魔王と呼ばれた勇者、或いは勇者と呼ばれた魔王 〜最強の魔剣で自由に生きる! 金も女も、国さえも思いのまま!! …でも何かが違うみたいです

ちありや

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第35話 翼竜討伐∶後編

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「グッジョブだモンモン!」

 俺の声は当然向こうには聞こえないだろうが、俺には宵闇の中、城壁の上で小躍りするモンモンの影が見て取れた。
 
 翼竜ワイバーンに向けて放たれた大弩バリスタの矢は見事ワイバーンに命中したものの、その箇所は尻尾の付け根であり致命傷には程遠い。
 加えてワイバーンの行動を抑制する為のロープが矢に結ばれておらず、当初の目的は達成不能となってしまった。まぁこれに関しては時間の無い中、急遽第2矢を装填して俺の指示したタイミングで撃ち出せただけでも御の字と言っておくべきかも知れない。

 だがこれは単に怪我をさせただけの攻撃ではない。俺が間合いを詰めて斬りかかる為の時間を2、3秒稼いでくれた事の方が大きい。

「もらったぁーっ!!」

 一足飛びに間を詰め聖剣を大上段に振り上げる。聖剣こいつをワイバーンの頭に叩き込めば仕事は終わる。後は報酬をもらって宴会の準備だ。

 そう思っていた……。

 ワイバーンが俺を威嚇する為に大きく口を開けえようとする。その瞬間、俺は大事な事を思い出した。
 
『ワイバーンって空を飛んで口から火を吹くんだけど…』

 匠合ギルドの食堂でモンモンに言われていた言葉が今になって脳裏を横切った。

 ワイバーンの口から何かが放たれる。俺は咄嗟に聖剣を盾にして身を隠すが、直後に剣の柄を持つ手が焼ける様な痛みを感じた。

 この感じは薬品、恐らく酸だ……。

 イジメを受けていた頃に、少量ではあるが学校で稀硫酸を浴びせられた事がある。その時とよく似た痛みだ。

 ワイバーンのブレス攻撃は炎ではなく酸だった。どちらも『焼ける感覚』はあるので、酸と炎を間違えたのか、或いは炎を吐く種類のワイバーンも居るのかだが、どちらにしてもイヤな思い出を蘇らせてくれたもんだよ……。

 しかも面倒な事に酸ブレスの攻撃を受けて、俺が一瞬怯んでしまった。
 慌てて剣を構え直すが、ワイバーンは俺には勝てないと判断したのか既に離脱するべく翼を羽ばたかせていた。
 ただのトカゲの親戚かと思ったが、なかなか機転の利く奴だ。

 だが感心している場合じゃない。このままでは俺の一太刀よりも早くワイバーンは地表から飛び立つだろう。次の手段の用意の無い俺達は任務失敗、金欠なのに今回被害を受けた家畜小屋や家畜たちの弁償をさせられかねない。
 
 俺は距離を詰めようとするが、奮闘虚しく俺の接近と同時にワイバーンは俺の攻撃射程の外へと飛び上がってしまった。ここでは聖剣は届かず、空中の不安定な標的にバリスタでは捕捉できない。

 万事休すか? と諦めかけた瞬間、ワイバーンが逃げ去ろうとした壁の上から何かが光った。
 壁の上から放たれた光は、そのままワイバーンへと向かい直撃し小さく爆ぜた。
 まるでビーム兵器か何かが当たったような音と衝撃が辺りに響く。そして一瞬後にバランスを崩したワイバーンは再び地表へと落下していった。

 ビーム(?)と落下の衝撃でワイバーンは動きを止める。これを好機と俺は一気にワイバーンへと駆け寄り、聖剣で首を落とす事に成功した。よく分からん介入はあったが、とにかく任務は完了だ。
 これで当面の宿や食い物の心配はせずに済んだな。ホッと胸をなで下ろし安堵の息をつく。

 それはそうと壁の上からワイバーンを攻撃した奴は何者なんだ? 俺を助けてくれたのか? はたまた別の目的があったのか…?

 壁の上に目を遣ると、そこにはローブを着て民芸品の様な奇妙な仮面で顔を隠した人物が立っていた。
 …様に見えた気がしたのだが、じっくり確認する間もなく、その人物は夕闇に紛れて消えてしまった……。

 ☆

「ねぇ見た? ボクのクリティカルヒット!」

 ワイバーンの血飛沫しぶきまみれた俺にモンモンが抱きついてくる。すっかり日が落ちてこちらに駆け寄ってくるクロニアや衛兵達の手にする松明たいまつだけが心細く辺りを照らしている。

「あぁ、お陰でクエストクリアだ。よくやってくれたな」

 グリグリとモンモンの頭を撫でてやる。モンモンはニシシと得意げな笑顔を見せた。
 しかし改めて思うと、こんなに接触しているのにモンモンが魅了されないのは本当に不思議だ。今更ベルモに問い質す事も不可能だし、本人は何も知らなそうだしなぁ……。

「それはそうと最後に何か変な光でワイバーンが攻撃された様に見えたけど、あれは一体…?」

「あれは魔導の『光の矢』ですわ。何も無い所から爆ぜる光の矢を作り出し相手に撃ち込む、禁忌の技の1つです。わたくしもこの目で見たのは初めて…」

「発射地点を確認したが誰も居なかったぞ。『撃つ前』からな…」

 ティリティアとクロニアも合流する。まさかと思ったがやはり魔法か。しかしなぜ魔法使いが俺達を助ける? 話に聞くこの世界の魔法使いはスパイや暗殺の専門家らしいので、善意の行いとは考え難い。俺達の知らない所で別の思惑が動いている可能性はある。

「まぁ今のところ周囲に殺気は感じないし、用があるなら向こうから来るだろ。今日はこれで退散しようぜ」

「こういう時は宴会だよね! まずはお腹いっぱい食べようよ!」

 本日の功労者モンモンが乗り出してくる。まぁ細かい不安や不満を言い出したらきりが無いからな。まずは王都での初勝利を祝うとするかな。

 ☆

 仕事を達成したものの、既に匠合ギルドの受付は時間により閉業しており、報酬を手にする事は出来なかった。
 まぁそれでも今日を豪勢に過ごす手持ちくらいはある。報酬は明日の朝イチで貰えば何の問題もない。

 ただ時間が遅くなってしまったので宿の部屋が大部屋しか残ってなかったので、そこを借りた。本来は8人程で使う広い部屋だが、今夜は4人で広々と使わせてもらおう。

 ☆
 
「……」
「……」
「……」

 部屋に入ったが何か気まずい。いつもはこういう状況シチュエーションで、俺達だけになったらティリティアかクロニアが俺に体を密着し始めて、自然に『お楽しみタイム』に突入するのだが、今日はモンモンが居る。

 こいつはどうしたら良いんだろう? 魅了が効いていないみたいなので「一緒にどうだ?」とも言いづらいし、モンモンの存在を無視しておっ始める訳にもいくまい。

 ベルモめ… こんな扱いづらい奴を寄越しやがって。どうすりゃ良いんだよ?
 いやまぁオッサンとか送り込まれた方が困り度は高いと思うけどさ……。

 一応モンモンが本日のMVPの為に、部屋から出て行かせるのも申し訳ない。さて、どうしたものか…?

「あれ? 何か雰囲気おかしいね。もしかしてエッチな事をする流れ…?」

 おまっ! 明け透けに何て事を言い出すんだよ? はしたないぞ!
 ティリティアとクロニアも同様に思ったらしく驚いて目を見開いていた。

「あぁ、どうぞどうぞお気遣いなく。ボクは横で大人しくしているから。それにお兄さんがボクと『したい』なら、それでも良いよ…?」

 そう言ってモンモンはおもむろにミニスカートに手を入れ、下着を降ろしだした。

「ほら、ボクって可愛いでしょ? だから森の仲間達とは『そういうお役目』でしていた事もあるんだ…」

 伏し目勝ちで、それでいて頬を紅潮させながらモンモンは告白する。普段明るいモンモンの意外な境遇に驚いて俺達3人は声も出ない。

「ボクもお兄さんなら抱かれても良いかな? って思ってるよ…?」

 恥ずかしそうにミニスカートをたくし上げるモンモン。
 その時、俺はモンモンに魅了が効かなかった理由とベルモのとんでもない悪意を理解した。

 スカートを捲くり上げたモンモンの股間には、下手したら俺よりも立派な『モノ』が付いていて大きくそそり勃っていた……。
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