【本編完結】私のツガイが「他の男にも抱かれろ」と言って来るので戸惑ってます(後日談投稿しました)

天狼本舗

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それぞれの(後日談)

28. 悠斗(現代)

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オレの目の前で、車にはねられた莉沙の身体が宙に舞い上がる。


ほとんど無意識のうちに、オレは彼女の元に駆け寄った。
周りは悲鳴や何か喧騒で騒がしいはずなのに、オレの頭の中にはキーーーンと言う耳鳴りがしていて、何も聞こえてなくて、訳の分からない何かが詰まってしまったみたいで、何も考えられなくなっていた。

道路に投げ出された莉沙はオレではなく、オレの隣りに居た“オガワクン“とやらに困ったような笑顔を向けて、何かを囁いてから目を閉じた。





「莉沙っっ!!」

大声を上げてガバリと起き上がると、そこはオレの家の寝床で。
ばくばくと早鐘を打つ胸を抑え、片手で汗だくの顔を拭う。
隣で寝ていたモニカが、慣れた様子で、眠ったまま手でオレの背をさすってくれた。

「ユート、またリサの夢を見た?」

「あぁ。ごめん、起こした」

「ダイジョーブ、ダイジョーブ。・・・ユート、来て。横になろう。抱きしめてあげる、から」

拙い日本語で話しかけて来るモニカに手を引かれてオレが横になると、彼女はオレの頭を抱きしめて「ダイジョーブ、ダイジョーブ・・・」とつぶやきながら、また眠りの世界へと落ちて行った。
オレはモニカの鼓動に耳を澄ませながら、そっと目を閉じた。






病院で、意識の戻らない莉沙のそばについていた時に、後からやってきた緒川氏(梨沙の会社の同期だった)から、ことの顛末を全て聞かされた。

あの女が、莉沙に浮気現場の画像を何度も送りつけていたこと。
しかもあの日、コトの真っ最中の様子をあの女がビデオチャットで送り付けたことによって、オレの浮気が莉沙の中で確定したこと。
オレに会いたくなくて、家に帰りたくなくて向かった会社近くのホテルの前で、オレとあの女がキスしているところを見られてしまっていたこと。
そのショックで莉沙がよろけたせいで、事故に遭ってしまったのだと言うこと。


その場に同席していた莉沙の両親から、酷く責められた。責められても仕方なかった。
いっそ殴るなり蹴るなりして、もっと責めて責めて、痛めつけて欲しいほどだった。
毎日周りの人間から言葉でちくちくと責められながらも、オレは半休をとったりして莉沙の元に通い続けた。



そんな莉沙が意識を取り戻したのは、事故からおよそ1ヶ月ほどが経った頃。
だけど目を開けた莉沙は、オレのことを全て忘れていた。
両親のことは分かったみたいだけど、言ってることがチグハグで、記憶障害があるのは明らかだった。
莉沙に触れようとするオレを他人を見るような目で拒否した莉沙は、「オーガワ? オーガワ?」と繰り返すばかり。
そこで、聞いていた連絡先にメッセージを送って緒川氏を呼び出すと、現れた彼に莉沙はすぐに泣きながらすがりついた。

オレの、居場所が、無かった。



何週間経っても莉沙の記憶が戻る様子はなく、オレよりも緒川氏を慕う様子を見るのが居た堪れない。
夫である立場を主張したくても、オレにはその資格が無い。

莉沙が事故にあった直接の原因がオレの浮気だったこともあり、周囲に押されるように、オレは離婚を余儀なくされた。





傷心を抱えつつ会社に完全復帰してみたら、会社の奴らに浮気のことがモロにバレていることに、遅ればせながら気がついた。
どうやら、事故の時の様子を撮った野次馬たちの動画が、ネットに拡散されているらしい。
事故の前に、オレとあの女がホテルの前でキスしていた動画も別に拡散されていて、目敏いヤツがその関連に気がつき、二つの動画を紐付けて拡散していた。ネットの“正義漢を装った悪意“で、顔バレ、身バレもしていた。
あの女はウチの会社の契約社員だったから、会社の奴らにも全てがバレてしまっていた。


あの女は、派遣会社から厳重処分の上、他の会社へと回された。その先でも、勿論あの動画のことは知れ渡っていて、今の彼女の状況はかなり悲惨らしい。
オレの方はと言うと、程なく辞令が下り、東南アジアの開設されたばかりのとある支店へとトばされた。



そこでのオレの主な仕事は、日本と現地の両方から上がってくる資料や書類の翻訳作業。
語学なんてあまり得意じゃないけど、現地採用されたヤツで日本語が少し出来るヤツがいたので、そいつとパートナーを組まされて、お互いに教え合いながら仕上げていく。
現場での商品管理や買い付け、生産者との話し合いにも駆り出されることが多く、なかなかに忙しい。

日本と違って残業は無いけれど、それでもぐったりと疲れて家に帰り着くと、決まって思い出すのは莉沙のこと。
忙しさから解放されて、ひとりになるこの時間が、本当にツラかった。
眠るとほとんど毎回うなされるので、いつも寝不足気味だった。


そんなオレに声をかけて、現地の美味しい食べ物だとか飲み屋だとかを教えてくれたのが、支店の仲間のモニカだった。

彼女は性に奔放で、特定の相手を作らず、気の向くままに相手を変えて楽しんでいる。
オレははすっかり気持ちが萎えていたのに、ある日散々飲まされてお持ち帰りされ、美味しく頂かれてしまった。
そしてその時に、オレが毎晩うなされていることがバレ、寝不足気味であることや、そうなった原因、今まで何があったのかを、訊かれるままにつらつらと語ってしまった。
どうやらモニカは、カウンセラーの資格を持っているらしい。

それ以来、時々モニカが泊まりに来るようになった。
抱き合う日もあれば、ただただ抱きしめ合って眠るだけの日もある。
そんなモニカの腕の中は心地良かったけれど、心地良さを感じることに罪悪感を抱いてもいた。

あんなに愛していた莉沙をあそこまで心身ともに傷つけてしまったオレが、幸せとか心地良さなんて、もう一生感じることは許されないのだ。

そう思った。












「あぁ、莉沙の肌、たまんない」

気が付くとオレは、裸の莉沙を抱いていた。
夢の中だからだろうか、現実の莉沙とは髪や目の色が違ってなんだか外人っぽい。だけど、確かにオレの莉沙だった。


「や、やだやだ、悠斗。ベッドで! ベッドに行こう」

「あぁ、やわらかい・・・」

莉沙に腕を引っ張られながらベッドサイドまで行くと、オレは莉沙を押し倒す。
触れる肌も、ナカの温かさも妙にリアルで、オレは夢中になって莉沙を抱いた。
あまりにも良過ぎてすぐに暴発してしまったけれど、それでもまだまだ欲は治まらない。


「ごめん、莉沙。あんまり気持ち良すぎて、我慢出来なかった。でも、これで、今度は落ちついて抱けると思うから」

そう言って莉沙を抱き起こし、今度は対面座位でナカを擦り上げる。
莉沙も蕩けたような顔で、喘いでいる。

「莉沙の、ナカも外も、サイコー。あ・・・、はぁ、良すぎる・・・」

そう言いながら、オレは思わず莉沙の胸に噛み付いていた。

「や! 痛い! やだ、何してんの、噛まないでっ!」

蕩けた顔から一転、莉沙は真剣に怒っているけれど、どうせこれは夢の中。
今迄莉沙にぶつけられなかったオレの嗜虐的な欲望を、今ならいくらだってぶつけても良いハズ。

「ごめん、痛かった? ・・・大丈夫。そのうち痛みも快感に変わるから」

なんて悪びれもせずに言い放ち、オレは噛み跡の付いたところを、まずはちろちろと舐めた。


そう言えば初めて莉沙を抱いた時も、こんなふうに莉沙を噛んだらすごく怒られて、ビックリしたんだった。
それ以来、莉沙に拒否られるのが怖くて、噛むようなことは二度としなかった。
その点あの女は被虐趣味だったから、性癖に関しては凄く相性が良かった。莉沙に対しては出来ないことを、遠慮なく、存分にすることが出来た。
そこに愛は無く、ただの欲の発散、欲を満たす行為でしかなかったけど。


ふと見ると、莉沙もぼんやりとした顔で明後日の方を見ている。


「何考えてるの? ツガイのこと? 今は俺だけのことを考えてよ。じゃないと、お仕置きするよ」

(“ツガイ“ってなんだっけ?)

夢にありがちなよく分からないことは無視して、オレは再び激しく腰を突き上げ始めた。




時々場面はトんだけど、オレは夢の中で飽きずに莉沙と繋がり続けた。幸せな夢だった。

でも、妙にリアルなことに、場面が進むにつれて莉沙の身体に付けた歯型やキスマークが、どんどん青黒く変色していく。
流石にやり過ぎたかもしれない。やはり、愛する莉沙の身体にこんな傷は似合わない。夢の中ですら。


始めから、オレにはこういう性癖があるって莉沙に分かってもらえて居たら、もしかしたら浮気することもなかったんじゃないか?
なんて何度もタラレバを繰り返したけれど、やっぱり、きっと、何度やり直したところで、やり直せたとしても、オレは現実では莉沙のイヤがることは強要出来なかっただろうし、持て余した欲をどこかで発散することになったのだと思う。
不甲斐ない自分に、ため息しか出ない。

疲れて眠ってしまった莉沙の中に、繋がりが解けないよう再度己自身を深く埋め込んだ後、オレはしっかりと莉沙を抱きしめながら目を閉じた。





ふと、何か金属的な音が聞こえてオレは目を覚ました。

「う・・・ん、莉沙?」

そこはまだ夢の中で。・・・でも、腕の中にいたはずの莉沙が居ない。

「悠斗、・・・ありがとう。幸せになってね」

「え? ・・・莉沙?」

体を起こして、ぼうっとドアのほうを見つめると、莉沙がこちらに向かって手を振ってからドアを閉めるのが見えた。
寝ぼけながらも慌てて引き寄せたシーツを乱雑に身体に巻き付けて、後を追う。
階段の踊り場まで来ると、その先で莉沙が緒川氏によく似た男性に抱きついている姿が目に入り、思わず立ち止まってしまった。
オレに気がついた莉沙は、緒川氏に抱かれながらオレに手を振り・・・

「ばいばい、悠斗」

そう言って二人は、突如現れた光の渦に巻かれて、・・・消えた。




『ばいばい、悠斗』

それはあの日、あの女が画像や動画を送りつけるのに勝手に使っていたあのメッセージアプリに残されていた、莉沙からの最後のメッセージと同じ言葉だった。








気が付けばオレは、自宅のベッドに起き上がって泣いていた。嗚咽が止まらなかった。

横で寝ていたモニカがそれに気がつき、起き上がって、オレを抱きしめながら優しく背中を撫でてくれた。


「いっぱい、泣いたら良いよ、ユート。ダイジョーブ。ダイジョーブ」



相変わらず性に奔放なモニカは、その日の気分で寝る相手を決めて、気儘なセックスライフをエンジョイしている。

だけど何か察するところがあるのか、敏感に察知するのか、オレが酷くうなされるような、号泣するような夜は、不思議といつもオレのそばに居てくれる。

彼女に言わせれば、オレは彼女にとって“一番手のかかるクライアント“らしい。

「だから、気にせず泣けば良い、叫べば良い」

そう言ってくれるモニカに支えられながら。甘えながらも。
多分この先もずっと、オレは自責の念と罪悪感に囚われながら、懺悔のために、自分を酷使するような毎日を送り続けるのだろうと思う。

己を傷め続けなければならない、と思う・・・


オレの嗚咽は、その後もしばらく止まらなかった。




∞⌘∞・∞⌘∞・∞⌘∞・∞⌘∞・∞⌘∞・∞⌘∞・∞⌘∞・∞⌘∞・∞⌘∞・∞⌘∞


私の小説に、いわゆる『ザマァ』はありません。悪しからず・・・(^^)>

どうやら”異国の押しの強い女性”に弱い(抗えない)様子の悠斗。
結婚はしなくても、いつかモニカか、モニカみたいな女性に捕まって、相変わらずイジイジしながらも、事実婚に持ち込まれてそうです (^^;

“あの女“=“奴隷ちゃん“は、その後も針の筵の毎日を過ごしているようですが、特にお話にはなりそうもないので、彼女のエピソードを書く予定はありません。皆様のご想像の中でザマァなり復活なりさせてあげてくださいませ(^^;) <他力本願


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