Forbidden fruit

春蠶 市

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良い子の兄様に選択肢はありません。

■良い子の兄様に選択肢はありません。_03

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 唾液を送り込んで舌で混ぜ合わせ、息継ぎの際にも人肌の体液を動物のように滴らせてその淫らな水音で互いの思考を蕩けさせた。

「ふぁッ、っ……んっん、っ」
「はっ、にーさま。舌コッチ出ーして……ン、ッ」
「ぅあ? っん、っ」

 甘ったるく痺れる唇を深く合わせて火照った吐息を湿らせて遊ぶうちに自然と口周りが派手に濡れた。そこも舌で撫でるが肌に付着した水気は舐め取ろうとしても結局は無意味で、そのうち汚れるのも楽しみ始めたロキはわざとナオにだらしなく舌を晒した。
 ロキの舌先から溢れた唾液がナオの唇に落ちる。
 ナオは下唇を濡らしたそれを舐め取ってからロキの舌を舌先を合わせ、音を立てて吸い付いた。

「はあっ、ぁ、う……んん」
「ンッ……にーひゃまかわいー」
「あ、っんっ、ん……」

 犬よろしく濃度を深めた下品な音を響かせてまぐわう。
 ぷちゅぷちゅと濁ったリップ音に溺れる舌戯で疼いた下腹部をロキがナオの身体に擦り合わせれば、一度達して感度の鋭くなったモノを衣服に掻き撫でられたナオが身動いだ。

「はァ、こら。逃げねーの」
「ッぁ……ごめん……っン、っでもッん、汚しちゃう……あ! ッ――!」
「兄様に汚されるならいーよ」
「ひあッ、ん――っ! っんん!」

 ロキは部屋着をナオの剥き出しの性感帯に押し付けて身体を揺らす。
 触れ合ったまま腰を数度動かせば、乾いた繊維に一度達したモノを擦られる痛痒い痺れにナオが全身の筋肉を固めた。足先を丸めて内腿をもぞもぞと擦り合わせる。
 精神的な部分に穴の空いているナオは自発的な抵抗を元々しない。だからロキが軽く姿勢を変えてナオの両足の間に片脚を滑り込ませればナオは弱々しくも律儀にすぐ足を開いた。

「動くなよ」
「っ、んあ――!」

 ぐっとロキが膝でナオの身を下から突き上げれば、抽挿とは異なる外部からの直接的な衝撃にナオが目を瞬かせた。

「え、っ……っ、あ……」

 滑りけのある愛撫とも違うモノを揺さ振る衝撃としての快楽の与えられ方にナオはどう反応すればいいのかを考えるように口を半開きにして瞬きをする。
 予想以上に楽しい反応に気分を良くし、ロキはナオの身に対し一定のリズムで下から直に刺激を叩き付けた。

「ひ! っあ、待ってンっロキ」
「ほーら、いつもみてーに可愛く啼けよ兄様。それともコレもつまんね?」
「あ! っ……ん! ――っあ、あ!」

 ナオの途切れ途切れの嬌声が次第に色を濃くしていく。
 生地越しに感じる性器の熱と触感の具合を確かめ、角度を変えて一度強めに膝で叩き揺さぶれば一等きつい衝撃にナオの白い喉がひゅっと仰け反った。
 ナオの身体が見慣れた反応を起こした。

「ッあ! っ! ふっ、ァ、は――はあっ……」
「またイケた? よかッたな兄様」
「んくっ、はっ、あっ……っ」

 蒸気した頬に大粒の涙を滑らせてガクガクととまらない胴震いを起こすナオの頭をロキは機嫌良く撫でてやる。
 早くなった喘ぎ混じりの深呼吸は発作のような荒さで、辛そうなナオの姿はロキの優越感を高めた。
 ロキは開いている唇から覗く舌先に噛み付いて、ナオの酸素を奪う。

「ぐっ――ぅう!」

 喉奥まで舌先をねじ込んで唾液を流し気管を塞げば、酸欠にナオが四肢を強張らせた。
 ロキが角度を変える為だけに僅かに口を離せば、二人の唇の隙間から飲み下せなかった唾液が泡混じりに溢れ落ちていく。

「ンぐ、っ、ァ――……」
「っ、ん……」

 咳き込みかけたナオの唇をまたすぐに塞いで黙らせれば肺を絞める重苦に白い喉が引き攣って、一拍遅れにツンとした酸っぱさが互いの口内に広がった。

「――っ! っぅ、――!」
「は、ッン……」
「――――ッんぐ!」

 ロキは胃液と唾液を舌で口腔粘膜に擦り付けて荒々しく粘性を強める。
 舌根から染み込んでくる色欲は酸欠の苦しさをも快楽と錯覚させるほどで。ロキは昂る欲に従いナオの薄い腰に爪を立てると強引に引き寄せた。

「うッ――!」

 皮膚の削れた感覚にナオがゾッと産毛を逆立てるがロキは気にせずろくな力の入っていない白い足を掴んで腰を合わせる。
 ナオの足の間に身を沈ませ、互いのモノを生地越しに擦り寄せた。

「! っ、――んん!」
「ッ……」

 ナオの身の内に燻る絶頂の余熱が冷める前にロキは疑似的な性行の動作で情欲を煽り返す。
 汗ばんで張り付く生地越しに互いを摩擦し、下腹部の興奮に合わせて甘美な痺れを強める口腔の感覚にも溺れ遊んだ。
 ぐちゅぐちゅと粘っこく跳ねる淫猥な舌愛撫の水音が抜き挿しの音を真似て疑似性交にさらなる錯覚を起こす。が、結局は虚しい錯覚で、欲しい満足感の得られない自身を慰める為に自然と腰の動きが激しくなった。

「っ――っ!」

 精液の滲んだ繊維にきつく急所を擦られる痛烈な摩擦熱にナオの背が反り白い足先が攣りそうなほど力む。
 挿入感のない、中途半端ゆえに癖になりそうな際どい扇情的な刺激。
 性行為を覚えたばかりの思春期の餓鬼かと内心で嗤い、ロキは乱暴に半端な快楽を貪った。
 性欲に茹で上がった身体は眩暈が響き始めるほどの熱さで、ロキは目に流れてきた汗の痛みでようやく夢中になっていた舌戯をやめ、舌を解いた。

「は、ッ――あ?」
「かは、っ! あ……はっふあ、はぁ……」

 真下で逆上せた表情のナオが深く息を吸った。喉奥に溜まった唾液が細かな泡を作り、空気に触れてこぷんと鳴く。

「――っふぁっ、ッ……ぁ、はっ、――ッは、はー……」
「はあッ、ハーァ、ッ……」

 糸を引くではすまない濃厚な唾液量が互いの口周りをねとりと濡らした。

「ッはー……超イイけど、癖んなッたらしんどいなコレ……ハァ」

 虚脱しているナオを後目にロキは羽織るボタン付きニットパーカーを脱ぐ。微かに涼しくなった気もするが、元気な暖房のお陰で寝室は隅々まで温もりに抱かれており、肌を伝う汗を冷やさない。
 ロキは服を適当に丸めて力無く倒れるナオの背面に突っ込んだ。

「ッ、はァ……にーさま。俺も兄様のために頑張ッてんだぜ? 玩具より俺のが超良くね?」
「――ん……、っ」

 酸素不足で呆けているナオの頬を軽く叩いて問い掛ければ、どこも見ていなかった瞳がロキに焦点を向けた。

「……ん、ぅん……」
「玩具より弟のが相性イイッてちゃーんと教えてやるから。嬉しい?」
「はあっ、ぁ……ん、うれしい……」
「じゃ、可愛い兄様のために頑張るか」

 ロキは丸めたニットパーカーで高さをつけさらに密着しやすくなったナオの腰を優しい手付きで撫でる。高揚する白い肌をくすぐれば、ぴくっと腹筋が愛らしく痙攣した。

「抜かねーでどんだけできるか試してみよーな」
「はっはぁ……えっ、っ? ……いま、から?」
「勿論。じゃねーと意味ねーじゃん。兄様はただ気持ちよーくなッてるだけでいいんだから幸せだろ? 頑張るのは俺」
「あ、の……っ、縛ってくれない?」
「なーんで? 頑張るのは俺なんだから兄様は必要ねーだろ」
「でも、はあ……多分このままだと、っん、僕ロキのこと……」
「あーッ! 分かッた。縛ッてやるよ兄様」

 窺ってくるナオに道化じみた笑顔を見せてロキはガウチョパンツの腰紐を片手で引き抜く。
 ロキの動きを目にしてすかさずナオが両腕を揃えて持ち上げるも、もたげられた腕を一瞥すらせずロキは手首を回して器用に紐を自分の右手の平に巻き付けた。
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