13番目の神様

きついマン

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ニ章

アレク・サンダー

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 巨大なボアが目の前にいる。

 なんだこの大きさは…今までのボアがあまりにも小さく見える。例えるなら、普通サイズのボアがバイクぐらい。目の前にいるこいつは…完全にトラックだ。

 そんなトラックと今から俺は戦うというわけだ。…聞いたことあるか?人間がトラックと戦って勝利するな話。俺は聞いたことがねえ。

 普通なら逃げ一択だろう。だが、今回はそんなトラックみたいな猪を目の前にしても尚、逃げるわけにはいかない。

 俺の後ろの道は、街へ続いているし、気絶したアリサもいる。だから戦って勝つしか無い。

 ただ、普通のボアにすら勝てない俺がどうすればいいんだよ。

 とかあーだこーだ考えてたら、

「ブルルゥゥウ!!」

 突進してきやがった!!
 どうする…どうすれば…
 
 前回、ボアと戦ったときは、持ち前の精神力でギリギリまで引きつけ、躱した。だが今回それをすれば、確実に当たるだろう。

「だとしたら…こうするしかっ!!」

 こちらに走ってくるボア。に向かってなお走る俺。
 向かい合って走っているため、ものすごい速さで距離が縮まる。そして、当たる直前にスライディングの体制に入り、股下をくぐり抜けた。

「こっわぁぁぁぁぁ!!!!!」

 いや、恐怖すぎる。

「ブルル?」

 恐怖の甲斐あってか、ボアは俺を見失っている。今だ!!!

「てやぁっ!!」

 俺は普通のボアの時のように、腱を思い切り切りつけた。

パキン

 そして、小気味のいい音を鳴らしながらナイフが折れた。はは…硬すぎだろ…

「ブルウウ!!」

 今の衝撃で気づいたボアが、振り向きざまに頭突きをしようと、頭を全力で振りながら振り向く。これはもう避けられないな。

 と、来るべき衝撃に備え、身体中に力を込めたとき、

『スキル、神化を使用。アレク・サンダーへ変化』

 頭に声が響いた。
 そして容赦無くボアの頭突きは俺を捉えた。

ガアアアン!!!

 鉄の塊同士がぶつかったかのような音が響く。

 …オレは死んだのか?痛く無いが…

『神化モード、スキル:硬化』

 困惑の最中、また頭に声。神化モード?
 
 いや、考えるのは後だ!!

 とりあえず、さっきの衝撃で苦しんでるこいつからいったん離れよう。

「うわっ!」

 離れるために後ろへ軽く飛んだのだが、軽く20mは飛んだな…

『神化モード、スキル:身体強化』

「さっきからペルセポネなのか?」

 …返事はない。違うようだ。じゃあ一体この声は…?

『神化モード、スキル:ライブラ 脳内への説明』

 ということは、この声も俺の神化モードってやつのスキルか!なるほどなるほど…
「ブラァァァァァア!!!」

「っと、お目覚めか?!」

 苦しんでいたボアが体制を立て直し、またこちらに向かって体当たりをしてきた。

「馬鹿みてえにおんなじことしやがって…行くぞ!!」

 ハッ!という掛け声とともに、俺はボアの方へ走る。一瞬のうちにボアの目の前に移動し、ボアの頭を右手でつかんだ。そしてそのまま力任せに叩きつけた。
 
 頭を下に叩きつけられたボアはうつ伏せの形で倒れ、血を吐いた。

 俺は右手で押さえつけたまま、

「そのまま一生寝てな」

 とつぶやきながらボアの頭を蹴り上げた。

 

 …そしてボアは上半身まで粉々になった。

 内臓や血が飛散して、見るに耐えない。

「身体強化って、どこまでしてんの…」

 このスキルはもっと勉強しないと……
 っと、そんなことよりアリサは!!

 俺はアリサのもとへ駆け寄り、体を起こした。

「おい、アリサ!!アリサ!!おきろ!」

「……ん…んぅ……」

 目を覚まし、ほっと胸をなでおろす。もちろん自分のな?

「起きろ…帰るぞ…!」

「んん……、、っ?!はっ!!あいつ…あいつは??!」

 アリサは、恐怖の表情で聞く。

「あいつは監視とかでもう消えたよ…助かったんだ…」

「よかった…助かっ…って、え?なにこの状況!!」

 それは驚くだろう。
 さっきまで美しかった湖は血で真っ赤。俺は返り血で赤、周りは飛散した血や内臓で真っ赤。ほぼ赤なのだから。
 
 アリサはその中でもひときわ目立つ巨大なボアの死骸を見ながら聴いてきた。

「これあなたがやったの?」

「ああ、そうだよ…詳しい話は街に戻って落ち着いて話そう。…失礼。」

 アリサをお姫様抱っこで持ち上げ、街へと歩き出す。

「キャア!!おろして!!恥ずかしい!」

「ダメだ、怪我してるし、到底動けるキズじゃない。」

「それでも恥ずかしいからおろしてよぉ!!!」

 


 こうして俺の初クエストは幕を閉じた…

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