追放鍛治師の成り上がり〜ゴミスキル『研磨』で人もスキルも性能アップ〜家に戻れ?無能な実家に興味はありません

秋田ノ介

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王都トリスタニア

第55話 決勝戦

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ついに十人が選ばれた。

どの人も王国では名の通った人ばかりだ。

新人と言えば、僕とベイドだけだ。

どちらもウォーカー家出身ということもあり、周りは賑わいでいる。

「へっ!! これでおまえとは白黒が付けられそうだな」
「本当にあれはベイドの作品なのか?」

「あ、あったりまえよ」

なんか、嘘くさいんだよな。

まぁ、それもこれからの審査を見ていれば分かるかも知れない。

「それではくじを行います。呼ばれた番号の方に自分の武具を預けて下さい。何か、アドバイスがあれば、その時にお伝えください」

アドバイスか……。

次々と名前を呼ばれ、最後が僕の番だった。

残っている近衛騎士見習いといえば……あの人だな。

番号を言われるまでもなく、その人に近づく。

「僕はライルと言います」
「ああ、私はエイドン=ライゼファと申します」

……ライゼファ?

「えっと……もしかして、王族の方ですか?」
「ええ。現王の息子です」

……って、王子じゃん!!

どうして、こんなところに……。

いや、待て。

「も、申し訳ありませんでした! 失礼な口利き、お許しください!!」
「い、いや、本当にいいんです。私が王子としての器がないのはよく知っていますから」

……。

「不躾ながら、どうして、このような場に?」
「ええ。レイモンド兄様に言われまして……何でも経験だと。急に言われたので、何も準備も出来ず」

待て……焦るな。

これは大変なことかも知れない。

「失礼ですが、剣術の経験はどれほど?」
「お恥ずかしいですが、幼少の頃よりやっておりましたが、この性格ゆえ、実力があがらず……」

僕は天を仰いだ。

これは……ヤバイな。

この人……。

「剣は握れますか?」
「ええ。それは大丈夫です。でも、すみません」

それ以上は言わないでくれ。

「私のせいで、せっかくのライルさんの剣が……」

やめてくれ……。

「……この剣は……エイドン様のような方のために作った剣です」
「いま、なんと?」

アドバイス……。

「僕は鍛冶師としての才能はありません。上を目指しても、いつも地を這いずり回っているだけだったのです」
「そんな! こんなにすごい剣を作っているじゃありませんか!!」

「いいえ。間違いありません。ですが、そんな僕でもこんな剣を作れたんです。それは……」
「それは?」

この剣を鍛えている時にずっと思っていた。

「自分の全てを信じ、出し来ること。それが出来れば……」
「……」

「思わぬ結果が出るものですよ」
「はぁ……」

もはや、僕はこの人を信じるしかない。

そして、僕は初めて……。

この剣を目にした。

『鑑定』


■■■■剣
品質: A
耐久度: 299/4500
特性: ■■■■


そうだろうな。

でも、僕には分かっている。

この剣の特性を……。

だから……

「自分を信じて下さい。そうすれば、今まで得てきた経験が全て出されるはずです」
「……はい!!」

これでいい。

あとはこの人に任せよう。

「それでは、始めます!!」

観客は最高潮の盛り上がりを見せた。

十人の近衛騎士見習いが会場に集まる。

一礼をし、各々が手にする武器で身構えた。

エイドン王子は?

……緊張しているな。

一方、メレデルク様の見習いは実に大きな男だ。

まさに力任せの剣士と言った感じだ。

あれは間違いなく強いな。

ベイドの方は?

細い体のようだが、実に鍛え上げられた体をしている。

それに目付きが……怖い。

二人共、良い剣士を引いたみたいだな。

そうなると、やっぱりエイドン王子では心許ないかな……。

いや、信じないとダメだ。

「開始!!」

観客の歓声と共に始まった。

真っ先に動くのは……ベイドの剣士か!!

早いっ!

またたく間に、相手の剣を真っ二つにし、戦闘不能にしてしまった。

エイドン王子が隣り合わせじゃなくてよかった。

メレデルク様の剣士は動かない。

だが、二人が同時に襲いかかっている。

おそらく、同時に攻撃すれば勝てると踏んだのだろう。

だが……。

最強の剣と肉体が結びついた攻撃力は凄まじいものだ。

メレデルクの剣士が剣を地に叩きつけるだけで爆風が起き、近寄るものの動きを止める。

その隙に間合いを詰め、二人を同時に倒してしまった。

たった一瞬で、三人が倒されてしまった。

あとは7人。

これは最後に残ったものが優勝というわけではない。

倒した数や倒し方、それに武具の扱いも一つの評価基準だ。

だから、逃げてばかりいて、最後まで残ればいいというものではない。

だが……エイドン王子は逃げるのに必死になっていた。

……これはダメかも知れない。

その間にメレデルク様とベイドの剣士は次々と相手を倒していく。

ついに、三人の戦いになった。

メレデルク様の剣士は4人を倒し、ベイドの剣士は3人。

2強が出揃ったという感じだ。

二人は対峙し、エイドン王子は蚊帳の外だ。

この二人の勝負がこのコンテストの行方を左右するだろう。

激突する二人。

実力は拮抗している。

剣の性能も同じくらいだ。

数合……数十合と剣を合わせているうちに、ベイドの剣士に焦りが見え始めていた。

「剣にヒビが入り始めているな」

誰に言うでもなく声を出してしまった。

だが、それは僕だけが気付いたわけではない。

そして、皆の予想通りの結果となった。

剣が折れたのだ。

その瞬間、コンテストの優勝者が決まった……会場はそんな雰囲気だった。

「王子。降参して下さい」

意外だな。

メレデルク様の剣士がエイドン王子に話しかけていた。

「断る! 私も一介の騎士だ」

言葉は立派だが、手が震えて剣が落ちてしまいそうだ。

「そうですか……ならば!」

なんて、力強い踏み込みなんだ。

今まで戦ってきた者の動きではない。

やはり、この勝負……

「受けた!!」

信じられない。

王子があの豪腕から打ち出される剣を受け止めた。

それだけではない。

すかさず後方に下がって、剣を薙ぎ払うように攻撃をしている。

まさかの反撃に周りからはどよめきが起きる。

「やりますね。王子」

メレデルクの剣士も予想外の王子の行動に驚いている様子だ。

「はぁはぁはぁ。私はまだまだやれる!!」

……王子。
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