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第89話 2度目の薬
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王女様から再度の招聘を受ける少し前、俺とティリティアはクロニアら仲間たちの待つ宿へと戻っていた。
もちろん王城での王女様との一件も秘密。クロニアから「昨夜はパーティー中に消えたまま、どこに行っていたのか?」と問い詰められ、どう答えたものかとティリティアに視線を送ったら、ティリティアは黙って微笑み、俺にだけ見えるように唇の前に人差し指を立ててみせた。
「勇者様が酔ってらして、足元がフラついていたのでお部屋で介抱していただけですわ…」
そうクロニアに説明するティリティア。まぁ間違ってはいないが、多分に嘘が混ざっている。なんでこう女って平気な顔で嘘がつけるのだろうか…?
「私はむしろこの男よりもティリティア様を心配しておりました。まだ赤子が安定期に入ってもいないのに、無遠慮に突き上げられて流産でもしよう物なら…」
…まぁそうだよね。俺たちは既に全員肉体関係にあるのだから、「抜け駆けして『俺』くんを誘惑するなんてズルい、キーッ!」っていう話にはならないよね。
クロニアの怒りが男女関係の嫉妬では無いことに若干落胆しつつも、王女様と目の前で致していたのに乱入してこなかった、昨夜のティリティアの行動理由が分かった気がした。
「ごめんなさいクロニア。でも昨夜の私達は貴女の想像する様な事はしていませんよ…?」
確かに俺とティリティアのラブラブシーンはほとんど無かったけど、それにはとんでもないサプライズゲストがいたからだよな。
「もーいーじゃんクロニアねーちゃん。別に、2人が無事なら」
モンモンの横槍でクロニアも「む…」と言葉を詰まらせる。別にクロニアもガミガミ言いたい訳では無かろうから、俺とティリティアの秘密は暴かれる事無く説教タイムは終了した。
ちなみに薬の影響でガチムチマッチョに成長、変貌したモンモンだが、声変わりしても喋り方は以前のままのクソガキ口調である。その声音と口調のギャップに未だに慣れないし、多分今後も慣れそうな気がしない。
「そろそろ良いかしら…?」
部屋の隅でずっと無言だったチャロアイトが軽く右手を挙げる。殊のほか長引いたクロニアの説教タイムにげっそりしている様に見えた。
何だ? また新しい任務か? やれやれ、つい昨日激戦から帰ったばかりだってのに人遣いの荒い……。
「今回の仕事料として、リーナ様から例の新しい薬を預かっているのだけれども、今渡しちゃって大丈夫そう?」
薬…………?
そうだよ薬だよ! 俺達はベルモを治す為の薬の代償としてゾンビ軍団のど真ん中に突っ込む羽目になったんだった。
王女様のアレコレで全部吹っ飛んでいたけど、本来の目的はそっちだよな。危うくベルモの存在を忘れる所だった。
ベルモはまだ彼女の山賊… もとい傭兵団の駐屯する、ラモグの町近くの森で静養しているはずだ。
森でガス状の怪物である『蛇』と戦った際に、俺を助けるために毒ガスの中に飛び込んだのが原因で、ベルモは肺腑を患って激しい運動が出来なくなってしまった。
その傷は『聖女』と呼ばれる程に神の力を引き出す『法術』に精通したホムラさんでも、命を繋ぐ程度にしか治療出来なかったという重い物だった。
「命は取り留めたが、完治には至らず以後障害が残るだろう。更に少しずつだが病魔が命を削っており、恐らくは1年と保たない」
これが王国最高の治癒師が全身全霊の祈祷法術を行った診断の結果だった。
ベルモの運命に納得出来なかった俺はチャロアイトを頼り、法術でダメなら「禁忌の魔法」でどうにか出来ないかを尋ねた。
チャロアイトの返事は「傷を治すのは無理だが、魔法薬で肉体の持つ再生能力を強化して類似の効能を出せるかも知れない」だった。
そして、その薬の最初の被験者はベルモではなくモンモンだった。『虚無』の観測所偵察の折にゾンビに噛まれたモンモンは高熱を発してしまった。
只の発熱で済めば良かったが、万が一ゾンビ感染している様だと王都がバイオハザードに呑まれてしまう。
モンモンを助ける為に俺の下した決断は「ベルモに使うはずの薬をモンモンに使用する」だった。
果たしてモンモンはゾンビウイルス(?)に打ち勝った物の、薬の副作用で少女と見紛う細さだった外見を、ガチムチマッチョに変えてしまったと言う訳だ。
その時と同様に、今回の薬をベルモに飲ませて、また何か要らん副作用のある可能性は否定できない。
かと言って、薬を飲ませなければベルモは徐々に弱りながら、遠くない先にやがて死を迎えてしまうだろう。選択肢は一つしか無い……。
「ありがとうチャロアイト。これでようやくベルモを回復させられる。また皆で一緒に冒険出来るよな…」
薬を受け取って、新たな希望を仲間達と共有する。クロニアもティリティアもモンモンもベルモを心配する気持ちは皆同じだ。
一党加入がベルモと入れ違いになったチャロアイトだけは、今ひとつ理解できていないのか、不思議そうな顔をしていたが。
☆
さて、チャロアイトからベルモの薬を受け取って、早速ベルモの森に行くぞ! となった所で使者が宿に来て、王城からの… 正確には王女様からの呼び出しが掛かってしまった。
「呼び出し状には『可及的速やかに』とありますね…」
ティリティアには書状の中身を見なくても、それが予想通り王女様からの手紙だと確信出来ているのだろう。嬉しそうに上目遣いで俺を見る。さも「城と森、どちらに行かれるのですか勇者様?」と問うているかの様に。
「王城からの呼び出しでは致し方あるまい。ベルモの方はどんなに急いでも行って帰って4日は必要だしティリティア様にも無理はさせられん。ベルモの方は我々に任せてお前は急いで城に行け。ティリティア様、また此奴の面倒をお願い致します…」
俺が何か言うまでもなく、クロニアが全部仕切ってくれた。さすが元・兵隊長、頼りになるぜ。
「ええ、お任せ下さいな。そちらもベルモさんによろしくお伝え下さいね」
ティリティアの返答で、俺達は2班に分かれて動く事が決定した。
もちろん王城での王女様との一件も秘密。クロニアから「昨夜はパーティー中に消えたまま、どこに行っていたのか?」と問い詰められ、どう答えたものかとティリティアに視線を送ったら、ティリティアは黙って微笑み、俺にだけ見えるように唇の前に人差し指を立ててみせた。
「勇者様が酔ってらして、足元がフラついていたのでお部屋で介抱していただけですわ…」
そうクロニアに説明するティリティア。まぁ間違ってはいないが、多分に嘘が混ざっている。なんでこう女って平気な顔で嘘がつけるのだろうか…?
「私はむしろこの男よりもティリティア様を心配しておりました。まだ赤子が安定期に入ってもいないのに、無遠慮に突き上げられて流産でもしよう物なら…」
…まぁそうだよね。俺たちは既に全員肉体関係にあるのだから、「抜け駆けして『俺』くんを誘惑するなんてズルい、キーッ!」っていう話にはならないよね。
クロニアの怒りが男女関係の嫉妬では無いことに若干落胆しつつも、王女様と目の前で致していたのに乱入してこなかった、昨夜のティリティアの行動理由が分かった気がした。
「ごめんなさいクロニア。でも昨夜の私達は貴女の想像する様な事はしていませんよ…?」
確かに俺とティリティアのラブラブシーンはほとんど無かったけど、それにはとんでもないサプライズゲストがいたからだよな。
「もーいーじゃんクロニアねーちゃん。別に、2人が無事なら」
モンモンの横槍でクロニアも「む…」と言葉を詰まらせる。別にクロニアもガミガミ言いたい訳では無かろうから、俺とティリティアの秘密は暴かれる事無く説教タイムは終了した。
ちなみに薬の影響でガチムチマッチョに成長、変貌したモンモンだが、声変わりしても喋り方は以前のままのクソガキ口調である。その声音と口調のギャップに未だに慣れないし、多分今後も慣れそうな気がしない。
「そろそろ良いかしら…?」
部屋の隅でずっと無言だったチャロアイトが軽く右手を挙げる。殊のほか長引いたクロニアの説教タイムにげっそりしている様に見えた。
何だ? また新しい任務か? やれやれ、つい昨日激戦から帰ったばかりだってのに人遣いの荒い……。
「今回の仕事料として、リーナ様から例の新しい薬を預かっているのだけれども、今渡しちゃって大丈夫そう?」
薬…………?
そうだよ薬だよ! 俺達はベルモを治す為の薬の代償としてゾンビ軍団のど真ん中に突っ込む羽目になったんだった。
王女様のアレコレで全部吹っ飛んでいたけど、本来の目的はそっちだよな。危うくベルモの存在を忘れる所だった。
ベルモはまだ彼女の山賊… もとい傭兵団の駐屯する、ラモグの町近くの森で静養しているはずだ。
森でガス状の怪物である『蛇』と戦った際に、俺を助けるために毒ガスの中に飛び込んだのが原因で、ベルモは肺腑を患って激しい運動が出来なくなってしまった。
その傷は『聖女』と呼ばれる程に神の力を引き出す『法術』に精通したホムラさんでも、命を繋ぐ程度にしか治療出来なかったという重い物だった。
「命は取り留めたが、完治には至らず以後障害が残るだろう。更に少しずつだが病魔が命を削っており、恐らくは1年と保たない」
これが王国最高の治癒師が全身全霊の祈祷法術を行った診断の結果だった。
ベルモの運命に納得出来なかった俺はチャロアイトを頼り、法術でダメなら「禁忌の魔法」でどうにか出来ないかを尋ねた。
チャロアイトの返事は「傷を治すのは無理だが、魔法薬で肉体の持つ再生能力を強化して類似の効能を出せるかも知れない」だった。
そして、その薬の最初の被験者はベルモではなくモンモンだった。『虚無』の観測所偵察の折にゾンビに噛まれたモンモンは高熱を発してしまった。
只の発熱で済めば良かったが、万が一ゾンビ感染している様だと王都がバイオハザードに呑まれてしまう。
モンモンを助ける為に俺の下した決断は「ベルモに使うはずの薬をモンモンに使用する」だった。
果たしてモンモンはゾンビウイルス(?)に打ち勝った物の、薬の副作用で少女と見紛う細さだった外見を、ガチムチマッチョに変えてしまったと言う訳だ。
その時と同様に、今回の薬をベルモに飲ませて、また何か要らん副作用のある可能性は否定できない。
かと言って、薬を飲ませなければベルモは徐々に弱りながら、遠くない先にやがて死を迎えてしまうだろう。選択肢は一つしか無い……。
「ありがとうチャロアイト。これでようやくベルモを回復させられる。また皆で一緒に冒険出来るよな…」
薬を受け取って、新たな希望を仲間達と共有する。クロニアもティリティアもモンモンもベルモを心配する気持ちは皆同じだ。
一党加入がベルモと入れ違いになったチャロアイトだけは、今ひとつ理解できていないのか、不思議そうな顔をしていたが。
☆
さて、チャロアイトからベルモの薬を受け取って、早速ベルモの森に行くぞ! となった所で使者が宿に来て、王城からの… 正確には王女様からの呼び出しが掛かってしまった。
「呼び出し状には『可及的速やかに』とありますね…」
ティリティアには書状の中身を見なくても、それが予想通り王女様からの手紙だと確信出来ているのだろう。嬉しそうに上目遣いで俺を見る。さも「城と森、どちらに行かれるのですか勇者様?」と問うているかの様に。
「王城からの呼び出しでは致し方あるまい。ベルモの方はどんなに急いでも行って帰って4日は必要だしティリティア様にも無理はさせられん。ベルモの方は我々に任せてお前は急いで城に行け。ティリティア様、また此奴の面倒をお願い致します…」
俺が何か言うまでもなく、クロニアが全部仕切ってくれた。さすが元・兵隊長、頼りになるぜ。
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