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一章 村からの脱出
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「――じゃあ出発の日、買いにきますね!」
苛立ちをグッと堪えながら笑顔で答える。
――貰ったんだからもう私のお金。 カケラだってムダ使いしない!
「ぇ、出発、かい?」
「そんないいパン、買って帰ったら明日には無くなっちゃいそうで……」
わざとらしいほど恥ずかしそうに答えた。
――今日の分のパンはあるんだよ。 カチカチだけどね!
優先すべきは塩! そして護身用の刃物! チーズと干し肉も追加したいところだけど……どうせ足元見られるんだろうなぁ……
そう内心で肩を落としていると、目の前に大きなパンが差し出された。
それは店で一番大きく、面倒な飾り模様がびっしりと入ったパンで、比較的裕福なご家庭の方々が好んで買っていくパンだった。
「持ってけ」
「え……?」
「試しだ。 いつもみてぇに売れ残りばっかりじゃウチの味もろくにわかんねぇだろ」
……その売れ残りしか売ってくれないのが、お隣にいる奥様なんですけどね?
「――金はいらねぇよ。 持って帰って弟たちに食わしてやんな」
「……良いんですか? ――ありがとうございます!」
奴隷にしてやると手ぐすね引いている相手から受ける親切を、心底気持ち悪く思いながら貼り付けた愛想笑い、それがちゃんとごまかせる程度のものになっているのか、それが1番不安だった。
◇
「――ああ、良かったダリア! 会えないかと思ったよ」
色々持たされたパン屋からの帰り道、小屋が見えてきたところで、薬屋のオババが杖をつきながら急足で近づいてきた。
「あ、お師匠様。 なにか御用ですか?」
――この人はある意味で村長よりも厄介なご老人だ。
自称錬金術師のオババで、魔物よけや痛み止め、ポーションと呼ばれる薬なんかをを売っている薬屋の店主。
そして……呼びかける時は“お師匠様”と言わないと反応すら返してくれない厄介な御仁だ。 ちなみにこのかた、錬金術師どころか、ちゃんとした教育を受けた薬師でもない。
若い頃に薬師の元に修行に出たはいいが、他の弟子たちとの折り合いが悪く出奔。 自称薬師として、見よう見まねで作ったポーションがほんの少しの効力を発揮したがために運良く薬師として認められ、今ではこんな辺鄙な田舎ではあるものの、錬金術師の大先生様だともてはやされ満足してる。
――そして事あるごとに、この話を自慢話として語って下さるという、本当に変わった感性の御仁なのだ。
「――いやね? 今まで散々世話になったダリアが引っ越すと聞いてね?」
……アンタもかい。
「ほらこれ持っておいき!」
そう言って渡されたのは、たくさんの魔物よけで――ってこれ、ほとんど私がほぐしたやつじゃん!
アンタやアンタの弟子――娘や孫が私にばっかり押し付けるから、あの店のほとんどの魔物よけは私が作ったものだよ!
苛立ちをグッと堪えながら笑顔で答える。
――貰ったんだからもう私のお金。 カケラだってムダ使いしない!
「ぇ、出発、かい?」
「そんないいパン、買って帰ったら明日には無くなっちゃいそうで……」
わざとらしいほど恥ずかしそうに答えた。
――今日の分のパンはあるんだよ。 カチカチだけどね!
優先すべきは塩! そして護身用の刃物! チーズと干し肉も追加したいところだけど……どうせ足元見られるんだろうなぁ……
そう内心で肩を落としていると、目の前に大きなパンが差し出された。
それは店で一番大きく、面倒な飾り模様がびっしりと入ったパンで、比較的裕福なご家庭の方々が好んで買っていくパンだった。
「持ってけ」
「え……?」
「試しだ。 いつもみてぇに売れ残りばっかりじゃウチの味もろくにわかんねぇだろ」
……その売れ残りしか売ってくれないのが、お隣にいる奥様なんですけどね?
「――金はいらねぇよ。 持って帰って弟たちに食わしてやんな」
「……良いんですか? ――ありがとうございます!」
奴隷にしてやると手ぐすね引いている相手から受ける親切を、心底気持ち悪く思いながら貼り付けた愛想笑い、それがちゃんとごまかせる程度のものになっているのか、それが1番不安だった。
◇
「――ああ、良かったダリア! 会えないかと思ったよ」
色々持たされたパン屋からの帰り道、小屋が見えてきたところで、薬屋のオババが杖をつきながら急足で近づいてきた。
「あ、お師匠様。 なにか御用ですか?」
――この人はある意味で村長よりも厄介なご老人だ。
自称錬金術師のオババで、魔物よけや痛み止め、ポーションと呼ばれる薬なんかをを売っている薬屋の店主。
そして……呼びかける時は“お師匠様”と言わないと反応すら返してくれない厄介な御仁だ。 ちなみにこのかた、錬金術師どころか、ちゃんとした教育を受けた薬師でもない。
若い頃に薬師の元に修行に出たはいいが、他の弟子たちとの折り合いが悪く出奔。 自称薬師として、見よう見まねで作ったポーションがほんの少しの効力を発揮したがために運良く薬師として認められ、今ではこんな辺鄙な田舎ではあるものの、錬金術師の大先生様だともてはやされ満足してる。
――そして事あるごとに、この話を自慢話として語って下さるという、本当に変わった感性の御仁なのだ。
「――いやね? 今まで散々世話になったダリアが引っ越すと聞いてね?」
……アンタもかい。
「ほらこれ持っておいき!」
そう言って渡されたのは、たくさんの魔物よけで――ってこれ、ほとんど私がほぐしたやつじゃん!
アンタやアンタの弟子――娘や孫が私にばっかり押し付けるから、あの店のほとんどの魔物よけは私が作ったものだよ!
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