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二期 三・五章
覚悟と契約、そして盟約 下
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クレイスは何が起きているか全くわからなかった。
先程までこちらに向かって来ていた魔物たちが微動だにしなくなったのだ。
ありえないことに、ガーゴイルに至っては空中で停止している。もちろん羽ばたいてなどいない。
「な、なんだ?!」
まるで時が止まったかのような状況に理解が追い付かない。
街を見渡してみると、落ちてくる瓦礫や炎の揺らめきまでもが停止している。
「全てが止まっている…?」
見渡す限り止まった世界。
困惑していると、声が聞こえた。
「ははぁ~、君がクレイス君だね~?」
「だ、誰だ!!」
声が聞こえたのは空だった。上空で停止しているガーゴイルの背中に小さな子供が立っていた。
「ボクはアザゼル。悪魔だよ。」
「あ…く…ま…?過去の対戦で魔王軍として猛威を振るったあの悪魔!?」
「正解だね!よく知ってる!」
おちゃらけながら笑うアザゼルと名乗る奴はひらひらと手をふる。
「この状況もお前の仕業なのか!」
「それもせいかーい!凄いね!ここは意識の空間だよ。」
パチパチと拍手をしながらニコニコと笑うアザゼル。まるで隙だらけだ。
だがクレイスは動けない。体が震えて言うことを聞かないのだ。生まれて始めての体験であった。
「…なんのつもりでこの空間に呼んだんだ。」
アザゼルはより一層ニコニコと笑い、答えた。
「ボクに協力をして欲しいんだ。」
「協力!?」
クレイスは耳を疑った。
「そう、協力!君にボクの加護を付与してあげるから、この魔物たちを殺して欲しいんだ。」
手を大きく広げ、「この魔物たちを!」とさらに続ける。
おそらくこの街にいる魔物のことだろうとクレイスは理解する。
「どう言うことだ?」
「どう言うことも何も、ただ殺して欲しいだけだよ。」
アザゼルの考えていることは全く読めなかったが、この状況の全ての主導権はアザゼルにあるため、クレイスは従うほか選択肢がなかった。
しかし、この魔物の量は現段階で一人でどうにかなるようなものだとは思えない。
クレイスはアザゼルの加護と言うものが気になっていた。
「お前の加護と言うものは、どう言うものなんだ?」
クレイスがそう聞くと、もはや不気味とも言えるほどの満面の笑みでこう告げた。
「契約完了だね!!」
アザゼルはガーゴイルの背中から浮き上がり、ゆっくりとクレイスの前まで降りた。
「まっ待て!まだ契約するとは…!」
クレイスの目の前に立ったアザゼルは手をクレイスの頭の上に乗せた。
その瞬間にクレイスは体の中に何か入ってくるような感覚を味わった。
「うぐ……、なんだ…、視界が揺れて気持ち悪い…。」
「君に今、このボクの加護を与えた。悪魔の加護は君に力を与えるよ。」
「…それだけ…と言うわけではないんだろう…?」
ぐらぐらと揺れる視界の中、アザゼルを見つめる。
「さぁね、真偽はさておいて君はボクのおかげで自分も仲間も助けられるんだ。疑うより先に感謝して欲しいものだよ全く。」
何か裏があると確信はあったが、逆らうことができなかった。
「さあて!そろそろボクの加護も定着してきた頃かな!君の意識を現実に戻すよ!」
アザゼルはクレイスの目の前に手を差し出し、指をパチンと鳴らした。
すると大きな穴が地面に現れ、世界ごと飲み込んでいった。
「うおおおおおおお!!!!」
クレイスも飲み込まれてゆく。
「それじゃあ!頑張ってね!」
クレイスはアザゼルの気味の悪い笑顔を見ながら暗闇に飲まれていった。
…
……
………
「はっ!!」
気づくとそこは全てのものが動いている現実世界だった。
ガーゴイルの指先からは今にもヘルファイアが放たれようとしている。
「くっ…ここまでか…!」
隣でダインが嘆く。
「それでも私たちは逃げれないわ!」
シルキーが息巻く。
そしてクレイスは…
ステータスプレートを見ていた。
「いやなんで悠長に自分のステータス見てんだおめえ!!」
ダインが絶体絶命のなかクレイスに思い切りツッコミをかましていく。どうしてもツッコまないといけない気がした。
「…いや、何でもない。」
クレイスは驚愕していた。
加護の力を少し確認する為に取り出したステータスプレート。
その力量に合わせた立ち回りをしようとした。
そのプレートにはこう表記されていた。
クレイス
冒険者LV666
騎士LV666
悪魔『アザゼル』の加護
体力 666
力 666
知恵 666
精神 666
魔力 666
スキルの表記もなく、ただこれだけが書いてあった。
「弱体化…か…やはり罠だったか…」
加護をもらう前は平均7000ほどだったが、今は全て666に変わっていた。
「どーすんだ…」
絶望に打ちひしがれるクレイスの頭に声が響く。
『言い忘れてた。ステータスプレートは信用しないでね。正しくないから!ボクたちの加護は人間のプレートじゃ計れないよ!』
アザゼルの声だ。
計れない事はわかったが、これじゃあどう攻めたらいいかわからない。
『自信持ってね~!』
アザゼルがフェードしていく。クソッタレ。
「まただ!!くるぞ!」
ダインが叫ぶ。
とうとう二発目のヘルファイアが放たれた。
「…ここは俺に任せろ。」
「クレイス!!流石に貴方でも無理よ!足も片足使えないんじゃ…え、足が…」
悪魔の加護のおかげか、クレイスの足は治っていた。
「いいから!!逃げろ!!」
当たって砕けろだ。最悪でも、二人は守り抜く…!
「エクスブロウ!!!!!」
迫ってくるヘルファイアにエクスブロウを放つ。
到底ヘルファイアには敵わない呪文だが、これ以上の出力を出せる呪文は持っていなかった。
ダメ元で放ったエクスブロウはヘルファイアへとまっすぐ飛んで行く。
そしてクレイスの放った爆炎はヘルファイアの中心を貫き、ガーゴイルを焼き尽くした。
「「は?」」
シルキーとダインが驚愕している。
クレイスも冷や汗を垂らし、悪魔に少しだけ感謝した。
先程までこちらに向かって来ていた魔物たちが微動だにしなくなったのだ。
ありえないことに、ガーゴイルに至っては空中で停止している。もちろん羽ばたいてなどいない。
「な、なんだ?!」
まるで時が止まったかのような状況に理解が追い付かない。
街を見渡してみると、落ちてくる瓦礫や炎の揺らめきまでもが停止している。
「全てが止まっている…?」
見渡す限り止まった世界。
困惑していると、声が聞こえた。
「ははぁ~、君がクレイス君だね~?」
「だ、誰だ!!」
声が聞こえたのは空だった。上空で停止しているガーゴイルの背中に小さな子供が立っていた。
「ボクはアザゼル。悪魔だよ。」
「あ…く…ま…?過去の対戦で魔王軍として猛威を振るったあの悪魔!?」
「正解だね!よく知ってる!」
おちゃらけながら笑うアザゼルと名乗る奴はひらひらと手をふる。
「この状況もお前の仕業なのか!」
「それもせいかーい!凄いね!ここは意識の空間だよ。」
パチパチと拍手をしながらニコニコと笑うアザゼル。まるで隙だらけだ。
だがクレイスは動けない。体が震えて言うことを聞かないのだ。生まれて始めての体験であった。
「…なんのつもりでこの空間に呼んだんだ。」
アザゼルはより一層ニコニコと笑い、答えた。
「ボクに協力をして欲しいんだ。」
「協力!?」
クレイスは耳を疑った。
「そう、協力!君にボクの加護を付与してあげるから、この魔物たちを殺して欲しいんだ。」
手を大きく広げ、「この魔物たちを!」とさらに続ける。
おそらくこの街にいる魔物のことだろうとクレイスは理解する。
「どう言うことだ?」
「どう言うことも何も、ただ殺して欲しいだけだよ。」
アザゼルの考えていることは全く読めなかったが、この状況の全ての主導権はアザゼルにあるため、クレイスは従うほか選択肢がなかった。
しかし、この魔物の量は現段階で一人でどうにかなるようなものだとは思えない。
クレイスはアザゼルの加護と言うものが気になっていた。
「お前の加護と言うものは、どう言うものなんだ?」
クレイスがそう聞くと、もはや不気味とも言えるほどの満面の笑みでこう告げた。
「契約完了だね!!」
アザゼルはガーゴイルの背中から浮き上がり、ゆっくりとクレイスの前まで降りた。
「まっ待て!まだ契約するとは…!」
クレイスの目の前に立ったアザゼルは手をクレイスの頭の上に乗せた。
その瞬間にクレイスは体の中に何か入ってくるような感覚を味わった。
「うぐ……、なんだ…、視界が揺れて気持ち悪い…。」
「君に今、このボクの加護を与えた。悪魔の加護は君に力を与えるよ。」
「…それだけ…と言うわけではないんだろう…?」
ぐらぐらと揺れる視界の中、アザゼルを見つめる。
「さぁね、真偽はさておいて君はボクのおかげで自分も仲間も助けられるんだ。疑うより先に感謝して欲しいものだよ全く。」
何か裏があると確信はあったが、逆らうことができなかった。
「さあて!そろそろボクの加護も定着してきた頃かな!君の意識を現実に戻すよ!」
アザゼルはクレイスの目の前に手を差し出し、指をパチンと鳴らした。
すると大きな穴が地面に現れ、世界ごと飲み込んでいった。
「うおおおおおおお!!!!」
クレイスも飲み込まれてゆく。
「それじゃあ!頑張ってね!」
クレイスはアザゼルの気味の悪い笑顔を見ながら暗闇に飲まれていった。
…
……
………
「はっ!!」
気づくとそこは全てのものが動いている現実世界だった。
ガーゴイルの指先からは今にもヘルファイアが放たれようとしている。
「くっ…ここまでか…!」
隣でダインが嘆く。
「それでも私たちは逃げれないわ!」
シルキーが息巻く。
そしてクレイスは…
ステータスプレートを見ていた。
「いやなんで悠長に自分のステータス見てんだおめえ!!」
ダインが絶体絶命のなかクレイスに思い切りツッコミをかましていく。どうしてもツッコまないといけない気がした。
「…いや、何でもない。」
クレイスは驚愕していた。
加護の力を少し確認する為に取り出したステータスプレート。
その力量に合わせた立ち回りをしようとした。
そのプレートにはこう表記されていた。
クレイス
冒険者LV666
騎士LV666
悪魔『アザゼル』の加護
体力 666
力 666
知恵 666
精神 666
魔力 666
スキルの表記もなく、ただこれだけが書いてあった。
「弱体化…か…やはり罠だったか…」
加護をもらう前は平均7000ほどだったが、今は全て666に変わっていた。
「どーすんだ…」
絶望に打ちひしがれるクレイスの頭に声が響く。
『言い忘れてた。ステータスプレートは信用しないでね。正しくないから!ボクたちの加護は人間のプレートじゃ計れないよ!』
アザゼルの声だ。
計れない事はわかったが、これじゃあどう攻めたらいいかわからない。
『自信持ってね~!』
アザゼルがフェードしていく。クソッタレ。
「まただ!!くるぞ!」
ダインが叫ぶ。
とうとう二発目のヘルファイアが放たれた。
「…ここは俺に任せろ。」
「クレイス!!流石に貴方でも無理よ!足も片足使えないんじゃ…え、足が…」
悪魔の加護のおかげか、クレイスの足は治っていた。
「いいから!!逃げろ!!」
当たって砕けろだ。最悪でも、二人は守り抜く…!
「エクスブロウ!!!!!」
迫ってくるヘルファイアにエクスブロウを放つ。
到底ヘルファイアには敵わない呪文だが、これ以上の出力を出せる呪文は持っていなかった。
ダメ元で放ったエクスブロウはヘルファイアへとまっすぐ飛んで行く。
そしてクレイスの放った爆炎はヘルファイアの中心を貫き、ガーゴイルを焼き尽くした。
「「は?」」
シルキーとダインが驚愕している。
クレイスも冷や汗を垂らし、悪魔に少しだけ感謝した。
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