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第103話 隠し玉
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「さて… 大人しく剣を渡さないなら、前よりもヒドい事しちゃうけど良いよな? お前の選択なんだからさ…」
新井くんは足元の拳大の石を拾って、これ見よがしに片手で握り潰して見せた。
いくら転生前にイジメっ子だったからと言って、彼にそんな握力があった訳は無く、例の『力の神』とやらに持たされたチート能力なのだろうと思われる。
なるほど、そう考えればその力を背景に手下の2、3人居ても不思議じゃないな。
取り巻きの奴らはどう見てもその辺のチンピラクラスで、戦闘力はゴブリンと大差ないだろう。
「まぁ会えたのは本当に偶然でさぁ、神様に仕事を頼まれた物の、何の情報も無いままここに飛ばされて困ってたんだよ。いやまさかお前の方から来てくれるとはねぇ… この嬉しさ分かる?」
新井くん… いやそろそろ敬称は不要だろう。新井は昔から自分が言いたいことだけをツラツラ語って、勝手に怒ったり落胆したりして、それを理由に俺を殴っていた。
今やっているのは単に『それ』の延長戦であり、結果が変わらない以上真面目に話を聞いてやる義理も無いのだが、こちらから先制攻撃する訳にもいかないし、彼に能動的に攻撃行動を取ろうとすると、まだ体が拒絶反応を示す。動けない……。
「もしお前に会えなくても、貰った『スーパーパワー』を使って好き勝手に生きるつもりだったけどな…」
新井の言う『スーパーパワー』の詳細がまだ分からないのが少し不安だな。力が強化されているのは分かったが、素早さは? 知能は? カリスマは…?
新井の言葉に後ろに控えるチンピラABCの3人がヘラヘラと笑っている。新井がこの世界に来て何日経っているのか知り得ないが、これだけの情報でも結構絞り込めるだろう。
仲間としているのが下品で貧乏そうなチンピラという事から、カリスマ性ではなく暴力で配下にしたのならば、俺の剣の『魅了』の様な他人の心に働きかける魔力や、貴族の様な高い階級に影響出来る『知能』や『カリスマ』も無いと考えるのが妥当だろう。
今の段階で決めつけるのは危険だが、彼の言う通り『力の神』の加護のみ受けていて、俺の様な包括的な強化を与えられている訳では無さそうな印象だ。
「せっかくの再会なのに何にも言わねぇのな、つまんねぇ。やっぱりお前ムカつくわ…」
な? 勝手にイチャモン付けてきて勝手に怒って、勝手に殴る理由をこじつけてくるだろ?
新井の暴力に対して、昔は天災の様に怯えて耐えるしか無かった。だが今の俺には『戦う力』がある。
とは言え往来の真ん中で、ウルカイザーの衛兵に封印された剣を抜いての刃傷沙汰はマズい。
「まだ力の加減がよく出来ねぇからさ、間違って殴り殺してちゃっても恨まないでくれよな…?」
言葉の最後で新井の体が沈む。そのまま右手を大きく振りかぶった体勢でこちらに突っ込んで来る。
俺は両手を並べてボクサーの様な防御姿勢を取る。聖剣によるバリアは利いてるはずだけど……。
新井は駆け込んできた勢いを乗せてパンチを繰り出してきた。いつもなら避けようと思えば簡単に避けられる、武道の心得の片鱗すら窺えないテレホンパンチだ。
だがまだ俺への呪縛は解けていない。俺の体の自由は利かず、防御姿勢を取れたのがせめてもの抵抗だった。
「らぁっ!!」
新井は構えた俺の腕の上から打撃を被せてきた。バリア越しに腕に伝わる強い感触、確かに常人の何倍もの力を得ているのは間違いなさそうだ。
殴られた反動で俺の体が2m程後退する。実際に攻撃された事で、今まで恐怖から強張っていた俺の全身の筋肉に血が巡り始め、ようやく体が自由を取り戻す。
「あ、あいつアライさんの攻撃を受け止めたぞ?!」
新井の取り巻きの1人が驚きの声を上げる。なるほど、彼らの予想だと俺はパンチ一発で吹き飛ばされて、後ろの壁に激突して気絶。みたいなストーリーだったのだろう。
「防御高めか… やるじゃん」
新井も一瞬、『俺が耐える』という信じがたい光景に目を見開いたが、俺も彼同様に『神に祝福された』身だと思い出したのだろう、邪悪な笑みを浮かべて体勢を整える。
…正直、思っていた程の攻撃力は無かった。確かに人間離れした威力のパンチだったけど、俺のバリアを破る程でも無かったし、構えも隙だらけでどうにも『強者感』が無い。
あれなら攻撃力も運動性も、ベルモの森の熊の方がよほど強かった。あれで新井が本気なら素手でも勝てそうな気がするんだけどな……。
「じゃあ、これならどうだっ!?」
新井は再度距離を詰め、左手で数発ジャブを打ってくる。いかにも牽制用の目眩ましで、すぐに本命の右ストレートが来るのだろう。
さっきの大振りと違って「当てに来る」パンチだが、そんな力の入っていない打撃では、先ほど以上に俺には効かないぞ…?
わざわざ弱い攻撃を出してくる彼の真意が掴めない。避ける事も出来たが、もう一度様子見で腕ガードで受け止めてみる。
『痛いっ?!』
打撃を受けた腕に伝わる電気ショックに似た痛み… 俺はこの感覚に覚えがある……。
「さすがに『コレ』は効いたか? あぁ?!」
俺の反応から痛痒が通った事を理解したのか、新井は嬉しそうに両手で2撃3撃と畳み掛けてきた。その度に電気ショックが俺の腕に走って行く。
一発一発は甚大なダメージでは無い。例えるなら針でチクチク刺されている様な感覚だ。だがそれも何度も食らうとやがては重傷に繋がって行く。
この感覚、ガドゥが使っていた『魔功』とやらによく似ている。もしかして新井とガドゥはどこかで繋がっているのか…?
ガドゥは謀略の神である『ドゥルスの遣い』と自称していた。俺の魔剣の作り手の一柱であるならば、ドゥルスとガラドが手を組んでいても不思議はない。
つまりガドゥと新井が組んでいる可能性も否定できない、という事だ。
俺は後ろに飛び退り新井と距離をとる。この状況で俺はどうするべきなんだ…?
「あ… 新井くんさぁ…」
とりあえず情報が欲しい。彼と話すのは心底避けたいのだけれども、仕方が無い……。
「あ? 何だよブタ。大人しく剣を渡す気になったのか…?」
「そ、その技って誰から教わったの…?」
我ながらストレート過ぎるな… もうちょっと搦め手でこちらの意図を悟らせずに聞き出す事も出来ただろうに… どうにも新井相手だと思った通りの行動が出来ない自分がもどかしい。
「へっ、興味あるのかよ? 良いぜ、俺に勝てたら教えてやるよ!」
まぁそうなるよね……。
新井くんは足元の拳大の石を拾って、これ見よがしに片手で握り潰して見せた。
いくら転生前にイジメっ子だったからと言って、彼にそんな握力があった訳は無く、例の『力の神』とやらに持たされたチート能力なのだろうと思われる。
なるほど、そう考えればその力を背景に手下の2、3人居ても不思議じゃないな。
取り巻きの奴らはどう見てもその辺のチンピラクラスで、戦闘力はゴブリンと大差ないだろう。
「まぁ会えたのは本当に偶然でさぁ、神様に仕事を頼まれた物の、何の情報も無いままここに飛ばされて困ってたんだよ。いやまさかお前の方から来てくれるとはねぇ… この嬉しさ分かる?」
新井くん… いやそろそろ敬称は不要だろう。新井は昔から自分が言いたいことだけをツラツラ語って、勝手に怒ったり落胆したりして、それを理由に俺を殴っていた。
今やっているのは単に『それ』の延長戦であり、結果が変わらない以上真面目に話を聞いてやる義理も無いのだが、こちらから先制攻撃する訳にもいかないし、彼に能動的に攻撃行動を取ろうとすると、まだ体が拒絶反応を示す。動けない……。
「もしお前に会えなくても、貰った『スーパーパワー』を使って好き勝手に生きるつもりだったけどな…」
新井の言う『スーパーパワー』の詳細がまだ分からないのが少し不安だな。力が強化されているのは分かったが、素早さは? 知能は? カリスマは…?
新井の言葉に後ろに控えるチンピラABCの3人がヘラヘラと笑っている。新井がこの世界に来て何日経っているのか知り得ないが、これだけの情報でも結構絞り込めるだろう。
仲間としているのが下品で貧乏そうなチンピラという事から、カリスマ性ではなく暴力で配下にしたのならば、俺の剣の『魅了』の様な他人の心に働きかける魔力や、貴族の様な高い階級に影響出来る『知能』や『カリスマ』も無いと考えるのが妥当だろう。
今の段階で決めつけるのは危険だが、彼の言う通り『力の神』の加護のみ受けていて、俺の様な包括的な強化を与えられている訳では無さそうな印象だ。
「せっかくの再会なのに何にも言わねぇのな、つまんねぇ。やっぱりお前ムカつくわ…」
な? 勝手にイチャモン付けてきて勝手に怒って、勝手に殴る理由をこじつけてくるだろ?
新井の暴力に対して、昔は天災の様に怯えて耐えるしか無かった。だが今の俺には『戦う力』がある。
とは言え往来の真ん中で、ウルカイザーの衛兵に封印された剣を抜いての刃傷沙汰はマズい。
「まだ力の加減がよく出来ねぇからさ、間違って殴り殺してちゃっても恨まないでくれよな…?」
言葉の最後で新井の体が沈む。そのまま右手を大きく振りかぶった体勢でこちらに突っ込んで来る。
俺は両手を並べてボクサーの様な防御姿勢を取る。聖剣によるバリアは利いてるはずだけど……。
新井は駆け込んできた勢いを乗せてパンチを繰り出してきた。いつもなら避けようと思えば簡単に避けられる、武道の心得の片鱗すら窺えないテレホンパンチだ。
だがまだ俺への呪縛は解けていない。俺の体の自由は利かず、防御姿勢を取れたのがせめてもの抵抗だった。
「らぁっ!!」
新井は構えた俺の腕の上から打撃を被せてきた。バリア越しに腕に伝わる強い感触、確かに常人の何倍もの力を得ているのは間違いなさそうだ。
殴られた反動で俺の体が2m程後退する。実際に攻撃された事で、今まで恐怖から強張っていた俺の全身の筋肉に血が巡り始め、ようやく体が自由を取り戻す。
「あ、あいつアライさんの攻撃を受け止めたぞ?!」
新井の取り巻きの1人が驚きの声を上げる。なるほど、彼らの予想だと俺はパンチ一発で吹き飛ばされて、後ろの壁に激突して気絶。みたいなストーリーだったのだろう。
「防御高めか… やるじゃん」
新井も一瞬、『俺が耐える』という信じがたい光景に目を見開いたが、俺も彼同様に『神に祝福された』身だと思い出したのだろう、邪悪な笑みを浮かべて体勢を整える。
…正直、思っていた程の攻撃力は無かった。確かに人間離れした威力のパンチだったけど、俺のバリアを破る程でも無かったし、構えも隙だらけでどうにも『強者感』が無い。
あれなら攻撃力も運動性も、ベルモの森の熊の方がよほど強かった。あれで新井が本気なら素手でも勝てそうな気がするんだけどな……。
「じゃあ、これならどうだっ!?」
新井は再度距離を詰め、左手で数発ジャブを打ってくる。いかにも牽制用の目眩ましで、すぐに本命の右ストレートが来るのだろう。
さっきの大振りと違って「当てに来る」パンチだが、そんな力の入っていない打撃では、先ほど以上に俺には効かないぞ…?
わざわざ弱い攻撃を出してくる彼の真意が掴めない。避ける事も出来たが、もう一度様子見で腕ガードで受け止めてみる。
『痛いっ?!』
打撃を受けた腕に伝わる電気ショックに似た痛み… 俺はこの感覚に覚えがある……。
「さすがに『コレ』は効いたか? あぁ?!」
俺の反応から痛痒が通った事を理解したのか、新井は嬉しそうに両手で2撃3撃と畳み掛けてきた。その度に電気ショックが俺の腕に走って行く。
一発一発は甚大なダメージでは無い。例えるなら針でチクチク刺されている様な感覚だ。だがそれも何度も食らうとやがては重傷に繋がって行く。
この感覚、ガドゥが使っていた『魔功』とやらによく似ている。もしかして新井とガドゥはどこかで繋がっているのか…?
ガドゥは謀略の神である『ドゥルスの遣い』と自称していた。俺の魔剣の作り手の一柱であるならば、ドゥルスとガラドが手を組んでいても不思議はない。
つまりガドゥと新井が組んでいる可能性も否定できない、という事だ。
俺は後ろに飛び退り新井と距離をとる。この状況で俺はどうするべきなんだ…?
「あ… 新井くんさぁ…」
とりあえず情報が欲しい。彼と話すのは心底避けたいのだけれども、仕方が無い……。
「あ? 何だよブタ。大人しく剣を渡す気になったのか…?」
「そ、その技って誰から教わったの…?」
我ながらストレート過ぎるな… もうちょっと搦め手でこちらの意図を悟らせずに聞き出す事も出来ただろうに… どうにも新井相手だと思った通りの行動が出来ない自分がもどかしい。
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