13番目の神様

きついマン

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四章

旅路

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「朝ですよう!起きてくださぁい!」

 そう言ってセリスは俺の布団を剥ぎ取り、そして絶句した。

「…へぇ~、もうそんな関係だったんですね~、手が早いですう~。」

 口調はいつものように優しいが、ところどころに怒りが混じっている。

「違うぞこれは、セリス、違うんだ!」

「手癖の悪い人はお仕置きですよう?」

「や、やめてくれ!誤解だこれはアリサから!ぎゃああああ」

 バシーンと朝から勢いのいいビンタをもらった。理不尽。


……
………

「朝からひどい目にあったぜ…」

 そう呟きながら、3人はレイムブルグの村へと向かっていた。
 
 道中はコレーの景色のように豊かな自然にあふれている。横に流れている川は透き通っており、この周辺が豊かな土地であることを示している。さすがは農業の地、いい野菜が取れそうだ。

「アレク、ごめん…」

 景色を見ていると、アリサが気まずそうに口を開いた。

「まさか、本当にアリサからとは…すみません…」

 きちんと説明をして誤解は解けたが、ビンタの貰い損だまったく。

「まぁ、いいよ。しょうがないさ。それよりこっちの道であってるの?」

「はい!このままいけば日没には着くはずですよう!」

「レイムブルグの村ってどんなところなんだ?」

 こっちに来てまだ2日目だから、正直何も予想ができない。異世界ってだけで異文化だけど、コレーではなんとかついていけた。ただ、それでも戸惑った。これからさらに異文化に触れるとなると、多少の心の準備が必要だ…

「そういえば、アレクって迷い人だったわね。知らないのも無理ないわね。」

「レイムブルグは祭りの村ですよう、コレーほど大きくはないけど大きな村で、毎日何かしらの祭りをやっているんですぅ!楽しいとこですよ!!」

「ほえ~そりゃ楽しそうだな!」

 心配だったが、大丈夫そうで安心だ。異文化に触れるのはゆっくり慣れるとしよう。

「そういえば、冒険者証とかは他のギルドでも大丈夫なのか?」

 セリスがポンと手を叩いた。

「そういえば興奮しすぎて何も説明していませんでしたね!大丈夫ですよう!渡した二つの証明書はどこでも通用するものですよ!」

「そうなのか!便利なもんだなぁ!」

「ちなみにアレクはG級に昇格しましたよぅ!本当はまだまだ先なんですけど、クリアしたクエストが難易度不一致ということで、一気に昇格ですぅ!」

 なんか今突然爆弾を放り投げられた。

「えぇ…急に昇格かよ…伝えるの遅すぎだろ…」

「セリスは昔からああなのよ、私は気づいたらE級だったわ。」

「大昇格ッ!?」

 たわいもない話をしながら歩いていると、不意に横の草むらに気配を感じた。

「だれっ!」

 どうやら気配を感じたのは俺だけではないようで、アリサが腰の剣に手をかけながら身構えた。

「いやいやいや!大丈夫です!怪しいものではありません!!!」

 そう言って、気配の主は大慌てで草むらから身を出した。
 見た目は若い男で、少し細身だ。後ろに弓を背負っている。

「じゃあなんで隠れてたんだよ。」

「私はレイムブルグの者なのですが、ここのところおかしなことが起きてまして、見張りについていたんですよ!だから怪しくありません!!」

 その見張りらしい男は必死で、察するに本当のことなんだろう。

「…確かによく見るとレイムブルグっぽい服装をしているわね。」

「そうです!信じてもらえましたか?!」

「まあ、少しはね、ところでおかしなことって何があったの?私たちこれからレイムブルグに行くつもりだったのだけど。」

「それなら、案内しながら話しますね!申し遅れました、私はサントと申します。」

 歩きながらサントは、話し始めた。

「実はここのところ魔物が異常行動をしていまして、おとなしかった魔物でさえも人を襲うようになっていまして…」

 それを聞いて、俺たちは目を合わせた。おそらく原因はアザゼルだろう。これは無関係ではなくなって来たな。

「たぶん俺たちはその原因を知ってる。」

「え?本当ですか?」

「ああ、俺たちはそいつの情報を得るためにレイムブルグに向かってたんだ。俺たちが解決できるかもしれない。話を聞かせてくれ!」

「二人もいいよな!」

 アリサとセリスは「当たり前じゃない(ですぅ)」と言って頷いた。

「ありがとうございます!これは願っても無い、ただ、詳しい話は村に着いてからしましょう。村長も交えて話しがしたいので…」

「わかった!ありがとう!」

「いえいえ!本当に助かります!」

 放っては置けないし、アザゼル…ルシファーの情報を得られるかもしれない。

 俺たちはサントに案内をしてもらいつつレイムブルグへ向かった。
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