Forbidden fruit

春蠶 市

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小話詰め合わせ

■お題なし

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▼ロキ×ナオ(弟×兄)
 お題:お題なし(ワンドロ)旧作


 こりこりと腹の中を擦る蠢きに、白い喉が生唾を飲み込んだ。

「ッ……はっ、はあー……」
「あー、指二本じゃ物足んねーか」
「っロキが言うならそうかも……っ、はぁ」
「じゃもう一本」
「んっ……っ、あ」

 むず痒そうなナオの反応を窺って、熱のこもった体内を弄る指の数を増やしてやる。それでも深くは指を埋め込まず、浅い位置のみを撫でるだけ。
 中途半端な愛撫で中途半端な熱量しか与えられないもどかしさにナオが胸に抱く枕を握り締めた。

「っ……はあ……」

 自発的に性欲を貪ることを知らないナオは自分からは求めず、悩ましい吐息で喉を火照らせながらひたすらに意地悪な触れ合いに耐えていた。

「にーいさま。こういう時なんて言うの?」
「……っ、……気持ちいい、だよね?」
「当たりだけどちげーな。おねだりの仕方教えただろ?」
「うん。でもロキが楽しいなら……このままでもいいよ?」
「おッ? それはイケなくてもいーッてこと?」
「ロキが楽しいなら、僕も楽しいから……っん、はー……」
「ふーん」

 解れた腹内から指を引き抜けば、ナオはぶるりと背筋を震わせる。

「兄様。一回立ッて。膝立ち。おいで」
「? うん」
「枕ポイしな。まだ余裕だから力加減間違えねーだろ」
「そうだね。いまはまだ大丈夫だけど……」
「無茶させねーから。おいで」

 ロキが呼べばナオは胸に抱く枕を退かし、ベッドに横たわる身体を起こした。

「なに?」
「俺ばッか楽しいのもやだなーッて」

 ロキは膝立ちになったナオの手と指を絡める。いつもならすぐに握り返してくる指は力を入れてこない。

「なんで? ロキは僕の弟だから、僕はロキを優先するよ」
「それは超当たり前なんだけど、遊ぶ時は二人で気持ち良くなッたほうがもッと楽しいじゃん。だからさ俺に兄様の気持ちいいとこ教えて」
「ロキが触ってくれるならどこでも気持ち良いよ」
「そりゃあ兄様の身体をこうしてやッたのは俺だからなァ」
「……っ」

 首筋に甘く噛み付けば、ナオが身体に力を込める。
 痛みに堪えるように息を飲んだナオの予想を無視して肌を歯先でやわやわとはんだ後、吸い付いてキスマークだけ残すとロキは口を離した。

「……あ、れ? 噛まないの?」
「まだいーや。それよりいまはこッち」

 ロキはナオと指を合わせたまま浅く解した後ろ側へと手を誘導する。

「兄様。俺に兄様のイイトコロ教えて。俺の手、玩具みてーに使ッていいから」
「ロキは玩具じゃないよ」
「例えだッての。例え。ほら、どこがいーい?」
「えーっと……内側から刺激する男性生殖器は前立腺だから、位置は恥骨の奥で直腸の壁を指圧で――」
「ハイハイ。色気ねー答え方すんなッて。なんなら尿道バイブでも突ッ込んでそッちから遊んでやッてもいーんだけど?」
「……ロキがしたいならいいよ。けど、念の為にタオル用意してからね。持ってくる?」
「いや、しない。いまはこッちに集中して?」

 ロキは濡れそぼった後孔に人差し指を滑り込ませて指の腹で内壁を押し擦った。
 蕩けた粘液を掻き分けて熟れた性感帯を叩けばナオが肩を跳ねさせる。

「あ! っ」
「ずッと我慢させてたもんなァ。奥まで触られて嬉しい?」
「ん、嬉しいっはッ――っ……」
「よかッたー」
「んんっ……!」

 胸元に吸い付けば、ナオの身体が反射的に身を引いた。
 お構いなしに乳首に歯を立て何度か甘噛みを繰り返す。鈍い痛みを与えた後に舌で唾液を擦り込むように舐り転がせば内側の柔肉が疼いてロキの指を締め付けた。

「っ、ひ――!」

 かたくなった乳首を舌先で遊ぶとともに焦らされて熱を孕む前立腺を指で強く擦り上げればナオが全身を強張らせた。
 半端にロキの腕と触れたままのナオの右手が爪を引っ掛けないよう堪え忍び、震える。
 呼吸音が艶めいて腹奥が情欲的に萎縮した感覚に「あ」とロキは動きを止めた。

「俺がしたら駄目なんだよ。兄様。自分で俺のこと使ッて」
「っん、はっ……ち、がうよ。ロキは使えない……」
「なんて説明すッか…………んんー、あれだ。たまには責める積極的な兄様が見てーの」
「積極的……?」
「そう。前に見たAVでネーチャンが自分から跨ッてたのあんじゃん? あれはSMだから竿役縛ッてたけど。まああんな感じで兄様に自分から動いてほしいの。俺のこと雑に使ッて」
「ロキは雑には使えないけど……分かった。はあ……大丈夫だよ全部覚えてる」
「じゃあ俺の手使ッて自分でシテみせ――あ?」

 ロキの指を自分の中から引き抜くとナオはロキを押し倒した。
 突然の事態に言葉を半端に止めて疑問符を浮かべるロキを後目にナオが自分から腰を落とす。

「あ? え? 兄様?」
「ん、ちょっと……待ってね。っ、ふッ――……ここ、かな?」

 ナオは膝で自分を支えて重心を整える。確認するふうに下っ腹に手を添えながら一気に体重を掛けた。

「ッ――っ!」
 
 ナオは自分で自分に与えた負荷に肩を跳ねさせて奥歯を食いしばる。
 解れてはいたが深い感覚は与えられていなかった内側がやっとの圧迫感に戦慄いた。昂った下腹部の劣情を身体に力を入れて抑えると、ナオはゆっくり息を吐く。

「ん……ここが気持ちいいのかな? あってる?」

 若干上擦るもそこまで変化ない声音でナオが問い掛けてくる。位置を確かめるように自分の下っ腹をさすり、ナオはロキに跨ったまま首を捻った。
 どうやらAVの真似すればいいと勘違いしたらしい。考えていたこととは少し違ったが、眺めの良さにロキは「まあいいか」と口元に弧を描いてナオの太腿を撫でた。

「にーいさま。このまま動いてくれんの?」
「見たやつはそうじゃなかった? もしかしてロキも縛ったほうがいい? それはやだなあ……」
「じゃ無駄に考えねーで動いていいよ。手ェ繋ぐ?」
「だめ」
「ハッキリ言うー……さーみーしーい」

 ロキが不満げに唇を尖らせるとナオは少し考え込み、そっと両手をロキに伸ばした。

「危ないって言ったらすぐに離してくれる?」

 即座にロキは控えめに手を晒すナオの両手を掴む。

「それは俺の気分次第。つか、爪立てねーように兄様が気を付ければよくね?」
「勿論ちゃんと気を付けるけど……」
「ならそれだけじゃん。グダグダ言うなし」
「……うん」

 なにかを言い掛けて飲み込み、肯定だけをしたナオの腕を引っ張りロキは「良い子」と白い手の甲に口付ける。

「俺のことはお気にせず。自分が気持ち良くなるように動きな」
「分かった……」
「なに?」
「手、気を付けてねロキ。引っ掻いちゃったら……」
「うるせーな。そしたら兄様をお仕置きするだけだから俺のことは気にしねーの。さッさとしろ。それとも俺が動く? そのほうが危ねーんじゃね?」
「……僕が動く」
「超良い子。頑張れよにーいさま」

 しっかと強く絡むロキの手に自分の爪が当たらないよう気を配りつつ、ナオは腰を揺らした。

【end】
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