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2章

みずがめ座の美少年

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  夕食が終わると、ロビンとノアは、寝室に案内された。召使いのサムが、らせん階段を登りながら「足元に気をつけて」と、手に持ったローソクをかざす。

 ロビンは視界が開けて、ふと空を見上げた。あっ、と思った。こんな空はみたことがない。星がいっぱいだった。

「空じゅう、星だらけだ……」と立ち止まる。

  星が好きなノアは、空を見上げて声をはずませた。
あまの川とか……さそり座とか……ちゃんとわかるよ。あ、みずがめ座も見える」

「ばあちゃん、あの星座の話をしてくれたよな。忘れっちまったけど……」と、ロビン。

「僕は、覚えてる……美しい少年が神にさらわれて親は毎日悲しんだ。神様は、親をなぐさめるために、みずがめを持った美しい少年の星座を作ったんだよ」

「うん、うん。思い出した。話し終わって『遊びに行った時は、早く帰るんだよ。ばあちゃん、心配するから』と言ったよな」

「今頃、心配してるよ!帰らなくちゃ」ノアは、今にも泣きそうな顔になっている。

 (家へ帰ろう)

 ロビンはサムの上着を引っ張った。サムは、優しく親切で友達のようだから、思った事を言いやすい。
「ここに泊まるのはいやだ。"魔法のない国"に帰りたい」
 
 サムが振り向いた。困った顔で、遠くに散らばる民家の明かりを指さした。
「王子様がお帰りになって、村人達はたいへんに喜んでおります。ロビン様、ノア様、おふたりの帰る所は、ここでございます」と、きっぱりと言う。
そして、かがんで、ノアの顔をのぞき込む。「魔法国の方がずっと楽しいですよ」

 ロビンは、ここに泊まるしかない、とあきらめて
「魔法国の人は、誰でも魔法が使えるの?」と、サムに聞いてみた。

「はい。練習をすれば、たいていの人は出来るようになります。けれど、近頃は魔法の人気がなくなりました。私も”ほうき”に乗る練習は危険なので、飛行機しか乗りません」

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