魔王と呼ばれた勇者、或いは勇者と呼ばれた魔王 〜最強の魔剣で自由に生きる! 金も女も、国さえも思いのまま!! …でも何かが違うみたいです

ちありや

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第46話 作戦開始

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「ほらもっとシャッキリしろ総司令官殿!」
「立派になられてわたくしどもも誇らしいですわ」
「お兄さん、頑張って!!」

 俺は今、大ベテランの5点冒険者、皆の信頼の篤い聖女、教会の秘密兵器である勇者の3パーティを前に、彼らを指揮する総司令官として檄を飛ばすべく、ビールケース程の大きさの台の上に立たされていた。

 全く、どうしてこうなった…?

 ☆

「それでベルモ、全体の作戦はどうするんだ?」

 狂宴から一夜明けて作戦当日、昨晩4人を相手に奮闘した疲労も癒えぬまま装備を身に着けながら『傭兵団団長』のベルモに今回の作戦方針を聞いてみた。
 初顔合わせのメンバーが多く、誰が何の仕事をして連携を取っていくのかまるで想像がつかない。その辺の采配を聞いておきたかったからだ。

「は? 何の事だい? 例の蛇を皆で囲んでボコボコにするだけだろ?」

 おい良いのかそれで? 厄介な敵だって分かっているのだから、もう少し慎重に構えているのかと思ったら、全然そんな事は無かったらしい。
 ベルモらしいと言えばその通りだが、連携も無しに下手に考え無しに突っ込んでは混乱するだけだし、同士討ちフレンドリーファイアの危険性も高くなる。

「いやそれはさすがにマズいだろ。せっかく人員が揃っているのだから…」
 
 俺はベルモに上記の問題点と、各パーティに個別に仕事を与えて波状攻撃を仕掛けるべきだと進言した。

「はぁ? アンタは面倒くさいねぇ本当… よし! それなら団長権限で作戦総指揮はアンタに任せるわ! アンタなら気難しい傭兵団うちの連中も言う事を聞くだろうしね」

 はぁ? なに言ってんだこの女は?! 今まで部隊の指揮なんてした事無いのに急に出来る訳無いだろ!
 
 …いや待て。そうこうしている間にも作戦案は頭に湧き出てくる。各パーティの効率的な運用方法とかが何となく分かる……。
 
 そうか、これもきっと聖剣の力なのだろう。考えてみれば、今までもグズで優柔不断なせいでイジメられていた俺が、異世界に来てから突然即断即決の事態の連続に臆せずやり過ごして来れたというのは異常だ。とてもじゃないが俺だけの力とは考え難い。

 これまで戦闘力と魅了にばかり目が行っていたが、聖剣を取り出した時に女神は『どんな無理難題も解決できる知能と知識が与えられる』と言っていたじゃないか。
 
 今まで野外のサバイバルとかの知識等で役に立った記憶はあるが、そういった検索エンジン的な使い方だけではなくて、俺の思考や行動全般がすでに聖剣によって導かれていた訳だ。別に俺自身が転生して冴えた頭を持てる様になった訳じゃないんだな… 何となく分かってはいたが、軽くショックではあるな……。

「…? 急に呆けてどうした? 指揮官に任命されてそんなに嬉しかったのか?」

 クロニアに声掛けされて正気に戻る。

「いや、ちょっと考え事をしていただけだ… じゃあベルモ、俺が仕切らせてもらうぞ。ちょっとやってみたい事があるんだ…」

 とまぁこんな流れだ。

 ☆

依頼主クライアントの要望で急遽この作戦の指揮をとる事になった。よろしく頼む」

 壇上で挨拶をする俺に向けられる視線は様々だ。俺たち自身は2つの難題クエストをこなしたとはいえ、身分としてはまだ駆け出しの3点冒険者だ。
 
 最高ランクの5点冒険者の人達からは「ポッと出のくせに指揮官か?」と不審な目で見られるし、聖女パーティの女性陣からは『頼りなさそうだけど、この人大丈夫?』という顔で見られる。
 
 打って変わって勇者パーティからは、それなりに尊敬の念が感じられた視線が送られている。件の仮面をかぶった魔法使いっぽい人を除いて、だが。

 まあ、他人の視線なんていちいち気にしていられない。というわけで、俺はそのまま連中を前に作戦を説明することにした。

「蛇の怪物の位置はベルモの仲間が探ってくれるらしいので、俺たちはまとまって待機して、発見次第退治に向かう」

 ここで一旦話を切り全員の顔を見渡す。別に突飛な事を言っているわけではないので、今のところ不満げな顔は見当たらない。

「便宜上、今後俺たちのパーティーをA班、アンバーさんのパーティーをB班、聖女さんのパーティーをC班、勇者さんのパーティーをD班と呼ばせてもらう。ベルモは古馴染みでもあるので、暫定的に俺たちのパーティーに編入して戦う事にする」

 この世界の文字はアルファベットでは無いので、俺の言ったA班B班といった概念が伝わるのかどうだか少し自信がない。
 皆の顔を見渡すに、俺の説明に戸惑っている顔は見えなかったので、それなりの現地語に翻訳されて向こうには伝わっているのだろうと予想される。
 
「攻撃の主軸はA班とB班で、左右から挟み撃ちの形で行う。通常攻撃が効かない敵らしいので、そこで様々な攻撃方法を試し有効手段を探っていきたい。C班は聖女さんの回復術を軸に聖女さんの護衛に勤めて、もし余裕があればA班とB班の支援をしてもらいたい。最後にD班だが、今回が初陣らしいので当面後方で控えて欲しい。アタッカーのA班とB班が息切れした時に、その穴を埋めるような動きをしてもらえれば御の字だ」

 本当は勇者パーティーを前面に出して、彼らの戦力を探りたいところではあるが、覚悟も決まりきっていない初陣の若者を盾にするほど俺も非道じゃない。
 それに、それこそポッと出の勇者パーティーに活躍されては面白くないしな。ここは俺(の聖剣)のアピールの場でもあるのだから。
 
「各班の誰がどのような動きをするかは俺はいちいち指図しないので、各々のパーティーの中で話し合って決めてほしい。他に何か質問はあるかな?」

 他のメンバーからは特に不満や質問や意見は上がらなかった。初めての指揮官だが、当面の信用は勝ち得たのではなかろうか?

「そういう訳だから皆は待機していておくれ。今アタイの部下たちが情報を探っているから見つけ次第出動するよ!」

 ベルモのこのセリフでこの場は一旦お開きとなった。

 ☆

「例の化け物を発見、南西500m を北に向かって移動中!」

 ベルモの部下が状況の変化を知らせる。まず南の観測所から狼煙のろしが上がり、次に早馬が詳細な情報を携え、ベルモの元までやってきた。

「総員、出動ーっ!!」

 クロニアのよく通る号令で俺たちは揃って動き出した。クロニアは確か、初めて会った時も綺麗なよく通る大きな声で、人集めのために声を張り上げていたよなぁ……。

 森に慣れているベルモを先導役に、俺たちは森を走った。そして例の魔物がいると思われる場所にたどり着いたのだが、そこで見たものは……。

「あれは蛇っていうより、ただの細長い雲だねぇ…」

 モンモンの論評通り俺たちの目の前にあったのは、紫色をしたガスの塊が細長く列をなして森を横切っている姿だった。

 ただ、その所作と機動は明らかに蛇のそれであり、時々蛇のように首をもたげる動きをする。その持ち上げた首の高さだけでも10mはありそうな巨大さで、その全長はおそらく100mは有に超える物であろうことは容易に予測された……。
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