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異世界
9. ギルドへ(ファルエストの街)
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その翌日。日が傾きかけた頃に、私たちはとうとうファルエストの街に着いた。
街の手前あたりから、街道に出てくる人と何回かすれ違ったけど、街の中はびっくりするほどの人の多さだった。
オウガに連れられてまずはギルドに行き、そこでゴーストの件を報告する。どうもここ最近、マヴェーラ大陸のあちこちでゴーストと出くわしたとの報告があり、“昇華”魔法を使える退魔師が各地で休む間もなく駆り出されているらしい。
今朝方オウガの師匠から送り返されて来たゴースト入りの魔石をギルドに提出すると、ローブを羽織った線の細い男性が受付奥の部屋から出て来て、魔石をチェックしてくれる。
「初めまして、退魔師のエンソルです」
右手を出され、オウガが「魔術師のオウガです」と軽く握手する。その手を私の方にも向けられたので、私も「リサです」と言いながらちょこっと握ってすぐに離す。
「この魂、かなり古いもののようだな・・・。このゴーストが、街道の先に現れた、と」
「あぁ。南西の森を抜けてファルエストに向かう街道に入ったあたりで出くわした。北北西方面からやって来て、南南東方面に向かっててたな」
オウガがカウンターの上に嵌められているガラスプレートにマップを立ち上げ、大体の場所とゴーストの大まかな移動の方向を指で示す。
「ふぅむ・・・。中央のチェントレ近くに現れたゴーストは、北東から来て南西に向かっていたらしい」
「南のパラディーゾの街の近くでは、北から来て南に向かってたって聞いたぜ」
そばに居た冒険者風の男が、マップに指を滑らせながら口を挟む。
「「「“封印の地“か?」」」
みんなの声がシンクロする。
・・・“封印の地“?
「とりあえず、近隣の退魔師たちに声をかけて調査に行ってみるよ。この魔石のゴーストは“昇華“しておく。協力、ありがとう」
そう言うと、エンソルは急足で再び奥の部屋へと入って行った。
ギルドでの報告を終えた私たちは、近くの飲食店に入り夕食を摂った。
見覚えと舌に覚えのあるトマトパスタ。
もしやと思ってオウガに訊くと、案の定ここはオウガのお気に入りのお店で、森の家のデリバリーリストに加えられているとのこと。
試しに、まだ食べたことのないデザート(プリン的なもの)があったので、それをリストに加えてみて欲しいと頼んでみると、オウガはテーブルに嵌め込まれたB5サイズぐらいのガラスプレートにメニューを立ち上げ、その中から“プリン“を選択して表示させると、その上に自分のIDカードを重ねた。するとすぐにIDカードが小さく光り、これで登録完了とのこと。便利すぎる・・・。
折角だからとプリンとコーヒーを注文し、すぐに運ばれて来たそれを頂きながら“封印の地“について訊いてみる。
オウガによると、そこはこの大陸中央、北部寄りの山岳地帯の中にある場所で、はるか昔に何かが封印された痕跡のある場所とのこと。
そこにはいくつかのサイズの違う巨石があって、それぞれにマークのようなものが記されているが、未だに内容は不明。
何十年か前に、封印に綻びが生じて正体不明の魔物が大量に発生したらしいが、いつの間にか誰かの手により再封印されていて、それからは特に問題も無かったらしい。
今回、その封印が再度綻びかけていて、そこからゴーストが四方八方に這い出ているのでは? と言うのが、先ほどギルドに居た面々の間で辿り着いた、ひとつの推測とのことだった。
今のところ私たちに直接害を為すものでは無いとは言え、もしも夜なんかにあんなものにバッタリ出くわしたりしたら心臓に悪いし、ゴーストに取り憑かれた人が知らないうちに周りに居たら?と思うとかなり怖い。
「退魔師の人たち、早く再封印してくれると良いね」
「・・・そうだね」
自分の顎を親指でゆっくりと撫でながら、オウガは何かを考えている。
私に元の世界のことを質問しまくってきたことから見て、オウガはかなり好奇心とか探究心が強そうだから、そのうち『封印の地を見にいこう』とか言い出しそう。まぁ、私もちょっと気になるけど。
ふふっと笑いながらコーヒーの入ったマグに口をつけ、何気なく目線を飲食店の入り口の方に向けて。
そこで私の時間が、ぴたりと止まったような気がした。
「・・・リサ? どうしたの、リサ?」
不意に動きを止めた私に気が付いたのか、オウガが声をかけてくる。
「悠斗が、・・・悠斗が居る」
「え? ユートが?」
オウガが私の視線の先を辿る。
私たちの視線の先。お店の入り口に近いテーブルに、悠斗がひとりで座ってジョッキを傾けていた。服装はこちらの世界の男性がよく着ているようなチュニックタイプのシャツに、濃い茶色のカーゴパンツ。だけど、クセの強い黒髪と言い、茶色の目と言い、持つ色合いは悠斗そのまま。
懐かしさと、心が絞られるような痛みで、思わず顔を顰める。
「リサ。これはキミにとって、チャンスじゃない?」
「チャンス?」
思わずオウガの顔を見る。オウガは、優しげに目を細めながら私を見ている。
「全く知らない男に抱かれるのと、抱かれたことのある男に再び抱かれるのと、どっちが気が楽?」
オウガは、私に“悠斗“に抱かれろと言っているのだ。
「オウガ」
戸惑ってオウガの目を見つめると、オウガが唇に優しくキスを落としてきた。
「挨拶の練習もしてみないと、ね?」
そう言って立ち上がったオウガにつられて私も立ち上がると、迷いのない足取りでオウガは私の手を引きながら“悠斗“の元へと向かった。
街の手前あたりから、街道に出てくる人と何回かすれ違ったけど、街の中はびっくりするほどの人の多さだった。
オウガに連れられてまずはギルドに行き、そこでゴーストの件を報告する。どうもここ最近、マヴェーラ大陸のあちこちでゴーストと出くわしたとの報告があり、“昇華”魔法を使える退魔師が各地で休む間もなく駆り出されているらしい。
今朝方オウガの師匠から送り返されて来たゴースト入りの魔石をギルドに提出すると、ローブを羽織った線の細い男性が受付奥の部屋から出て来て、魔石をチェックしてくれる。
「初めまして、退魔師のエンソルです」
右手を出され、オウガが「魔術師のオウガです」と軽く握手する。その手を私の方にも向けられたので、私も「リサです」と言いながらちょこっと握ってすぐに離す。
「この魂、かなり古いもののようだな・・・。このゴーストが、街道の先に現れた、と」
「あぁ。南西の森を抜けてファルエストに向かう街道に入ったあたりで出くわした。北北西方面からやって来て、南南東方面に向かっててたな」
オウガがカウンターの上に嵌められているガラスプレートにマップを立ち上げ、大体の場所とゴーストの大まかな移動の方向を指で示す。
「ふぅむ・・・。中央のチェントレ近くに現れたゴーストは、北東から来て南西に向かっていたらしい」
「南のパラディーゾの街の近くでは、北から来て南に向かってたって聞いたぜ」
そばに居た冒険者風の男が、マップに指を滑らせながら口を挟む。
「「「“封印の地“か?」」」
みんなの声がシンクロする。
・・・“封印の地“?
「とりあえず、近隣の退魔師たちに声をかけて調査に行ってみるよ。この魔石のゴーストは“昇華“しておく。協力、ありがとう」
そう言うと、エンソルは急足で再び奥の部屋へと入って行った。
ギルドでの報告を終えた私たちは、近くの飲食店に入り夕食を摂った。
見覚えと舌に覚えのあるトマトパスタ。
もしやと思ってオウガに訊くと、案の定ここはオウガのお気に入りのお店で、森の家のデリバリーリストに加えられているとのこと。
試しに、まだ食べたことのないデザート(プリン的なもの)があったので、それをリストに加えてみて欲しいと頼んでみると、オウガはテーブルに嵌め込まれたB5サイズぐらいのガラスプレートにメニューを立ち上げ、その中から“プリン“を選択して表示させると、その上に自分のIDカードを重ねた。するとすぐにIDカードが小さく光り、これで登録完了とのこと。便利すぎる・・・。
折角だからとプリンとコーヒーを注文し、すぐに運ばれて来たそれを頂きながら“封印の地“について訊いてみる。
オウガによると、そこはこの大陸中央、北部寄りの山岳地帯の中にある場所で、はるか昔に何かが封印された痕跡のある場所とのこと。
そこにはいくつかのサイズの違う巨石があって、それぞれにマークのようなものが記されているが、未だに内容は不明。
何十年か前に、封印に綻びが生じて正体不明の魔物が大量に発生したらしいが、いつの間にか誰かの手により再封印されていて、それからは特に問題も無かったらしい。
今回、その封印が再度綻びかけていて、そこからゴーストが四方八方に這い出ているのでは? と言うのが、先ほどギルドに居た面々の間で辿り着いた、ひとつの推測とのことだった。
今のところ私たちに直接害を為すものでは無いとは言え、もしも夜なんかにあんなものにバッタリ出くわしたりしたら心臓に悪いし、ゴーストに取り憑かれた人が知らないうちに周りに居たら?と思うとかなり怖い。
「退魔師の人たち、早く再封印してくれると良いね」
「・・・そうだね」
自分の顎を親指でゆっくりと撫でながら、オウガは何かを考えている。
私に元の世界のことを質問しまくってきたことから見て、オウガはかなり好奇心とか探究心が強そうだから、そのうち『封印の地を見にいこう』とか言い出しそう。まぁ、私もちょっと気になるけど。
ふふっと笑いながらコーヒーの入ったマグに口をつけ、何気なく目線を飲食店の入り口の方に向けて。
そこで私の時間が、ぴたりと止まったような気がした。
「・・・リサ? どうしたの、リサ?」
不意に動きを止めた私に気が付いたのか、オウガが声をかけてくる。
「悠斗が、・・・悠斗が居る」
「え? ユートが?」
オウガが私の視線の先を辿る。
私たちの視線の先。お店の入り口に近いテーブルに、悠斗がひとりで座ってジョッキを傾けていた。服装はこちらの世界の男性がよく着ているようなチュニックタイプのシャツに、濃い茶色のカーゴパンツ。だけど、クセの強い黒髪と言い、茶色の目と言い、持つ色合いは悠斗そのまま。
懐かしさと、心が絞られるような痛みで、思わず顔を顰める。
「リサ。これはキミにとって、チャンスじゃない?」
「チャンス?」
思わずオウガの顔を見る。オウガは、優しげに目を細めながら私を見ている。
「全く知らない男に抱かれるのと、抱かれたことのある男に再び抱かれるのと、どっちが気が楽?」
オウガは、私に“悠斗“に抱かれろと言っているのだ。
「オウガ」
戸惑ってオウガの目を見つめると、オウガが唇に優しくキスを落としてきた。
「挨拶の練習もしてみないと、ね?」
そう言って立ち上がったオウガにつられて私も立ち上がると、迷いのない足取りでオウガは私の手を引きながら“悠斗“の元へと向かった。
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