13番目の神様

きついマン

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二期 三・五章

覚悟と契約、そして盟約 上

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 クレイスは身体強化を全開で使用し、街へと走っていた。

 鎌鼬で見えるようになった空を見ていたら、暗雲の他に煙が上がって行くのが見えた。狼煙のようなその煙はボアの群れが見ていた方角、つまりアルケイデスの方から流れてきたものであるとすぐにわかった。

 街に何かあったことは明白であり、ただ事じゃない予感がした。

 その予感は森から出ると同時に確信へと変わった。
 
 見たこともないほどの魔物の群れ、アウェークドラゴン、それに…

「ガーゴイル!?話でしか聞いたことないぞ!?」

 そのガーゴイルが街の上空を群れで徘徊している。
 街からは火の手が上がり、建物が崩壊を続けている。

「おそらくあの魔物の群れも、さっきのボアも同じやつの仕業だろう…。」

 全速力で駆け抜けながら試行を繰り返す。
 操っているやつが見つけられなかったら…、魔物をどうにもできなかったら……、……自分よりも強かったら…。

 クレイスは相手側の力が自らの力を超えたことは今までなかった。それ故に、未知の相手と相対したときどうすればいいか、なんてものは全くわからなかった。
 しかし、今回それが起こりうるかもしれないと考え、ひたすら試行を繰り返した。

 目の前に魔物の群れの末尾が見えてきたあたりで、多くの魔物のヘイトが自分にうつるのがわかった。
 次々に自分の方へ攻撃してくる魔物。急ぐクレイスの行く手を阻む。

「ちっ…!どけ!爆砕剣!」

 一番手前にいたサンダーベアを切り飛ばし、爆発させ周辺の魔物を倒してゆく。

「このままでは…南門に近づけん!」

 スピードを緩めることなく駆け抜けながら、魔物を次々に切り飛ばし着実に数を減らして行く。
 群れの中間部まできたあたりで、南門に人影が見えた。

「あれは…シルキーとダイン!」

 見えた人影は交戦中の二人であった。
 勇敢にもアウェークドラゴンと戦おうとしている。

「待ってろ…!すぐに、ってクソ!!」

 急いで加勢に向かおうとするが魔物の群れが押し寄せてきて、おいそれと近付けない。

「そんなに邪魔するつもりなら…、まずはお前らからだ。」

 スーっと大きく息を吸うクレイス。そして大声で叫ぶ。

「エクスブロウ!!!!!!!!!」

 叫んだクレイスの口から凄まじい威力の爆炎が放たれる。
 触れた魔物は焼けるよりも早く、その威力に耐えきれず爆散してゆく。
 クレイスの目の前、南門までの道のりにいた魔物はほぼ木っ端微塵となり、まっすぐ門までの道ができた。

「まだまだぁ!!」

 すぐにその空いた道に魔物がくる。その魔物を鬼のような形相で切り飛ばしてゆく。
 しかし、すぐその道は埋まってゆく。
 前も後ろも上も魔物まみれ。流石のクレイスも足を止める他なかった。

 が、そのとき、上空のガーゴイルの群れがシルキーたちに指を向け始めたのが見えた。

「あれは…!」

 ガーゴイルの術が完成するまで後十秒。
 あの術はまともに食らえば必ず死ぬ。

「うおぉぉぉぉぉお!!!」

 クレイスは死に物狂いでボアの頭を踏み抜き、空中へと飛んだ。
「鎌鼬!!」
 後ろ斜め下向きに鎌鼬を放ち魔物を殺しつつ、その推進力で一気に南門へと飛ぶ。もう奴らの術は完成した。
『ヘルファイア』
 無機質な声が背筋を凍らせる。
「間に合わん…!エクスブロウ!!」
 追い打ちでエクスブロウを放ち、さらに自らを加速させる。
 後三秒で二人に接触する。術の方も後三秒ほどと言ったところ…!ここが勝負だ!

 一気に魔物の上を飛んで南門入り口まで飛んできたクレイスは着地と同時に、自らの限界を超えた身体強化を施して地を蹴った。
「ぐぅ…!」
 思い切り骨の折れる音がなり、地面をえぐりながら二人の元へと飛ぶ。

 限界を超えたおかげでコンマ五秒ほど奴らの術より早く動けていた。これなら間に合う!
 手を伸ばせばシルキーに届く距離、ダインはギリギリ範囲外と見た…!

 絶対に、助ける!

「うあぁぁぁらぁ!!」

 そして術は街を抉った。


 ダインは呆然とした。自分の目と鼻の先の位置が、まるで火山の頂のような風景になっていることに。

「…シルキー…、すまねえ…。」

 守れなかった友人の名前を漏らし、涙をこぼすダイン。
 
「クソッタレが!自分もすぐにそっち行ってやるよ!このクソどもを少しでも道連れにしてな!!」

 目の前で友人を亡くしたショックからか自暴自棄になってしまっていた’。
 そんな自暴自棄の頭に走る鈍痛。

「っ!魔物!?」

「勝手に殺さないでくれる?」

 そこにはクレイスにお姫様抱っこされたシルキーがいた。

「シルキー!?クレイスも!?」

「遅れてすまなかった。」

 クレイスは寸前でシルキーを助けていた。
 一秒以下の世界の中、シルキーを抱き上げ、さらに遠くへと走り抜けたのだ。

 しかしその代償として左足の骨は複雑骨折。片足で立っている状態だ。

「足、大丈夫なのか!?」

「問題ない…とはいかないが、それどころではない!くるぞ!」

 先ほどヘルファイアを放ったガーゴイルたちは生き残った俺たちを見て腹を立て、ものすごい剣幕で襲いかかってきた。
 
「気をつけろ!おそらくただのパンチも奴らの莫大な魔力による身体強化でかなりの強さになっているはずだ。」

 クレイスは二人に指示を出しつつ、剣を握った。

 しかし、結果はわかっていた。
 迫ってくるガーゴイルの群れ、アウェークドラゴン、魔物の群れ、それだけでも対処が追いつかない。その上、強化されている。
 クレイスが片足で地面を蹴り上げ迫り来るガーゴイルに斬りかかるが、硬い腕でガードされ、たいしたダメージを与えることができない。
 魔力もそこまで残っておらず、身体強化の影響で体もボロボロである。
 シルキーとダインに至っては、ガーゴイルとアウェークドラゴンの攻撃をかわすことでいっぱいいっぱいである。
 ボアなどの魔物も数が多すぎる。

 まさに絶体絶命だった。

「「「うおおおおおおおお!!!!!」」」

 三人は背中合わせで叫び気合いを入れる。

 しかし、その気合も空しく

 ガーゴイルが指をあげる。

「終わりだ…」

 クレイスが呟いた。
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