9 / 408
第8話 堤防補強
しおりを挟む
疫病患者の治療を終わらせ、次の課題である川沿いに農地を開墾するために、堤防を村の方まで延長することを決めた。計画では、堤防を設置した後、外側に水路を設置してから水田地帯を開墾。更に外側に畑を広げていく予定だ。畑は水田より高台にしていく。こうすることで、長雨による水没から畑を守ることができる。
できれば、畑から水田に土が流亡しないように工夫をしておきたいところだが、これはまだまだ先の話になるだろう。
大まかな区画整理の計画が出来上がったら、あとは作業をするのみだ。前に築いた堤防から村に向かって、三キロメートルほどの堤防を設置することを決め、早速作業に移った。今の魔力では、一日400メートルの堤防を設置することができる。同時に、400メートル×50メートルの水田を作ることができる。2ヘクタールの水田だ。
これを八日かけて、堤防を完成させた。これで当面は氾濫に悩まずに済むだろう。ただ、堤防は土を積み上げただけのものだから、長雨や川の流れによってはみるみる削られ、決壊ということは当然考えられる。特に最初に作った堤防付近は、流れがきつい場所だ。そこの補強はしておくべきだろう。この世界にコンクリートってあるのかな? ん~この時代には難しいか……となると、漆喰がよさそうだな。
漆喰でこの堤防を覆ってしまおう。まずは、石灰岩を探すことから始めるか。こういうときは、ゴードンに聞くに限る。今日のゴードンは休みを取っているはずだ。ということは……ゴードンの家に行ってみると、なにやら客人が来ているようだった。とりあえず、訪ねてみよう。
「ロ、ロッシュ村長、どうなさいましたか⁉ 」
えらい慌てぶりではないか……ん? 僕が来てはまずかった雰囲気か? 聞くだけ聞いて、お暇させてもらおう。
「なに、ちょっとゴードンに聞きたいことがあってな。石灰岩を知らんか? 白い岩のことなんだが……」
「石灰岩ですか……もしかして、石灰《いしばい》のことですかな? それでしたら、北の山の麓に大量にありますよ。なんでしたら、採ってきましょうか? いかほど、入用で?」
「おお! あるか。それは助かる。堤防の補強に使おうと思ってな……とりあえず、20トン位ほしいかな。あと、大量の藁《わら》が、欲しいんだが」
さすが、その数字を聞いてゴードンがびっくりしていた。
「流石にその量となると……採掘だけでも、一月はいただかないと……」
「そうか。もう少し早くなるといいが。では、運搬だけだったら、どうだ?」
「運搬だけでしたら、何とかなりましょう。畑作業が一段落付いた者を集めて行えば、いくらも時間はかかりますまい。幸い、堤防と石灰岩の採掘場所は距離が近いですから……」
「そうか。では、石灰岩の場所を教えてくれ。エリス、場所を聞いておいてくれ」
ゴードンに聞いた場所に、行ってみると、なるほど……石灰岩がいい具合に露出しているな。土魔法で、精製はできるのだろう?
やってみよう。石灰岩から生石灰を取り出すようなイメージで……できた。そこには、大量の白い塊があった。 試しに、水を掛けてみると、ものすごい勢いで反応し、発熱をしていた。これは間違いないな。
昨日今日で運搬が来るとは限らないからな、その間に雨でも降られたら大惨事だ。どこか、雨が凌げるような倉庫を作った上で、そこに生石灰を保管しておこう。
そうだな……この山に祠を作ってみるか。幸い、この山はほとんどが石灰岩で出来ているようだから、生石灰を精製しつつ、穴を掘ってみよう。余計なものは外に出していけば、埋まることもないだろうし。
幅と奥行が100メートル、高さ10メートルの穴蔵が完成した。そこには、うず高く生石灰が盛られていた。一万トンくらいは作れたかな? これだけの量があれば、数年は石灰には困らないだろう。
精製した一部の量だけでも、全堤防を漆喰で覆うことができそうだな。真っ白な堤防だ……白鷺堤とでも呼ばせてみようか。
数日後に、運搬作業が始まった。50人からなる運搬部隊をゴードンが用意してくれたおかげで、またたく間に生石灰は、堤防近くに積み上げられていった。全堤防分の生石灰を運び込むのに、10日しかかからなかったのは、素晴らしかった。ゴードンの指揮能力の高さは評価に値する。
藁《わら》は稲ではなく麦だが、大量に手に入った。建材として使う予定だったものだが、今は旧都の住居を使う予定だから、麦わらを使わなくなったのだ。いいタイミングだったな。
麦わらを細かく裁断してもらい、漆喰の材料は揃った。
さて、生石灰を消石灰にしないとな。そのためには、水が必要となるが。近くに川はあるが、こっちに運び込むのだけでも大変な作業だ。魔法でなんとかならないか……
久しぶりにステータスを開いてみた。すると、スキルが二つ取得できるまで経験値が溜まっていたようだ。助かるな。あまり考えずに水魔法を取得すると水魔法の知識が頭に入り込んできた。
なるほど。空気中の水蒸気を液体に変換し、集合させるとまとまった水になるのか。でも、近くに川があるんだから、そこから持ってくるだけでいいだろう……
水魔法で川から水を生石灰に加え、土魔法で混ざるようにイメージをして、出来上がったものに麦わらを混ぜて……完成だ!! 漆喰が。
すぐに、漆喰を堤防に塗っていく……といっても、土魔法で、乗せていくだけの作業だけど、この作業自体はすぐに終わった。
この作業は、とにかく生石灰の運搬に時間がかかったが、すべてを人力でやるより遥かに早く済んだ。漆喰の作成、塗布を午後に終わらせ、午前は畑の区画整理を同時並行で進めることが出来た。
全堤防を漆喰で塗り終わった頃には、長雨の前触れのように雨の日が徐々にだが、増えていった。
長雨が本格的になる前に、移住を済ませてしまおう。ゴードンに頼み、順次住民たちの移動を始めてもらった。レイヤが休まずに作業を続けたおかげで、100棟の住居を用意することが出来た。これでなんとか、500人は住めるようになったかな。一棟の建物に五人住んでもらう計算のため、二世帯住んでもらったり、単身世帯はシェアしてもらうようにお願いした。
不満が出ると思っていたが皆、素直に従ってくれたことにびっくりした。ゴードンに聞くと、そんなのは当たり前では? と不思議そうな顔をした。
「ロッシュ様でもおかしなことを考えるのですね。明るい未来が広がっているのですから、文句を言う人なんているわけないじゃないですか」
エリスにも言われてしまった。そういうもんだろうか? 皆が感じている悲惨さを僕が、あまり実感していないんだろうな、と思った。
これから、長雨の時期に入る。自宅にいることが多くなるので、書庫で文献を当たる作業と来年の作付け計画をやろうと思う。少ない人数で、多収穫を実現するためには、品種改良も視野に入れていかないといけない。
長雨でも、やることは多そうだ。
できれば、畑から水田に土が流亡しないように工夫をしておきたいところだが、これはまだまだ先の話になるだろう。
大まかな区画整理の計画が出来上がったら、あとは作業をするのみだ。前に築いた堤防から村に向かって、三キロメートルほどの堤防を設置することを決め、早速作業に移った。今の魔力では、一日400メートルの堤防を設置することができる。同時に、400メートル×50メートルの水田を作ることができる。2ヘクタールの水田だ。
これを八日かけて、堤防を完成させた。これで当面は氾濫に悩まずに済むだろう。ただ、堤防は土を積み上げただけのものだから、長雨や川の流れによってはみるみる削られ、決壊ということは当然考えられる。特に最初に作った堤防付近は、流れがきつい場所だ。そこの補強はしておくべきだろう。この世界にコンクリートってあるのかな? ん~この時代には難しいか……となると、漆喰がよさそうだな。
漆喰でこの堤防を覆ってしまおう。まずは、石灰岩を探すことから始めるか。こういうときは、ゴードンに聞くに限る。今日のゴードンは休みを取っているはずだ。ということは……ゴードンの家に行ってみると、なにやら客人が来ているようだった。とりあえず、訪ねてみよう。
「ロ、ロッシュ村長、どうなさいましたか⁉ 」
えらい慌てぶりではないか……ん? 僕が来てはまずかった雰囲気か? 聞くだけ聞いて、お暇させてもらおう。
「なに、ちょっとゴードンに聞きたいことがあってな。石灰岩を知らんか? 白い岩のことなんだが……」
「石灰岩ですか……もしかして、石灰《いしばい》のことですかな? それでしたら、北の山の麓に大量にありますよ。なんでしたら、採ってきましょうか? いかほど、入用で?」
「おお! あるか。それは助かる。堤防の補強に使おうと思ってな……とりあえず、20トン位ほしいかな。あと、大量の藁《わら》が、欲しいんだが」
さすが、その数字を聞いてゴードンがびっくりしていた。
「流石にその量となると……採掘だけでも、一月はいただかないと……」
「そうか。もう少し早くなるといいが。では、運搬だけだったら、どうだ?」
「運搬だけでしたら、何とかなりましょう。畑作業が一段落付いた者を集めて行えば、いくらも時間はかかりますまい。幸い、堤防と石灰岩の採掘場所は距離が近いですから……」
「そうか。では、石灰岩の場所を教えてくれ。エリス、場所を聞いておいてくれ」
ゴードンに聞いた場所に、行ってみると、なるほど……石灰岩がいい具合に露出しているな。土魔法で、精製はできるのだろう?
やってみよう。石灰岩から生石灰を取り出すようなイメージで……できた。そこには、大量の白い塊があった。 試しに、水を掛けてみると、ものすごい勢いで反応し、発熱をしていた。これは間違いないな。
昨日今日で運搬が来るとは限らないからな、その間に雨でも降られたら大惨事だ。どこか、雨が凌げるような倉庫を作った上で、そこに生石灰を保管しておこう。
そうだな……この山に祠を作ってみるか。幸い、この山はほとんどが石灰岩で出来ているようだから、生石灰を精製しつつ、穴を掘ってみよう。余計なものは外に出していけば、埋まることもないだろうし。
幅と奥行が100メートル、高さ10メートルの穴蔵が完成した。そこには、うず高く生石灰が盛られていた。一万トンくらいは作れたかな? これだけの量があれば、数年は石灰には困らないだろう。
精製した一部の量だけでも、全堤防を漆喰で覆うことができそうだな。真っ白な堤防だ……白鷺堤とでも呼ばせてみようか。
数日後に、運搬作業が始まった。50人からなる運搬部隊をゴードンが用意してくれたおかげで、またたく間に生石灰は、堤防近くに積み上げられていった。全堤防分の生石灰を運び込むのに、10日しかかからなかったのは、素晴らしかった。ゴードンの指揮能力の高さは評価に値する。
藁《わら》は稲ではなく麦だが、大量に手に入った。建材として使う予定だったものだが、今は旧都の住居を使う予定だから、麦わらを使わなくなったのだ。いいタイミングだったな。
麦わらを細かく裁断してもらい、漆喰の材料は揃った。
さて、生石灰を消石灰にしないとな。そのためには、水が必要となるが。近くに川はあるが、こっちに運び込むのだけでも大変な作業だ。魔法でなんとかならないか……
久しぶりにステータスを開いてみた。すると、スキルが二つ取得できるまで経験値が溜まっていたようだ。助かるな。あまり考えずに水魔法を取得すると水魔法の知識が頭に入り込んできた。
なるほど。空気中の水蒸気を液体に変換し、集合させるとまとまった水になるのか。でも、近くに川があるんだから、そこから持ってくるだけでいいだろう……
水魔法で川から水を生石灰に加え、土魔法で混ざるようにイメージをして、出来上がったものに麦わらを混ぜて……完成だ!! 漆喰が。
すぐに、漆喰を堤防に塗っていく……といっても、土魔法で、乗せていくだけの作業だけど、この作業自体はすぐに終わった。
この作業は、とにかく生石灰の運搬に時間がかかったが、すべてを人力でやるより遥かに早く済んだ。漆喰の作成、塗布を午後に終わらせ、午前は畑の区画整理を同時並行で進めることが出来た。
全堤防を漆喰で塗り終わった頃には、長雨の前触れのように雨の日が徐々にだが、増えていった。
長雨が本格的になる前に、移住を済ませてしまおう。ゴードンに頼み、順次住民たちの移動を始めてもらった。レイヤが休まずに作業を続けたおかげで、100棟の住居を用意することが出来た。これでなんとか、500人は住めるようになったかな。一棟の建物に五人住んでもらう計算のため、二世帯住んでもらったり、単身世帯はシェアしてもらうようにお願いした。
不満が出ると思っていたが皆、素直に従ってくれたことにびっくりした。ゴードンに聞くと、そんなのは当たり前では? と不思議そうな顔をした。
「ロッシュ様でもおかしなことを考えるのですね。明るい未来が広がっているのですから、文句を言う人なんているわけないじゃないですか」
エリスにも言われてしまった。そういうもんだろうか? 皆が感じている悲惨さを僕が、あまり実感していないんだろうな、と思った。
これから、長雨の時期に入る。自宅にいることが多くなるので、書庫で文献を当たる作業と来年の作付け計画をやろうと思う。少ない人数で、多収穫を実現するためには、品種改良も視野に入れていかないといけない。
長雨でも、やることは多そうだ。
101
あなたにおすすめの小説
ReBirth 上位世界から下位世界へ
小林誉
ファンタジー
ある日帰宅途中にマンホールに落ちた男。気がつくと見知らぬ部屋に居て、世界間のシステムを名乗る声に死を告げられる。そして『あなたが落ちたのは下位世界に繋がる穴です』と説明された。この世に現れる天才奇才の一部は、今のあなたと同様に上位世界から落ちてきた者達だと。下位世界に転生できる機会を得た男に、どのような世界や環境を希望するのか質問される。男が出した答えとは――
※この小説の主人公は聖人君子ではありません。正義の味方のつもりもありません。勝つためならどんな手でも使い、売られた喧嘩は買う人物です。他人より仲間を最優先し、面倒な事が嫌いです。これはそんな、少しずるい男の物語。
1~4巻発売中です。
称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。
独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活
髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。
しかし神は彼を見捨てていなかった。
そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。
これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。
最強の異世界やりすぎ旅行記
萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。
そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。
「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」
バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!?
最強が無双する異世界ファンタジー開幕!
異世界亜人熟女ハーレム製作者
†真・筋坊主 しんなるきんちゃん†
ファンタジー
異世界転生して亜人の熟女ハーレムを作る話です
【注意】この作品は全てフィクションであり実在、歴史上の人物、場所、概念とは異なります。
異世界転生!ハイハイからの倍人生
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は死んでしまった。
まさか野球観戦で死ぬとは思わなかった。
ホームランボールによって頭を打ち死んでしまった僕は異世界に転生する事になった。
転生する時に女神様がいくら何でも可哀そうという事で特殊な能力を与えてくれた。
それはレベルを減らすことでステータスを無制限に倍にしていける能力だった...
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる