13番目の神様

きついマン

文字の大きさ
10 / 69
ニ章

しおりを挟む
 俺は初戦闘を終え、二人で森の奥へ歩いていた。

 あれからもう1匹ボアと戦闘になったが、俺の謎の力が発揮されることはなく、アリサがすんなりと倒してしまった。

 一体なんだったのだろう。あの力は…

 しかし、湖まで遠いなぁ…かなり歩いたのだが、まだつかないのか… 
 草に足を引っ張られるわ、ぬかるんでるわで、体力がかなり削られる…休みたい…

「もうすぐ湖よ、頑張って!ボアを倒したら帰れるから!」

 そんな俺の思考を読んだかのようにアリサが話しかけてきた。そして俺はこれからの戦闘、その後の帰りのことを考え、さらにうんざりした。

「お前やっぱり人間じゃないな…はぁ…はぁ…くそぅ…」
  足を引きずりなお歩く…

 


 …そうして、俺は湖に着く頃には疲れ果てていた。
 それを見かねた化け物アリサが一人でボアを10体以上討伐。俺はというと、後ろで応援していただけだ。だってさっきのはまぐれだし。

 ところどころ「使えないわね!」とか言いつつ助けてくれる化け物、もとい天使アリサは息を切らすこともなく周りを死体の山に変えていった。正直もっと罵倒されたい。

「まあこんなもんでいいでしょう。ほら、貧弱アレクもボアの討伐証明部位を取ってきて、頭の皮のとこよ。それくらいはしなさい!」

「本当に助かったけど、貧弱かぁ…」

 罵倒されるのも悪くない。うむ。

「さっさとする!!」

「はい!!アリサ様!!」

 上下関係と俺の新たな性癖がはっきりしてきたところで、事件が起きた。

「なんだ…?」

 
 キィン


 という音とともに、湖の周りが急に静かになったのだ。小鳥や木々の葉の擦れ、川のせせらぎすらも聞こえない。

 戸惑っていると、アリサは何かに気づいた。

「この感じ…あの時と…今までの違和感はあいつの…」

 アリサはぶつぶつと独り言をしていたが、急にハッとして、周りを見渡す。

 そして音が聞こえた方に向いた。その顔には涙が浮かんでいた。

「…逃げるわよ…あいつだったら…勝てない…」

 アリサは一点を見つめながら本当に怯えていた。

 
 突如、若い声が響いた。

「あれ、ここのボアたちをやったのって、御二方?」

 声の聞こえた方へ目を凝らすが、見えない。

「困るなぁ~、ボクのかわい子ちゃんたちを勝手に殺しちゃ~、まだ餌やりの途中だったのに~」

 餌やり…?
 …!こいつが畑にボアを…!!

「誰だか知らねえが、街がお前のせいで困ってんだよ!!でてこい!!」

 意気込む俺を制するようにアリサが叫ぶ

「アレクだめよ…!逃げるわよ…!あいつは…ダメ!!」

 怯えきったアリサは最後の力とでもいうようなか細さで叫ぶ。

「どうしたんだよ!!知ってるのか!?」

「あとで話すから…!はやく!!」

 街の方へむきなおり、走ろうとした瞬間。

「逃がすわけないじゃな~い!大切な可愛い子ちゃんたちを殺されてるわけだし!」

 俺とアリサの目の前に、小学生くらいの男の子が現れた。

 —そしてそのまま、アリサをで弾いた。

 アリサは何か、体の倍ほどの巨大なものでぶん殴られたみたいに吹っ飛んで、木にぶつかり、気絶した。

「アリサっ!?」

 冗談だろ!?!あの強いアリサがデコピン一撃で吹き飛んで、しかも戦闘不能!?

 なんだよそれ…何なんだよ…

 そいつはアリサを吹っ飛ばした体制のまま、首だけまわし、俺をみて少し笑いながら話しかけてきた。

「おや?君はこの世界の人間じゃないね~?」

「それをなぜ知ってる…?」

「なぜ知ってるかって?そりゃあ、ボクもこの世界のじゃないからね~」
 
「じゃあお前も転生者か?」
 
 あってみたいとは言ったが、こんな奴じゃなくてもいいんじゃないか?このままじゃ確実に死ぬぞ。

「あ、ボクは転生者じゃないよ~?一応悪魔をやってま~す!」

 転生者じゃなくて悪魔…?

 !!

 もしかしたら、

「お前がルシファー?!」

「ええっ!?いやいや!!ボクはルシファー様な訳ないじゃないか!恐れ多いよ!!」

「ボクは《アザゼル》、【見張る者】だよ。ルシファー様復活の為、外界を見張ってたら、この辺に神の反応があってね~。」

 神…ペルセポネか?

「だから調査も兼ねて、ボクの可愛いこちゃんたちも連れて来たんだ~。多分君がその時の反応の証拠かな?」

 おそらく、俺が転生した時に、ペルセポネの反応をこいつがキャッチしたんだろう。

「まあ、証拠じゃなくても、ボクのペットの餌になってもらうね!大切に育ててる子がお腹すかせちゃって~!」

「ボクはもう城に戻るよ!神の反応も、もう無いみたいだし!」

 そう言ってアザゼルは、一瞬で目の前からいなくなった。

 助かったと思ったのもつかの間、アザゼルが消えた方から、グルルと唸る巨大なボアが現れた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

R・P・G ~女神に不死の身体にされたけど、使命が最低最悪なので全力で拒否して俺が天下統一します~

イット
ファンタジー
オカルト雑誌の編集者として働いていた瀬川凛人(40)は、怪現象の現地調査のために訪れた山の中で異世界の大地の女神と接触する。 半ば強制的に異世界へと転生させられた凛人。しかしその世界は、欲と争いにまみれた戦乱の世だった。 凛人はその惑星の化身となり、星の防人として、人間から不死の絶対的な存在へとクラスチェンジを果たす。 だが、不死となった代償として女神から与えられた使命はとんでもないものであった…… 同じく地球から勇者として転生した異国の者たちも巻き込み、女神の使命を「絶対拒否」し続ける凛人の人生は、果たして!? 一見頼りない、ただのおっさんだった男が織りなす最強一味の異世界治世ドラマ、ここに開幕!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

DIYと異世界建築生活〜ギャル娘たちとパパの腰袋チート

みーくん
ファンタジー
気づいたら異世界に飛ばされていた、おっさん大工。 唯一の武器は、腰につけた工具袋—— …って、これ中身無限!?釘も木材もコンクリも出てくるんだけど!? 戸惑いながらも、拾った(?)ギャル魔法少女や謎の娘たちと家づくりを始めたおっさん。 土木工事からリゾート開発、果てはダンジョン探索まで!? 「異世界に家がないなら、建てればいいじゃない」 今日もおっさんはハンマー片手に、愛とユーモアと魔法で暮らしをDIY! 建築×育児×チート×ギャル “腰袋チート”で異世界を住みよく変える、大人の冒険がここに始まる! 腰活(こしかつっ!)よろしくお願いします

処理中です...