魔王と呼ばれた勇者、或いは勇者と呼ばれた魔王 〜最強の魔剣で自由に生きる! 金も女も、国さえも思いのまま!! …でも何かが違うみたいです

ちありや

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第110話 ゾビルの思惑

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「ふぅん、『如何にも』って場所ねぇ… ディギールさんのお店と同じ匂いがするわぁ…」

 俺1人ではどうにも不安なのでチャロアイトも呼んだ。『敵地での怪しい話』という事でかなり慇懃無礼な態度だが、やはり俺と同じ感想を抱いた訳で、この店は『その筋の』店である事が確定した。

 実はチャロアイトを呼んでも良いかとゾビルに確認したところ、「イクチナ・バリガなら歓迎だ」と返ってきた。
 もう完全に俺達がセットでバルジオンからの入国者であると掴んでいるんだな……。

「さて… 色々と腹を割って話をしたいところなんだが、事情がかなり複雑でな。まぁお互い様だと思うけど…」

 俺達をこの店に招き入れたゾビル氏が、半笑いで口を開いた。「腹の探り合い」は面倒くさいので好きじゃないんだよなぁ……。

「あら、私は貴方の事を知っているわよ。レキーラ…」

 チャロアイトが挑発めいた視線と口調でゾビルを煽る。しかも『レキーラ卿』って事は、ゾビルは偽名で貴族か何かの身分なのか、このオッサンは…?

 その言葉にゾビルのあまり大きくない目がさらに細まる。わずかな殺気を感知して俺も身構えたが、それも一瞬だけの事だった。

 ゾビルは「ハハッ」と軽く笑って、俺とチャロアイトを交互に見つめ、何かを観念した様に天井を仰ぎ見た。

「なるほど、バルジオンの『幻夢兵団』てのは予想以上に優秀みたいだな… 俺から接触があるのを見越していたのか?」

「まさか。『ウルカイザー大公の懐刀』、智将と名高いレキーラ男爵家の次期当主様とお目通りが叶うなんて夢にも思ってませんでしたわ」

 ゾビルの質問に対し、しれっと重要な情報をぶち込んでくるチャロアイト。そろそろ俺にも理解できる様に説明して欲しいんだけどな……。

「こちらはアルバ・レキーラ様と言って、代々ウルカイザーの内務省を仕切っておられるレキーラ家の次期当主様よ。偽名を名乗って安っぽい鎧着て場末の酒場で密談している理由までは知らないけどね」

 チャロアイトが俺の心を読んだかの様に、ゾビルの正体をバラしてくれた。でもそれだけじゃ今の状況を説明出来ない。この男の真の目的が見えてこない限り、木製のジョッキに注がれた酒を飲む事も出来やしない。

「まぁ悪い人じゃないと思うわ。街の内外に出没する悪党に対処する為に、彼らに賞金を掛け、賞金稼ぎ達による治安維持を提唱して、それを実行しているわよね。そのためにわざわざ組合ギルドを作ってるし」

 あぁ、先ほど言っていた『ギルド』ってのは『賞金稼ぎ組合』の事だったのかな? 新井に賞金が掛かっていてどうのと言っていたし。

「すると俺にも新井の分の賞金が貰えるって話なのかな…?」

 もしそうならラッキーってところだが、俺達がこんな密談専用の店に呼ばれたって事は、それだけじゃないよな。ガドゥの事も気になるし……。

「あ~、生憎だがお前さんは組合員じゃないから、新井の件で組合から金は出せない。だがガドゥを排除出来たなら、内密にだが報奨金は出すし、バルジオンとウルカイザー両国の関係も今よりは改善できる」

 ゾビルは正体を隠す気を無くしたらしい。まぁ俺としても、その方がよほど信頼できるけどね。

「ふうぅん… 国が絡むって事は、ガドゥの正体も分かっていての発言、て事で良いのよね…?」

 チャロアイトの目が妖しく光る。これは魔法を使っている目では無い。何やら悪巧みをしている時の目だ。

「勿論だ。我々としても今の状態が最善とは全く考えていない… 当然過去に何度も奴に刺客を送ったが、ことごとく返り討ちに遭っていて、当方に動かせる駒が少なくてな…」

 つまりガドゥの居場所等の情報を流すから、俺とチャロアイトで何とかしろ、って意味なのかな? まぁ望むところではあるけどさ。

 ☆

 そこからゾビルとチャロアイトの交渉… というか腹を探りあいながらの答え合わせが始まった。会話をいちいち挙げていては切りが無いので、以下ダイジェストでお送りする。

 現ウルカイザー大公であるウルザードの息子はかつてバルジオンの王女ガーリャとの婚約がされていたが、ガーリャとボリクの父王の突然の崩御で、跡目争いの内戦が勃発。混迷状態のまま婚姻は無期延期となる。

 内戦の後、ガーリャ王女は現バルジオン国王のカーノに鞍替えし、ウルカイザーとの婚約を「内戦時に支援が無かったのは薄情である」というかなり無理やりな理由で破棄してしまった。
 
 以前ティリティアから聞いた「ガーリャ殿下の婚約破棄」は都市伝説かと言われていたけど真実だったんだな。これは後で教えてやったら喜びそうだ。

 婚約破棄の結果、恥をかかされた公子は『虚無ヴォイド』への無茶な攻勢を仕掛けて戦死してしまう。

 さて、国際的な恥をかかされた上に、跡取り息子までをも亡くして腹の虫が収まらないウルザードはなんとかバルジオンに復讐するべく、ウルカイザーに亡命していたボリク王子並びに支持者の貴族達に資金を与え、現体制に対する革命勢力を密かに作り上げた。

 ここで驚いたのは、これまで幻夢兵団の団長であるリーナの力をもってしても『推測』止まりだったガドゥの正体があっさりと知れた事だ。

 ガドゥは我々の予想通りボリク王子その人で間違いないらしい。このネタだけでも持って帰ってリーナに報告したら、かなりな報酬が期待できるだろう。

 さて、ウルカイザーとしては定期的に現れる『虚無ヴォイド』からの魔物の侵攻に合わせて、ボリク王子率いる自称『正統政府』軍がバルジオンに攻勢を掛け国を掌握、『簒奪者』であるカーノ王とミア王女から政権を奪還する計画だったらしい。

 それだけでもかなり悪意のある作戦だが、実際は更に悪魔的な展開になった。

 鬼族オーガであったボリク王子は、貧民街の怪しい同族の交友関係から邪神崇拝を学び、いつしか『策謀神ドゥルス』の神官となり、魔物の使役まで出来るようになっていたそうだ。

 ボリク周りの貴族はもちろんウルカイザー側としても、バルジオンへの復讐は望んでいても、人類の宿敵魔族との共闘は誰一人望んではいなかった。
 
 たとえ革命が成功してバルジオンを支配できたとしても、魔物との共闘は『虚無ヴォイド』からの攻勢に晒され続け、それに対して抵抗してきた他諸国を裏切る行為に他ならないからだ。

 ウルカイザーでもガドゥの作戦に乗り気なのは国主ウルザード大公のみで、政府としては魔族と結託してまでバルジオンと事を構える覚悟は無く、正直ガドゥと大公の存在を持て余している。という事らしい。

「ガドゥことボリク王子、並びに私怨に囚われガドゥを放置し国を傾けようとする現大公のウルザードを排除し、バルジオンとウルカイザーとの正常な国交回復が最終的な我々の狙いだ」

 ガドゥはともかく、大公を排除したら国の運営に関わると思うのだが、その辺は大公の弟を後釜に据える事で既に話がついているらしい。抜け目無いな。

「ここまで話した上で、もし協力してくれるなら頼もしいし、最悪でも邪魔をしないで頂きたい…」

 果たしてこれは、チャンスか罠か…? 
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