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鍛冶の街 グレンコット
第30話 初めてのプレゼント
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食事を終えてから、再び街を練り歩いた。
僕が足を止める度に怒られた。
「止まるなとは言いませんが、長居し過ぎですわ」
鍛冶をしている姿を見つけたら、ずっと見てしまうよね?
その職人の思いの丈を全てぶつけている姿は本当に格好いいと思う。
そんな姿に見惚れてしまうのは仕方がないじゃないか。
「とりあえず、今日はどこかの宿に泊まりましょう」
あれ?
なんだか、フェリシラ様が仕切りだしたぞ。
もしかして、僕ってそんなに不甲斐ない?
ここは、ちょっとでも格好いいところを……
「僕が宿を探してきますよ!! ちょっと、待っていて下さい!!」
「ちょ……ライル!!」
僕は走った。
フェリシラ様が泊まる宿となると……やっぱり、上等な所だよな?
この辺りで一番上等……となると、ここか。
峡谷を一望できる最高の場所にある宿屋……。
「申し訳ありません。空きがございません」
なんてことだ……。
いや、諦めるな。
「他に宿屋はありませんか?」
「おそらく、どこも一杯かと。今は冒険者の方達が集まっておりますから」
くそっ!!
鍛冶師の次は冒険者か。
いつも、宿屋運に見放されているな。
こうなったら……馬車に戻って……
「あれ? 君、ライル君じゃない? やっぱり、そうだ。久しぶりねぇ」
打ちひしがられている時に声を掛けてきたのは……。
「えっと……どちら様でしょうか?」
全く見に覚えのない女性でした。
姿は……冒険者かな?
顔は……全く記憶にない。
「あれぇ。酷いな。私よ!! マリアよ」
……マリア?
なんだか、最近聞いたことが……。
「……」
「本当に忘れちゃったの? ほら、ベイドと同級生の。花屋さんの隣のお家の……わからない?」
僕は必死に思い出そうとしていた。
そういえば、そんな人が居たような……。
いたっ!!
いたな!!
「あの、不細工なワンちゃんがいる」
「ベイドは不細工じゃないもん」
えっ? ベイド?
「どうして、ワンちゃんの名前がベイドなんですか?」
「えっ? だって、ベイドからもらったから。いいでしょ?」
ううん……あの不細工な犬に名前を付けられるのは、かなり不本意ではないだろうか?
まぁ、いいか。
「じゃあ、僕はこれで」
「ちょっと!! 酷いじゃない! せっかくの再会なのに」
いや、僕は貴女とは全く面識がないと思うんだけど。
「私ね、ベイドと婚約しているのよ。だから、貴方の姉になるの」
……やっぱり、この人のことを言っていたのか。
あのベイドは。
んんんんん。
まぁ、普通の女性だな。
「そうですか……それはおめでとうございます。それでは」
「どうして、行っちゃうかな? もうちょっと、話そ?」
なんだか、とても面倒くさくなってきたな。
「すみません、僕は宿を探さないといけなくて。連れを待たせているので……」
「何? 宿を探しているの? だったら、先に言ってよ」
いや、何の脈絡もなく、言えないだろうに。
「はぁ……それじゃあ……」
「だから、行かないでよ。ねぇ、宿があるって言ったら、どうする? しかも、ここの」
ん?
この人……何を企んでいる?
なんか、妙な胸騒ぎがする……。
……。
「じゃあね!!」
マリアと名乗る女性はダンジョンに行くと言って、去っていった。
だけど……僕は手に入れた。
宿屋の宿泊券を!
しかも!
一番いい部屋だぁ!
いい人だな。マリアさんは。
これをタダでくれるんだから。
今度、会ったときにはしっかりとお礼をしないとな……。
……。
「お待たせしました。宿を取ってきましたよ」
「あの女性は誰かしら?」
へ?
いや、まさかな。
かなりの距離があったはず。
「えっと……マリアさんと言って、ベイドの婚約者みたいですよ」
「へ? へぇ、そうですか」
それから、マリアさんの話題は上がることはなかった。
……。
「とっても素敵な見晴らしね」
まぁ、煙が充満しているせいで、何も見えないけど。
というか、ブレスレットを見過ぎではないだろうか?
暇があれば、ずっと見ている気がする。
「あの……それ、すごく気に入っているみたいですね。もし、あれでしたら、もう一つ買いましょうか?」
僕はフェリシラ様がブレスレット愛好者なのかと思ったんだ。
だから、言ったのに……
ものすごく怒られてしまった。
「プレゼントというものは、何度も贈るものではありません。気持ちが篭った一つで十分なんです。このブレスレットのように」
えっと……なんだか、とても恥ずかしいことを言われた気がしました。
「ありがとうございます。フェリシラ様」
「いいえ。私の方こそ。そう、私からもライルに贈りたいものがあります」
ん?
なんだろう……。
ってこれは……何だ?
「砥石……ですか?」
「ええ。とても珍しいものらしいですよ」
まぁ、珍しいと言うか……見たことがないかな?
普通の砥石はざらついた面をしているが、これはツルツルだ。
仕上げも仕上げ、最後の最後で使う研磨用の砥石だろう。
だけど、僕が気になるのはそこじゃない。
その石そのもの。
光り輝く粒の様なものが散りばめられた石だったのだ。
正直、こんなキレイな砥石は見たことがない。
「分からないです」
「ふふっ。魔石が含まれた石なんですって。この光っている粒がそうらしいですわ」
へぇ……魔石の砥石か。
なんだか、面白いものがあるんだな。
「ありがとうございます!! 大切にしますね」
「ええ」
これは僕にとっては一生の宝物だ。
首にかけて持ち歩こうかな?
ここは鍛冶の街だ。
それ位の加工はなんてことはないだろうな。
「ねぇ、ライル。ちょっと、頼みがあるの」
ん?
なんだろう?
「このブレスレット……ちょっと、傷があるみたいなの。直してくれないかしら」
……よく、こんなに小さい傷を……。
「分かりました。だったら、この石でやってみましょうか?」
「任せますわ」
生憎と粗めの砥石しか持ってきていないから、こんな細かいものにやったら、傷がますます付いてしまう。
ちょっと時間はかかるけど……。
シュッ……シュッ……。
いいじゃないか。
シュッ……シュッ……。
悪くない。
……。
「出来ましたよ」
「ありがとうございます。あら? なんだか、とても光るようになりましたね」
さっきまで、点々としか光らなかったのに……。
今は眩しいくらい光り輝いていました。
これも『研磨』の効果なのかな?
僕が足を止める度に怒られた。
「止まるなとは言いませんが、長居し過ぎですわ」
鍛冶をしている姿を見つけたら、ずっと見てしまうよね?
その職人の思いの丈を全てぶつけている姿は本当に格好いいと思う。
そんな姿に見惚れてしまうのは仕方がないじゃないか。
「とりあえず、今日はどこかの宿に泊まりましょう」
あれ?
なんだか、フェリシラ様が仕切りだしたぞ。
もしかして、僕ってそんなに不甲斐ない?
ここは、ちょっとでも格好いいところを……
「僕が宿を探してきますよ!! ちょっと、待っていて下さい!!」
「ちょ……ライル!!」
僕は走った。
フェリシラ様が泊まる宿となると……やっぱり、上等な所だよな?
この辺りで一番上等……となると、ここか。
峡谷を一望できる最高の場所にある宿屋……。
「申し訳ありません。空きがございません」
なんてことだ……。
いや、諦めるな。
「他に宿屋はありませんか?」
「おそらく、どこも一杯かと。今は冒険者の方達が集まっておりますから」
くそっ!!
鍛冶師の次は冒険者か。
いつも、宿屋運に見放されているな。
こうなったら……馬車に戻って……
「あれ? 君、ライル君じゃない? やっぱり、そうだ。久しぶりねぇ」
打ちひしがられている時に声を掛けてきたのは……。
「えっと……どちら様でしょうか?」
全く見に覚えのない女性でした。
姿は……冒険者かな?
顔は……全く記憶にない。
「あれぇ。酷いな。私よ!! マリアよ」
……マリア?
なんだか、最近聞いたことが……。
「……」
「本当に忘れちゃったの? ほら、ベイドと同級生の。花屋さんの隣のお家の……わからない?」
僕は必死に思い出そうとしていた。
そういえば、そんな人が居たような……。
いたっ!!
いたな!!
「あの、不細工なワンちゃんがいる」
「ベイドは不細工じゃないもん」
えっ? ベイド?
「どうして、ワンちゃんの名前がベイドなんですか?」
「えっ? だって、ベイドからもらったから。いいでしょ?」
ううん……あの不細工な犬に名前を付けられるのは、かなり不本意ではないだろうか?
まぁ、いいか。
「じゃあ、僕はこれで」
「ちょっと!! 酷いじゃない! せっかくの再会なのに」
いや、僕は貴女とは全く面識がないと思うんだけど。
「私ね、ベイドと婚約しているのよ。だから、貴方の姉になるの」
……やっぱり、この人のことを言っていたのか。
あのベイドは。
んんんんん。
まぁ、普通の女性だな。
「そうですか……それはおめでとうございます。それでは」
「どうして、行っちゃうかな? もうちょっと、話そ?」
なんだか、とても面倒くさくなってきたな。
「すみません、僕は宿を探さないといけなくて。連れを待たせているので……」
「何? 宿を探しているの? だったら、先に言ってよ」
いや、何の脈絡もなく、言えないだろうに。
「はぁ……それじゃあ……」
「だから、行かないでよ。ねぇ、宿があるって言ったら、どうする? しかも、ここの」
ん?
この人……何を企んでいる?
なんか、妙な胸騒ぎがする……。
……。
「じゃあね!!」
マリアと名乗る女性はダンジョンに行くと言って、去っていった。
だけど……僕は手に入れた。
宿屋の宿泊券を!
しかも!
一番いい部屋だぁ!
いい人だな。マリアさんは。
これをタダでくれるんだから。
今度、会ったときにはしっかりとお礼をしないとな……。
……。
「お待たせしました。宿を取ってきましたよ」
「あの女性は誰かしら?」
へ?
いや、まさかな。
かなりの距離があったはず。
「えっと……マリアさんと言って、ベイドの婚約者みたいですよ」
「へ? へぇ、そうですか」
それから、マリアさんの話題は上がることはなかった。
……。
「とっても素敵な見晴らしね」
まぁ、煙が充満しているせいで、何も見えないけど。
というか、ブレスレットを見過ぎではないだろうか?
暇があれば、ずっと見ている気がする。
「あの……それ、すごく気に入っているみたいですね。もし、あれでしたら、もう一つ買いましょうか?」
僕はフェリシラ様がブレスレット愛好者なのかと思ったんだ。
だから、言ったのに……
ものすごく怒られてしまった。
「プレゼントというものは、何度も贈るものではありません。気持ちが篭った一つで十分なんです。このブレスレットのように」
えっと……なんだか、とても恥ずかしいことを言われた気がしました。
「ありがとうございます。フェリシラ様」
「いいえ。私の方こそ。そう、私からもライルに贈りたいものがあります」
ん?
なんだろう……。
ってこれは……何だ?
「砥石……ですか?」
「ええ。とても珍しいものらしいですよ」
まぁ、珍しいと言うか……見たことがないかな?
普通の砥石はざらついた面をしているが、これはツルツルだ。
仕上げも仕上げ、最後の最後で使う研磨用の砥石だろう。
だけど、僕が気になるのはそこじゃない。
その石そのもの。
光り輝く粒の様なものが散りばめられた石だったのだ。
正直、こんなキレイな砥石は見たことがない。
「分からないです」
「ふふっ。魔石が含まれた石なんですって。この光っている粒がそうらしいですわ」
へぇ……魔石の砥石か。
なんだか、面白いものがあるんだな。
「ありがとうございます!! 大切にしますね」
「ええ」
これは僕にとっては一生の宝物だ。
首にかけて持ち歩こうかな?
ここは鍛冶の街だ。
それ位の加工はなんてことはないだろうな。
「ねぇ、ライル。ちょっと、頼みがあるの」
ん?
なんだろう?
「このブレスレット……ちょっと、傷があるみたいなの。直してくれないかしら」
……よく、こんなに小さい傷を……。
「分かりました。だったら、この石でやってみましょうか?」
「任せますわ」
生憎と粗めの砥石しか持ってきていないから、こんな細かいものにやったら、傷がますます付いてしまう。
ちょっと時間はかかるけど……。
シュッ……シュッ……。
いいじゃないか。
シュッ……シュッ……。
悪くない。
……。
「出来ましたよ」
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