成り上がり令嬢暴走日記！

835

　そんなリアーヌの言動に、ゼクスはぷふっと噴き出し、やがてケラケラと笑い出した。

「ふふっあはは！　なにそれ？」
「だ、だって……」

　唇を尖らせるリアーヌにゼクスはさらに楽しそうな笑い声をあげた。

（……確かにちょっと変なこと言った自覚はあるけど、さすがに笑いすぎでは⁉︎）

「ーーあー……可笑しい……」

　ひとしきり笑ったゼクスは、後ろに手をつきながら、空を見上げる。
　そして、眩しそうに目を細めながらリアーヌに話しかけた。

「ーー俺、この先もずっとこうしてたいな……」
「こうして……？」

　答えながら、リアーヌも後ろに手をつきながら空を見上げた。
　リアーヌの場所からは半分くらいが日傘で覆われた空だったが、それでも青い空を眺めながら潮風を感じるのは気持ちが良かった。

「ーー確かに今日は気持ちのいい風が吹いてるけど、そうじゃ無くて……ーー今回みたいに一緒に旅して、その国を観光したり商談したりして、家に帰ったら……やっぱり美味しいもの食べてーーたくさん笑って……リアーヌとずっと一緒にーー」

　ゼクスの話を聞きながら、リアーヌは漠然と（なんか……プロポーズみたい……）と首を傾げていた。
　キョトンとしているリアーヌにクスリと笑ったゼクスは、クスリと笑うと体勢を変える。
　そしてリアーヌに向かって跪くように座り直し、そしてリアーヌに向かって小さなケースを差し出していた。

「ーーぇ……？」
「リアーヌ・ボスハウト様、一生大切にするとこの指輪に誓います。　……私と結婚して下さい」
「ほわ……」

　リアーヌは何度も何度も差し出された、かなり大きめのダイヤの指輪とクスクス笑っているゼクスの顔を交互に見つめる。
　ーーゼクスが笑っている原因は、リアーヌがずっと口を開け続けているから、なのだが、この時のリアーヌがそれに気がつくことは無かった。
　そして心の中で（……この指輪があるのなら、これから先起こるであろうトラブルとほとんどがクリアになりそう……）と、なんだかとても現実的なことを考えていた。

「ーーどう？　俺と幸せになってくれる？」

　指輪を見つめなままポカンと口を開けっぱなしのリアーヌに、口をニヨニヨと歪ませながら話しかけた。
　その表情が見慣れたものだったからだろうか？
　ーー急に事態を把握したのか、ジワジワとその顔が真っ赤に染まり始めた。
　耳や首まで赤く染まっている。

「……ぅ、あ……のーー」
「……“はい”か“いいえ”で答えてくれると嬉しい、かな？」
「……は、い？」

　戸惑いがちに……しかし、しっかりと頷いたリアーヌにゼクスは満面の笑顔を浮かべ、その身体を抱きしめた。