354 / 687
7章 大騒動の冬支度
6
しおりを挟む
「イメージ通りです。 ……でもこんな朝早くまで起きてて、大丈夫ですか?」
「ああ……ついさっきまで寝ちまってたし、今日は夜まで寝てていいってことになってっからそこまでの負担じゃ――あ、頑張ってるレオさんにパンの追加があったっていいぞ?」
「あはは、じゃあ今日はレオさんのだけ四つですって言ってトニーさんに渡しときますね?」
「おいやめろよ、それ絶対アニキに取られるやつじゃねぇかよ」
そんな話をしている後ろで、おっちゃんがスタスタと何回も往復しながら大きな箱や袋を運び入れる。
その量に思わず眉をひそめながらレオさんにたずねた。
「……もしかして酒場で料理人でも雇いました?」
「このクソめんどくせぇ時期に料理人なんか雇うわけねぇだろ」
「時期……? ――あ、じゃあ、うちからレシピを買う!」
我が家の補修工事の際、スープの作り方を教えたことが少しずつ広まってしまい、教えてくれと言ってくる人がそこそこやってくるようになってしまったので、一律一銅貨でレシピを売るようになっていた。
――もちろんその際「水の味が違うと味も変わっちゃうんですけどね?」と、一言付け加えることも忘れない。
……その一言で何かを察して買うのをやめる人もいるけど、逆にギラギラした瞳でこっちに挑戦的な態度をとってくる人もいる。
――別に、特別な“なにか”を隠したり誤魔化したりしてるつもりはないんだけどな……レシピによっちゃ粉イモのことだってココヤシのことだって書いてるし――こっちだって思いがけずお水が“特別”になっちゃっててビビってんの! みんなにガッカリもされたくないからもうずっとこれでいくしかないの!
……どうしよう、ゆくゆく現れる星蒼族が「うちの一族の大切な宝珠を調味料感覚で使ってる⁉︎」とかブリギレちゃったら……――私その日のうちに天に召されるかもしれない……
あ、ちなみに甘マメだけはポーションに回すのでどのレシピにも出してない。
「――ダリア、俺たちが料理上手だとでも思ってんのか?」
「……これまではお二人で料理出してたんでしょ? 今だって癒の日は料理出してるんだろうし……」
「買い被んじゃねぇよ。 俺もアニキもそのまま焼くかそのまま煮るかのどっちかだ」
「……――じゃあ、あんなにたくさんどうするの?」
「どうってお前、冬籠り用に決まってんだろ」
「……ふゆごもり?」
……オルディでは冬支度のこと、冬ごもりって言う、的な?
そのことをたずねようと口を開いた瞬間、レオさんが大袈裟な仕草と芝居掛かった口調で嘆き始めた。
「なんたって俺たちの1番の生命線が、癒の日を休みにしてやがってよぉ……! ――冬の間くらい店に集中したらどうだ? 親どもだって飯どころじゃねぇだろ?」
「……? 冬の間はエルベルトさんたち忙しいんですか?」
「ああ……ついさっきまで寝ちまってたし、今日は夜まで寝てていいってことになってっからそこまでの負担じゃ――あ、頑張ってるレオさんにパンの追加があったっていいぞ?」
「あはは、じゃあ今日はレオさんのだけ四つですって言ってトニーさんに渡しときますね?」
「おいやめろよ、それ絶対アニキに取られるやつじゃねぇかよ」
そんな話をしている後ろで、おっちゃんがスタスタと何回も往復しながら大きな箱や袋を運び入れる。
その量に思わず眉をひそめながらレオさんにたずねた。
「……もしかして酒場で料理人でも雇いました?」
「このクソめんどくせぇ時期に料理人なんか雇うわけねぇだろ」
「時期……? ――あ、じゃあ、うちからレシピを買う!」
我が家の補修工事の際、スープの作り方を教えたことが少しずつ広まってしまい、教えてくれと言ってくる人がそこそこやってくるようになってしまったので、一律一銅貨でレシピを売るようになっていた。
――もちろんその際「水の味が違うと味も変わっちゃうんですけどね?」と、一言付け加えることも忘れない。
……その一言で何かを察して買うのをやめる人もいるけど、逆にギラギラした瞳でこっちに挑戦的な態度をとってくる人もいる。
――別に、特別な“なにか”を隠したり誤魔化したりしてるつもりはないんだけどな……レシピによっちゃ粉イモのことだってココヤシのことだって書いてるし――こっちだって思いがけずお水が“特別”になっちゃっててビビってんの! みんなにガッカリもされたくないからもうずっとこれでいくしかないの!
……どうしよう、ゆくゆく現れる星蒼族が「うちの一族の大切な宝珠を調味料感覚で使ってる⁉︎」とかブリギレちゃったら……――私その日のうちに天に召されるかもしれない……
あ、ちなみに甘マメだけはポーションに回すのでどのレシピにも出してない。
「――ダリア、俺たちが料理上手だとでも思ってんのか?」
「……これまではお二人で料理出してたんでしょ? 今だって癒の日は料理出してるんだろうし……」
「買い被んじゃねぇよ。 俺もアニキもそのまま焼くかそのまま煮るかのどっちかだ」
「……――じゃあ、あんなにたくさんどうするの?」
「どうってお前、冬籠り用に決まってんだろ」
「……ふゆごもり?」
……オルディでは冬支度のこと、冬ごもりって言う、的な?
そのことをたずねようと口を開いた瞬間、レオさんが大袈裟な仕草と芝居掛かった口調で嘆き始めた。
「なんたって俺たちの1番の生命線が、癒の日を休みにしてやがってよぉ……! ――冬の間くらい店に集中したらどうだ? 親どもだって飯どころじゃねぇだろ?」
「……? 冬の間はエルベルトさんたち忙しいんですか?」
2
あなたにおすすめの小説
帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。
【完結】婚約者なんて眼中にありません
らんか
恋愛
あー、気が抜ける。
婚約者とのお茶会なのにときめかない……
私は若いお子様には興味ないんだってば。
やだ、あの騎士団長様、素敵! 確か、お子さんはもう成人してるし、奥様が亡くなってからずっと、独り身だったような?
大人の哀愁が滲み出ているわぁ。
それに強くて守ってもらえそう。
男はやっぱり包容力よね!
私も守ってもらいたいわぁ!
これは、そんな事を考えているおじ様好きの婚約者と、その婚約者を何とか振り向かせたい王子が奮闘する物語……
短めのお話です。
サクッと、読み終えてしまえます。
目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです
MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。
しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。
フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。
クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。
ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。
番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。
ご感想ありがとうございます!!
誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。
小説家になろう様に掲載済みです。
俺の可愛い幼馴染
SHIN
恋愛
俺に微笑みかける少女の後ろで、泣きそうな顔でこちらを見ているのは、可愛い可愛い幼馴染。
ある日二人だけの秘密の場所で彼女に告げられたのは……。
連載の気分転換に執筆しているので鈍いです。おおらかな気分で読んでくれると嬉しいです。
感想もご自由にどうぞ。
ただし、作者は木綿豆腐メンタルです。
【完結】恋につける薬は、なし
ちよのまつこ
恋愛
異世界の田舎の村に転移して五年、十八歳のエマは王都へ行くことに。
着いた王都は春の大祭前、庶民も参加できる城の催しでの出来事がきっかけで出会った青年貴族にエマはいきなり嫌悪を向けられ…
私を家から追い出した妹達は、これから後悔するようです
天宮有
恋愛
伯爵令嬢の私サフィラよりも、妹エイダの方が優秀だった。
それは全て私の力によるものだけど、そのことを知っているのにエイダは姉に迷惑していると言い広めていく。
婚約者のヴァン王子はエイダの発言を信じて、私は婚約破棄を言い渡されてしまう。
その後、エイダは私の力が必要ないと思い込んでいるようで、私を家から追い出す。
これから元家族やヴァンは後悔するけど、私には関係ありません。
オネェ系公爵子息はたからものを見つけた
有川カナデ
恋愛
レオンツィオ・アルバーニは可愛いものと美しいものを愛する公爵子息である。ある日仲の良い令嬢たちから、第三王子とその婚約者の話を聞く。瓶底眼鏡にぎちぎちに固く結ばれた三編み、めいっぱい地味な公爵令嬢ニナ・ミネルヴィーノ。分厚い眼鏡の奥を見たレオンツィオは、全力のお節介を開始する。
いつも通りのご都合主義。ゆるゆる楽しんでいただければと思います。
「優秀な妹の相手は疲れるので平凡な姉で妥協したい」なんて言われて、受け入れると思っているんですか?
木山楽斗
恋愛
子爵令嬢であるラルーナは、平凡な令嬢であった。
ただ彼女には一つだけ普通ではない点がある。それは優秀な妹の存在だ。
魔法学園においても入学以来首位を独占している妹は、多くの貴族令息から注目されており、学園内で何度も求婚されていた。
そんな妹が求婚を受け入れたという噂を聞いて、ラルーナは驚いた。
ずっと求婚され続けても断っていた妹を射止めたのか誰なのか、彼女は気になった。そこでラルーナは、自分にも無関係ではないため、その婚約者の元を訪ねてみることにした。
妹の婚約者だと噂される人物と顔を合わせたラルーナは、ひどく不快な気持ちになった。
侯爵家の令息であるその男は、嫌味な人であったからだ。そんな人を婚約者に選ぶなんて信じられない。ラルーナはそう思っていた。
しかし彼女は、すぐに知ることとなった。自分の周りで、不可解なことが起きているということを。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる