13番目の神様

きついマン

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二期 三章

剣を振る 下

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「剣を振る、というのは、どういうことか分かるか?」

 剣を高々と上げるクレイス。俺は見守る事しかできなかった。
 俺だけでなく、皆、動けなかった。
 悪魔を除いて。

「御託はいぃぃ…、早く連れて帰らないとぉぉ…。」

 夜の商店街にバサバサと翼が空を切る音だけが流れる。

「剣を、『振る』。それは…」

 クレイスが凄まじい形相で悪魔を睨む。

「何を犠牲にしても、大切なものを守り抜くと言う事だ。」

 そう呟き、クレイスは俺の目の前、悪魔の目の前から姿を消した。

 次の瞬間、俺は地面に血を流しながら倒れた。

 自分の身に何が起きたかまったくもってわからなかった。

 気づいた時には胸部に斜めの剣尖を浴び、大量の血を吹き出していた。

「な…なにが…起きた…?」

 悪魔が何かしたのか?だとしたら爪、皆は大丈夫なのか?
 薄れゆく意識の中で、思考を巡らせた。

 完全に意識が途絶える数秒前にぼんやりと声が聞こえた。

「俺は手段を選ばない。シルキーを助けるためなら、いくらでも剣を振る。さあ、悪魔よ!アジトへ連れて行くがいい!!」

 そして俺は気絶した。
 あぁ、もう3回目だ…



「アレク!!」

 アリサ達ははクレイスが悪魔に連れていかれた後、金縛りが解けたかのように動き出し、皆アレクの手当てを始めた。

「だ、ダメですぅ!!傷が深すぎて、私の治癒じゃまったく間に合いません!!」

 セリスはすかさず治癒魔法をかけたが、アレクの胸元から滝のように流れる血は、勢いを変えずただ流れる。

 もはやセリスの魔法による回復能力では補えないほどのダメージをアレクは受けていた。

「にいちゃんいきなり死ぬのは無しだぜ…!」

 サンとアリサも応急処置程度だが、アレク回復のため尽力を尽くしていた。

 包帯は変えるたびに血が滴り落ちていた。

 すでにアレクの出血量は致死量の一歩手前まで来ていた…



「…ぐっ…ここは…?」

 俺が目を覚ますと今まで一度も見たことがない空間に来ていた。

「な…にも…ないな…。」

 そこは真っ暗な世界。少し腕を振ってみるが何に当たる事もない。全くの闇。

「とうとう死後の世界に来ちまったのか?まだ生き返って二ヶ月ほどしか経ってないのになぁ…、だいたい危険な目に遭いすぎ…」ブツブツ

 嫌に落ち着いている俺はブツブツ言いながらその場に座り込んだ。

「落ち着きすぎではないですか…?」

 座り込んだ途端に声が聞こえてくる。

「だ、だれだ!!」

「私はペルセポネです。久しく思います。」

 ペルセポネと名乗る女性が突如目の前に現れた。
 
 …凄まじく美人で、もはや絵なのではないかと思うほど容姿が整っている。スタイルも理想の中の理想。と言うようなスーパーウーマンがそこにいた。

「…褒めすぎですよ…?」

 コイツ!心を読むぞ!!

「…あなたは死にかけているのに元気なものですね?」

「死にかけて…?いや、死んだんじゃないのか?」

「大丈夫です。まだ死んでいません。死なれては困ります。…そうですね、今の貴方の状態を見せましょう。」

 ペルセポネはそう言うと、ふぅっと息を吐いた。多分ミントの香りだろう。

 息を吐いたところが丸く光り、TVの様に映像を流し始めた。

「これが今の…状態…。」

 そこにはアリサ達が俺を囲んで治療をしている姿が映し出された。

「気絶した貴方の意識を私がこの世界に呼んだわけです。」

「ここ…?」

「はい、ここは私の空間です。…神々のプライベートルームみたいな物です。」

「…殺風景だな。」

「ほっといてください。それより、私が貴方をここに呼んだ理由があります。」

 ペルセポネはスッと腕を上げ、人差し指を俺の額に当てた。

「貴方を、あちらの世界に戻します。」

「本当か!?」

 俺は前のめりに尋ねた。
 
「はい、ですが貴方はおそらく一週間は寝たままでしょう。」

「一週間!?早めることはできないのか?!」

「はい。貴方のスキルに特殊スキル自己修復を追加しますが、レベル1からしか授けることができません。ですので、完全復活は一週間後となります。」

 それと…とペルセポネは続ける。

「慢心を辞めなさい。貴方は今強力な力を手にして慢心しています。だから前回も今回もこういう結果になったのです。次はありません。」

 ペルセポネはそこまで話し終えると、俺の額を強く押した。

 そして俺はまた深い眠りについた。
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