これは私の物語

笹乃笹世

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一章 村からの脱出

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「あっ、えっと……そう、なんですけど……」

 これは、この辺りの名士でもあるお金持ちシャルマン卿が、この辺りの孤児たちのために毎年1回配ってくれる贈り物――これって新品がそのまんま私たちの手元に来ることとかあるんだ……?

「……ありがたく頂戴しなさい」

 確実に機嫌が急降下している村長を前に、それでも正解が分からず戸惑いながらたずねる。

「あの……グリンダさんとの交換は……?」

 グリンダというのはこの村長の孫娘で――毎年毎年、シャルマン卿が孤児のために施してくれる新品の服やら鞄やらを、自分が大切にしているもの――と言い張って、自分が使い古した中古品と交換してくださるという、大変に根性が捻じ曲がり……――心優しきお嬢様だ。
 しかもわざわざ私たちに新品を使っているところを見せつけにわざわざあの小屋まで来てくれるという底意地の悪さまで兼ねそろえていらっしゃる。
 ……なんで今回はそれが無い?

「――これは孤児が施されるシャルマン卿のお慈悲だ。 ……お前にはうちのグリンダが孤児に見える、とでも?」
「め、滅相も……! ――あの、ありがたく頂戴いたします。 慈悲深きシャルマン卿と村長に深く感謝いたします……!」

 ここで村長の機嫌を損ねるわけにはいかないと、私は慌てて靴をかき集め、いつものように膝を曲げながら頭を下げた。
 貴族でも無いくせに貴族に対する礼をさせて自尊心を満たすとか、こいつもこいつで虚栄心拗らせてんなよなぁ……

「――うむ」

 深く頭を下げていると、不機嫌ながらもどこか満足そうな声が返ってきたのでソロソロと頭を上げる。
 もう一度お辞儀をして部屋を出ようとしていた私に、村長が思い出したように話しかけてきた。

「ああ――それで出発の日は決めているのか?」

 あ、それこっちのタイミングだったんだ……?

「えっと……まだ――早い方がいいですか?」

 私の答えに村長は急にうさんくさい笑顔を貼り付け猫撫で声を出す。

「いやいや、何もそう急ぐ事は無いだろう。 そうだな……3日後なんてどうだ?」
「あ、はい。 では3日後にします」

 その返事に、うむうむと、満足げに頷く村長、そんな村長に側近の1人がなにかを差出す。
 それをチラリと見た村長は、軽く頷きながらそれをすぐに私の方に差し出した。

 ……渡すものが多すぎないか?
 最初から一つにまとめておけと……

「これは?」

 私に差し出されているのだから、私に渡すものだとは思うが、念のため首をかしげて確認する。

「お前への餞別だ」
「……私?」
「――まだ子供のお前にはわからないかもしれないが、お前の髪色は目立ちすぎる。 これで隠すことを覚えなさい」
「隠す……」
「やがてわかる。 明日からつけなさい」
「……はい村長。 ご好意に感謝します」

 歪みそうになる顔を堪えながら、私は再び深いお辞儀をして、執務室を後にした。
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