成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世

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(妻のそばにいる男の使用人を邪険に思わなくする方法はある……そしてそれは私にとっても好都合だ)

 心の中で考えをまとめ上げ、満足げな笑みを浮かべるトビアス。

 自分が仕えている国王に絶対の忠誠を誓っているトビアスではあったが、この王城でその地位を守ろうとするなら、何事も政治に結びつく。
 その方面に目を光らせアンテナを張っていなければ、誰であろうと簡単に失脚出来てしまえるのだ。

 国王が気に入り、着々と財産を増やし続けているボスハウト家、そして有能と名高いヴァルムともこれまで以上に強いつながりがーー
 そして、の時はぜひ陛下のためにその能力を奮っていただきたいーー
 そう考えを巡らすのは、トビアスにとってごくごく自然なことであった。

 ーーこの報告会から数日後。
 オリバーとアンナの婚約が整うこととなる。
 これは、各々の考えや望みがうまく噛み合った結果であり、多くの人々から歓迎される婚約であったのだった。



 夏休暇も終わり、久々の再開を果たしたリアーヌとビアンカはそろそろ定位置となりつつある、中庭のベンチに腰掛けながら夏休暇の間の出来事を報告しあっていた。

「……私てっきり貴女は読書が苦手なんだと思ってましたわ?」
「ーー読書は好き。 でもこの国の本は天使がうるさいから嫌い」
「……じゃあ何を読みますのよ?」
「好きなのは生物図鑑と植物図鑑と鉱物図鑑。 あ、辞書も意外に楽しい」

(普通の生物や植物がほとんどなんだけど、たまにザ・ファンタジーが混じってて、それを見つけた時の喜びったらないよね! 本当にごくごく稀にゲームに出てきた植物や鉱物なんか発見した日にゃ大興奮よ‼︎)

「ーー思った以上にまともな答えが返ってきだわね……?」
「あー、意地悪言うとお土産渡してあげないんだからー」

 リアーヌは尖らせた唇を見せつけるように顔を近づけると、下から顔を覗き込むように首を傾げる。

「あら、すでに沢山いただいてるわよ?」
「あれはうちのお金で買ったやつで、これは私のおこずかいから出したものだから別なのー」

 唇を尖らせながら、バックの中に手を入れてお土産を探しているリアーヌの言葉に、ビアンカは(それのどこに大きな違いがあると言うのかしら……?)と考えながらも口には出さず、リアーヌが目当てのものを取り出すまで静かに待っていた。



「……異国の本かしら? 見慣れない装丁ね⁇」

 ビアンカはリアーヌに手渡された本を興味深そうにまじまじと見つめながらたずねる。

「アウセレの本なんだ。 この国の本は和紙って呼ばれる植物紙で出来てるんだよ」
「和紙……」
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