スラム出身の公爵家庶子が、スラムの力を使って、後継者候補達を蹴落として、成り上がっていく。でも、性悪王女が可愛くてそれどころではないかも

秋田ノ介

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貴族編

第41話 メイドの仕事

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 マリアが目の前に立っている。報告にやって来たのだ。
 「どうだった?」

 マリアは首を横に振った。
 「残念ですが、ノーマンの妹と思われる人物は本邸の屋敷にはおりませんでした。その周囲も探りましたが、収穫はありません」

 てっきり兄弟のうちの誰かがノーマンの妹を幽閉していると思っていたが、甘く見すぎたか? やはり首謀者をノーマンに……いや、口を割ることはないだろう。やっぱり、僕達の手で探さないとな。

 「とにかく、これから兄弟と会うことになるはずだ。そのときに探りを入れてみて欲しい。もしかしたら、なにかしらの糸口が見つかるかも知れないからね」

 「分かりました。では、私は別の場所で待機しておきます。護衛はララに任せてありますので、余程の相手ではない限り対処は出来ると思います。ニッジは……正直、宛にはしないでください。出来れば、逃げるように命令をしてください」

 それが良さそうだな。しかし、十歳のララに護衛を委ねるのは危険ではないかな? 確かに長身になって、見た目は大人と代わりはないんだけど、やっぱり十歳っていうのがな……。

 「大丈夫ですよ。彼女は……天性の肉体強化魔法の使い手ですから。あれほど体に馴染んだ魔法使いも珍しいと思いますよ」

 ん? 初めて聞く話だな。ララが魔法使い?

 「ええ。あの歳であれほどの怪力を変だと思いませんでしたか? あれは魔法による強化された力なのです。もっとも、彼女には魔法を操ることは出来ません。ただただ、魔力を消費して肉体を強化しているのです。そういう者が時々いるんですよ。それゆえ天性。ちなみに私もそれなんですよ」

 んん? よく分からないな。魔法はイメージをして魔力を練り上げて使うものだ。それをしなくても魔法が使えてしまうってこと? なんか、凄いことなんじゃないのか?

 「そんな事はないですよ。意図せず魔力が流れ出ているのと変わらないですからね。効率が悪いんですよ。本来は必要な時に、必要な量の魔力を放出するのが理想ですから。まぁ、戦闘中はタイムラグがないですからね。そこだけは有利になるところですね」

 なるほどね。なんでも一長一短ってわけか。

 「それゆえ、先手必勝。ララにはその技術は叩き込んでいますから。大抵のことは大丈夫なのはそういうことです。ただ、後手に回ると弱いので、そこだけは注意が必要ですね」

 「マリアも、なの?」

 「私は……ふふっ。いつか戦場でお見せできると思いますよ。ララとは歩んできた経験というものが違いますから。それでは私は別行動をさせていただきます。そうそう……妹さんを見つけられたら、ご褒美くださいね」

 マリアは片目をウインクして、再び外に出ていってしまった。

 「ララ。すまないが、エアを呼んできてくれ。これからの話がしたい」
 「押忍」

 その返事、止めてくれないかな。まぁ、本人は至って真面目だから言うに言えないんだよな。

 「お呼びでしょうか? ロラン様」

 「ああ。これからのことを話したくてね。それよりもノーマンの一件を秘密にすることに協力してくれて、ありがとうね」
 「滅相もありません。私はロラン様のメイドでございます。ご主人様の秘密を漏洩するなど、あってはないこと。当然のことをしたまでです」

 どうやら僕は彼女を馬鹿にしていたようだ。今までメイドというものが何なのか分からなかったが、なるほど、そういうものなのか。

 「分かった。ところで確認をしたいんだけど、エア達の仕事を教えてくれないか?」

 「畏まりました」

 エアの話は実に単純明瞭。分かりやすいの一言だな。メイドと執事は基本、屋敷の管理を任せられている。掃除や洗濯、給仕が主たる仕事となる。また、僕が遠征などする場合は、身の回りの世話をするために一人か二人が随行することになっている。最低でも一人は屋敷に残るようだ。

 「人がいないと、屋敷が痛みますから」

 尤もな理由だな。この屋敷もかなりきれいに使われていると思うけど、実際はかなり年季の入った建物だと思う。柱の一本一本は黒ずみ、歴史を感じる。これもメイド達がしっかりと管理してきたから、今でも普通に使えているのだろう。

 スラムのガーフェの屋敷もかなりボロかったな。あれはメンテナンスをしていなかったせいなんだな。もっともスキンヘッド達がみんなで掃除とかしていたら、なんか笑えちゃうけど。

 「ありがとう。引き続き、仕事を頼む。それとノーマンの様子はどうだ? あれから変化はあったか?」

 「特には。仕事をしっかりとこなしておりますよ。どうしますか? 私とニーチェで見張りをしましょうか?」

 まぁ、ノーマンには首謀者の意図した行動を取り続けるように言ったのは僕だしな。今、監視をつけても意味があるとは思えない。むしろ、自由にさせておいたほうがいいだろう。

 「いや、いらない。普通に仕事をやれせてやってくれ。それと君たちにこれをあげるよ。是非、つけてほしい」

 金のブレスレットをエアに手渡した。マリアたちに渡したものと全く同じものだ。

 「これは?」
 「うん。僕の身の回りの世話をしてくれるんだから、身につけてほしいんだ。マリアたちも付けていたのを見ただろ? 僕の信頼の証みたいなものだよ」

 「しかし、我々は信頼を与えるほどの仕事をしているとは思えません。ノーマンなんかはロラン様に手を加えようとしたくらいですし……」

 「僕はまず信頼をする。甘いと思うかも知れないけど、今までそれで上手くいってきたし、これからもなんとかなると思うんだ。それとも物を貰うのは不服かい? もし、要らなければ売るといいよ。一応、金で出来ているからね」

 「そんな……ご主人様から受け取ったものを売るなど……ありがたく受け取らせていただきます。そして、ご主人様の信頼に応えるようにメイド一同、心よりお仕えいたします」

 どうやら受け取ってくれるようだ。人に物をあげるってことが行為はどうも苦手だ。師匠なら何も言わずに受け取ってくれるけど、他の人は理由が必要だからね。エアはじっと金のブレスレットを見つめていた。

 「ご主人様って、変わっておられますね」

 あれ? なにか変なことをしちゃったかな? それとも変顔でもしてた?

 「なんというか貴族らしくないと言うか……いいえ。ご主人様こそ……本物の貴族というものかも知れませんね。私はそんなご主人様にお仕えできたことは幸運だったのかも知れません」

 「僕こそ、まだ何もしていないからね。エアの期待には添えないかも知れないよ。でも、エア達の協力は不可欠なんだ。色々と教えてくれると助かるよ」

 「私で出来ることでしたら。なんでしたら、夜の……」

 エアが恥ずかしそうにモジモジしているが、夜? 何のことだろう? まさか、この地域には夜に何かする事でもあるのかな? その辺りも知っておかないといけないかな……

 「今は何でも知りたい。エアが夜の事を教えてくれるの?」

 「えっ⁉ いや、私も経験がなくて……でも、ご主人様がおっしゃるのであれば……いえ!! やっぱり、私も勉強してから出直します。不甲斐ない私をご主人様に見せるわけには。それにご主人様にはマリア様がおられますから、足りていると思うんですけど」

 マリア? なんで、急にマリアのことが? まさか……なるほど、何となく分かってきたぞ。さすがは魔法で有名なシャンドル領だな。おそらく、魔法の稽古か何かなんだろうな。しかし、そうなると気になってくるな。

 「マリアは多分、詳しくはないと思うぞ。だからエアだけが頼りだ。是非、勉強をしてきて、僕に教えて欲しい」

 エアは真っ赤な顔をしながら、小さく頷いた。

 「そのときになったら、お教えいたします。それにしても……ご主人様って、その歳で随分とその……お盛んなんですね」

 当たり前だ。魔法は僕にとって重要なものだ。それが上達するためだったら、どんな知識でも欲しい。それが新たな魔法へと飛躍するかも知れないんだ。

 「当たり前だろ。僕はそれで世界で一番になるんだ。せっかくシャンドル家として生まれたんだから、それくらい目指してもいいだろ?」

 「世界一……まぁ、たしかにシャンドル家の男子はお盛んと聞いたことがありますが……どうやら私が見くびっていたようです。私もその一端にお加えされるように、精進させてもらいます」

 ん? ああ、エアも魔法が使えるのか。メイドでも使えるとは、シャンドル領は本当に凄いところなんだな。

 「もうすでに一端に入っていると思うけど。まぁ、実際にやってみないとダメだよね。その時を楽しみにしているよ。エアの実力も見てみたいしね」

 「が、頑張らせてもらいます!!」

 いい話が聞けたな。夜の秘密の魔法特訓……教えてもらえる日が楽しみだな。

 エアと話していると、ニーチェが静かな佇まいで来客を告げてきた。

 「ロラン様。当主様より集まるようにと使者が参っております」

 ついに来たか。僕以外の後継者候補と会う時が。

 「すぐに行くと伝えてくれ。エア、すまないが服を用意してくれ。ニッジとララも着替えを」

 「畏まりました」

 着替えはエアとニーチェの二人がすべてやってしまった。僕は立っているだけ。最初は抵抗したんだよ? でも、エアが「これはメイドの仕事ですから」と譲る気を一切見せなかった。それにニーチェも「ロラン様は本当にきれいなお顔をしていますね」と着替えとは関係ないことをずっと呟いていた。

 スラムから持ってきた服と下着をすべて剥ぎ取られて、シャンドル家が用意した服に身を包んだ。上質な服だな……とてもスラムでは着ることの出来ない服だろうな。それにしても寸法がぴったりなのが気になる。いつ、測られたんだ?

 「これは魔法糸という特殊な糸で作られた服なんですよ。ですから、どんなサイズでも魔法で調整されるんです」

 衝撃的だった。そんな服が存在するとは……やっぱり僕の知らないことがこの世界には満ちているようだ。なんだか、すごく楽しくなってきたな。きっと、これから先も色々な発見が出来るんだろうな。
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