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二.五章
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今から10年前、コレーから遠く離れた所に、小さく自然に囲まれた綺麗な村があった。
アリサはその村で生まれ育った。両親に愛され、不自由なくすごしていた。
アリサの家は、村の中心にある。
「お母さん、遊びに行ってくる!」
元気に家から飛び出したアリサ。気持ちの良い風が吹く、とても気候の良い日だった。
「行ってらっしゃい!気をつけなさいね!」
家を元気に飛び出す娘を、アリサの母は見送った。
後で後悔するとも知らず。
アリサはいつもの森へ来ていた。お気に入りのお花畑があるのだ。
天気の良さに気分を良くしたアリサは鼻歌交じりに向かっていた。
「今日はなにしようかな!昨日はお花の冠を作ったし、その前は首飾りを作ったわね…うーん」
なにをして遊ぼうか、と考えながら花畑についた。いつもの花畑には先客がいた。
「やあ!こんにちは!」
小柄な男の子が私に話しかけて来た。
「あなたはだあれ?」
「ボクは通りすがりの旅人さぁ!」
「旅人さん?私より小さいのに、すごいねぇ~!」
「へへん!ボクはすごいんだ!」
初めてあった子だが、明るくて優しい印象だった。
「ねえ!一緒に遊ぼ!」
アリサは村で同い年の子がいなかった。だからいつも一人で遊んでいたのだ。
アリサは男の子と日が暮れるまで遊んだ。追いかけっこをしたり、花冠を作ったり。
初めての友達に、アリサは心から喜んでいた。
そして、帰る時間。
「君はどこから来たの?」
男の子は聞いて来た。
「私は向こうの村からだよ!」
「君の村かぁ、行って見たいなぁ、案内してよ!!」
「いいわよ!それと、君じゃなくてアリサ!アリサって名前よ!」
「そういえば名前がまだだったね!ボクはレイバ。よろしくね!」
日も暮れて、村へと戻って来たアリサは、アザゼルを自分の家へ招待した。
「ただいま!!」
「アリサ!おかえり。あら?その子は?」
「レイバって言うんだ!旅してるらしいよ!」
「あら、そんなに小さいのに、すごいわねえ!なにもない村だけど、ゆっくりしてって!」
「ありがとうございます!旅の準備ができるまで滞在してもよろしいですか?」
「ええ、いいわよ!」
そうしてアリサ家はレイバを迎え入れ、レイバもアリサ家で寝泊まりするようになった。
数日間、アリサは一時的とはいえ、家族が増えたことを喜んでいた。毎日一緒に遊び、ご飯を食べ、そして寝ていた。
それが日常となったある日のこと。
夜中に目が覚めたアリサは、レイバがいないことに気づいた。
「レイバ?」
そうアリサが声を出すと、
ガァァァァン
外から大きな音がした。
アリサは急いで駆け下りる。
「お母さん!お父さん!!」
アリサは何故か嫌な予感がしていた。
いつもの日常が終わりそうな、そんな予感。
階段を下りきったところで、アリサは目の当たりにする。この世のものとは思えない凄惨な光景。いつもの、優しい風景にこびりつく赤くてドロドロした血。いつもの匂いに混じる生臭い匂い。
アリサは耐えきれずに吐いた。
「おぇぇ…!!げほっ…」
背後から声
「おや?アリサじゃないか。起きて来たの?」
こんな凄惨な状況を当たり前のように振る舞うレイバ。
「レイバ!!!無事だったの?!」
次の瞬間レイバが、当然のように答える。
「無事もなにも、僕がやったんだからね」
え?
アリサは全く理解をしていない。頭が働かないし、今の状況を理解していない。
レイバはそんなアリサをよそに話し始めた。
「観測してたら、この辺にずっと力を感じていたんだ。勇者かと思ってすっ飛んで来たんだけど、来たあたりで全く感じられなくなっちゃってね。とりあえず見張りやすいとこにいたら君が来たから、案内してもらったってわけだよ。」
アリサは全く意味がわかってない。がレイバは気にせず続ける。
「まさか、君が勇者の末裔とはね、観測ができなくなったのは過去の勇者がはった結界のせいだったんだね。」
「レイバ…?一体なにを言って…」
「レイバ…?ははっ!お前は僕の正体がわかってないようだな!」
レイバは笑いながら続けた。
「聞いたことないか?『魔王ルシファーの覚醒』とかいうこの村の言い伝え。僕はそのお話出てくる、”アザゼル”だよ!」
アリサは茫然自失だった、ただ、アザゼルの名前と顔だけが意識に張り付いた。
「だからルシファー様の邪魔になりそうな君にはここで死んでもらうよ。バイバイアリサ」
レイバ…アザゼルは放心状態のアリサに近づき触れようとした。
が、途中で止めて、急に苦しみ始めた。
「ガァァァァ!!!な、なんだ?!」
「アリサ…逃げなさい…!!」
そこには這いずりながら近寄る父と母の姿があった。
「ここは…私たちが食い止める…!」
「あなたは…逃げなさい…」
アリサは首を横に振った。
「逃げなさい!!!!!!」
アリサは泣きながら、吐きながら、よろよろと立ち上がり、グラグラと走り出した。
「生きなさい。アリサ」
アザゼルは苦しみながらも追おうとするが、苦痛で追えない。
「貴様らやはり…勇者の…」
「まさかあなたが、悪魔”アザゼル”とは、思いもしなかったわ…私たちの最後の技よ、くらいなさい。」
「次の勇者に殺されちまえ…クソ悪魔…」
「「封魔!!!」」
「グアアアアアアアアアアア!!!」
「この村でじっとしてなさ…い…」
アザゼルは光に包まれ、小さな球体となった。
アリサの両親は、この封印が完璧じゃないことを知らなかった。そして知らぬままに亡くなった。一人の娘という希望を残し…
—アリサは走り続けた。レイバが封印されたとも知らずに。ただ走り続けた。倒れても起き上がり…
動けなくなるまで走り続けたアリサは、道端に倒れ、気絶した。
「…大丈夫か、生きてるか?…とりあえず、治療だ。」
アリサは数時間後に発見されコレーに運ばれた。復讐をちかって…
アリサはその村で生まれ育った。両親に愛され、不自由なくすごしていた。
アリサの家は、村の中心にある。
「お母さん、遊びに行ってくる!」
元気に家から飛び出したアリサ。気持ちの良い風が吹く、とても気候の良い日だった。
「行ってらっしゃい!気をつけなさいね!」
家を元気に飛び出す娘を、アリサの母は見送った。
後で後悔するとも知らず。
アリサはいつもの森へ来ていた。お気に入りのお花畑があるのだ。
天気の良さに気分を良くしたアリサは鼻歌交じりに向かっていた。
「今日はなにしようかな!昨日はお花の冠を作ったし、その前は首飾りを作ったわね…うーん」
なにをして遊ぼうか、と考えながら花畑についた。いつもの花畑には先客がいた。
「やあ!こんにちは!」
小柄な男の子が私に話しかけて来た。
「あなたはだあれ?」
「ボクは通りすがりの旅人さぁ!」
「旅人さん?私より小さいのに、すごいねぇ~!」
「へへん!ボクはすごいんだ!」
初めてあった子だが、明るくて優しい印象だった。
「ねえ!一緒に遊ぼ!」
アリサは村で同い年の子がいなかった。だからいつも一人で遊んでいたのだ。
アリサは男の子と日が暮れるまで遊んだ。追いかけっこをしたり、花冠を作ったり。
初めての友達に、アリサは心から喜んでいた。
そして、帰る時間。
「君はどこから来たの?」
男の子は聞いて来た。
「私は向こうの村からだよ!」
「君の村かぁ、行って見たいなぁ、案内してよ!!」
「いいわよ!それと、君じゃなくてアリサ!アリサって名前よ!」
「そういえば名前がまだだったね!ボクはレイバ。よろしくね!」
日も暮れて、村へと戻って来たアリサは、アザゼルを自分の家へ招待した。
「ただいま!!」
「アリサ!おかえり。あら?その子は?」
「レイバって言うんだ!旅してるらしいよ!」
「あら、そんなに小さいのに、すごいわねえ!なにもない村だけど、ゆっくりしてって!」
「ありがとうございます!旅の準備ができるまで滞在してもよろしいですか?」
「ええ、いいわよ!」
そうしてアリサ家はレイバを迎え入れ、レイバもアリサ家で寝泊まりするようになった。
数日間、アリサは一時的とはいえ、家族が増えたことを喜んでいた。毎日一緒に遊び、ご飯を食べ、そして寝ていた。
それが日常となったある日のこと。
夜中に目が覚めたアリサは、レイバがいないことに気づいた。
「レイバ?」
そうアリサが声を出すと、
ガァァァァン
外から大きな音がした。
アリサは急いで駆け下りる。
「お母さん!お父さん!!」
アリサは何故か嫌な予感がしていた。
いつもの日常が終わりそうな、そんな予感。
階段を下りきったところで、アリサは目の当たりにする。この世のものとは思えない凄惨な光景。いつもの、優しい風景にこびりつく赤くてドロドロした血。いつもの匂いに混じる生臭い匂い。
アリサは耐えきれずに吐いた。
「おぇぇ…!!げほっ…」
背後から声
「おや?アリサじゃないか。起きて来たの?」
こんな凄惨な状況を当たり前のように振る舞うレイバ。
「レイバ!!!無事だったの?!」
次の瞬間レイバが、当然のように答える。
「無事もなにも、僕がやったんだからね」
え?
アリサは全く理解をしていない。頭が働かないし、今の状況を理解していない。
レイバはそんなアリサをよそに話し始めた。
「観測してたら、この辺にずっと力を感じていたんだ。勇者かと思ってすっ飛んで来たんだけど、来たあたりで全く感じられなくなっちゃってね。とりあえず見張りやすいとこにいたら君が来たから、案内してもらったってわけだよ。」
アリサは全く意味がわかってない。がレイバは気にせず続ける。
「まさか、君が勇者の末裔とはね、観測ができなくなったのは過去の勇者がはった結界のせいだったんだね。」
「レイバ…?一体なにを言って…」
「レイバ…?ははっ!お前は僕の正体がわかってないようだな!」
レイバは笑いながら続けた。
「聞いたことないか?『魔王ルシファーの覚醒』とかいうこの村の言い伝え。僕はそのお話出てくる、”アザゼル”だよ!」
アリサは茫然自失だった、ただ、アザゼルの名前と顔だけが意識に張り付いた。
「だからルシファー様の邪魔になりそうな君にはここで死んでもらうよ。バイバイアリサ」
レイバ…アザゼルは放心状態のアリサに近づき触れようとした。
が、途中で止めて、急に苦しみ始めた。
「ガァァァァ!!!な、なんだ?!」
「アリサ…逃げなさい…!!」
そこには這いずりながら近寄る父と母の姿があった。
「ここは…私たちが食い止める…!」
「あなたは…逃げなさい…」
アリサは首を横に振った。
「逃げなさい!!!!!!」
アリサは泣きながら、吐きながら、よろよろと立ち上がり、グラグラと走り出した。
「生きなさい。アリサ」
アザゼルは苦しみながらも追おうとするが、苦痛で追えない。
「貴様らやはり…勇者の…」
「まさかあなたが、悪魔”アザゼル”とは、思いもしなかったわ…私たちの最後の技よ、くらいなさい。」
「次の勇者に殺されちまえ…クソ悪魔…」
「「封魔!!!」」
「グアアアアアアアアアアア!!!」
「この村でじっとしてなさ…い…」
アザゼルは光に包まれ、小さな球体となった。
アリサの両親は、この封印が完璧じゃないことを知らなかった。そして知らぬままに亡くなった。一人の娘という希望を残し…
—アリサは走り続けた。レイバが封印されたとも知らずに。ただ走り続けた。倒れても起き上がり…
動けなくなるまで走り続けたアリサは、道端に倒れ、気絶した。
「…大丈夫か、生きてるか?…とりあえず、治療だ。」
アリサは数時間後に発見されコレーに運ばれた。復讐をちかって…
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