爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介

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第8話 堤防補強

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 疫病患者の治療を終わらせ、次の課題である川沿いに農地を開墾するために、堤防を村の方まで延長することを決めた。計画では、堤防を設置した後、外側に水路を設置してから水田地帯を開墾。更に外側に畑を広げていく予定だ。畑は水田より高台にしていく。こうすることで、長雨による水没から畑を守ることができる。

 できれば、畑から水田に土が流亡しないように工夫をしておきたいところだが、これはまだまだ先の話になるだろう。

 大まかな区画整理の計画が出来上がったら、あとは作業をするのみだ。前に築いた堤防から村に向かって、三キロメートルほどの堤防を設置することを決め、早速作業に移った。今の魔力では、一日400メートルの堤防を設置することができる。同時に、400メートル×50メートルの水田を作ることができる。2ヘクタールの水田だ。

 これを八日かけて、堤防を完成させた。これで当面は氾濫に悩まずに済むだろう。ただ、堤防は土を積み上げただけのものだから、長雨や川の流れによってはみるみる削られ、決壊ということは当然考えられる。特に最初に作った堤防付近は、流れがきつい場所だ。そこの補強はしておくべきだろう。この世界にコンクリートってあるのかな? ん~この時代には難しいか……となると、漆喰がよさそうだな。

 漆喰でこの堤防を覆ってしまおう。まずは、石灰岩を探すことから始めるか。こういうときは、ゴードンに聞くに限る。今日のゴードンは休みを取っているはずだ。ということは……ゴードンの家に行ってみると、なにやら客人が来ているようだった。とりあえず、訪ねてみよう。

 「ロ、ロッシュ村長、どうなさいましたか⁉ 」

 えらい慌てぶりではないか……ん? 僕が来てはまずかった雰囲気か? 聞くだけ聞いて、お暇させてもらおう。

 「なに、ちょっとゴードンに聞きたいことがあってな。石灰岩を知らんか? 白い岩のことなんだが……」
 「石灰岩ですか……もしかして、石灰《いしばい》のことですかな? それでしたら、北の山の麓に大量にありますよ。なんでしたら、採ってきましょうか? いかほど、入用で?」

 「おお! あるか。それは助かる。堤防の補強に使おうと思ってな……とりあえず、20トン位ほしいかな。あと、大量の藁《わら》が、欲しいんだが」

 さすが、その数字を聞いてゴードンがびっくりしていた。

 「流石にその量となると……採掘だけでも、一月はいただかないと……」

 「そうか。もう少し早くなるといいが。では、運搬だけだったら、どうだ?」

 「運搬だけでしたら、何とかなりましょう。畑作業が一段落付いた者を集めて行えば、いくらも時間はかかりますまい。幸い、堤防と石灰岩の採掘場所は距離が近いですから……」

 「そうか。では、石灰岩の場所を教えてくれ。エリス、場所を聞いておいてくれ」
 
 ゴードンに聞いた場所に、行ってみると、なるほど……石灰岩がいい具合に露出しているな。土魔法で、精製はできるのだろう?

 やってみよう。石灰岩から生石灰を取り出すようなイメージで……できた。そこには、大量の白い塊があった。 試しに、水を掛けてみると、ものすごい勢いで反応し、発熱をしていた。これは間違いないな。

 昨日今日で運搬が来るとは限らないからな、その間に雨でも降られたら大惨事だ。どこか、雨が凌げるような倉庫を作った上で、そこに生石灰を保管しておこう。
 そうだな……この山に祠を作ってみるか。幸い、この山はほとんどが石灰岩で出来ているようだから、生石灰を精製しつつ、穴を掘ってみよう。余計なものは外に出していけば、埋まることもないだろうし。

 幅と奥行が100メートル、高さ10メートルの穴蔵が完成した。そこには、うず高く生石灰が盛られていた。一万トンくらいは作れたかな? これだけの量があれば、数年は石灰には困らないだろう。

 精製した一部の量だけでも、全堤防を漆喰で覆うことができそうだな。真っ白な堤防だ……白鷺堤とでも呼ばせてみようか。

 数日後に、運搬作業が始まった。50人からなる運搬部隊をゴードンが用意してくれたおかげで、またたく間に生石灰は、堤防近くに積み上げられていった。全堤防分の生石灰を運び込むのに、10日しかかからなかったのは、素晴らしかった。ゴードンの指揮能力の高さは評価に値する。

 藁《わら》は稲ではなく麦だが、大量に手に入った。建材として使う予定だったものだが、今は旧都の住居を使う予定だから、麦わらを使わなくなったのだ。いいタイミングだったな。

 麦わらを細かく裁断してもらい、漆喰の材料は揃った。

 さて、生石灰を消石灰にしないとな。そのためには、水が必要となるが。近くに川はあるが、こっちに運び込むのだけでも大変な作業だ。魔法でなんとかならないか……

 久しぶりにステータスを開いてみた。すると、スキルが二つ取得できるまで経験値が溜まっていたようだ。助かるな。あまり考えずに水魔法を取得すると水魔法の知識が頭に入り込んできた。

 なるほど。空気中の水蒸気を液体に変換し、集合させるとまとまった水になるのか。でも、近くに川があるんだから、そこから持ってくるだけでいいだろう……

 水魔法で川から水を生石灰に加え、土魔法で混ざるようにイメージをして、出来上がったものに麦わらを混ぜて……完成だ!! 漆喰が。

 すぐに、漆喰を堤防に塗っていく……といっても、土魔法で、乗せていくだけの作業だけど、この作業自体はすぐに終わった。

 この作業は、とにかく生石灰の運搬に時間がかかったが、すべてを人力でやるより遥かに早く済んだ。漆喰の作成、塗布を午後に終わらせ、午前は畑の区画整理を同時並行で進めることが出来た。 

 全堤防を漆喰で塗り終わった頃には、長雨の前触れのように雨の日が徐々にだが、増えていった。

 長雨が本格的になる前に、移住を済ませてしまおう。ゴードンに頼み、順次住民たちの移動を始めてもらった。レイヤが休まずに作業を続けたおかげで、100棟の住居を用意することが出来た。これでなんとか、500人は住めるようになったかな。一棟の建物に五人住んでもらう計算のため、二世帯住んでもらったり、単身世帯はシェアしてもらうようにお願いした。

 不満が出ると思っていたが皆、素直に従ってくれたことにびっくりした。ゴードンに聞くと、そんなのは当たり前では? と不思議そうな顔をした。

 「ロッシュ様でもおかしなことを考えるのですね。明るい未来が広がっているのですから、文句を言う人なんているわけないじゃないですか」

 エリスにも言われてしまった。そういうもんだろうか? 皆が感じている悲惨さを僕が、あまり実感していないんだろうな、と思った。

 これから、長雨の時期に入る。自宅にいることが多くなるので、書庫で文献を当たる作業と来年の作付け計画をやろうと思う。少ない人数で、多収穫を実現するためには、品種改良も視野に入れていかないといけない。

 長雨でも、やることは多そうだ。
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