13番目の神様

三章

旅立ち 上

「アレクあなた、本当にこのまま村に戻る気？」

　腕の中で顔を真っ赤にしたアリサが聞いてきた。可愛すぎる。

「当たり前だろ？たぶん足の骨が折れてるんだぞ？」

「大丈夫よ！歩けるわ！」

「歩けるか！！！」

　この子は恥ずかしさのあまりに少し狂ってしまっているようだ。

「…アレク…ありがと…」

「あぁ、俺も助けてもらった身だから、お返しだよ。」

「…なんか雰囲気変わったわね…どうしたの？」

「多分、スキルのせいだと思う。」

　どうやらスキルが発動して、俺に余裕のようなものができたみたいで、すごく落ち着いている。さらに、体も軽い。

「何かスキルが発動したの？なんてスキル？」

「ん～～確か神化って言ってたな。」

「なんか大それた名前ね…どんな効果があったの？」

　効果。と聞かれても自分でもわかってないので、とりあえずわかっていることだけ話すことにした。

「体が硬くなったり、凄まじい移動ができたり、勝手に説明が入ったりだな。」

　アリサは何も伝わってない顔をしている。

「説明が雑すぎよ！何が何だかわかんないじゃない！」

「って言ってもなぁ、事実そんなもんだからなぁ…」

「帰ったらまた詳しく聞くわよ！！」

「俺もあいつについて教えてもらいたいしな、とりあえず町に戻ろう。」



　町に帰り着いた二人は、すぐギルドへ向かった。ギルド内からは驚きの声が口々に上がった。まさか、アリサがやられるとは…や、あの男そんなに強かったのか…などなどである。

　そんな様子を見てセリスが血相を変えてこちらに飛んできた。

「どうしちゃったんですかぁ～～！？ボロボロじゃないですかぁ！！アリサまでこんなに！？」

「とりあえず先に治療をお願いするよ、その後に説明するから。」

「はやくおろして…」

　アリサは痛みよりも恥ずかしさがまさっているようだ。

「と、とりあえず裏にきてください！治療しますから！これでも私、治療魔法が使えるんですよぉ！」

　治療魔法もやはり存在しているのか、それはいいことを聞いたな。そのうち使えるようになりたいな。

「ここにアリサを寝かせてください！」

　裏の医療室のようなところへ連れていかれ、そこにあるベットにアリサを寝かせた。
　包帯等は見あたるが、他の器具があまりない。やはりこの世界の治療は魔法が全般なんだろう。

「では行きますよぉ！…ハッ！」

「うおっ！？すごい…！」

　目の前でセリスが小さな吐息とともにアリサにかざしていた手のひらから緑の光を出した。
　するとアリサの傷が、みるみるうちに治っていく。現代の医療に比べたらかなりの機能だ。

　1分ほどして、セリスが手をおろした。

「終わりです！これで動けるはずです！」

「は、早いな…結構ボロボロだったはずじゃ…アリサ、大丈夫か？」

「ええ、もう自由に動けるわよ。セリスの治療魔法はすごいんだから！」

「は、はぁ、すごいな…」

「それでは、何があったか教えてください！」

　
　それから、クエストのことを話した。魔物の動向がおかしかった理由。アザゼルと名乗る子供。大きなボア。
　…そして、神化、アレク・サンダーのこと。
　すべて話し終えると、驚いた顔のアリサが口を開いた。

「なぜあなたがその名前を…」

「なぜって？」

　アリサは真剣な顔で答えた。

「私の村には古い言い伝えがあったの。」

　アリサは一呼吸置いて続ける。

「それは、『魔王ルシファーの覚醒』っていうお話なんだけど、内容はルシファーが覚醒すると7匹の眷属が揃い、人類の危機となる。その危機を救うのは勇者だけ。」

　魔王の覚醒？勇者？ゲームみたいな話だな…………まさか…勇者って……

「その勇者の名前は…『アレク・サンダー』…私の先祖よ…」

「え…？」