13番目の神様

きついマン

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二期 二章

謁見

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「通れ。」

 王女様に牢屋から出してもらった俺たちは、そのまま王の間へと導かれた。
 ここ、アルケイデスは城は無く、コロシアムが城の代わりになっているらしい。まあ、大きさ的にはちょうどいいとは思うけど、威厳とか大丈夫なのか?

 俺たちは長いレッドカーペットの上を真っ直ぐ歩き、玉座に座る王の前で膝をついた。

 が、この世界ではそういう習わしがなかったようで、度々恥をかいた。なんなんだ一体。

「はっは!そこの奇妙な動きを見せるお前が今回の件だな!!」

「えぇ、このものたちです。父上様。」

 いつのまにか玉座に座っていた王女様、さっきといい今といい、瞬間移動でもしてるのかあの人。

「すみません!うちの馬鹿者がお世話かけまして…」

 おかんのような口調で謝るアリサ、それでいいのか?ていうかすごい言い草だなぁ…

「よいよい!!それよりこちらも悪かった。早とちりで独房などへと…」

「いえ、いいんです!コイツが手加減しないのが悪いんです!!」

 その瞬間、少し空気が冷えた。

「それだ。そもそも、手加減するしないのレベルではないのだよ…」

「どういうことですか?」

「…あの騎士の名を言えば、自ずと分かろう…」

 名前…?そういえば聞いていなかったな。なんて名前なんだろう…

「あの騎士の名前は"クレイス"。武の神ヘラクレスの使いと言われた男だ。」

 知らん。と一蹴しようと、後ろの三人に目を向けた。

「「「…!?」」」

 そこには作画崩壊した顔が三つ並んでいた。
 …誰だコイツら。

「ク、ク、クレイス!?人類で唯一と言われる+A級の!?」

「ほ、ほんものですかぁ!?!?」

「にいちゃん無茶苦茶だよ…」

 どうやらクレイスという男は、この世界では有名らしいな。唯一のA級…いや、+A?

「+Aってなんだ?」

 セリスが興奮気味で答える。

「+Aって言うのはA級をさらに逸脱した人類に与えられる称号ですぅ!災害に、つまりS級に対抗できる唯一の人類!それがクレイス様なんですぅ!」

「なるほど、つまり俺はそいつをぶん殴っちまったという訳だな。そりゃ俺でもイカサマだと勘違いするなぁ…」

「お前、クレイスを知らないのか?」

 信じられないと言いたげな王様が問いかけてきた。

「すみません、なにぶん迷い人でして…この世界のことはまだまだ疎くて…」

「ほう…迷い人か…なら知らないのも無理はないな…」



 武人   クレイス

 彼はこの世界で唯一だった。
 勇者没後、世界にはギルドという施設が配置された。
 魔王軍という脅威にさらされた人類が、対抗できる力を得るためにギルドを建てたのだ。
 その時、クラスというものも取り決めた。相手の強さを図るため、生存確率を上げるためだ。
 そのクラスはH級からS級まで。
 S級は最初から今まで変わらず、二人、四匹しか当てはまらない。

 今まで

 土の竜 グラン

 風の竜 イニエス

 水の竜 リバリア

 火の竜 サランディア

 四元素の竜達と、

 勇者 アレク・サンダー

 魔王 ルシファー・ルシフェル

 この二人のみだった。

 だが、武人 クレイスは限界を超え、人類の壁であったA級を乗り越えた。
 
 勇者没後、はじめてのことだった。

 多くの人はクレイスはS級だと信じた。

 しかし、クレイスが言い渡されたのは+Aだった。
 勇者、魔王の強さを知る者が、S級ほどではないと断固拒否したのだ。

 拒否されたものの、強さはもはやS級であることに変わりはなかった。

 彼は唯一のA級を超えし者として、人類に知れ渡ることとなった。


 そんな、人類最強を、真っ向に倒してしまったのがこの俺だ。
 それは疑われるだろうなぁ…

 クレイスの説明から続けて王様が問いかけてきた。

「そこで、だ。アレクといったかね?君の強さを見込んで頼みがある。」

「頼み、ですか?」

 王様は暗い顔を見せ、歯をくいしばる。

「この国で今、とある、事件が相次いでいてな。」

「とある、事件ですか?」

「そうだ。コロシアムには、多くの闘技者が登録している。」

「はあ…」

 唐突に事件の話が始まり少し面食らう。

「その闘技者の中でも実力者である、十五人が行方不明となっているのだ。」

 その実力者たちのランクはそれぞれC級を超えていると王様は続けた。

「もしかすると、そのもの達より強き者の仕業かも知れん。…悪魔とか…な…。」

 
 王様がそう言ったとき、俺とアリサとセリスは一気に殺意を膨らましてしまった。
 襲われたことのある俺たちは、やはり悪魔という存在を強く意識してしまっているようだ。

 どうしても、体に力が入る。

「…お前たち、何か知っているのか…?」

「知りません。が、悪魔が相手なら、俺たちが出ます。」

 正直まだ心許ないが、困ってる人がいるのに修行なんてしてる場合じゃない。

 決心してそう告げると、王様が驚いた顔をして、そして笑った。

「もとよりクレイスを倒したお前たちに頼むつもりだったのだが…、まさか自ら名乗り出るとは、見上げた根性!!気に入った!!」

「この国を救ってくれ!!」

 俺はもう迷わない。この世界に来て、大切な人が増えた。もう悪魔どもの好きにはさせない。

 王様の一括の裏で、そう決めた。
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