魔王と呼ばれた勇者、或いは勇者と呼ばれた魔王 〜最強の魔剣で自由に生きる! 金も女も、国さえも思いのまま!! …でも何かが違うみたいです

ちありや

文字の大きさ
90 / 120

第91話 政略

しおりを挟む
「はぁ… はぁ…」

 とりあえず一戦終わって、一糸まとわぬ姿のまま荒く息をつく王女様。満足そうに目を閉じたまま、時折り腰の辺りが痙攣する様な動きを見せていた。

「お可哀想なミア姉様…」

 ティリティアの慈悲の憐憫のこもった視線が俺の心も暗くする。
 何も知らない王女様を『淫奔』の力で半ば無理矢理従わせて、自分らの計画の為に利用するというのは、それが最善の策だと分かっていても、あまり人に誇れるやり方ではない。それは俺も理解している。

「貴女は変わってしまったわね、ティア…」

 王女様も心ここに在らずみたいな感じだったが、話はちゃんと聞こえていたらしい。どう転んでも騒ぎの中心に成らざるを得ない人だから、不安定な精神状態にはしたくないんだよね……。

 ☆

「まず前提条件としてわたくしには許嫁いいなずけがおり、来年にはシュバルツ王子を婿に迎える予定です。それはティアもご存知でしょう?」

「隣国クライナー王国の第2王子ですわね… 更に隣国のウルカイザー大公国はクライナー王国の同盟国、そしてウルカイザー大公国はバルジオン王国との間に長年国境紛争を抱えていて…」

 他国の情報とか初めて聞いたな。『虚無ヴォイド』でのゾンビ大発生の時に、ゴルツさんがバルジオンだけでなく4カ国の合同軍事作戦って言っていたから、周りの国も当然在るのだな、とは思っていたが……。

「しかもウルカイザーは此度こたびの『虚無ヴォイド』での騒動を、バルジオンわがくにの仕業であると悪質な喧伝をしていましたね…」

 ゾンビ騒動をバルジオンのせいにしている国がいたのは聞いているが、ウルカイザーって所の奴らなのか。

「ええ、そしてわたくしがクライナーの王子と結婚すれば、クライナーを介してバルジオンとウルカイザーとの関係改善も進められるでしょう…」

 立場や年齢的に王女様に許嫁がいても不思議は無かったが、3つの国を跨がったここまで大きな政治問題だとは知らなかった。

「…『虚無ヴォイド』への対処、国や民の安寧、それだけ重い責任がわたくしにはあります。なのでティア、ここからどうやって貴女の提案を通すおつもりなのかしら…?」

「破棄してしまいなさいな、そんな結婚」

 王女様の言葉をぶった斬る様に自説をねじ込むティリティア。かなり無礼なんじゃないのか? 俺たち後で処されたりしない?

「私も以前は『領民や領地』がどうとか、『家の都合』がどうとか、ひたすらそれだけを気にする人生を送ってきました… 今は僧籍に入り名もなき一介の冒険者に身を置いておりますが、何も知らなかった頃よりも何倍も充実しています… ミア姉様もご自分の人生をご自分で切り拓くべきではごさいませんこと…?」

 ティリティアの言葉はともすると、王女様の決意を侮辱する行為とも受け取られかねない。はたから見ていてヒヤヒヤものなんだが……。
 
「私と貴女では身分も立場も違います。そしてその機転や行動力も私には真似できません… ティア、私は貴女にはなれません。何より兄弟あとつぎの居る貴女のお家と違い、バルジオンには私しかおりません。私が頼りない所を見せたら、いつまた内乱が起きるやも知れません…」

 女同士の政治バトルってのも大変だよな。この世界でも俺の世界で言う男女平等的な思想は冒険者界隈では割と浸透している。『男女』という括りでの仕事分けがほとんど無いからね。
 だがしかし、貴族社会では他家や他国との外交手段として、旧態依然の女性を政治の道具とする政略結婚も普通に行われる。

 ティリティアも本来ガルソム侯爵令嬢として『向こう側』の人間だったのだが、見知らぬ歳下の貴族のボンボンに嫁入りするのが嫌で、勘当同然の身で神職に就いていたという経歴持ちだ。

 貴族としては開明的すぎるティリティアと守旧派の王女様とでは価値観が違いすぎて話にならないのではないだろうか…?
 ティリティアからの又聞きだが、王女様の母親である前王も隣国との婚約を破棄して、今のカーノ王と結婚している。それからの前王の苦労と、その後の不幸を考えたら、王女様が二の足を踏むのも理解出来る。

「前の大乱から、父が20年掛けてせっかく立ち直したこの国の政情を、私のわがままで再び乱す事は許されません。ティア… 分かってちょうだい…」

 王女様の意見はいちいちもっともだ。俺と王女様が結ばれるメリットとデメリットを比較してみれば… いや、比べるまでもなく圧倒的にデメリットが多いのは、『策謀』の力を借りずとも十分に推測可能だ。

 王女様の固い意思表示で拒絶されてしまったティリティアだが、その表情に変わりはなく、いつもの優しさと寂しさを混ぜ合わせた様な、年齢不相応な落ち着いた笑顔を浮かべたままだ。

 やがてティリティアは「ふぅ…」という短い溜め息をついて、新たに素直な雰囲気の笑顔を作り直す。

「苦しめてしまって本当にごめんなさいミア姉様。私も少し事を急ぎ過ぎたかも知れませんね…」

 しおらしいセリフと共に、ティリティアはおもむろにふところから棒状の品物を取り出して卓に置いた。
 何かと思ってよく見てみると、男性器の形によく似ている。っていうか物凄く馴染みのある形をしている。
 
 あれって以前うちの女どもが話していた俺の一物の張形じゃないのか? もう完成していたのかよ……。

「ちょっとティア…」

「では今宵は失礼いたしますわ。またいつでもお茶会に呼んで下さいまし、ミア姉様…」

 慌てる王女様を尻目にティリティアは恭しく礼をし、俺を引き連れて早々に城から出てしまった。おいおい、良いのかこれで…?

 ☆

「…昔ミア姉様と2人で話したのですよ。『政略結婚なんてしたくない!』と… 今の姉様の目はあの頃と変わっていません。もう少し状況を整えて時が進めば、必ず良い方向に進みますわ…」

 王城の裏道、俺達が来た道を帰る途中でティリティアが独り言の様に話している。
 俺としてももっと効率的な『策謀』ネタはあるのだが、それには少なからぬ人員的な犠牲が必要になる。ちょっと言い出せない。

「なぁるほど、なんか2人でコソコソしていると思ったら楽しそうな事をしていたのね…」

 通路の先、差し込む月明かりに長身女性のシルエットが浮かび上がる。
 俺とティリティアの『策謀』が、王国の平和と安寧を守護し暗躍している『幻夢兵団』のチャロアイトに露見してしまったのだった……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流@3/19書籍発売!
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

社会の底辺に落ちたオレが、国王に転生した異世界で、経済の知識を活かして富国強兵する、冒険コメディ

のらねこま(駒田 朗)
ファンタジー
 リーマンショックで会社が倒産し、コンビニのバイトでなんとか今まで生きながらえてきた俺。いつものように眠りについた俺が目覚めた場所は異世界だった。俺は中世時代の若き国王アルフレッドとして目が覚めたのだ。ここは斜陽国家のアルカナ王国。産業は衰退し、国家財政は火の車。国外では敵対国家による侵略の危機にさらされ、国内では政権転覆を企む貴族から命を狙われる。  目覚めてすぐに俺の目の前に現れたのは、金髪美少女の妹姫キャサリン。天使のような姿に反して、実はとんでもなく騒がしいS属性の妹だった。やがて脳筋女戦士のレイラ、エルフ、すけべなドワーフも登場。そんな連中とバカ騒ぎしつつも、俺は魔法を習得し、内政を立て直し、徐々に無双国家への道を突き進むのだった。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

処理中です...