佐渡島のあやかし(第3話)など 短編集

あさのりんご

文字の大きさ
30 / 81
1章

満月のウミガメ

しおりを挟む
ばあちゃんは、遠い目をして話はじめた。

    10年ぐらい前のことになるねぇーーー満月の夜だった。じいちゃんと、浜辺はまべをお散歩していたんだ。浜辺の砂金が、月の光でキラキラ光っていて、とてもきれいな夜だった。と、目の前を小さなかめが、よたよた歩いていくの。

 びっくりして、浜辺はまべを見回すと他にも亀の赤ちゃんが、いてね。みんな、海に向かって一生懸命いっしょうけんめい歩いているのよ。
「満月の夜は、海水が奥まで来るから、卵もふ化しやすいんだ」
じいちゃんは、お医者さんで物知りだから、亀の産卵さんらんと、月の満ち欠けを説明してくれた。引力がどうのこうので、ばあちゃんには、むずかしくて退屈たいくつ。きょろきょろ、よそ見をしていたら、見覚えのあるタライ船が、浜に打ち上げられているんだ。

「あ!わたしの船」
昔、海に流されてしまったタライ船だった。かけ寄ってみると、小さな男の子が、かいにつかまって立っていた。白いローブを着ていて、私を見るとにっこり笑ったの。子どもだけ?びっくりして、船の中をのぞいてみると、生まれたばかりの赤ちゃんもスヤスヤと眠っている。おそろいの、白いローブを着ていたね。

 じいちゃんもやって来て、男の子に話しかけたけれど、キョトンとした顔でじいちゃんを見ている。まだ、言葉が分からなかったんだ。

「神様の贈りもの かしら……
子どもがいない私達に、神様は、子供を二人も下さったに違いないわ。日ごろの行いが、いいからね」

「そんな、ばかなことあるものか。おっ!けがをしている」

 みると、男の子の手から血がポタポタと落ちていた。

 じいちゃんは、小さな体を抱えて家に駆け出した。ばあちゃんも赤ん坊を抱き上げて、じいちゃんを追いかけたよ。あの頃は、家が診療所しんりょうじょにもなっていた。じいちゃんは、きれいに傷を縫い合わせた。気丈きじょうな子でね。麻酔ますいの注射をしても泣かない。血だらけの傷がぬい合わされているのを、じっと見ていたんだ。
 あくる日、警察に届けて親を探したけれど、結局見つからなかった。施設しせつへ送るのは忍びなくてねぇーーーそれに、かわいい子供達を手放すなんて、じじとばばには、とても出来なかった」

 ばあちゃんは、タンスから古い紙包みを大切そうに取り出した。
「ロビンとノアは、このローブを身につけていたんだよ」と開いて見せる。
くるんである紙は、色あせていたけれど、ローブは、白く輝いていた。二枚のローブの大きい方には、”ROBINロビン” 、小さなローブには、”NOAノア”と美しい糸で刺繍ししゅうされていた。そして、それぞれのローブのすそには”剣のユリ”の紋章(※)があった。

「親を探す手がかりになるからと、警察も一生懸命に、服の製造メーカーなんかを調べてくれたんだけれど、分からなかったんだよ。不思議な素材で出来ているんだって。あんた達は、目や髪の色が違っている。どこか遠い国の生まれかもしれないねぇーー」
 
 
 ばあちゃんの話しが終わって、ロビンは左手をそっと開いてみた。十文字に切りかれた傷は未だに残っている。
「やっぱり、捨子かぁー」
ノアはぐすん、と鼻をすすり上げた。ロビンは、(泣くもんか)と立ち上がり、窓から晴れた空を見上げた。ちょうど、いぶきとゆうじがこっちへやって来る。

「ばあちゃん、遊びに行ってくる!」
「気をつけてね」
「うん。おみやげに森でグミの実を取ってくるよ。もう、赤くなってた」
「ありがとう。楽しみにしているよ」
 ロビンも真っ赤なグミの実が大好きだ。たくさん取ってきてジャムにしてもらおう。


※剣のユリ(フリー画像より)

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

童話短編集

木野もくば
児童書・童話
一話完結の物語をまとめています。

まぼろしのミッドナイトスクール

木野もくば
児童書・童話
深夜0時ちょうどに突然あらわれる不思議な学校。そこには、不思議な先生と生徒たちがいました。飼い猫との最後に後悔がある青年……。深い森の中で道に迷う少女……。人間に恋をした水の神さま……。それぞれの道に迷い、そして誰かと誰かの想いがつながったとき、暗闇の空に光る星くずの方から学校のチャイムが鳴り響いてくるのでした。

四尾がつむぐえにし、そこかしこ

月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。 憧れのキラキラ王子さまが転校する。 女子たちの嘆きはひとしお。 彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。 だからとてどうこうする勇気もない。 うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。 家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。 まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。 ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、 三つのお仕事を手伝うことになったユイ。 達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。 もしかしたら、もしかしちゃうかも? そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。 結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。 いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、 はたしてユイは何を求め願うのか。 少女のちょっと不思議な冒険譚。 ここに開幕。

9日間

柏木みのり
児童書・童話
 サマーキャンプから友達の健太と一緒に隣の世界に迷い込んだ竜(リョウ)は文武両道の11歳。魔法との出会い。人々との出会い。初めて経験する様々な気持ち。そして究極の選択——夢か友情か。   (also @ なろう)

あだ名が245個ある男(実はこれ実話なんですよ25)

tomoharu
児童書・童話
え?こんな話絶対ありえない!作り話でしょと思うような話からあるある話まで幅広い範囲で物語を考えました!ぜひ読んでみてください!数年後には大ヒット間違いなし!! 作品情報【伝説の物語(都道府県問題)】【伝説の話題(あだ名とコミュニケーションアプリ)】【マーライオン】【愛学両道】【やりすぎヒーロー伝説&ドリームストーリー】【トモレオ突破椿】など ・【やりすぎヒーロー伝説&ドリームストーリー】とは、その話はさすがに言いすぎでしょと言われているほぼ実話ストーリーです。 小さい頃から今まで主人公である【紘】はどのような体験をしたのかがわかります。ぜひよんでくださいね! ・【トモレオ突破椿】は、公務員試験合格なおかつ様々な問題を解決させる話です。 頭の悪かった人でも公務員になれることを証明させる話でもあるので、ぜひ読んでみてください! 特別記念として実話を元に作った【呪われし◯◯シリーズ】も公開します! トランプ男と呼ばれている切札勝が、トランプゲームに例えて次々と問題を解決していく【トランプ男】シリーズも大人気! 人気者になるために、ウソばかりついて周りの人を誘導し、すべて自分のものにしようとするウソヒコをガチヒコが止める【嘘つきは、嘘治の始まり】というホラーサスペンスミステリー小説

夜寝たくなくて朝起きたくない

一郎丸ゆう子
絵本
大人のための絵本です。現代人って夜寝たくなくて朝起きたくない人が多いな、でも、夜は寝ないと困るし、朝は起きないとなんないなんだよね、なんて考えてたら出来たお話です。絵はcanvaで描きました。

黒地蔵

紫音みけ🐾書籍発売中
児童書・童話
友人と肝試しにやってきた中学一年生の少女・ましろは、誤って転倒した際に頭を打ち、人知れず幽体離脱してしまう。元に戻る方法もわからず孤独に怯える彼女のもとへ、たったひとり救いの手を差し伸べたのは、自らを『黒地蔵』と名乗る不思議な少年だった。黒地蔵というのは地元で有名な『呪いの地蔵』なのだが、果たしてこの少年を信じても良いのだろうか……。目には見えない真実をめぐる現代ファンタジー。 ※表紙イラスト=ミカスケ様

ゼロになるレイナ

崎田毅駿
児童書・童話
お向かいの空き家に母娘二人が越してきた。僕・ジョエルはその女の子に一目惚れした。彼女の名はレイナといって、同じ小学校に転校してきて、同じクラスになった。近所のよしみもあって男子と女子の割には親しい友達になれた。けれども約一年後、レイナは消えてしまう。僕はそのとき、彼女の家にいたというのに。

処理中です...