追放鍛治師の成り上がり〜ゴミスキル『研磨』で人もスキルも性能アップ〜家に戻れ?無能な実家に興味はありません

秋田ノ介

文字の大きさ
63 / 69
王都トリスタニア

第53話 王国コンテスト

しおりを挟む
ついに当日を迎えてしまった。

コンテスト参加者には仮設の工房を使える権利が与えられている。

だが、そこで剣を鍛えているのは……僕だけだ。

皆、すでに自信のある武具を準備している。

当日まで粘っているのは、余程のバカなのだろう。

「すみません。そろそろエントリーをして頂かないと……」
「もうちょっと……もうちょっとで終わりますから」

僕は最後の『研磨』をかけていた……。

これでダメなら……。

最後に『鑑定』を……。

あっ……。

「これですよね? すぐにエントリーをしますから! 持っていきます」

持って行かれてしまった。

だけど、最高の作品に仕上がったはずだ。

僕が出来るすべてをぶつけた……。

「ライル?」
「フェリシラ様! ずっと、ここに?」

背後から声を掛けられて、驚いてしまった。

まさか、ずっといたとは。

「私にはここで静かにライルを応援することしか出来ませんから」

フェリシラ様……。

「ありがとうございます。おかげで、いい作品が出来ました。あれなら……」

きっとベイドの作品ともいい勝負が出来るはずだ。

そして、このコンテストで入賞する。

そうすれば……僕は一人前の鍛冶師として認められるんだ。

「すぐにコンテストが始まるみたいですよ。行きましょうか」
「はい」

フェリシラ様は僕の手をとって、歩き始めた。

なんだか、これも自然な動作になってきたよな。

「おい! お前!!」

なんだ、こんな時に……。

僕はとても幸せな気分に……。

「なんですか?」

……誰だ、こいつは。

醜く太った奴だ。

それに横にいる……ブスはなんだ?

随分と仲良さげに腕なんて組んで……。

「レイモンド……殿下」

フェリシラ様?

「また、ブスになったな。フェリシラ。折角、美人になる毒を飲ませてやったのに。運のない奴だ」

……!!

こいつは……第二王子。

なぜ、ここに。

デルバート様に捕まっていたんじゃ。

というか、フェリシラ様をブス呼ばわり、だと?

それだけで万死に値する。

だが……。

相手は王族……。

「おい、庶民。貴様がライルか?」

どうして、僕の名を?

「はい」
「ふん! いいか? てめぇを絶対に入賞なんてさせてやるか。徹底的に妨害してやる」

……こいつからはベイド臭がする。

クソ野郎の臭いだ。

「……」
「ビビって、声も出ねぇか? つまんねぇ。おい、ブス。自分の顔が嫌になったら、いつでも言えよ。薬をくれてやるからな。俺って優しいだろ?」

最低な野郎だ。

こんなヤツにフェリシラ様が苦しめられていたなんて……。

なんだか、分かるよ。

デルバート様の気持ちが……。

「分かりました。だけど、僕の武具はそう簡単に負けませんよ」
「ぬかせ!! どうせ、入賞するかどうかだろ? 簡単に決まっている。じゃあ、な」

こいつを殴るのは簡単だ。

だが、この決着はコンテストで……。

「フェリシラ様」
「……」

……?

「プッ! なに、あれ? 豚じゃない!」

……フェリシラ様?

「なんで、あんなやつと結婚しようと思ったのかしら? 謎よね?」

えっと……。

「落ち込んでいないんですか? 怖くは……なかったですか?」
「全然。むしろ、会えたことでスッキリしました。ねぇ、ライル?」

フェリシラ様の上目遣い……。

アリーシャ以上の破壊力だ。

「はい……なんでしょう?」
「絶対に、勝ってね」

「も、もちろんですよ」
「嬉しい!!」

えっと……これはどう言う状況なんだ?

こんな距離で見つめ合うってことは……。

いいのかな?

僕はゆっくりと顔を近づけた……

「ダメよ。これは入賞してから……ね?」

絶対に入賞してやるぅぅぅぅ!

……。

「これよりコンテストを開催します。本日の主催はレイモンド=ライゼファ殿下です。なお、審査委員長にはウォーカー男爵を招いております!」

まさか、父上まで……。

僕の剣が評価される……。

でも、大丈夫だ。

僕はやれることをやったんだ。

会場には大勢の職人が並び、一同が司会役の人を見つめていた。

レイモンドと父上は簡単な挨拶だけを言うだけだった。

「それでは開始します! まずは品評会を開催します。ここで10組の武具が選ばれます」

いきなり、すごい数が減らされるんだな。

周囲からはどよめきが走った。

……。

「よお」

……誰だ?

「はぁ」
「なんだ、その気にない返事は。俺が分からないのか?」

……全く。

でも、声に聞き覚えが……。

「まさか、ベイドか?」

信じられない。

メレデルク工房の修行が大変だとは聞いていたが……。

ここまで顔が変わってしまうとは。

もはや別人のレベル……顔が腫れ上がり、生傷も多い。

まるで誰かに殴られたような……。

ここまでの修行を積んできたということか……。

ちょっと、尊敬だな。

「へへへっ。今回は俺が優勝させてもらうぜ」

随分な自信だな。

メレデルク工房で何かを得たのか?

こいつのことは嫌いだが、技術には興味がある。

「ああ、僕も負けないさ」

これで全てが揃った。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

【状態異常耐性】を手に入れたがパーティーを追い出されたEランク冒険者、危険度SSアルラウネ(美少女)と出会う。そして幸せになる。

シトラス=ライス
ファンタジー
 万年Eランクで弓使いの冒険者【クルス】には目標があった。  十数年かけてため込んだ魔力を使って課題魔法を獲得し、冒険者ランクを上げたかったのだ。 そんな大事な魔力を、心優しいクルスは仲間の危機を救うべく"状態異常耐性"として使ってしまう。  おかげで辛くも勝利を収めたが、リーダーの魔法剣士はあろうことか、命の恩人である彼を、嫉妬が原因でパーティーから追放してしまう。  夢も、魔力も、そしてパーティーで唯一慕ってくれていた“魔法使いの後輩の少女”とも引き離され、何もかもをも失ったクルス。 彼は失意を酩酊でごまかし、死を覚悟して禁断の樹海へ足を踏み入れる。そしてそこで彼を待ち受けていたのは、 「獲物、来ましたね……?」  下半身はグロテスクな植物だが、上半身は女神のように美しい危険度SSの魔物:【アルラウネ】  アルラウネとの出会いと、手にした"状態異常耐性"の力が、Eランク冒険者クルスを新しい人生へ導いて行く。  *前作DSS(*パーティーを追い出されたDランク冒険者、声を失ったSSランク魔法使い(美少女)を拾う。そして癒される)と設定を共有する作品です。単体でも十分楽しめますが、前作をご覧いただくとより一層お楽しみいただけます。 また三章より、前作キャラクターが多数登場いたします!

【完結】スキルを作って習得!僕の趣味になりました

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》 どんなスキル持ちかによって、人生が決まる。生まれ持ったスキルは、12歳過ぎから鑑定で見えるようになる。ロマドは、4度目の15歳の歳の鑑定で、『スキル錬金』という優秀なスキルだと鑑定され……たと思ったが、錬金とつくが熟練度が上がらない!結局、使えないスキルとして一般スキル扱いとなってしまった。  どうやったら熟練度が上がるんだと思っていたところで、熟練度の上げ方を発見!  スキルの扱いを錬金にしてもらおうとするも却下された為、仕方なくあきらめた。だが、ふと「作成条件」という文字が目の前に見えて、その条件を達してみると、新しいスキルをゲットした!  天然ロマドと、タメで先輩のユイジュの突っ込みと、チェトの可愛さ(ロマドの主観)で織りなす、スキルと笑いのアドベンチャー。

能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました

御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。 でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ! これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

処理中です...