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◇
ディスディアスに戻る船の上。
リアーヌはすっかり定位置となった甲板の囲いの中で座り込んでいた。
いつもと違うのはその隣にゼクスが座り込んでいるだろうか。
「帰りも予定より早くなるようなら、サンドバルにも顔出してから帰ろうか?」
「ーーじゃあ、頑張らなきゃ⁉︎」
ゼクスの言葉にリアーヌの瞳が輝き、その手からだいぶ大きな風が放出される。
ドゥン……と帆が大きく膨らみ、船がガクンッと大きく揺れる。
「ーーうん。 リアーヌ落ち着いて? これ以上は積荷が危ない」
そこかしこから聞こえてくる苦情の声を聞きながら、ゼクスはリアーヌの手をそっと下ろした。
「……すみません」
「いつも通りで頼める……?」
「うぃ」
シュン……と元気を無くしたリアーヌに声をかけたのは、周りにいる風持ちたちだった。
「嬢、あいつらの苦情なんて気にすんなって!」
「そーそー! それより今日も頼むぜぇ? 早く着けばその分休みも増える!」
「嬢も休みが増えると嬉しいだろ?」
「……ーー確かに?」
(夏休暇を増えたりしないけど、早くつけばその分自由になる日が多くなるわけだ……? あり寄りのありですね……?)
気合を入れて、それなりの強さの風を送るリアーヌ。
そんなリアーヌにゼクスはホッとしたように話しかけた。
「ーー良かった」
「……なにがですか?」
「行きの時ーー最初だけだけどだいぶ辛そうだったから……船、嫌いになっちゃったかなー? ってちょっと心配してたんだ」
「本当に最初だけだったじゃ無いですか」
「それでも……ーー最初の印象って大きいだろ? イヤだなって感じたら、次からは回避しようって思うだろ?」
「ーーその為に今日も風を……?」
「あー……これが、回避術なんだ……?」
「そうですよ! お手伝いのおかげで毎日快適です!」
「ーー船の上で毎日快適ってのもどうなんだろうね? しかも本気で言ってるよね……?」
「……ウソなんかついたってしょうがないじゃ無いですか?」
「それは……そうなんだけどね?」
二人の会話に風持ちたちが茶々を入れる。
「そうだぞ坊。 嬢がいてさえくれりゃ快適だろうが!」
「嬢! 今日もスパ頼むな!」
「任せてください! おかわりのお湯もジャンジャン用意しますからね!」
そんなリアーヌの頼もしい言葉に「おおおっ」と歓声を上げる船員たち。
「ーーすっかり人気者だね?」
「あはは、なんか嬉しいです。 ーーあ、そういえば木の苗ありがとうございました」
「喜んでもらえて良かったよ」
「私、その辺りのことすっかり忘れてて……」
ディスディアスに戻る船の上。
リアーヌはすっかり定位置となった甲板の囲いの中で座り込んでいた。
いつもと違うのはその隣にゼクスが座り込んでいるだろうか。
「帰りも予定より早くなるようなら、サンドバルにも顔出してから帰ろうか?」
「ーーじゃあ、頑張らなきゃ⁉︎」
ゼクスの言葉にリアーヌの瞳が輝き、その手からだいぶ大きな風が放出される。
ドゥン……と帆が大きく膨らみ、船がガクンッと大きく揺れる。
「ーーうん。 リアーヌ落ち着いて? これ以上は積荷が危ない」
そこかしこから聞こえてくる苦情の声を聞きながら、ゼクスはリアーヌの手をそっと下ろした。
「……すみません」
「いつも通りで頼める……?」
「うぃ」
シュン……と元気を無くしたリアーヌに声をかけたのは、周りにいる風持ちたちだった。
「嬢、あいつらの苦情なんて気にすんなって!」
「そーそー! それより今日も頼むぜぇ? 早く着けばその分休みも増える!」
「嬢も休みが増えると嬉しいだろ?」
「……ーー確かに?」
(夏休暇を増えたりしないけど、早くつけばその分自由になる日が多くなるわけだ……? あり寄りのありですね……?)
気合を入れて、それなりの強さの風を送るリアーヌ。
そんなリアーヌにゼクスはホッとしたように話しかけた。
「ーー良かった」
「……なにがですか?」
「行きの時ーー最初だけだけどだいぶ辛そうだったから……船、嫌いになっちゃったかなー? ってちょっと心配してたんだ」
「本当に最初だけだったじゃ無いですか」
「それでも……ーー最初の印象って大きいだろ? イヤだなって感じたら、次からは回避しようって思うだろ?」
「ーーその為に今日も風を……?」
「あー……これが、回避術なんだ……?」
「そうですよ! お手伝いのおかげで毎日快適です!」
「ーー船の上で毎日快適ってのもどうなんだろうね? しかも本気で言ってるよね……?」
「……ウソなんかついたってしょうがないじゃ無いですか?」
「それは……そうなんだけどね?」
二人の会話に風持ちたちが茶々を入れる。
「そうだぞ坊。 嬢がいてさえくれりゃ快適だろうが!」
「嬢! 今日もスパ頼むな!」
「任せてください! おかわりのお湯もジャンジャン用意しますからね!」
そんなリアーヌの頼もしい言葉に「おおおっ」と歓声を上げる船員たち。
「ーーすっかり人気者だね?」
「あはは、なんか嬉しいです。 ーーあ、そういえば木の苗ありがとうございました」
「喜んでもらえて良かったよ」
「私、その辺りのことすっかり忘れてて……」
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