13番目の神様

きついマン

文字の大きさ
12 / 69
二.五章

過去

しおりを挟む
 今から10年前、コレーから遠く離れた所に、小さく自然に囲まれた綺麗な村があった。

 アリサはその村で生まれ育った。両親に愛され、不自由なくすごしていた。

 アリサの家は、村の中心にある。

「お母さん、遊びに行ってくる!」

 元気に家から飛び出したアリサ。気持ちの良い風が吹く、とても気候の良い日だった。

「行ってらっしゃい!気をつけなさいね!」

 家を元気に飛び出す娘を、アリサの母は見送った。

 後で後悔するとも知らず。



 アリサはいつもの森へ来ていた。お気に入りのお花畑があるのだ。
 天気の良さに気分を良くしたアリサは鼻歌交じりに向かっていた。

「今日はなにしようかな!昨日はお花の冠を作ったし、その前は首飾りを作ったわね…うーん」

 なにをして遊ぼうか、と考えながら花畑についた。いつもの花畑には先客がいた。

「やあ!こんにちは!」

 小柄な男の子が私に話しかけて来た。

「あなたはだあれ?」

「ボクは通りすがりの旅人さぁ!」

「旅人さん?私より小さいのに、すごいねぇ~!」

「へへん!ボクはすごいんだ!」

 初めてあった子だが、明るくて優しい印象だった。

「ねえ!一緒に遊ぼ!」

 アリサは村で同い年の子がいなかった。だからいつも一人で遊んでいたのだ。
 
 アリサは男の子と日が暮れるまで遊んだ。追いかけっこをしたり、花冠を作ったり。

 初めての友達に、アリサは心から喜んでいた。


 そして、帰る時間。

「君はどこから来たの?」

 男の子は聞いて来た。

「私は向こうの村からだよ!」

「君の村かぁ、行って見たいなぁ、案内してよ!!」

「いいわよ!それと、君じゃなくてアリサ!アリサって名前よ!」

「そういえば名前がまだだったね!ボクはレイバ。よろしくね!」

 

 日も暮れて、村へと戻って来たアリサは、アザゼルを自分の家へ招待した。

「ただいま!!」

「アリサ!おかえり。あら?その子は?」

「レイバって言うんだ!旅してるらしいよ!」

「あら、そんなに小さいのに、すごいわねえ!なにもない村だけど、ゆっくりしてって!」

「ありがとうございます!旅の準備ができるまで滞在してもよろしいですか?」

「ええ、いいわよ!」


 そうしてアリサ家はレイバを迎え入れ、レイバもアリサ家で寝泊まりするようになった。

 数日間、アリサは一時的とはいえ、家族が増えたことを喜んでいた。毎日一緒に遊び、ご飯を食べ、そして寝ていた。

 それが日常となったある日のこと。
 
 夜中に目が覚めたアリサは、レイバがいないことに気づいた。

「レイバ?」

 そうアリサが声を出すと、

ガァァァァン

 外から大きな音がした。
 
 アリサは急いで駆け下りる。

「お母さん!お父さん!!」

 アリサは何故か嫌な予感がしていた。
 いつもの日常が終わりそうな、そんな予感。
 階段を下りきったところで、アリサは目の当たりにする。この世のものとは思えない凄惨な光景。いつもの、優しい風景にこびりつく赤くてドロドロした血。いつもの匂いに混じる生臭い匂い。
 アリサは耐えきれずに吐いた。

「おぇぇ…!!げほっ…」

 背後から声

「おや?アリサじゃないか。起きて来たの?」

 こんな凄惨な状況を当たり前のように振る舞うレイバ。

「レイバ!!!無事だったの?!」

 次の瞬間レイバが、当然のように答える。

「無事もなにも、僕がやったんだからね」

 え?

 アリサは全く理解をしていない。頭が働かないし、今の状況を理解していない。
 レイバはそんなアリサをよそに話し始めた。

「観測してたら、この辺にずっと力を感じていたんだ。勇者かと思ってすっ飛んで来たんだけど、来たあたりで全く感じられなくなっちゃってね。とりあえず見張りやすいとこにいたら君が来たから、案内してもらったってわけだよ。」

 アリサは全く意味がわかってない。がレイバは気にせず続ける。

「まさか、君が勇者の末裔とはね、観測ができなくなったのは過去の勇者がはった結界のせいだったんだね。」

「レイバ…?一体なにを言って…」

「レイバ…?ははっ!お前は僕の正体がわかってないようだな!」

 レイバは笑いながら続けた。

「聞いたことないか?『魔王ルシファーの覚醒』とかいうこの村の言い伝え。僕はその出てくる、”アザゼル”だよ!」

 アリサは茫然自失だった、ただ、アザゼルの名前と顔だけが意識に張り付いた。

「だからルシファー様の邪魔になりそうな君にはここで死んでもらうよ。バイバイアリサ」

 レイバ…アザゼルは放心状態のアリサに近づき触れようとした。

 が、途中で止めて、急に苦しみ始めた。

「ガァァァァ!!!な、なんだ?!」

「アリサ…逃げなさい…!!」

 そこには這いずりながら近寄る父と母の姿があった。

「ここは…私たちが食い止める…!」

「あなたは…逃げなさい…」

 アリサは首を横に振った。

「逃げなさい!!!!!!」

 アリサは泣きながら、吐きながら、よろよろと立ち上がり、グラグラと走り出した。

「生きなさい。アリサ」

 アザゼルは苦しみながらも追おうとするが、苦痛で追えない。

「貴様らやはり…勇者の…」

「まさかあなたが、悪魔”アザゼル”とは、思いもしなかったわ…私たちの最後の技よ、くらいなさい。」

「次の勇者に殺されちまえ…クソ悪魔…」

「「封魔フィリアム!!!」」
 
「グアアアアアアアアアアア!!!」

「この村でじっとしてなさ…い…」

 アザゼルは光に包まれ、小さな球体となった。

 アリサの両親は、この封印が完璧じゃないことを知らなかった。そして知らぬままに亡くなった。一人の娘という希望を残し…




 —アリサは走り続けた。レイバが封印されたとも知らずに。ただ走り続けた。倒れても起き上がり…

 動けなくなるまで走り続けたアリサは、道端に倒れ、気絶した。


「…大丈夫か、生きてるか?…とりあえず、治療だ。」

 アリサは数時間後に発見されコレーに運ばれた。復讐をちかって…
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

R・P・G ~女神に不死の身体にされたけど、使命が最低最悪なので全力で拒否して俺が天下統一します~

イット
ファンタジー
オカルト雑誌の編集者として働いていた瀬川凛人(40)は、怪現象の現地調査のために訪れた山の中で異世界の大地の女神と接触する。 半ば強制的に異世界へと転生させられた凛人。しかしその世界は、欲と争いにまみれた戦乱の世だった。 凛人はその惑星の化身となり、星の防人として、人間から不死の絶対的な存在へとクラスチェンジを果たす。 だが、不死となった代償として女神から与えられた使命はとんでもないものであった…… 同じく地球から勇者として転生した異国の者たちも巻き込み、女神の使命を「絶対拒否」し続ける凛人の人生は、果たして!? 一見頼りない、ただのおっさんだった男が織りなす最強一味の異世界治世ドラマ、ここに開幕!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

処理中です...