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第85話 アウーディア石
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宝石探しより戻ってきた日から雪が解けるまで、屋敷を出ることが許されなかった。僕は、その間にジャガイモだけ品種改良を進め、ジャガイモを植える前日までになんとか終わらせることが出来た。魔牛の肥料を使えないので、ポイントがなかなか増えてくれないため、秋作を春作に切り替えるだけで膨大な時間を使ってしまう。なんとか、春秋作兼用の品種を作り出し、品質の向上にポイントを使っていきたいものだが……
宝石の加工も同時に行った。最後に手に入れた、変わった宝石。あれを指輪に載せるのに最適なサイズに加工し、カットを施していく。シラーに言われた通りに、石に魔力を十分に通し、鮮明なイメージをして土魔法を使うと、あれほど硬かった石がみるみる形が変わり、キレイにカットされた宝石が十二個完成した。宝石は見たことのないような輝きをしていた。角度によって色が変わり、七色の変化を楽しむことが出来る。後で気付いたが、暗闇の中で、その宝石は淡いが白く輝きを放つ。本当に不思議な宝石だ。しかし、これほど美しい宝石は見たことがない。
これを婚約指輪として、彼女らに贈ろうと思い、金の指輪にこの宝石を載せ、指輪を完成させた。渡す場所を考えたが、どうもこう言うことを考えるのが苦手だ。
僕は、皆と食事をしている時に、皆と婚約したことを父上に告げたいので、墓参りに誘った。特に異議もなく、墓参りをした。僕は、父上の墓標の前で、彼女らを幸せにすることを誓った。すると、巨石が一瞬光り輝いたように見えたが、光の加減かなんかだろう。皆も、手をあわせたり、胸に手を置いたり、祈り方は様々だったが、長く沈黙が続いた。
僕は、ここだと思い、すっと指輪を彼女らに差し出した。キョトンと皆同じ顔をしていた。どうやら、この世界には指輪を贈る習慣というのはないらしいな。僕は、この指輪は婚約指輪というもので、僕の気持ちを表明したものだと説明すると、皆嬉しそうに指輪を受け取ってくれた。僕は、受け取ってくれた指輪を掴み、彼女ら各々の左手の薬指に指輪を嵌めていった。その宝石の美しさに、一様に息を呑んでいるようだった。
マグ姉は空にかざした手に嵌められている指輪を眺めながら、いろいろな角度から見ていた。すると、マグ姉の表情が次第に驚きに変わっていった。若干、声を震わせながら、僕に話しかけてきた。
「ね、ねぇ。この宝石ってどうしたの?」
よくぞ聞いてくれました!! 僕は宝石を採ってきたときから、言いたくて仕方なかったが、今日のためにずっと我慢していたんだ。
「すごい宝石だよな。僕も初めて見る宝石だが、これこそが皆に贈るにふさわしいものだと思ったんだ。この宝石は、採掘をしていて最後の最後に偶然見つけたものなんだ。それまでは、僕の知っている宝石だったんだけど……」
僕が話している言葉をマグ姉が強い口調で遮ってきた。
「やっぱり、ロッシュが見つけたのね。この宝石はすごいなんてものではないわ。私は一度、これと同じものを見たことがあるの。王家の宝物庫の中でよ。この宝石だけは、他のものとは別格の扱いを受けていたわ。なんでも建国の父である初代王が、建国の折り、神より遣わされたと言われる宝石なのよ。宝石の名前は、アウーディア石。王家の家名はそこから来ているのよ。それがここに。しかも、四つも」
マグ姉だけがすごく興奮していて、エリスやミヤ、リードまでも置いてけぼりを食らっていた。とにかく、すごい宝石なんだなくらいは理解できた。
「マグ姉。そんなにすごい宝石とは思わなかったよ。でもね。四つどころか、全部で十二個の指輪があるんだよ」
それを聞いたマグ姉は、すっかり力が抜けて地面に座り込んでしまった。王家の最重要宝物が大量生産されていたら、少なからずショックを受けるものなんだな。僕には、あまり実感は湧かなかったが。
その日から、四人の婚約者は指輪を付けて生活するようになった。僕は、生活に邪魔になるから外したほうが良いんじゃないかな? って言ったら、皆に怒られた。本当に邪魔だと思うんだけどな。その指輪を見て、腰を抜かした人がもう一人いた。ルドだ。
「ロ、ロッシュ。マーガレットが嵌めている指輪を私は見たことがあるぞ」
マーガレットと同じことを話し始めた。十二個ある話をしたら、マーガレット以上に驚いていたな。ルドとマグ姉の話を総合すると、この宝石は王家の象徴みたいなものらしいな。だとすると、ルドにも持っていてもらったほうが今後、何かに役に立つかもしれないなと思い、ルドにアウーディア石のついた指輪を手渡した。
「これはルドにあげるよ。一応は王家の象徴みたいだし、ルドが持っていると良いと思うんだ。もちろん、それをどう使おうがルドの自由だよ。僕の望みは、ルドが一生を共に過ごしたいと思う人が出来たら、その人にあげてほしいけどね」
そういうと、ルドは指輪を握りしめ、そうするよと力強く頷いた。やっぱり、相手は……
多くの時間を割いて、指輪をプレゼントしたことは、大成功となった。僕としても、収穫が多い出来事だった。因みに、宝石の加工を習得したことによって、金属への加工も出来るようになった。前に、リードに頼まれたアダマンタイトの加工だが、同じ要領でやってみると魔力をほとんど使わずに自由自在に加工をすることが出来た。といっても、イメージが大きく影響するため、リードの思い描く形に加工するのは簡単なことではなかったが、それでもリードは、アダマンタイトという部品を手にしたことで、家具作りに一層没頭していった。
金属の加工に気分を良くして、貴金属で作る将棋の駒を作ってみた。不思議だが、金や銀の加工は、大量の魔力を消耗してしまい、あやうく気絶するところまでいってしまった。不思議に思い、シラーに聞いてみたところ、魔力の親和性が高ければ、魔力消費が少ないという特徴があるらしい。金や銀はアダマンタイトに比べて、かなり親和性が下がるらしい。その分、魔力消費が増えてしまったらしい。
金属についても、魔力親和性を熟知する必要があるな。やっぱり、金や銀といった金属は、魔法ではなく金属加工専門の人を要請したほうが良さそうだな。僕の魔法との相性がとても悪いことが分かったからだ。
春の訪れが間近に迫り、農作業の準備で徐々に忙しさが増してきた頃、少女の姿をした錬金術師のスタシャが大きな荷物をもってやってきた。
宝石の加工も同時に行った。最後に手に入れた、変わった宝石。あれを指輪に載せるのに最適なサイズに加工し、カットを施していく。シラーに言われた通りに、石に魔力を十分に通し、鮮明なイメージをして土魔法を使うと、あれほど硬かった石がみるみる形が変わり、キレイにカットされた宝石が十二個完成した。宝石は見たことのないような輝きをしていた。角度によって色が変わり、七色の変化を楽しむことが出来る。後で気付いたが、暗闇の中で、その宝石は淡いが白く輝きを放つ。本当に不思議な宝石だ。しかし、これほど美しい宝石は見たことがない。
これを婚約指輪として、彼女らに贈ろうと思い、金の指輪にこの宝石を載せ、指輪を完成させた。渡す場所を考えたが、どうもこう言うことを考えるのが苦手だ。
僕は、皆と食事をしている時に、皆と婚約したことを父上に告げたいので、墓参りに誘った。特に異議もなく、墓参りをした。僕は、父上の墓標の前で、彼女らを幸せにすることを誓った。すると、巨石が一瞬光り輝いたように見えたが、光の加減かなんかだろう。皆も、手をあわせたり、胸に手を置いたり、祈り方は様々だったが、長く沈黙が続いた。
僕は、ここだと思い、すっと指輪を彼女らに差し出した。キョトンと皆同じ顔をしていた。どうやら、この世界には指輪を贈る習慣というのはないらしいな。僕は、この指輪は婚約指輪というもので、僕の気持ちを表明したものだと説明すると、皆嬉しそうに指輪を受け取ってくれた。僕は、受け取ってくれた指輪を掴み、彼女ら各々の左手の薬指に指輪を嵌めていった。その宝石の美しさに、一様に息を呑んでいるようだった。
マグ姉は空にかざした手に嵌められている指輪を眺めながら、いろいろな角度から見ていた。すると、マグ姉の表情が次第に驚きに変わっていった。若干、声を震わせながら、僕に話しかけてきた。
「ね、ねぇ。この宝石ってどうしたの?」
よくぞ聞いてくれました!! 僕は宝石を採ってきたときから、言いたくて仕方なかったが、今日のためにずっと我慢していたんだ。
「すごい宝石だよな。僕も初めて見る宝石だが、これこそが皆に贈るにふさわしいものだと思ったんだ。この宝石は、採掘をしていて最後の最後に偶然見つけたものなんだ。それまでは、僕の知っている宝石だったんだけど……」
僕が話している言葉をマグ姉が強い口調で遮ってきた。
「やっぱり、ロッシュが見つけたのね。この宝石はすごいなんてものではないわ。私は一度、これと同じものを見たことがあるの。王家の宝物庫の中でよ。この宝石だけは、他のものとは別格の扱いを受けていたわ。なんでも建国の父である初代王が、建国の折り、神より遣わされたと言われる宝石なのよ。宝石の名前は、アウーディア石。王家の家名はそこから来ているのよ。それがここに。しかも、四つも」
マグ姉だけがすごく興奮していて、エリスやミヤ、リードまでも置いてけぼりを食らっていた。とにかく、すごい宝石なんだなくらいは理解できた。
「マグ姉。そんなにすごい宝石とは思わなかったよ。でもね。四つどころか、全部で十二個の指輪があるんだよ」
それを聞いたマグ姉は、すっかり力が抜けて地面に座り込んでしまった。王家の最重要宝物が大量生産されていたら、少なからずショックを受けるものなんだな。僕には、あまり実感は湧かなかったが。
その日から、四人の婚約者は指輪を付けて生活するようになった。僕は、生活に邪魔になるから外したほうが良いんじゃないかな? って言ったら、皆に怒られた。本当に邪魔だと思うんだけどな。その指輪を見て、腰を抜かした人がもう一人いた。ルドだ。
「ロ、ロッシュ。マーガレットが嵌めている指輪を私は見たことがあるぞ」
マーガレットと同じことを話し始めた。十二個ある話をしたら、マーガレット以上に驚いていたな。ルドとマグ姉の話を総合すると、この宝石は王家の象徴みたいなものらしいな。だとすると、ルドにも持っていてもらったほうが今後、何かに役に立つかもしれないなと思い、ルドにアウーディア石のついた指輪を手渡した。
「これはルドにあげるよ。一応は王家の象徴みたいだし、ルドが持っていると良いと思うんだ。もちろん、それをどう使おうがルドの自由だよ。僕の望みは、ルドが一生を共に過ごしたいと思う人が出来たら、その人にあげてほしいけどね」
そういうと、ルドは指輪を握りしめ、そうするよと力強く頷いた。やっぱり、相手は……
多くの時間を割いて、指輪をプレゼントしたことは、大成功となった。僕としても、収穫が多い出来事だった。因みに、宝石の加工を習得したことによって、金属への加工も出来るようになった。前に、リードに頼まれたアダマンタイトの加工だが、同じ要領でやってみると魔力をほとんど使わずに自由自在に加工をすることが出来た。といっても、イメージが大きく影響するため、リードの思い描く形に加工するのは簡単なことではなかったが、それでもリードは、アダマンタイトという部品を手にしたことで、家具作りに一層没頭していった。
金属の加工に気分を良くして、貴金属で作る将棋の駒を作ってみた。不思議だが、金や銀の加工は、大量の魔力を消耗してしまい、あやうく気絶するところまでいってしまった。不思議に思い、シラーに聞いてみたところ、魔力の親和性が高ければ、魔力消費が少ないという特徴があるらしい。金や銀はアダマンタイトに比べて、かなり親和性が下がるらしい。その分、魔力消費が増えてしまったらしい。
金属についても、魔力親和性を熟知する必要があるな。やっぱり、金や銀といった金属は、魔法ではなく金属加工専門の人を要請したほうが良さそうだな。僕の魔法との相性がとても悪いことが分かったからだ。
春の訪れが間近に迫り、農作業の準備で徐々に忙しさが増してきた頃、少女の姿をした錬金術師のスタシャが大きな荷物をもってやってきた。
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