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朝の教習。
リアーヌは何事もない平穏な朝の時間を堪能しつつ、昨日無事にラッフィナート家と契約を交わしたことをビアンカに説明していた。
「ーー本当に契約交わしたのね……?」
ビアンカが半信半疑で再度確認するようにたずねる。
通常、こういった契約は卒業間近になってようやく正式に交わすものなのだ。
雇われる側としてはヒヤヒヤする思いを抱えての学園生活となるが、雇う側としては、その人物の人となりを十分に吟味し、交友関係に不安がないかを確認し、自分に見せている誠実な仮面の下になにかを隠していないことを見極める時間が必要となる。
その為、よほど人気の『ギフト』持ちでない限りこのような素早い契約があるわけもなくーー
それらの理由から、ビアンカは“リアーヌの早とちり”であると推測していたのだ。
「勘違いじゃないってばー。 ちゃんとヴァルムさんに確認してもらって「この条件であれば、お嬢様がお手伝いするにふさわしいでしょう」って太鼓判押されたんだから!」
(ーー若干渋々なトコはあったけどね! ……ヴァルムさんは私に花嫁修行させて“いいとこの奥様”ってのにしたいらしいんだけど……ーーこの学園きて分かったんだ! 私ってば貴族向いてない! だからちゃんと稼ぎ口は確保しとかないとね!)
「……ボスハウト家の執事が言うんだもの間違いはないのよねぇ……?」
ビアンカは頬に手を当てながらそう呟き、しかし、いまだに納得がいかないのか、しきりに首を傾げていた。
「……私だけが言ってたら間違いみたいな言い方……」
「ーー貴女だけが言ってたなら、きっと信じてないわ?」
(曇りなき眼で言い切りながったな……)
当然じゃない? と言う言葉が聞こえてきそうなビアンカの態度に、リアーヌの瞳がジットリと湿り気を帯び、不満そうに細められた。
「ーーもしかして転写以外にもできたりするのかしら? 例えば……こんなぺんをそのまま……複製? ペンをペンとしてもう一本作り出せるとか……」
「出来たらよかったんだけどねー。 子供の頃散々頑張ったけど出来なかったー」
言いながらリアーヌは脱力したように背中を丸めながら机に手をついた。
「ーーいくらなんでも、悪いことに力は使わないわよね……?」
ビアンカはググッと顔を近づけ、ごくごく小さい囁きのような声でたずねた。
「……ビアンカ、すぐに私を犯罪者予備軍にしようとする……」
リアーヌは(前も中庭で犯罪やって金稼いでたのか⁉︎ って疑われた……)と心の中でグチを言いながら顔を顰めた。
「だって早すぎるのよ。 聞かない話じゃないけど、リアーヌの力は……」
そこまで言ってビアンカはゴニョゴニョっと言葉を濁した。
自分が失礼なことを言っているという自覚があったためだ。
「あったら便利なコピーだしね?」
リアーヌ自身は自分のギフトが地味である自覚が充分にあったため、ビアンカの言葉を失礼だとは受け取らず、首をすくめて呆気なく同意してみせた。
しかし「でもさ……?」とさらに言葉を重ねる。
「お金持ちってその“便利”にお金使いたいんじゃ無いの⁇」
「ーー確かに。 そうよね、だって相手はラッフィナート紹介ですもの……金30なんで微々たるものでしょうし……」
「そうなの……? もっと粘ればよかったかなぁ……⁇」
リアーヌはビアンカの言葉に、残念そうに眉を下げながら言った。
「過ぎた報酬は身を滅ぼすわよ。 それに執事が太鼓判を押すほどの好条件だったんでしょ?」
「ーーそうだった!」
そう答えたリアーヌはシャキンッ! と姿勢を正すと、ニカッと歯を見せながら無邪気に喜んだ。
そんなリアーヌに釣られるように笑顔になるビアンカ。
しかし、その笑顔をすぐによそ行きのものにすげ替えると、ゆっくり首を傾げながら口元に手を当てて口を開いた。
「歯を見せて笑うのは、いかがなものかと思うわ?」
「……ハイ」
ビアンカからの圧に、リアーヌはゆっくりと唇を真一文字に引き結ぶのだったーー
(ちゃんと注意してもらえるのありがたいんだけど……マナーの先生より怖いんだもの……)
ビアンカの指導により、リアーヌのマナーの成績がこれ以上の落ち込みを見せることは防がれているようだったーー
リアーヌは何事もない平穏な朝の時間を堪能しつつ、昨日無事にラッフィナート家と契約を交わしたことをビアンカに説明していた。
「ーー本当に契約交わしたのね……?」
ビアンカが半信半疑で再度確認するようにたずねる。
通常、こういった契約は卒業間近になってようやく正式に交わすものなのだ。
雇われる側としてはヒヤヒヤする思いを抱えての学園生活となるが、雇う側としては、その人物の人となりを十分に吟味し、交友関係に不安がないかを確認し、自分に見せている誠実な仮面の下になにかを隠していないことを見極める時間が必要となる。
その為、よほど人気の『ギフト』持ちでない限りこのような素早い契約があるわけもなくーー
それらの理由から、ビアンカは“リアーヌの早とちり”であると推測していたのだ。
「勘違いじゃないってばー。 ちゃんとヴァルムさんに確認してもらって「この条件であれば、お嬢様がお手伝いするにふさわしいでしょう」って太鼓判押されたんだから!」
(ーー若干渋々なトコはあったけどね! ……ヴァルムさんは私に花嫁修行させて“いいとこの奥様”ってのにしたいらしいんだけど……ーーこの学園きて分かったんだ! 私ってば貴族向いてない! だからちゃんと稼ぎ口は確保しとかないとね!)
「……ボスハウト家の執事が言うんだもの間違いはないのよねぇ……?」
ビアンカは頬に手を当てながらそう呟き、しかし、いまだに納得がいかないのか、しきりに首を傾げていた。
「……私だけが言ってたら間違いみたいな言い方……」
「ーー貴女だけが言ってたなら、きっと信じてないわ?」
(曇りなき眼で言い切りながったな……)
当然じゃない? と言う言葉が聞こえてきそうなビアンカの態度に、リアーヌの瞳がジットリと湿り気を帯び、不満そうに細められた。
「ーーもしかして転写以外にもできたりするのかしら? 例えば……こんなぺんをそのまま……複製? ペンをペンとしてもう一本作り出せるとか……」
「出来たらよかったんだけどねー。 子供の頃散々頑張ったけど出来なかったー」
言いながらリアーヌは脱力したように背中を丸めながら机に手をついた。
「ーーいくらなんでも、悪いことに力は使わないわよね……?」
ビアンカはググッと顔を近づけ、ごくごく小さい囁きのような声でたずねた。
「……ビアンカ、すぐに私を犯罪者予備軍にしようとする……」
リアーヌは(前も中庭で犯罪やって金稼いでたのか⁉︎ って疑われた……)と心の中でグチを言いながら顔を顰めた。
「だって早すぎるのよ。 聞かない話じゃないけど、リアーヌの力は……」
そこまで言ってビアンカはゴニョゴニョっと言葉を濁した。
自分が失礼なことを言っているという自覚があったためだ。
「あったら便利なコピーだしね?」
リアーヌ自身は自分のギフトが地味である自覚が充分にあったため、ビアンカの言葉を失礼だとは受け取らず、首をすくめて呆気なく同意してみせた。
しかし「でもさ……?」とさらに言葉を重ねる。
「お金持ちってその“便利”にお金使いたいんじゃ無いの⁇」
「ーー確かに。 そうよね、だって相手はラッフィナート紹介ですもの……金30なんで微々たるものでしょうし……」
「そうなの……? もっと粘ればよかったかなぁ……⁇」
リアーヌはビアンカの言葉に、残念そうに眉を下げながら言った。
「過ぎた報酬は身を滅ぼすわよ。 それに執事が太鼓判を押すほどの好条件だったんでしょ?」
「ーーそうだった!」
そう答えたリアーヌはシャキンッ! と姿勢を正すと、ニカッと歯を見せながら無邪気に喜んだ。
そんなリアーヌに釣られるように笑顔になるビアンカ。
しかし、その笑顔をすぐによそ行きのものにすげ替えると、ゆっくり首を傾げながら口元に手を当てて口を開いた。
「歯を見せて笑うのは、いかがなものかと思うわ?」
「……ハイ」
ビアンカからの圧に、リアーヌはゆっくりと唇を真一文字に引き結ぶのだったーー
(ちゃんと注意してもらえるのありがたいんだけど……マナーの先生より怖いんだもの……)
ビアンカの指導により、リアーヌのマナーの成績がこれ以上の落ち込みを見せることは防がれているようだったーー
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