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第92話 蠢動
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「なっ?! チャロアイト…? お前クロニア達とベルモの森に行ったんじゃ無かったのか?」
まさかのチャロアイトとの再会に面食らってしまい、冷静な判断力が吹き飛んでしまう。これは隣にいるティリティアも同様だったみたいで、彼女も口に手を当てて驚きを表現している。
「私が任務でも無いのに勝手に王都を離れる訳が無いでしょ? 組織の『目』から一部の貴族しか知らない地下通路を通って行った男女2人組がいるって聞いて、見に来たのよ」
チャロアイトの所属する『幻夢兵団』は、バルジオン王国の平和の為に、魔法で謀略や暗殺等の汚れ仕事を行う機関だ。
当然国中を監視する為の『目』や『耳』といった人員や機器を備えている事は容易に想像出来る。
「状況から貴方達だろうとは思ってたけど、それよりミア姫殿下を巻き込んでまで何を企んでいるのか、とっっっても興味があるわ。話して頂けるわよね…?」
最悪だ… 今チャロアイトが俺の一党に居るのは単なる仲間という話ではない。俺の存在が国にとって不利益をもたらすと考えられた場合に、チャロアイトは国の為に俺を殺害する命令を組織から受けている。
ここで嘘をついてもすぐにバレてしまうだろうし、本当の事を話しても俺とティリティアの陰謀にチャロアイトが理解を示す可能性は低い。
どうしたものか…? ここでチャロアイトと殺りあう展開も有り得るのか…?
「ミア姉様の婚約相手であるクライナーのシュバルツ王子は、絵画や彫刻等の芸術にかまけて政務の経験も無ければ、剣や弓の腕前もからきしと聞き及んでおります…」
ティリティアがおもむろに口を挟む。チャロアイトがティリティアを一瞥するが、その視線は冷たい。まるで「お前の話を聞くつもりはない」とでも言っている様だった。
チャロアイトの態度を確認しつつもティリティアは気丈に言葉を続ける。
「その様な方にバルジオンの運命を委ねるよりも、『より強い国』を目指して姉様には相応しい殿方がいらっしゃる、という話をしてきました。それだけです…」
まぁ会話の内容としてはそんなもんだよな。言葉ではなく肉体を通じた言語はそれなりに多く交わしてきたけどさ……。
「…今更言うまでも無いけど、いくら貴女が侯爵の娘だと言っても姫殿下の婚姻に口を挟む権利は存在しないわ。そもそもそんな事で緊急の呼び出しだなんて…」
そこまで言いかけてチャロアイトが言葉を切る。そして何か良くない考えに辿り着いたのか、みるみる顔色が青くなっていく。
言葉は悪いが『人造人間』であるチャロアイトは変装も含めて色々な顔を持っている。普段は割と『クールなお姉さん』として余裕のある女性を演じている彼女だが、今の表情は多分ガチだ。あのチャロアイトがマジで動揺している。
「まさか… まさかとは思うけど貴方達、姫殿下を誑かしたりしてないでしょうね…?」
絞り出す様な声で訊いてくるチャロアイト。まぁ今の裏道から出てきた状況で、「健全なお話し合いをしていました」と考えるのはどうあっても無理がある。
チャロアイトは聡明な女だ。俺が『魅了』、いや『淫奔』の力で王女様を手籠めにし、その状態で王女様に普通では到底通りにくい要求をしたのだと思考が到達したようだ。
「ちょっと、それ色んな意味でシャレにならないわよ… なんて事をしでかしてくれたのよ…? あ、でもちょっと待って… これはもしかして…」
始めは俺たちを糾弾する口調だったが、次第に独り言に変わってブツブツ言い始めたチャロアイト。一戦交える覚悟もあったが、それは回避出来そうかな…?
「とりあえず今すぐ殺さないでいてあげるから、その計画、委細漏らさず私に教えなさい。もしかしたら使えるかも…」
不穏な顔つきで話すチャロアイトが怖い。まぁ天下の往来で話す様な話題では無いので、一旦宿に帰ろうという事になった。
☆
「実はウルカイザーに妙な動きがあってね…」
俺とティリティアの策略をしばらく黙って聞いていたチャロアイトだったが、一通り話し終わったタイミングで上記の事を言いだした。隣国のウルカイザーと何の関係が…?
「ウルカイザーの城に最近出入りする様になった男の人が居るらしいのだけど、報告によると全身を包帯で巻いていて、左脚が義足らしいのよ…」
全身包帯巻きで左脚が義足だと…? 強烈な心当たりが1人居るんだが……。
「へぇ、そいつもしかして鬼族だったりするのかな? 俺の知り合いによく似た奴が居るんだけど…?」
もし本当に鬼族なら、川沿いの洞窟で出会った『ガドゥ』に間違いない。あいつやっぱり生きていて、バルジオンと仲の良くない国で何やら暗躍しているらしい……。
「その人の種族までは特定できていないけど、報告にあった背格好は貴方の言う『ガドゥ』とよく似ているわ…」
ガドゥが何の目的でウルカイザーとやらに居るのかは分からないが、王女様の結婚相手とも国同士で深い繋がりがあるらしい。
何か変な繋がりがあるなら手遅れになる前に潰しておきたいし、仮に繋がりが無くてもガドゥを放置して良い事は無いだろう。
「もし『ガドゥ』なる、魔族との関連が疑われる人物がウルカイザーで反バルジオンの活動を行っているとなれば、幻夢兵団としても黙って座視はしていられないわ…」
そう、ガドゥはゴブリンを軍事訓練して戦争の道具にしようとしていた節がある。
ガドゥとウルカイザー、この両者の接近は決して偶然とは思えない。
「もしかして次の任務はウルカイザー公国への潜入だったりするのかな…?」
言われる前にツッコんだ方が話が早い。それに俺はあと1回の仕事をこなせば、冒険者最高ランクである『5点』に上がれる。これは貴族と同等の社会的地位だと聞いている。
それこそゴブリン退治とかの小さな仕事でも昇格出来るポイントではあるのだが、どうせなら大きい功績を挙げて堂々と高位社会に参入したいもんな。
「行くとしたら私1人のつもりだったけど、件の人物が本当にガドゥだとしたら、護衛が付いてくれるのは心強いわ…」
「ウルカイザーは私の故郷、ガルソム侯爵領と国境を接する国です。もしバルジオンで何か事件が起こるとすれば、それはガルソムから起こるでしょう。私も見逃せませんわ…」
ガドゥがティリティアの故郷近くで何やら蠢いている… 嫌な予感しかしない。奴の陰謀を暴いて、出来うるならばリベンジマッチだ。今度は遅れを取らない。
ガルソム領ならベルモに薬を届けに行ったクロニアとモンモンとも近い。ラモグの町あたりで合流出来るなら… あ、俺ラモグで指名手配されてたな。ちょっと考えないとな……。
まさかのチャロアイトとの再会に面食らってしまい、冷静な判断力が吹き飛んでしまう。これは隣にいるティリティアも同様だったみたいで、彼女も口に手を当てて驚きを表現している。
「私が任務でも無いのに勝手に王都を離れる訳が無いでしょ? 組織の『目』から一部の貴族しか知らない地下通路を通って行った男女2人組がいるって聞いて、見に来たのよ」
チャロアイトの所属する『幻夢兵団』は、バルジオン王国の平和の為に、魔法で謀略や暗殺等の汚れ仕事を行う機関だ。
当然国中を監視する為の『目』や『耳』といった人員や機器を備えている事は容易に想像出来る。
「状況から貴方達だろうとは思ってたけど、それよりミア姫殿下を巻き込んでまで何を企んでいるのか、とっっっても興味があるわ。話して頂けるわよね…?」
最悪だ… 今チャロアイトが俺の一党に居るのは単なる仲間という話ではない。俺の存在が国にとって不利益をもたらすと考えられた場合に、チャロアイトは国の為に俺を殺害する命令を組織から受けている。
ここで嘘をついてもすぐにバレてしまうだろうし、本当の事を話しても俺とティリティアの陰謀にチャロアイトが理解を示す可能性は低い。
どうしたものか…? ここでチャロアイトと殺りあう展開も有り得るのか…?
「ミア姉様の婚約相手であるクライナーのシュバルツ王子は、絵画や彫刻等の芸術にかまけて政務の経験も無ければ、剣や弓の腕前もからきしと聞き及んでおります…」
ティリティアがおもむろに口を挟む。チャロアイトがティリティアを一瞥するが、その視線は冷たい。まるで「お前の話を聞くつもりはない」とでも言っている様だった。
チャロアイトの態度を確認しつつもティリティアは気丈に言葉を続ける。
「その様な方にバルジオンの運命を委ねるよりも、『より強い国』を目指して姉様には相応しい殿方がいらっしゃる、という話をしてきました。それだけです…」
まぁ会話の内容としてはそんなもんだよな。言葉ではなく肉体を通じた言語はそれなりに多く交わしてきたけどさ……。
「…今更言うまでも無いけど、いくら貴女が侯爵の娘だと言っても姫殿下の婚姻に口を挟む権利は存在しないわ。そもそもそんな事で緊急の呼び出しだなんて…」
そこまで言いかけてチャロアイトが言葉を切る。そして何か良くない考えに辿り着いたのか、みるみる顔色が青くなっていく。
言葉は悪いが『人造人間』であるチャロアイトは変装も含めて色々な顔を持っている。普段は割と『クールなお姉さん』として余裕のある女性を演じている彼女だが、今の表情は多分ガチだ。あのチャロアイトがマジで動揺している。
「まさか… まさかとは思うけど貴方達、姫殿下を誑かしたりしてないでしょうね…?」
絞り出す様な声で訊いてくるチャロアイト。まぁ今の裏道から出てきた状況で、「健全なお話し合いをしていました」と考えるのはどうあっても無理がある。
チャロアイトは聡明な女だ。俺が『魅了』、いや『淫奔』の力で王女様を手籠めにし、その状態で王女様に普通では到底通りにくい要求をしたのだと思考が到達したようだ。
「ちょっと、それ色んな意味でシャレにならないわよ… なんて事をしでかしてくれたのよ…? あ、でもちょっと待って… これはもしかして…」
始めは俺たちを糾弾する口調だったが、次第に独り言に変わってブツブツ言い始めたチャロアイト。一戦交える覚悟もあったが、それは回避出来そうかな…?
「とりあえず今すぐ殺さないでいてあげるから、その計画、委細漏らさず私に教えなさい。もしかしたら使えるかも…」
不穏な顔つきで話すチャロアイトが怖い。まぁ天下の往来で話す様な話題では無いので、一旦宿に帰ろうという事になった。
☆
「実はウルカイザーに妙な動きがあってね…」
俺とティリティアの策略をしばらく黙って聞いていたチャロアイトだったが、一通り話し終わったタイミングで上記の事を言いだした。隣国のウルカイザーと何の関係が…?
「ウルカイザーの城に最近出入りする様になった男の人が居るらしいのだけど、報告によると全身を包帯で巻いていて、左脚が義足らしいのよ…」
全身包帯巻きで左脚が義足だと…? 強烈な心当たりが1人居るんだが……。
「へぇ、そいつもしかして鬼族だったりするのかな? 俺の知り合いによく似た奴が居るんだけど…?」
もし本当に鬼族なら、川沿いの洞窟で出会った『ガドゥ』に間違いない。あいつやっぱり生きていて、バルジオンと仲の良くない国で何やら暗躍しているらしい……。
「その人の種族までは特定できていないけど、報告にあった背格好は貴方の言う『ガドゥ』とよく似ているわ…」
ガドゥが何の目的でウルカイザーとやらに居るのかは分からないが、王女様の結婚相手とも国同士で深い繋がりがあるらしい。
何か変な繋がりがあるなら手遅れになる前に潰しておきたいし、仮に繋がりが無くてもガドゥを放置して良い事は無いだろう。
「もし『ガドゥ』なる、魔族との関連が疑われる人物がウルカイザーで反バルジオンの活動を行っているとなれば、幻夢兵団としても黙って座視はしていられないわ…」
そう、ガドゥはゴブリンを軍事訓練して戦争の道具にしようとしていた節がある。
ガドゥとウルカイザー、この両者の接近は決して偶然とは思えない。
「もしかして次の任務はウルカイザー公国への潜入だったりするのかな…?」
言われる前にツッコんだ方が話が早い。それに俺はあと1回の仕事をこなせば、冒険者最高ランクである『5点』に上がれる。これは貴族と同等の社会的地位だと聞いている。
それこそゴブリン退治とかの小さな仕事でも昇格出来るポイントではあるのだが、どうせなら大きい功績を挙げて堂々と高位社会に参入したいもんな。
「行くとしたら私1人のつもりだったけど、件の人物が本当にガドゥだとしたら、護衛が付いてくれるのは心強いわ…」
「ウルカイザーは私の故郷、ガルソム侯爵領と国境を接する国です。もしバルジオンで何か事件が起こるとすれば、それはガルソムから起こるでしょう。私も見逃せませんわ…」
ガドゥがティリティアの故郷近くで何やら蠢いている… 嫌な予感しかしない。奴の陰謀を暴いて、出来うるならばリベンジマッチだ。今度は遅れを取らない。
ガルソム領ならベルモに薬を届けに行ったクロニアとモンモンとも近い。ラモグの町あたりで合流出来るなら… あ、俺ラモグで指名手配されてたな。ちょっと考えないとな……。
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