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王都トリスタニア
side 陰謀公爵 デルバート
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私はデルバート=スターコイドだ。
全てが私の思い描いた通りに動いていた。
恐ろしいほどに。
『変化』の魔道具とライル君の王国級の剣……それがなければ、ここまで上手くやれることはなかった。
その全てに彼が関わっているのだから……。
やはり使える男だよ……ライル君は。
だが、妹をやるには、まだまだ小物だ。
今しばらくは……。
……。
ライル君がグレンコットから戻ってきてから、狂ったように剣を鍛え始めた。
何かを発見したのかも知れない。
下の者には変化があれば、全てを伝えるように指示を出した。
それが見事に的中したのだ。
さすがはライル君といったところだ。
まさか、あれほどの剣を作ってしまうとは……。
私でも秘蔵のコレクションに加えたいほど、惚れ惚れとするものだった。
だが……。
私は閃いてしまった。
今は第二王子に変身したベイド君という手札がある。
これは第二王子への嫌がらせに大いに使える。
しかし、今はまだ派手に事を進めることは出来ない。
他の貴族への目回しがまだまだ足りないからだ。
だからこそ、ベイド君にもう一働きしてもらおうと思っていた。
第二王子の裸姿で王都を走り回る……というのも面白いが大した被害はない。
しかし、この剣があれば、話は別だ。
私は急遽、ベイド君を王国コンテストに出場させることに決めた。
もちろん、この剣で出場してもらう。
この剣ならば……
最悪、入賞は確実。
もしかしたら、優勝もあり得るかも知れない。
鍛冶師コンテストでは不正は重い罰が与えられる。
ベイド君には重い罰を受けてもらう……
それでウォーカー家を揺すれば……意外と面白い結果が得られるかも知れない。
……。
私は神に愛されているようだ。
まさか、ウォーカー男爵が審査委員長とは……。
しかも、レイモンドまで絡んでいる……。
これは面白くなってきたな。
レイモンドにはライル君の事を耳にわざと入れた。
それはレイモンドに不正を行わせるため。
あいつはバカだ。
気に入らない相手には、どんな手段でも使う。
それが馬鹿げたことであってもだ。
コンテストはそう言う意味では、レイモンドの遊び場だ。
必ず、奴はライルに手を出してくる。
私は決して、見逃さない。
……。
本当にバカだな。
しかも、ウォーカー男爵まで関わっているとは……。
これでこの男の鍛冶師としての栄誉は終わったな。
「王がこれよりこちらにやってくる」
嘘ではない。
だが、これ以上の揺さぶりはないだろう。
ウォーカー男爵の動揺した表情は実に……素晴らしい。
レイモンドとウォーカー男爵の汚い罵り合いも心地よい言葉に聞こえる。
こいつらの弱みを私は一手に得たのだ。
……。
私はウォーカー男爵を呼びつけた。
無論、王が来るまでの短い時間だ。
弱っている今しか、この交渉は出来ないだろう。
「男爵……いや、ウォーカー。君の人生は大きな岐路に立たされている」
それは事実だ。
鍛冶師が……王国コンテストで泥を塗るような行為をした。
それは誰もが侮蔑するほど、汚い行為だ。
これが王の耳に入れば……当然、結果は……。
家名の没収。
鍛冶師からの永久追放。
これだけなら、まだいい。
最悪は処刑だ。
「私はどうすれば、よいのでしょう!! スターコイド公爵、教えて下さい!!」
これだ……私はこのタイミングを待ちに待ったのだ。
「ふむ。ウォーカー家は我が家の子飼い。助けてやりたいのは山々なのだが……すでに、この事は王の耳に入っている。私にはどうすることも……」
「そんな……ウォーカー家はどうなるんでしょうか?」
なんて、情けない男なのだ。
「断絶も覚悟しなければならない。君も鍛冶師ならば、それ位の事をしたのだ」
「……」
この辺でいいだろう。
「分かった! 私も尽力しよう」
「本当ですか!!?」
「ああ。だが、今まで通りというのは難しい。その覚悟はいいな?」
「もちろんでございます。家さえ……」
……これでいい。
私は王にこういった……。
「メレデルク殿下の入れ知恵で断れなくなった」
と。
メレデルク偽物事件で恩を売っておいた甲斐があった。
事実はどうあれ、ウォーカー家には小さな罪だけで済んだ。
これでウォーカー家の製造する武具は全て、我が手中に収まった。
……。
しかし、喜んでばかりもいられない。
一つを得れば、一つを失う。
まさにその言葉の通りだ。
私は手中に収めたライル君という手駒を王に奪われてしまった。
コンテスト会場でのあの王の言葉……。
名誉子爵を与える……。
それは問題ない。
もともと、その約束をしていたのだから。
しかし、筆頭鍛冶師は許せない。
王家直属だと?
ふざけたことを……。
これではライル君を王に取られたも等しい。
ライル君は今後、大きくなる男だ。
絶対に私の手中にしておかなければならない存在だ。
……。
私は覚悟を決めなければならない。
妹、フェリシラをライル君にあげなければならない、と。
彼はこれで私とは親戚だ。
今の王は何をするか分からない。
最悪、王女をライルに……なんてこともあり得る。
その前に手を打たなければ。
しかし、最後の話は解せない。
ライル君に名乗りを許された姓……シーオドア。
これは確か……二十年前くらいに一時、使われていたと記憶している。
そして、その時に名乗っていたのが……現王の妹。
どうして、そんな姓をたかが鍛冶師コンテストで入賞した者に与えるのだ?
それが全く分からない……。
早く調べなければ……王に先を行かれてしまうな。
全てが私の思い描いた通りに動いていた。
恐ろしいほどに。
『変化』の魔道具とライル君の王国級の剣……それがなければ、ここまで上手くやれることはなかった。
その全てに彼が関わっているのだから……。
やはり使える男だよ……ライル君は。
だが、妹をやるには、まだまだ小物だ。
今しばらくは……。
……。
ライル君がグレンコットから戻ってきてから、狂ったように剣を鍛え始めた。
何かを発見したのかも知れない。
下の者には変化があれば、全てを伝えるように指示を出した。
それが見事に的中したのだ。
さすがはライル君といったところだ。
まさか、あれほどの剣を作ってしまうとは……。
私でも秘蔵のコレクションに加えたいほど、惚れ惚れとするものだった。
だが……。
私は閃いてしまった。
今は第二王子に変身したベイド君という手札がある。
これは第二王子への嫌がらせに大いに使える。
しかし、今はまだ派手に事を進めることは出来ない。
他の貴族への目回しがまだまだ足りないからだ。
だからこそ、ベイド君にもう一働きしてもらおうと思っていた。
第二王子の裸姿で王都を走り回る……というのも面白いが大した被害はない。
しかし、この剣があれば、話は別だ。
私は急遽、ベイド君を王国コンテストに出場させることに決めた。
もちろん、この剣で出場してもらう。
この剣ならば……
最悪、入賞は確実。
もしかしたら、優勝もあり得るかも知れない。
鍛冶師コンテストでは不正は重い罰が与えられる。
ベイド君には重い罰を受けてもらう……
それでウォーカー家を揺すれば……意外と面白い結果が得られるかも知れない。
……。
私は神に愛されているようだ。
まさか、ウォーカー男爵が審査委員長とは……。
しかも、レイモンドまで絡んでいる……。
これは面白くなってきたな。
レイモンドにはライル君の事を耳にわざと入れた。
それはレイモンドに不正を行わせるため。
あいつはバカだ。
気に入らない相手には、どんな手段でも使う。
それが馬鹿げたことであってもだ。
コンテストはそう言う意味では、レイモンドの遊び場だ。
必ず、奴はライルに手を出してくる。
私は決して、見逃さない。
……。
本当にバカだな。
しかも、ウォーカー男爵まで関わっているとは……。
これでこの男の鍛冶師としての栄誉は終わったな。
「王がこれよりこちらにやってくる」
嘘ではない。
だが、これ以上の揺さぶりはないだろう。
ウォーカー男爵の動揺した表情は実に……素晴らしい。
レイモンドとウォーカー男爵の汚い罵り合いも心地よい言葉に聞こえる。
こいつらの弱みを私は一手に得たのだ。
……。
私はウォーカー男爵を呼びつけた。
無論、王が来るまでの短い時間だ。
弱っている今しか、この交渉は出来ないだろう。
「男爵……いや、ウォーカー。君の人生は大きな岐路に立たされている」
それは事実だ。
鍛冶師が……王国コンテストで泥を塗るような行為をした。
それは誰もが侮蔑するほど、汚い行為だ。
これが王の耳に入れば……当然、結果は……。
家名の没収。
鍛冶師からの永久追放。
これだけなら、まだいい。
最悪は処刑だ。
「私はどうすれば、よいのでしょう!! スターコイド公爵、教えて下さい!!」
これだ……私はこのタイミングを待ちに待ったのだ。
「ふむ。ウォーカー家は我が家の子飼い。助けてやりたいのは山々なのだが……すでに、この事は王の耳に入っている。私にはどうすることも……」
「そんな……ウォーカー家はどうなるんでしょうか?」
なんて、情けない男なのだ。
「断絶も覚悟しなければならない。君も鍛冶師ならば、それ位の事をしたのだ」
「……」
この辺でいいだろう。
「分かった! 私も尽力しよう」
「本当ですか!!?」
「ああ。だが、今まで通りというのは難しい。その覚悟はいいな?」
「もちろんでございます。家さえ……」
……これでいい。
私は王にこういった……。
「メレデルク殿下の入れ知恵で断れなくなった」
と。
メレデルク偽物事件で恩を売っておいた甲斐があった。
事実はどうあれ、ウォーカー家には小さな罪だけで済んだ。
これでウォーカー家の製造する武具は全て、我が手中に収まった。
……。
しかし、喜んでばかりもいられない。
一つを得れば、一つを失う。
まさにその言葉の通りだ。
私は手中に収めたライル君という手駒を王に奪われてしまった。
コンテスト会場でのあの王の言葉……。
名誉子爵を与える……。
それは問題ない。
もともと、その約束をしていたのだから。
しかし、筆頭鍛冶師は許せない。
王家直属だと?
ふざけたことを……。
これではライル君を王に取られたも等しい。
ライル君は今後、大きくなる男だ。
絶対に私の手中にしておかなければならない存在だ。
……。
私は覚悟を決めなければならない。
妹、フェリシラをライル君にあげなければならない、と。
彼はこれで私とは親戚だ。
今の王は何をするか分からない。
最悪、王女をライルに……なんてこともあり得る。
その前に手を打たなければ。
しかし、最後の話は解せない。
ライル君に名乗りを許された姓……シーオドア。
これは確か……二十年前くらいに一時、使われていたと記憶している。
そして、その時に名乗っていたのが……現王の妹。
どうして、そんな姓をたかが鍛冶師コンテストで入賞した者に与えるのだ?
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