追放鍛治師の成り上がり〜ゴミスキル『研磨』で人もスキルも性能アップ〜家に戻れ?無能な実家に興味はありません

秋田ノ介

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ダンジョン

第39話 ブール鍛冶商会

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魔女の館……ベローネ邸。

「アリーシャちゃん!」
「ウィネットちゃん!!」

あれ?

この二人ってこんなに仲良かったのか?

まさか、扉をあけてすぐに飛びつくような歓迎を受けるとは思ってもいなかった。

僕ではないけど……。

「あの……私、ウィネット=ベローネと申します。あの……私の病気を治してくれて、本当にありがとうございました」

へぇ、子供の割に、ちゃんとしたお礼が出来るんだな。

「もう、体調は大丈夫かい?」
「はい!! ずっと調子がいいくらいです。里の皆も治してもらえるってすごく喜んでいました」

それは良かった……ん?

「ウィネット。余計なことは言わなくても良い。アリーシャと言うたな? すまぬが、ウィネットと遊んでいてはくれぬか?」
「うん。いいよ」

この人が魔女……。

なんて、妖艶な佇まいなんだ。

時々覗かせる、スリットからの足が……いでっ!!

「ライル。どこを見ているのかしら? 相手は街の領主様なのよ。ちゃんとして下さい」

……すみませんでした。

つい、子供同士のほのぼのとした光景でどこにいるのかを忘れていた。

「さて、お二方、よう来てくれたの。私がこの街を統治するベローネじゃ」

本当にキレイな人だな。

「お初にお目にかかります。ベローネ様。私は……」

「スターコイドの妹じゃろ?」
「え? はい、そうです」

カツカツとヒールの音が近づいてくる。

「お主が……ライルかえ?」

かえ?

「ええ。僕がライルです」
「ほぉ。ええ男じゃな」

ひっ! 近い。

指で僕の体をなぞるように動かしてくる。

一歩も動けない……。

これが魔女……なのか。

「ちょっと、失礼します」
「なんじゃ。無粋な女子じゃな。妾と男の間に割って入るでない」

良かった……。

あのまま、ずっと見つめられていたら、きっと大変なことになっていた。

「私達が今回、こちらに来たのはダンジョンに入りたいためです。ベローネ様にはその許可を頂きたく参りました」
「ダンジョンのぉ……まぁ、礼もしたい。ゆるりとせよ。イディア。客人を案内せよ」

「はっ!! ベローネ様」

最後に振り返った時のニヤリと笑ったベローネ様が印象的だった。

あの人……怖いな。

逃げるか?

いや、今回の目的を忘れるな。

ダンジョン……剣だ!

買った剣は予備のもの。

必要なのは僕が作った剣だ。

「イディア様。少し頼みがあるんですが……」
「なんだ?」

「どこかの工房をお借りできないでしょうか? 剣を一本作りたいので」
「ん? 腰に差しているではないか。それではダメなのか? まさか、私の剣を早速?」

……嬉しそうな顔をしている所、ごめん。全然違うんだ。

「実は……」

今回の目的は僕の剣の耐久度を調べるため。

それとモンスターの調査をすることだ。

僕の剣がモンスターの体の硬さに耐えられないのかどうか……。

「そうか……だったら、いいところがある。私の幼馴染が経営する工房だ」

まぁ、どこでもいいか。

「お願いします。フェリシラ様も一緒に来ますか?」
「そうね……やっぱり止めておくわ。杖の調整もしたいし、アリーシャちゃんを一人にするのも、ね?」

たしかにそうだな。

ウィネットちゃんが一緒とは言え、魔女のいる館。

危険がある可能性は否定できない。

もっともアリーシャの戦闘力があれば、大抵の危難は乗り越えられそうだけど。

「案内する。付いてこい」
「はい。お願いします」

フェリシラ様と別れを告げ、街へと向かった。

念願の工房街だぁぁぁ!!

今なら、見れる!

フェリシラ様という邪魔……いや、保護者がいないんだ!

自由に見れるぞ!!

「ほら、行くぞ」
「な、なにをするんだ」

くっ……なんて馬鹿力なんだ。

「お嬢様から言伝だ。寄り道はダメですよ! とな」

先手を打たれていたのか。

それにしても……

「フェリシラ様の声真似、似てないな」
「う、うるさい!! お前は黙って付いてこい」

まぁ、首根っこ持たれて、黙れもないと思うけど。

ああ……鉄の焼ける匂い……。

硫黄の臭さ……そして、充満する煙……。

本当に最高な場所だな。

「着いたぞ」

ここは……。

ブール鍛冶協会?

あの王国中に展開している老舗の……。

ここにも支店があったんだな。

充満する煙の街並みの中、ひっそりとした店構え。

店内には工房らしいものがあるが、使われている様子もないな。

これなら見落としていても無理はないな。

「おーい。ロンスキーはいるか?」

なにやら、奥から物が落ちる音が……。

「イディア? イディアなのか? いつ来るかとずっと待っていたんだぞ」

随分と熱っぽいな。

僕はいないほうがいいのか?

「ああ、そうだな。こっちはライル殿だ。お前の工房を貸せ」

酷い……完全に流したぞ。

「ん? あれ? 君はたしか……公爵様のコンテストで一度、会っているよね?」

……?

全く記憶にない。

あの時の記憶と言えば、バカが土下座したこととデルバート様と会ったことくらいだ。

「覚えていてないのかい? ほら、私が準優勝で……」

……?

ダメだ。全然思い出せない。

「おい、ロンスリー。お前は昔から存在感が薄いんだ。ライル殿を困らせるな!!」
「そうかい? まぁ、そうだね」

この人、実はすごい人か?

イディア様の毒舌を華麗に避けているぞ。

「えっと……急にすみません。工房をお借りしたいと言った所、ここに案内されまして」
「ああ、いいんだよ。好きに使ってよ。どうせ、趣味程度にしか使っていない場所だから」

おかしい……。

準優勝をする人の言葉とは思えない。

それとも鍛冶は極めてしまった……そういうことなのか?

「それに君の鍛冶に興味があるからね」

なんだか、ゾクッとした。

考えてみれば、実家を飛び出して以来、同業の人に見られたことがなかったな。

あれ?

なんだか、物凄く緊張してきたぞ。
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