13番目の神様

きついマン

文字の大きさ
9 / 69
ニ章

ボアとの戦闘

しおりを挟む
 コレー南部は大規模な農村地区で、コレーの食物はほとんど南部で賄われている。そのため毎年この月になると、収穫祭をして来年の収穫を祈る伝統があるのだ。
 だが、毎年《ボア》に荒らされている。例年なら、小規模な群れで、ギルドに頼まずともなんとかできていたのだが、今年は違った。
 確認できているだけでも、すでに例年の5倍は来ているらしい。これほどまでに数が多いと、戦いに向いた職業についていないもの達では分が悪い。運が悪ければ死ぬ可能性もでる。
 それで仕方なく今回はギルドへ依頼を出したのだ。

 

 アレク達はコレー南部の森へ来ていた。鬱蒼としており木々草花が生い茂っている。

「ボアの群れはいったいどのあたりにいるもんなんだ?」
 
 アレクは足にまとわりつく草を、先ほどギルドでもらったナイフで切りはらいながら聞いた。

「普通なら森の奥の方、湖のところにいるわ。群れでも多くて5~6匹でそんなに多くないわ。普通ならね。」

 基本《ボア》などの弱いモンスターは群れで生活する。街の畑にまで来る奴は、基本的には群れからはぐれた奴だ。
 すでに畑に現れた匹数は6を超えているらしい。1つの群れレベルだ。

「それは…普通じゃないみたいだなぁ…大丈夫なのか俺は…未だに自分のステータスがどれぐらいすごいかわからないし…」

「アレクのステータスはすごいなんてもんじゃないわよ。正直一生修行してもあの領域にはならないでしょうね。ただ、あなたの体力と力はH級戦士くらいだから…何もできない、スキル、魔法なんてわからない、となると少し不安ね…」

「はぁ…不安だ…」

 この世界に来て不安ばかりだ…と思いながら、アレクは軽くため息をついた。 

 —その時、草陰から物音が聞こえた。

 ガサガサと、アレクとアリサの周りを走り回っている。


「俺達の様子をうかがっているようだな…ボアか…?」

「アレク、私に近づいて…」

 言われなくても近づくにきまってる。今の俺は何もできないからな。

「様子が変よ、ボアは知能が低い魔物のはずなのに、こちらをうかがうなんて知能行動…」

 そうアリサが呟いた瞬間、草陰から黒い塊が突進して来た。…俺に向かって。

「来た!!」

「俺かよ!!!」

 猛スピードでボアは突進して来る。頭には硬そうな皮膚があり、あれで攻撃するみたいだ。

 当たるわけにはいかない。幸い足元は硬いからかわすのは容易いな、走って向かって来るなら冷静にギリギリでかわせば、ボアの奴は慣性で通り過ぎてしまうだろう。

 ボアがどんどん迫って来る、めっちゃ怖い。

 目の前まで来た。ここだ!!!

 俺は横に思い切り踏み込み、寸前でかわす。ボアは案の定止まれずに、二撃目まで時間を要している。

「アリサ!」

「もう行ってるわ!!」

 アリサも意図を読んでいたみたいで、ボアに追いつくスピードで走っていた。人間か?あいつ。

「ハッ!」

 掛け声とともにアリサが剣を振り下ろし、ボアはその場に倒れた。

「やっぱり最近モンスターの動きがおかしいわね……!!?アレク!!後ろ!!」

「後ろ?…ッ!!!!」

 振り返るとボアが全力でこちらに走って来ていた。

 もう1匹いやがったか…この距離じゃもう避けられない!!

「チッ!!!」

 かわそうと思ったが、俺の速さじゃ到底間に合わない!!当たる!!

 そう思った瞬間、アレクの体に異変が起きた。

 なんと、アレクは向かって来たボアを踏みつけ、もう一方の足で顎に蹴りを入れつつ跳躍し、背中をナイフで切りつけ着地。その流れのまま脳震盪と痛みで倒れたボアの脚の腱を一気に切り裂き戦闘不能にした。

「え…?」

 アリサは驚愕の顔をしている。

「え…?俺は一体…?」

 それはアレクも同様だった。

「アレク…あなた戦えるなら最初から言ってよ…心配したじゃない…」

「いや、俺は今が初戦闘だよ…」

「え?どういうこと??じゃああれはまぐれ?」

「という事になるのかな…わからない…」

 俺だって困惑してるし、アリサの反応を見た感じ相当困惑しているだろう。しかし、俺に一体何が起こったんだろう…

「そう……ま、まぁいいわ!無事だったんだし!先を急ぎましょ!」

「あ、あぁ…そうだな!いこう!」

 
 この時、アレクのステータスに変化があったことは、本人は気づいていない。

アレク
冒険者LV2
職業:神技(シンギ)使い

体力 55
力  35
知恵 500
精神 2550
魔力 500

スキル
神化:不完全状態
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

R・P・G ~女神に不死の身体にされたけど、使命が最低最悪なので全力で拒否して俺が天下統一します~

イット
ファンタジー
オカルト雑誌の編集者として働いていた瀬川凛人(40)は、怪現象の現地調査のために訪れた山の中で異世界の大地の女神と接触する。 半ば強制的に異世界へと転生させられた凛人。しかしその世界は、欲と争いにまみれた戦乱の世だった。 凛人はその惑星の化身となり、星の防人として、人間から不死の絶対的な存在へとクラスチェンジを果たす。 だが、不死となった代償として女神から与えられた使命はとんでもないものであった…… 同じく地球から勇者として転生した異国の者たちも巻き込み、女神の使命を「絶対拒否」し続ける凛人の人生は、果たして!? 一見頼りない、ただのおっさんだった男が織りなす最強一味の異世界治世ドラマ、ここに開幕!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

DIYと異世界建築生活〜ギャル娘たちとパパの腰袋チート

みーくん
ファンタジー
気づいたら異世界に飛ばされていた、おっさん大工。 唯一の武器は、腰につけた工具袋—— …って、これ中身無限!?釘も木材もコンクリも出てくるんだけど!? 戸惑いながらも、拾った(?)ギャル魔法少女や謎の娘たちと家づくりを始めたおっさん。 土木工事からリゾート開発、果てはダンジョン探索まで!? 「異世界に家がないなら、建てればいいじゃない」 今日もおっさんはハンマー片手に、愛とユーモアと魔法で暮らしをDIY! 建築×育児×チート×ギャル “腰袋チート”で異世界を住みよく変える、大人の冒険がここに始まる! 腰活(こしかつっ!)よろしくお願いします

処理中です...