42 / 81
2章
ポニーテール
しおりを挟む
ロビンとノアは、ジャック先生と別れて自分たちの部屋へ戻り始めた。廊下は死んだように静まり返っている。幽霊が出てきても、おかしくない雰囲気だ。
「わっ!」
ふいに、声がしてふたりは飛びあがった。暗闇からアンジェラが現れた。つなぎのジーンズをはいて、キュートな笑みを浮かべている。ポニーテールにしているので、ちょっとボーイッシュな感じがした。
ロビンは、「ビックリしたぁー。おどかすなよ」といいながら、ほっと胸をなでおろす。アンジェラは、楽しそうに「いいもの、手に入れた」と、つなぎのポケットからカギを取り出し、ひらひらさせた。
ノアは目をまるくして「病室のカギ?」と聞く。
「ジャック先生が君たちと話している隙に、先生の部屋に忍び込んだの。引き出しに、カギがあったからーーちょっと、借りてきた。これで、開くかどうかわからないけど、試してみましょうよ」
アンジェラは、風のように走り出し、ロビンとノアも続く。アンジェラが病室の扉の前にひざまづき、カギをカチャカチャ動かすと、扉があっという間に開いた。
ロビンとノアは、天蓋のついたベッドにそっと近づいた。王は、静かな寝息をたてている。
ロビンは、父の顔を食い入るように見つめた。お父さんだ……お父さんに会えた。寝顔には威厳があって、どこか優しい温もりがある。この人が父親か……話しかけてくれたらどんなにうれしいことだろう……眠ってないで、ぼく達を見て欲しい……ノアが、そっとロビンの手を握った。ロビンも握り返す。
ガタンと音がして快活な足音が近づいてきた。あの足音は、ジャック先生に違いない。
アンジェラが、ささやいた。
「逃げて!私は、カギを返しておく」
ロビンと、ノアは、いちもくさんに駆け出し、アンジェラは、廊下の暗闇に身を潜めた。
ジャック先生が、病室に来た時には、すでに扉にカギがかかっていた。先生はあたりを調べたが誰もいない。首をかしげながら、部屋に戻って行った。
■
あくる朝、ロビンとノアは丘を降りて村へ出かけた。見上げれば、雲ひとつない。あたたかな陽射しが心地よく、歩いているだけで、幸せな気持ちになった。広々とした原っぱに、羊たちがのんびりと、草を食んでいる。レンガ造りの家々の壁には、バラが絡んで美しい花が咲いていた。ロビンは、この美しい風景を覚えてはいない。けれど、とても、なつかしい気がした。↓※
ふたりは、薬草をもらってくるように、ジャック先生から頼まれていた。その名前が難しいので、先生は《マンドレイク》と書いたメモを渡した。そして、「マンドレイクの根は、人の脚に似ている。引き抜くと、泣き声を上げるが、その声を聞いた者は、神経をやられてしまう。幻が目の前に現れたり、気が狂ったように笑い出したりするのだ。決して鉢から動かさないように」と、教えてくれた。
ジャック先生に聞いた道をしばらく歩くと、ロビンとノアは、広い通りに出た。路面電車が、ゴトゴトと音を立てて通り過ぎ、自転車に乗った村人達が、電車と競争するように、颯爽とペダルをこいでいる。
どこからか、美しい声が聞こえてきた。昨夜、お城で聞いたあのメロディーだ。その声に誘われて、二人が、脇道に入ると広場に人だかりがしている。
みると、大きな木の下で、黒髪の美女が歌っていた。とろけるような歌声に、皆、うっとりと聞きほれていた。
広場の木陰にロバに引かれた屋台が止まっている。揚げたてのフライドポテトが並び、白髪のお爺さんが、ワッフルを焼いていた。
※コッツウォルズの風景
「わっ!」
ふいに、声がしてふたりは飛びあがった。暗闇からアンジェラが現れた。つなぎのジーンズをはいて、キュートな笑みを浮かべている。ポニーテールにしているので、ちょっとボーイッシュな感じがした。
ロビンは、「ビックリしたぁー。おどかすなよ」といいながら、ほっと胸をなでおろす。アンジェラは、楽しそうに「いいもの、手に入れた」と、つなぎのポケットからカギを取り出し、ひらひらさせた。
ノアは目をまるくして「病室のカギ?」と聞く。
「ジャック先生が君たちと話している隙に、先生の部屋に忍び込んだの。引き出しに、カギがあったからーーちょっと、借りてきた。これで、開くかどうかわからないけど、試してみましょうよ」
アンジェラは、風のように走り出し、ロビンとノアも続く。アンジェラが病室の扉の前にひざまづき、カギをカチャカチャ動かすと、扉があっという間に開いた。
ロビンとノアは、天蓋のついたベッドにそっと近づいた。王は、静かな寝息をたてている。
ロビンは、父の顔を食い入るように見つめた。お父さんだ……お父さんに会えた。寝顔には威厳があって、どこか優しい温もりがある。この人が父親か……話しかけてくれたらどんなにうれしいことだろう……眠ってないで、ぼく達を見て欲しい……ノアが、そっとロビンの手を握った。ロビンも握り返す。
ガタンと音がして快活な足音が近づいてきた。あの足音は、ジャック先生に違いない。
アンジェラが、ささやいた。
「逃げて!私は、カギを返しておく」
ロビンと、ノアは、いちもくさんに駆け出し、アンジェラは、廊下の暗闇に身を潜めた。
ジャック先生が、病室に来た時には、すでに扉にカギがかかっていた。先生はあたりを調べたが誰もいない。首をかしげながら、部屋に戻って行った。
■
あくる朝、ロビンとノアは丘を降りて村へ出かけた。見上げれば、雲ひとつない。あたたかな陽射しが心地よく、歩いているだけで、幸せな気持ちになった。広々とした原っぱに、羊たちがのんびりと、草を食んでいる。レンガ造りの家々の壁には、バラが絡んで美しい花が咲いていた。ロビンは、この美しい風景を覚えてはいない。けれど、とても、なつかしい気がした。↓※
ふたりは、薬草をもらってくるように、ジャック先生から頼まれていた。その名前が難しいので、先生は《マンドレイク》と書いたメモを渡した。そして、「マンドレイクの根は、人の脚に似ている。引き抜くと、泣き声を上げるが、その声を聞いた者は、神経をやられてしまう。幻が目の前に現れたり、気が狂ったように笑い出したりするのだ。決して鉢から動かさないように」と、教えてくれた。
ジャック先生に聞いた道をしばらく歩くと、ロビンとノアは、広い通りに出た。路面電車が、ゴトゴトと音を立てて通り過ぎ、自転車に乗った村人達が、電車と競争するように、颯爽とペダルをこいでいる。
どこからか、美しい声が聞こえてきた。昨夜、お城で聞いたあのメロディーだ。その声に誘われて、二人が、脇道に入ると広場に人だかりがしている。
みると、大きな木の下で、黒髪の美女が歌っていた。とろけるような歌声に、皆、うっとりと聞きほれていた。
広場の木陰にロバに引かれた屋台が止まっている。揚げたてのフライドポテトが並び、白髪のお爺さんが、ワッフルを焼いていた。
※コッツウォルズの風景
0
あなたにおすすめの小説
まぼろしのミッドナイトスクール
木野もくば
児童書・童話
深夜0時ちょうどに突然あらわれる不思議な学校。そこには、不思議な先生と生徒たちがいました。飼い猫との最後に後悔がある青年……。深い森の中で道に迷う少女……。人間に恋をした水の神さま……。それぞれの道に迷い、そして誰かと誰かの想いがつながったとき、暗闇の空に光る星くずの方から学校のチャイムが鳴り響いてくるのでした。
黒地蔵
紫音みけ🐾書籍発売中
児童書・童話
友人と肝試しにやってきた中学一年生の少女・ましろは、誤って転倒した際に頭を打ち、人知れず幽体離脱してしまう。元に戻る方法もわからず孤独に怯える彼女のもとへ、たったひとり救いの手を差し伸べたのは、自らを『黒地蔵』と名乗る不思議な少年だった。黒地蔵というのは地元で有名な『呪いの地蔵』なのだが、果たしてこの少年を信じても良いのだろうか……。目には見えない真実をめぐる現代ファンタジー。
※表紙イラスト=ミカスケ様
四尾がつむぐえにし、そこかしこ
月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。
憧れのキラキラ王子さまが転校する。
女子たちの嘆きはひとしお。
彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。
だからとてどうこうする勇気もない。
うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。
家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。
まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。
ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、
三つのお仕事を手伝うことになったユイ。
達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。
もしかしたら、もしかしちゃうかも?
そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。
結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。
いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、
はたしてユイは何を求め願うのか。
少女のちょっと不思議な冒険譚。
ここに開幕。
【もふもふ手芸部】あみぐるみ作ってみる、だけのはずが勇者ってなんなの!?
釈 余白(しやく)
児童書・童話
網浜ナオは勉強もスポーツも中の下で無難にこなす平凡な少年だ。今年はいよいよ最高学年になったのだが過去5年間で100点を取ったことも運動会で1等を取ったこともない。もちろん習字や美術で賞をもらったこともなかった。
しかしそんなナオでも一つだけ特技を持っていた。それは編み物、それもあみぐるみを作らせたらおそらく学校で一番、もちろん家庭科の先生よりもうまく作れることだった。友達がいないわけではないが、人に合わせるのが苦手なナオにとっては一人でできる趣味としてもいい気晴らしになっていた。
そんなナオがあみぐるみのメイキング動画を動画サイトへ投稿したり動画配信を始めたりしているうちに奇妙な場所へ迷い込んだ夢を見る。それは現実とは思えないが夢と言うには不思議な感覚で、沢山のぬいぐるみが暮らす『もふもふの国』という場所だった。
そのもふもふの国で、元同級生の丸川亜矢と出会いもふもふの国が滅亡の危機にあると聞かされる。実はその国の王女だと言う亜美の願いにより、もふもふの国を救うべく、ナオは立ち上がった。
夜寝たくなくて朝起きたくない
一郎丸ゆう子
絵本
大人のための絵本です。現代人って夜寝たくなくて朝起きたくない人が多いな、でも、夜は寝ないと困るし、朝は起きないとなんないなんだよね、なんて考えてたら出来たお話です。絵はcanvaで描きました。
あだ名が245個ある男(実はこれ実話なんですよ25)
tomoharu
児童書・童話
え?こんな話絶対ありえない!作り話でしょと思うような話からあるある話まで幅広い範囲で物語を考えました!ぜひ読んでみてください!数年後には大ヒット間違いなし!!
作品情報【伝説の物語(都道府県問題)】【伝説の話題(あだ名とコミュニケーションアプリ)】【マーライオン】【愛学両道】【やりすぎヒーロー伝説&ドリームストーリー】【トモレオ突破椿】など
・【やりすぎヒーロー伝説&ドリームストーリー】とは、その話はさすがに言いすぎでしょと言われているほぼ実話ストーリーです。
小さい頃から今まで主人公である【紘】はどのような体験をしたのかがわかります。ぜひよんでくださいね!
・【トモレオ突破椿】は、公務員試験合格なおかつ様々な問題を解決させる話です。
頭の悪かった人でも公務員になれることを証明させる話でもあるので、ぜひ読んでみてください!
特別記念として実話を元に作った【呪われし◯◯シリーズ】も公開します!
トランプ男と呼ばれている切札勝が、トランプゲームに例えて次々と問題を解決していく【トランプ男】シリーズも大人気!
人気者になるために、ウソばかりついて周りの人を誘導し、すべて自分のものにしようとするウソヒコをガチヒコが止める【嘘つきは、嘘治の始まり】というホラーサスペンスミステリー小説
9日間
柏木みのり
児童書・童話
サマーキャンプから友達の健太と一緒に隣の世界に迷い込んだ竜(リョウ)は文武両道の11歳。魔法との出会い。人々との出会い。初めて経験する様々な気持ち。そして究極の選択——夢か友情か。
(also @ なろう)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
