13番目の神様

きついマン

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二期 三章

ベリアル

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 ~玉座の間~
 
 夜明け、早朝のアルケイデスで事件は起こった。

 また一人闘技者が消えたのだ。 
 今回消えたのは冒険者ランクC級の上位者。剣術の達人と言われたシルキー・センブァンという女性冒険者だ。

 俺たちが寝ていた時間に事は起こり、一部始終を見ていた市民からの伝達で、王様を通じて俺たちの耳に入った。

 その市民のおかげで、とうとう犯人の姿形が明らかになった。

 彼が言うには…「体躯は人間の半分ほど、羽、ツノが生えていた。容姿は人間のようであった。」そうだ。

 その異形の姿をした者はシルキーを一撃で気絶させ、担いで空に消えていったらしい。

 …悪魔だ。そう誰かが呟いた。

 本当の悪魔を見た俺たちはまだ悪魔だと断定はしていなかったが、C級の実力者を一撃で戦闘不能にしたという事実は悪魔そのものであった。…並大抵の強さではない。前に戦った悪魔が脳裏をよぎった。


 話を一通り聞いた俺たちは、宿へと一度帰ってきていた。

「まさかこんなに早く次の被害が出るとはな…」

「これは、ゆっくりしてられないわね…」

「確か目撃されたのはコロシアムの前の大通りにある道具屋の前だったよな。」

 本来ならばクレイスに現場に滞在してもらい、おびき寄せる作戦だったが、少し嫌な予感がするな…

「クレイス…例の作戦だが…」

「そのままで行こう。これ以上被害が出る前に食い止める。」

 練り直そう。と言おうとしたところで、クレイスが制してきた。

「…まあ正直、それ以外の作戦が思いつかないな。ただ、昨日のような余裕がないけどどうしたんだ?」

「今回、被害にあったシルキーは俺の…婚約者だ。これでも今にも暴れてしまいそうなほどに腹が立っている。」

 激昂。静かな激昂だった。
 俺を含めた四人はその威圧感に身体が震えている。本気で怒っているクレイスの横顔は深く暗い影を覆っていた。

「…決行は今夜。道具屋の前をクレイスに通行させ、襲いにきた敵を迎え撃つ。」

 俺の声で我に帰った皆が頷く。

「俺とアリサは道具屋裏で待機、おびき寄せた敵を叩く役目だ。セリスは俺たちの後列で回復魔法を準備していてくれ。サンは、セリスを守ってくれ。作戦は単純だがこれがベストだと思う。クレイスは囮終了後、戦闘に参加してくれ。」

 了解!と部屋に響き渡る。

「ただ、無理だけはしないでくれ。無理は俺とクレイスがやる。特にアリサは無理をしないでくれ。」

「わかったわ。」

「よし、皆死ぬなよ…!」

 こうして長い戦いが始まる事となる。


~アルケイデスから北の洞窟・キルド洞窟~

「…っ!こ…ここは?」

 気絶から目覚めたシルキーは辺りを見渡す。ここは…

「キルド洞窟…?なぜここに…?」

「起きたかシルキー。」

「誰!?」

 シルキーが声のした方に振り向くとB級冒険者のダインが立っていた。

「ダイン!無事だったのね!他のみんなは?」

「まだ生きている。まだ、な。」

「まだってどういう事?」

「確証はないが…とりあえず付いて来い!」

 疑問を抱きながらダインについていくと、だんだんと声が聞こえてきた。

「この声は?」

「この声の主は、俺たちをここに連れてきた犯人。悪魔ベリアルだ。」

「悪魔…!お話の中でしか聞いたことのない、魔王ルシファーに使える強大で残忍、非道の魔物…。そんな災厄が犯人…?」

「そうだ。理由は…」

 ダインがそこまでいうと、聞こえていた声が急に大きくなり全てがわかった。

「まだ足りないいいいいいいい!まだ生贄が、足りなあいいいい!悪魔ベリアル一生の付加くぅうううううううう!」

「…ということだ。ずっとあの調子なんだ。」

「…なるほど、全て理解できた。」

 シルキー達、腕の立つ実力者が狙われていた理由は生贄のためであった。

 魔王ルシファー復活のための魔力の足しにすることがベリアルの目的であった。ベリアルは悪魔の中でも下位に位置しており、一番人間の生贄を任されていた。

 下位、とは言っても人間の世界でいうならA級の力を持つ彼の前に立ち向かい、勝てるものはいなかった。

 したがって、囚われた闘技者達は逆らうこともできずに、ただ助けを待っていた…。
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