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23 Side ヴィーオ④ (救出)
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閉じ込められた当初は、そのうちすぐに出してもらえるだろうと思っていた。
イルザが入って来たらすぐに対抗するためにと、備え付けの食料をしっかり食べて、筋力が落ちないように運動も心がけていた。
いつもの習慣で、身だしなみも生活魔法で整えていた。
しかし、いつまで経っても扉が開くことはなかった。
それどころか、次第に自分の魔力ゲージが減って来ていることに気がついた。どうやらここには魔素が入ってこないらしい。
そのことに気がついて、魔法を使うのは最低限、“体内からの排泄物の除去(浄化魔法の応用)“だけにした。
イルザに襲われたベッドなど当然使う気になどならず、初めからずっと、床に敷いた毛布の上で寝ていた。そのせいで身体の痛みが取れない、どころかどんどん酷くなっていく。
しかし、オレには回復魔法が使えないから治せない。
物置を探してみても、オレのマジックバッグも、回復薬などの類も見つけられなかった。
次第にオレの気力は削がれていった。
一体何日が過ぎたのか、全く分からなかった。
物置の中に窓はないが、いつもぼんやりと明るい。
水も食料もたっぷりとあるし(減った分は供給されるし)生活には困らない。
ただ、時間の経過を知る術が無かった。
最初の頃、一度伝書を飛ばそうと試みたことがあるが、出来なかった。基本的な生活魔法以上の魔法は、無効化された。
魔力を感じるのは得意なのに、ここに居ると自分以外の魔力は一切感じるコトが出来ない。
聞こえるのも、自分が立てる音だけ。
あまりの変化の無さに、自分の気のほうが変化しそうだった。
経過した正しい時間は分からないけれど、イルザが出て行ってからもうかなり経っていることだけは分かる。感覚的には、1ヶ月ぐらいか? ・・・2ヶ月、いや、それ以上か・・・?
あの勝手な女は、物置に閉じ込めた男の存在などとっくに忘れたのかもしれない。
・・・アリーシャは、まだファロヴェストに居るだろうか?
“奥手”とは言っていたけど、彼女もマヴェーラ大陸の人間。しかも破瓜を済ませている。
この大陸の習慣を知ってるから、あえて彼女には「待っていて」と言う言葉は残せなかった。待たせるほどの間もなく、迎えに戻るつもりだった。
彼女を止めるものは何もないのだ・・・。
いつ開くとも分からない扉。
二度と開かない可能性すらある。
もう何をやっても無駄だと思えて、何をする気にもなれなくて、気がつけば毛布に横たわったままで、色々なこと、気がつけば気が重くなるようなことばかり考えて過ごしていた。
ウトウトと眠り、目が覚めれば鬱々とした思考に支配され、空腹を感じれば野菜とか果物をそのままボソボソと食べる・・・。
五感が鈍くなってきているのか、何を食べても味がしない。
目に映るものも、ぼんやりとしていてしかもモノクロに見え始めていた。
もうこのままオレは、ここで死ぬのかもしれない・・・。
そんなふうに諦め切っていつものように毛布でウトウトしていたある日、いきなり誰かに肩を強く揺すられた。
のろのろと上体を起こして目を開けると、ぼんやりぼやけた視界の中に、アリーシャの顔があった。
愛しい彼女にいきなり抱きつかれて、嬉しさのあまり思わず加減も忘れて抱き返してしまったけど。
イルザの内ポケットの中にある倉庫なんかに、アリーシャが入れるか??
でもアリーシャなら入れるのか???
・・・いや、もしかしてオレ、とうとう幻覚まで見え始めたのか?
・・・それともこれも・・・アイツのせい?
・・・これもアイツの幻惑魔法・・・??
慌ててオレは、胸に貼り付いている女を、逆にぐいぐいと引き離そうとした。
しかし、離れない。
何がどうなっているのか分からず呆然としていると、抱きついていた女が不意に顔を上げ、オレの頬に自分の頬を擦り寄せてきた。
・・・それは、懐かしい感覚だった。
ぼんやりとしたその感覚を懐かしんでいるうちに、眠っていた様々な感覚が目覚め始める。
そうして感じられた魔力はピリピリとしたものではなく、あまくてホワホワとした魔力で。
その優しい魔力が、オレの肌を優しく包んでいた。
そう、これは確かに、あの忘れ難い日々に何度も与えられた彼女の魔力だ。
「・・・アリーシャ?」
その肌を確かめるように、オレは彼女に頬を擦り付けた。
伸びた髭のせいで、直接彼女の肌を感じることが難しい。出来ることなら今すぐに剃りたい。
もう、例えこれが幻惑でも構わなかった。
それぐらい、安心出来て、幸せだった。
・・・もしかしたら、とうとうオレは死んだのかもしれない。
そうしてそのままホッとするような魔力に陶酔していると、今度はアリーシャが目を静かに閉じて、キスしてきた。
どころか、その舌先をオレの口の中に滑り込ませてきた。
反射的に彼女の舌先を舌で受け止める。
するとそこに、ふわっと温かいものが流れてきた。
オレは、彼女から回復魔法を付与されていた。
何度も、何度も。
そのあまりの心地良さに、オレは目を閉じて夢中になって舌を絡め続けた。
ずっとそうしていたかったのに、やがて唇は彼女の方から離されてしまった。残念すぎる。
閉じていた目を開けると、クリアで色の付いた視界の中、目の前には目を閉じたアリーシャが居て、幻惑などではなく、本物のアリーシャが居て・・・。
ゆっくりと開けられた彼女の瞼の下から、蕩けるような翠の目が現れた。
それは今までに見た、どんな宝石よりも美しい目だった。
イルザが入って来たらすぐに対抗するためにと、備え付けの食料をしっかり食べて、筋力が落ちないように運動も心がけていた。
いつもの習慣で、身だしなみも生活魔法で整えていた。
しかし、いつまで経っても扉が開くことはなかった。
それどころか、次第に自分の魔力ゲージが減って来ていることに気がついた。どうやらここには魔素が入ってこないらしい。
そのことに気がついて、魔法を使うのは最低限、“体内からの排泄物の除去(浄化魔法の応用)“だけにした。
イルザに襲われたベッドなど当然使う気になどならず、初めからずっと、床に敷いた毛布の上で寝ていた。そのせいで身体の痛みが取れない、どころかどんどん酷くなっていく。
しかし、オレには回復魔法が使えないから治せない。
物置を探してみても、オレのマジックバッグも、回復薬などの類も見つけられなかった。
次第にオレの気力は削がれていった。
一体何日が過ぎたのか、全く分からなかった。
物置の中に窓はないが、いつもぼんやりと明るい。
水も食料もたっぷりとあるし(減った分は供給されるし)生活には困らない。
ただ、時間の経過を知る術が無かった。
最初の頃、一度伝書を飛ばそうと試みたことがあるが、出来なかった。基本的な生活魔法以上の魔法は、無効化された。
魔力を感じるのは得意なのに、ここに居ると自分以外の魔力は一切感じるコトが出来ない。
聞こえるのも、自分が立てる音だけ。
あまりの変化の無さに、自分の気のほうが変化しそうだった。
経過した正しい時間は分からないけれど、イルザが出て行ってからもうかなり経っていることだけは分かる。感覚的には、1ヶ月ぐらいか? ・・・2ヶ月、いや、それ以上か・・・?
あの勝手な女は、物置に閉じ込めた男の存在などとっくに忘れたのかもしれない。
・・・アリーシャは、まだファロヴェストに居るだろうか?
“奥手”とは言っていたけど、彼女もマヴェーラ大陸の人間。しかも破瓜を済ませている。
この大陸の習慣を知ってるから、あえて彼女には「待っていて」と言う言葉は残せなかった。待たせるほどの間もなく、迎えに戻るつもりだった。
彼女を止めるものは何もないのだ・・・。
いつ開くとも分からない扉。
二度と開かない可能性すらある。
もう何をやっても無駄だと思えて、何をする気にもなれなくて、気がつけば毛布に横たわったままで、色々なこと、気がつけば気が重くなるようなことばかり考えて過ごしていた。
ウトウトと眠り、目が覚めれば鬱々とした思考に支配され、空腹を感じれば野菜とか果物をそのままボソボソと食べる・・・。
五感が鈍くなってきているのか、何を食べても味がしない。
目に映るものも、ぼんやりとしていてしかもモノクロに見え始めていた。
もうこのままオレは、ここで死ぬのかもしれない・・・。
そんなふうに諦め切っていつものように毛布でウトウトしていたある日、いきなり誰かに肩を強く揺すられた。
のろのろと上体を起こして目を開けると、ぼんやりぼやけた視界の中に、アリーシャの顔があった。
愛しい彼女にいきなり抱きつかれて、嬉しさのあまり思わず加減も忘れて抱き返してしまったけど。
イルザの内ポケットの中にある倉庫なんかに、アリーシャが入れるか??
でもアリーシャなら入れるのか???
・・・いや、もしかしてオレ、とうとう幻覚まで見え始めたのか?
・・・それともこれも・・・アイツのせい?
・・・これもアイツの幻惑魔法・・・??
慌ててオレは、胸に貼り付いている女を、逆にぐいぐいと引き離そうとした。
しかし、離れない。
何がどうなっているのか分からず呆然としていると、抱きついていた女が不意に顔を上げ、オレの頬に自分の頬を擦り寄せてきた。
・・・それは、懐かしい感覚だった。
ぼんやりとしたその感覚を懐かしんでいるうちに、眠っていた様々な感覚が目覚め始める。
そうして感じられた魔力はピリピリとしたものではなく、あまくてホワホワとした魔力で。
その優しい魔力が、オレの肌を優しく包んでいた。
そう、これは確かに、あの忘れ難い日々に何度も与えられた彼女の魔力だ。
「・・・アリーシャ?」
その肌を確かめるように、オレは彼女に頬を擦り付けた。
伸びた髭のせいで、直接彼女の肌を感じることが難しい。出来ることなら今すぐに剃りたい。
もう、例えこれが幻惑でも構わなかった。
それぐらい、安心出来て、幸せだった。
・・・もしかしたら、とうとうオレは死んだのかもしれない。
そうしてそのままホッとするような魔力に陶酔していると、今度はアリーシャが目を静かに閉じて、キスしてきた。
どころか、その舌先をオレの口の中に滑り込ませてきた。
反射的に彼女の舌先を舌で受け止める。
するとそこに、ふわっと温かいものが流れてきた。
オレは、彼女から回復魔法を付与されていた。
何度も、何度も。
そのあまりの心地良さに、オレは目を閉じて夢中になって舌を絡め続けた。
ずっとそうしていたかったのに、やがて唇は彼女の方から離されてしまった。残念すぎる。
閉じていた目を開けると、クリアで色の付いた視界の中、目の前には目を閉じたアリーシャが居て、幻惑などではなく、本物のアリーシャが居て・・・。
ゆっくりと開けられた彼女の瞼の下から、蕩けるような翠の目が現れた。
それは今までに見た、どんな宝石よりも美しい目だった。
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