
デルバート様を見て、これしか感想は出ないだろう。
「長旅ですけど、よろしくお願いしますね」
「ええ。なんだか、楽しみね」
僕もとても楽しみだ。
フェリシラ様との旅……。
「アリーシャもいますよ?」
「もちろんだ。途中で食べ歩きをしようか」
「はい!!」
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ヤバイ……親父に休むことを伝えるのを忘れてた……。
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