17 / 613
一章 村からの脱出
14
しおりを挟む
「あっ、えっと……そう、なんですけど……」
これは、この辺りの名士でもあるお金持ちシャルマン卿が、この辺りの孤児たちのために毎年1回配ってくれる贈り物――これって新品がそのまんま私たちの手元に来ることとかあるんだ……?
「……ありがたく頂戴しなさい」
確実に機嫌が急降下している村長を前に、それでも正解が分からず戸惑いながらたずねる。
「あの……グリンダさんとの交換は……?」
グリンダというのはこの村長の孫娘で――毎年毎年、シャルマン卿が孤児のために施してくれる新品の服やら鞄やらを、自分が大切にしているもの――と言い張って、自分が使い古した中古品と交換してくださるという、大変に根性が捻じ曲がり……――心優しきお嬢様だ。
しかもわざわざ私たちに新品を使っているところを見せつけにわざわざあの小屋まで来てくれるという底意地の悪さまで兼ねそろえていらっしゃる。
……なんで今回はそれが無い?
「――これは孤児が施されるシャルマン卿のお慈悲だ。 ……お前にはうちのグリンダが孤児に見える、とでも?」
「め、滅相も……! ――あの、ありがたく頂戴いたします。 慈悲深きシャルマン卿と村長に深く感謝いたします……!」
ここで村長の機嫌を損ねるわけにはいかないと、私は慌てて靴をかき集め、いつものように膝を曲げながら頭を下げた。
貴族でも無いくせに貴族に対する礼をさせて自尊心を満たすとか、こいつもこいつで虚栄心拗らせてんなよなぁ……
「――うむ」
深く頭を下げていると、不機嫌ながらもどこか満足そうな声が返ってきたのでソロソロと頭を上げる。
もう一度お辞儀をして部屋を出ようとしていた私に、村長が思い出したように話しかけてきた。
「ああ――それで出発の日は決めているのか?」
あ、それこっちのタイミングだったんだ……?
「えっと……まだ――早い方がいいですか?」
私の答えに村長は急にうさんくさい笑顔を貼り付け猫撫で声を出す。
「いやいや、何もそう急ぐ事は無いだろう。 そうだな……3日後なんてどうだ?」
「あ、はい。 では3日後にします」
その返事に、うむうむと、満足げに頷く村長、そんな村長に側近の1人がなにかを差出す。
それをチラリと見た村長は、軽く頷きながらそれをすぐに私の方に差し出した。
……渡すものが多すぎないか?
最初から一つにまとめておけと……
「これは?」
私に差し出されているのだから、私に渡すものだとは思うが、念のため首をかしげて確認する。
「お前への餞別だ」
「……私?」
「――まだ子供のお前にはわからないかもしれないが、お前の髪色は目立ちすぎる。 これで隠すことを覚えなさい」
「隠す……」
「やがてわかる。 明日からつけなさい」
「……はい村長。 ご好意に感謝します」
歪みそうになる顔を堪えながら、私は再び深いお辞儀をして、執務室を後にした。
これは、この辺りの名士でもあるお金持ちシャルマン卿が、この辺りの孤児たちのために毎年1回配ってくれる贈り物――これって新品がそのまんま私たちの手元に来ることとかあるんだ……?
「……ありがたく頂戴しなさい」
確実に機嫌が急降下している村長を前に、それでも正解が分からず戸惑いながらたずねる。
「あの……グリンダさんとの交換は……?」
グリンダというのはこの村長の孫娘で――毎年毎年、シャルマン卿が孤児のために施してくれる新品の服やら鞄やらを、自分が大切にしているもの――と言い張って、自分が使い古した中古品と交換してくださるという、大変に根性が捻じ曲がり……――心優しきお嬢様だ。
しかもわざわざ私たちに新品を使っているところを見せつけにわざわざあの小屋まで来てくれるという底意地の悪さまで兼ねそろえていらっしゃる。
……なんで今回はそれが無い?
「――これは孤児が施されるシャルマン卿のお慈悲だ。 ……お前にはうちのグリンダが孤児に見える、とでも?」
「め、滅相も……! ――あの、ありがたく頂戴いたします。 慈悲深きシャルマン卿と村長に深く感謝いたします……!」
ここで村長の機嫌を損ねるわけにはいかないと、私は慌てて靴をかき集め、いつものように膝を曲げながら頭を下げた。
貴族でも無いくせに貴族に対する礼をさせて自尊心を満たすとか、こいつもこいつで虚栄心拗らせてんなよなぁ……
「――うむ」
深く頭を下げていると、不機嫌ながらもどこか満足そうな声が返ってきたのでソロソロと頭を上げる。
もう一度お辞儀をして部屋を出ようとしていた私に、村長が思い出したように話しかけてきた。
「ああ――それで出発の日は決めているのか?」
あ、それこっちのタイミングだったんだ……?
「えっと……まだ――早い方がいいですか?」
私の答えに村長は急にうさんくさい笑顔を貼り付け猫撫で声を出す。
「いやいや、何もそう急ぐ事は無いだろう。 そうだな……3日後なんてどうだ?」
「あ、はい。 では3日後にします」
その返事に、うむうむと、満足げに頷く村長、そんな村長に側近の1人がなにかを差出す。
それをチラリと見た村長は、軽く頷きながらそれをすぐに私の方に差し出した。
……渡すものが多すぎないか?
最初から一つにまとめておけと……
「これは?」
私に差し出されているのだから、私に渡すものだとは思うが、念のため首をかしげて確認する。
「お前への餞別だ」
「……私?」
「――まだ子供のお前にはわからないかもしれないが、お前の髪色は目立ちすぎる。 これで隠すことを覚えなさい」
「隠す……」
「やがてわかる。 明日からつけなさい」
「……はい村長。 ご好意に感謝します」
歪みそうになる顔を堪えながら、私は再び深いお辞儀をして、執務室を後にした。
3
あなたにおすすめの小説
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました
iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
好感度0になるまで終われません。
チョコパイ
恋愛
土屋千鶴子(享年98歳)
子供や孫、ひ孫に囲まれての大往生。
愛され続けて4度目の転生。
そろそろ……愛されるのに疲れたのですが…
登場人物の好感度0にならない限り終わらない溺愛の日々。
5度目の転生先は娘が遊んでいた乙女ゲームの世界。
いつもと違う展開に今度こそ永久の眠りにつける。
そう信じ、好きなことを、好きなようにやりたい放題…
自覚なし愛され公女と執着一途皇太子のすれ違いラブロマンス。
敏腕SEの優しすぎる無償の愛
春咲さゆ
恋愛
26歳OLの木崎茉莉は人生のどん底にいた。上手くいかないことに慣れ、心を凍らせることで自分を守る毎日に絶望した祭りは、雨の夜に終わりを願う。そんな茉莉に手を差し伸べたかっこいい彼。茉莉は、なぜか無償の愛のような優しさをくれる不思議な男性に少しずつ救われ、前を向いていく。けれど、疑ってしまうほど親切な彼には、親切であり続ける理由があって……。雨の夜の出会いがもたらした、優しくも切ない物語。
出来レースだった王太子妃選に落選した公爵令嬢 役立たずと言われ家を飛び出しました でもあれ? 意外に外の世界は快適です
流空サキ
恋愛
王太子妃に選ばれるのは公爵令嬢であるエステルのはずだった。結果のわかっている出来レースの王太子妃選。けれど結果はまさかの敗北。
父からは勘当され、エステルは家を飛び出した。頼ったのは屋敷を出入りする商人のクレト・ロエラだった。
無一文のエステルはクレトの勧めるままに彼の邸で暮らし始める。それまでほとんど外に出たことのなかったエステルが初めて目にする外の世界。クレトのもとで仕事をしながら過ごすうち、恩人だった彼のことが次第に気になりはじめて……。
純真な公爵令嬢と、ある秘密を持つ商人との恋愛譚。
この子、貴方の子供です。私とは寝てない? いいえ、貴方と妹の子です。
サイコちゃん
恋愛
貧乏暮らしをしていたエルティアナは赤ん坊を連れて、オーガスト伯爵の屋敷を訪ねた。その赤ん坊をオーガストの子供だと言い張るが、彼は身に覚えがない。するとエルティアナはこの赤ん坊は妹メルティアナとオーガストの子供だと告げる。当時、妹は第一王子の婚約者であり、現在はこの国の王妃である。ようやく事態を理解したオーガストは動揺し、彼女を追い返そうとするが――
【完結】本物の聖女は私!? 妹に取って代わられた冷遇王女、通称・氷の貴公子様に拾われて幸せになります
Rohdea
恋愛
───出来損ないでお荷物なだけの王女め!
“聖女”に選ばれなかった私はそう罵られて捨てられた。
グォンドラ王国は神に護られた国。
そんな“神の声”を聞ける人間は聖女と呼ばれ、聖女は代々王家の王女が儀式を経て神に選ばれて来た。
そして今代、王家には可愛げの無い姉王女と誰からも愛される妹王女の二人が誕生していた……
グォンドラ王国の第一王女、リディエンヌは18歳の誕生日を向かえた後、
儀式に挑むが神の声を聞く事が出来なかった事で冷遇されるようになる。
そして2年後、妹の第二王女、マリアーナが“神の声”を聞いた事で聖女となる。
聖女となったマリアーナは、まず、リディエンヌの婚約者を奪い、リディエンヌの居場所をどんどん奪っていく……
そして、とうとうリディエンヌは“出来損ないでお荷物な王女”と蔑まれたあげく、不要な王女として捨てられてしまう。
そんな捨てられた先の国で、リディエンヌを拾ってくれたのは、
通称・氷の貴公子様と呼ばれるくらい、人には冷たい男、ダグラス。
二人の出会いはあまり良いものではなかったけれど───
一方、リディエンヌを捨てたグォンドラ王国は、何故か謎の天変地異が起き、国が崩壊寸前となっていた……
追記:
あと少しで完結予定ですが、
長くなったので、短編⇒長編に変更しました。(2022.11.6)
アンジェリーヌは一人じゃない
れもんぴーる
恋愛
義母からひどい扱いされても我慢をしているアンジェリーヌ。
メイドにも冷遇され、昔は仲が良かった婚約者にも冷たい態度をとられ居場所も逃げ場所もなくしていた。
そんな時、アルコール入りのチョコレートを口にしたアンジェリーヌの性格が激変した。
まるで別人になったように、言いたいことを言い、これまで自分に冷たかった家族や婚約者をこぎみよく切り捨てていく。
実は、アンジェリーヌの中にずっといた魂と入れ替わったのだ。
それはアンジェリーヌと一緒に生まれたが、この世に誕生できなかったアンジェリーヌの双子の魂だった。
新生アンジェリーヌはアンジェリーヌのため自由を求め、家を出る。
アンジェリーヌは満ち足りた生活を送り、愛する人にも出会うが、この身体は自分の物ではない。出来る事なら消えてしまった可哀そうな自分の半身に幸せになってもらいたい。でもそれは自分が消え、愛する人との別れの時。
果たしてアンジェリーヌの魂は戻ってくるのか。そしてその時もう一人の魂は・・・。
*タグに「平成の歌もあります」を追加しました。思っていたより歌に注目していただいたので(*´▽`*)
(なろうさま、カクヨムさまにも投稿予定です)
美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ
さら
恋愛
会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。
ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。
けれど、測定された“能力値”は最低。
「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。
そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。
優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。
彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。
人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。
やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。
不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる