魔王と呼ばれた勇者、或いは勇者と呼ばれた魔王 〜最強の魔剣で自由に生きる! 金も女も、国さえも思いのまま!! …でも何かが違うみたいです

ちありや

文字の大きさ
49 / 120

第50話 森の中の会談

しおりを挟む
 モンモンから聞いた通り、松明たいまつを片手に野営地の西門から出て例の魔術師を探す。門衛の言葉によると「そのまま真っすぐ進んで行って不意に消え失せた」らしい。明らかに怪しい。『蛇』の討伐に手を貸してくれた以上、敵ではないのだろうが、純粋に善意で行動しているとも思えない。ま、俺も他人ひとの事は言えないけどな……。

 俺は職業クラス的な分類をするなら『戦士』であって、探索系の仕事ははっきり言って不得手だ。本来ならモンモンも連れてきて魔術師の追跡を任せるのが正解なのだろう。しかし今のモンモンはベルモに寄り添っていたいだろうし、今回の動きが俺をおびき寄せる魔術師の罠だった場合、モンモンを無駄に危険に晒す事になる。
 魔術師との戦い方は今ひとつよく分からない。そんな状況に仲間を巻き込むのは避けたい。

 それに何だか予感めいた物もある。『この場面は俺が1人で行くべきである』という謎の確信だ。例の魔術師が俺にとって不都合な言動をする様であれば、始末するのもやむ無し、という流れになる可能性はある……。

 ☆

 林道から外れて獣道を通る。何故だかは分からないが、俺には進むべき道が淡い燐光みたいなもので照らされている様に見えたのだ。
 きっとこの先で件の魔術師が俺待っているのだと確信できた。

 やがて獣道は直径20mほどの狭い広間に出る。松明の灯りに照らされた薄暗い広間の中央に、見覚えのある仮面とローブを纏った魔術師風の人物が佇んでいた。
 そいつは俺の手にした明かりに気が付くと、ゆっくりとこちらを向いて話しかけてきた。

「思っていたより早かったな、『偽りの勇者』よ…」

 仮面の中で声がくぐもっているのか、或いは変声機の様な物が付いているのか、その声は相変わらず性別のはっきりしない声だった。
 
「言うに事欠いてひとの事を偽物扱いとは失礼にも程があるぞ。第一俺は『勇者』だなどと自称した事は無いんだが?」

 険悪な雰囲気で始まってしまった。確かにティリティアはずっと俺の事を『勇者様』と呼んでいるが、俺はそれに気を良くして勇者を自称するほど馬鹿でも無いし自惚れてもいない。何より『世界を救う』なんて大層な使命を背負いたくはない。

「お互いに聞きたい事がたくさん有るのでは無いか? 誰にも邪魔されずに貴様とゆっくり話をしたくて、こんな所に誘わせてもらった。貴様の波長に合う誘導虫を使ってな…」

 なるほど、道中に見えた淡い燐光はその『なんとか虫』の光か……。

「そう言えばお互いに自己紹介すらもしていなかったな。私の名は『チャロアイト』、所属や目的はまだ伏せさせておいてくれたまえ。あぁ、君の自己紹介は不要だよ。粗方の素性は調べがついている…」

 俺の素性…? ラモグの町で指名手配されているのを知られているならちょっとヤバいかもな。或いは俺が異世界転生してきた事も知られているのか? 魔法とやらで知らぬ間に記憶を読まれたりしているのかも知れない。

「まず問おう。君が常に、そう寝る時ですら片時も離さないその立派な大剣は一体何処で手に入れた?」

 お? 俺自身の事じゃなくて、俺の聖剣に用事があるのか? うーん、これは正直に答えて良いものなのかな? 『女神が出てきて剣をくれた。あと童貞も卒業させてもらった』なんて話をしたら正気を疑われる可能性が高い。ここは様子見も兼ねて、奴の言葉尻をとらえて返答してみるか。

「俺の素性に調べが付いてるなら、剣の出処も察しが付いているんじゃないのか?」

 魔術師… チャロアイトは俺の答えにしばし沈黙したあと、体を小刻みに震わせてきた。怒っているのか笑っているのか、外からでは判別できない。

「くっくっくっ… 確かにすんなり答えられる質問では無かったかな…? よろしい、では君からの質問を受け付けよう。君も私に聞きたい事が多数有るのではないかな? ここからは互いに一問一答形式で質問しあい、疑問を解消していこうではないか。私は女神アイトゥーシアに懸けて嘘は言わないと誓おう。君も誓ってくれると嬉しい…」

 チャロアイトは笑っていた。そして俺とのこのやりとりを楽しんでいる様にも見える。問題は魔術師こいつの目的だよな。
 今回の国と教会の連名で行われた超難易度任務に、チャロアイトが全身全霊で臨んでくれたのは間違いない。勇者ショウを上手く導いて、『蛇』退治のMVPにまで持ってきたのはチャロアイトで間違いない。

 ならば『悪い奴ではない』のかも知れないが、顔と体を隠して暗躍する様はヒーローとして相応しくないと思える。こんな怪しい風体の奴に『目的は世界平和です』等と言われても、「ハイそうですか」と納得できない。

 とりあえず俺からの質問、質問… と。たくさんありすぎて迷うなぁ……。
 ベルモの病状は気になるが、まずはチャロアイトが何者なのかを探らないと、この先聞ける話も聞けた物ではない。

「えっと… まずは俺がワイバーンと戦っていた時に魔法で援護してくれたのは何故だ?」

 ここで「援護してくれたのはアンタか?」と聞くのは悪手だ。理由が知りたいなら先に理由を聞くべきだろう。でないと質問数が無駄になる。そもそも俺を援護したのがチャロアイトでなかったならば、それはそれで質問が無駄になりそうだが、逆に『同じ様な奴がまだ他にもいる』という情報にもなるのだ。

「ほぅ、なかなか目聡めざといな。理由か… ふむ… 君の力を見極める為だな。ラモグの町に突如現れた豪傑無双の若者がどれだけ出来るのかを見たかったからだ」

 この言い方、本当に俺の素性は大体探られていると思った方が良さそうだな……。
 
「ではこちらの番だ。先程の質問に答えてくれたまえ。その剣、『アドモンゲルン』は何処で出に入れたのか? をな」

 この聖剣の名前まで知っているのか…? 俺はこの世界に来てから聖剣の名を誰かに教えた事はない。なんなら俺自身が剣の名前を忘れていた、というかちゃんと覚えていなかった。
 つまりチャロアイトは異世界転生や神の創った聖剣の存在を知っているという事になる。もしかしてチャロアイト自身が転生の先輩という可能性すらある。

 それならば、少なくとも神だの聖剣だのと現実離れした話をしても一笑に付される事はないかも知れない。全部ぶちまけても良いのかなぁ…?

 「こ、この剣は女神アイトゥーシアから貰った… 俺は一度別の世界で死んでしまって、この世界でやり直しの人生を送るためにこの聖剣と共にやって来たんだ…」

 俺のその答えに、チャロアイトが仮面越しですらはっきり態度を硬化させた様に感じ取れた……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流@3/19書籍発売!
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

社会の底辺に落ちたオレが、国王に転生した異世界で、経済の知識を活かして富国強兵する、冒険コメディ

のらねこま(駒田 朗)
ファンタジー
 リーマンショックで会社が倒産し、コンビニのバイトでなんとか今まで生きながらえてきた俺。いつものように眠りについた俺が目覚めた場所は異世界だった。俺は中世時代の若き国王アルフレッドとして目が覚めたのだ。ここは斜陽国家のアルカナ王国。産業は衰退し、国家財政は火の車。国外では敵対国家による侵略の危機にさらされ、国内では政権転覆を企む貴族から命を狙われる。  目覚めてすぐに俺の目の前に現れたのは、金髪美少女の妹姫キャサリン。天使のような姿に反して、実はとんでもなく騒がしいS属性の妹だった。やがて脳筋女戦士のレイラ、エルフ、すけべなドワーフも登場。そんな連中とバカ騒ぎしつつも、俺は魔法を習得し、内政を立て直し、徐々に無双国家への道を突き進むのだった。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

処理中です...