13番目の神様

きついマン

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二期 三章

勇者の血

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 アリサは宿を飛び出し、道具屋の前まで走った。

「アイツは確か…こっちに…」

 悪魔が飛んでいった方角を見ながら歯を噛みしめる。
 自分の無力差を思い知り、悔しさがこみ上げてくる。

「何が勇者の子孫よ…!」

 自分を叱るように叫び、アリサは走った。

 街を出ると、悪魔の飛んでいった方角の地面に何かが続いているのが見えた。

「これは…血?」

 血痕が数メートルの感覚でついていた。

「これはクレイスの剣についたアレクの血…!これを追えば正確な場所が分かりそうね!」

 アリサは微量の血痕を逃さず、真っ直ぐに悪魔の通ったであろう道をあるいていった。

 普通の人間では見ることのできない跡を追う彼女のスキルに変化が起きていた。


 スキル:心眼   索敵スキルの最上級。細かなものも逃さない。

 このスキルが、勇者アレク・サンダーの固有スキルであることを彼女は知らない。

 彼女は無意識に勇者の力を少しずつ解放していた。大切な人を守るため…

 
「森…?看板があるわね…」

 しばらく血痕を追っていると鬱蒼とした森が見えてきた。

 看板には"キルドの森"とだけ書いてある。普通の看板だ。

「……ボロッボロね……」

 不穏なほどボロボロなことを除けば…。

「この感じから見るに…普段は誰も近寄らないみたいね…、血痕は…森の中に続いてるわね。」

 アリサは生唾をゴクリと飲み込み、剣を引き抜いてキルドの森へと踏み入れた。

 
 ギャァァァァ…
 アァーー!!
 キィキィ…

 気味の悪い鳴き声が真っ暗な森に響き渡る。
 
「薄気味悪いわね…」

!?

 アリサは自分の歩く音と、不気味な鳴き声だけが響き渡る中、自らに向けられた殺気を感じ取った。

 何かいる…。

 殺気が近づいてくる。なんだ…なにがくる…


 あと、数メートル…気配が強まる…。

 アリサは自分が生きていることが不思議なほどのプレッシャーを感じていた。
 そのプレッシャーが最大になっていく…。

 …殺られる!!!

「くっ!!」

 突如暗闇の中から現れた白い牙を間一髪でかわす。

「なに!?」

「グルルルルル…!」

 アリサは自分の立っていたところを見る。

「こいつは…!」

 スキル心眼が無意識に働く。

 暗闇に紛れるほどの真っ黒な体躯。正反対に光り輝く何者も切り裂くキバ。

「嘘…!闇喰ダークイーター!?」

 
 闇喰とは虎型のモンスターで、A級と認定されている。
 その体躯は成人男性の二倍ほど、暗闇から気配を無にして獲物に近づき、牙で仕留める。
 その説明だけ見ればそれほどではないものの、その昔、とある国の軍隊が野営訓練を行っていたところに闇喰が出現。野営訓練中の兵150、増援350を喰い散らかし去っていったという事実がある。

 闇喰の恐ろしさは、気づけないことにある。

「消え…た…?」

 アリサは目を疑った。目の前にいた巨大な生物の姿が見えなくなっていた。

 闇喰は、勇者の心眼ですら、完全には見破れない隠密スキルを持っている。

 ゾワッ…

 また殺気を感じ、空気が凍りつく。

「次はどこ…?」

 悪魔を追いかけたアリサは、森の中で闇に飲まれようとしていた。
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