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返品不要。
しおりを挟む城の豪華な客間のソファー。促され腰をおろす。俺と母さんが腰をかけると、続いてテーブルを挟み目前に2人。1人は勿論宰相様。と何故かもう1人は…。見覚えの有るソイツは何と、魔王討伐パーティーのメンバーの1人。脳筋剣士だった。
「何で剣士がここにいるの?」
「知らん。祖父たる宰相に呼ばれたから来た。俺は魔物討伐で忙しい。さっさと話を済ませて辺境へ戻せ。」
・・・・・。
「剣士ってば、マジで辺境の魔物討伐してるの?魔王討伐成功で、報償金たんまり出たんでしょ?それに後継は良いわけ?おい!俺のカレーに指突っ込むな?汚いわ!」
「やはり勇者はダメだな。魔王を倒しても魔物は居るんだ。魔王はまた発生する。その時有効な手駒を増やせぬ様、今から魔物を没滅するのだ!こら皿を逃がすな。その珍妙な食べ物を、少し位は味見させろ!指がダメならスプーンを用意すれば良いのか?」
スプーンはもっとダメ!
えー?撲滅は無理でしょ…。
(あのー?)
「後継は魔王討伐中に弟が生まれた。今から教育すれば、脳筋と呼ばれる私より宰相たる後継に相応しくなるだろう。お祖父様には、もう暫く頑張って貰おう。ほらスプーンだ。少し位よこせ!食わせろ!」
「嫌だわ!久々のチキンカツカレーだぞ!何故チキンか解るか?トンカツの予算で何倍もデカいカツが作れるからだ!腹ペコな俺の為に、母さんは何時も特大チキンカツをのせてくれた。カレーとのスペシャルコラボなのだ!」
剣士が宰相の孫?確かに剣を振り回すのが生き甲斐で、それしか頭に無い剣士に、頭脳労働職の宰相は継げないな。国が滅びるわ。こりゃ絶対に無理だわ。しかし何故この腹黒の血筋がこんな脳筋に?しかも孫?若すぎないか?
(おーい。)
父親は?婿養子なのか?
あれ?
「剣士って俺より年上だよね?」
「はぁ?俺は12才だ!他のメンバーも同年代だ。」
「だって宰相がメンバーは皆成人してるって!それにその図体で詐欺過ぎるだろ!異世界で慣れぬだろうからと、しっかりとした先輩達を選んだと言ったぞ。俺は日本では成人してないからと飲んでないのに、お前らは酒だって飲んでたじゃん!12才ならこっちでも成人してないよな!しかも4才も年下かよ!俺が慣れないからって、散々こき使って先輩風吹かしたよな!宰相!どういう事何だよ!それに然り気無くミカン持ってくな!こちらの世界にもミカポンなら有るだろ!殆ど同じだ!」
(ねえってば!)
・・・・・。
「勇者様はお若く見えるので、メンバーが年下でも、全く違和感は有りませんでしたよ。あの時の最強メンバーだったのです。騙してすみません。ミカンは食べたいのではなく、異世界の食べ物にいささか興味が…。」
とか言いながら、剣士にカレー食わせて貰ってるし。お前らのあーん何て見たくも無いわ!
「ちょっと!貴方達いい加減にして!私無視して何違う事話してるの!年令よりも大事な事が有るじゃない。脱線させずに、先にそちらを発表しなさい!私を手持ち無沙汰にさせるなら、せめてお茶位出しなさいよ。カレーを取り合うなんてせこすぎるわ!宰相?あやふやにはさせないわよ。もう理解してる筈よね?私は全て聞いてきたんだから!」
母さんこえー。そんなに凄い重大発表が有るの?何だろビクビクするな。
しかし確かに…。お茶位出せよ。ケチ。
「くっ…。」
「何よ。男がくっ殺?全く似合いませんよ!バンッ!殺して欲しいなら、私がサクッと殺ってあげる。流石に良心がとがめる?ババンッ!正直に言えない?この誘拐犯に破廉恥宰相!バババンッ!あ、もしかして返品を心配してる?多少は可愛そうだとは思うけど、また生まれたんでしょ?そんな使い古しは流石にもう要らないわよ。私はね!だから息子に懺悔しろ!ドンッ!バンッ!バァァーンッ!」
かっ母さん…。こっ壊れる!カレーが浮いてるっ!大理石みたいなテーブルが、左右じゃなく上下に揺れてるよ。そんなにバンバン叩いて、掌痛くないの?もしかしてそれもチート?
あ、掌撫でてる。一応痛いんだ。神に人外にされたかと心配したよ。ふぅ。
「チッ…。」
・・・・・。
「ねえ宰相さん?今の何?もしかして舌打ちした?私の聞き間違い?違うわよね?もしかしなくてもしたでしょ!いいえ絶対にしたわ!貴方にそんな権利が有ると思うの?この国滅ぼして良いの?私がこの子抱えて苦労した時間をなめるなよ!1人で寂しく暮らした時間を返せ!己は人から幸せを奪い、沢山の孫に囲まれてたくせに!この子だって父親がいなくて、散々虐められたりしたのよ!返品不要だって!私なりにかなり譲歩してるの!あの時に戻れるなら!全てを元に戻して欲しいわよ!この腹黒宰相!少しは悪いと感じやがれ!孫にもどちらが悪いか聞いてみろ!」
「完璧に祖父たる宰相が悪いな。知らぬとは言え、身内が犯罪者だとは…。勇者にご母堂。本当に申し訳ない。」
母さん…。
強がり言ってるけどやっぱり…。
「孫に謝らせて恥ずかしくない?何故何も言わないの?何なら宰相が全ての責任とる?この国丸々私の好きにして良いそうよ。それを宰相1人の首で購うつもり?そうなら高くつくわよ。簡単には死なせないからね。お願いだから死なせて下さいと泣き喚くまで、貴方の悪事を広めて晒し者にして拷問してあげる。」
・・・・・。
母さん…。腹黒宰相様の笑顔が、ますます深まって怖いんですけど。その宰相様よりどす黒いオーラが駄々漏れしてる母さんって…。こりゃもう最強だな。でも母さんってば余裕綽々?余程チートなのか?母さんに何したんだよー。神様ってば!
「もう往生際が悪いわね!オラオラ!さっさと吐きやがれ!オラオラオラ!祐太郎?今回の勇者のご褒美に姫様のお話。なら先代の勇者へのご褒美は?因みに年頃の姫は居ませんでした。」
そんなの解るかよ。
「解らないかなー。姫様の代わりに宰相から娘が2人。+魔術師団長&騎士団長から1人づつ。合計4人。勇者に貢がれたの。所謂ハーレムね。」
かっ母さん。オラオラ揺さぶりすぎ!それじゃ喋れないって。ちょっとヤバイよ!白目剥いて泡吹いてるんじゃね?馬鹿力だな!
ハーレムねぇ。親父は20才で死んだんだよな?随分元気だったんだな。俺ならスローライフの方が良いや。
「一応、父親の威厳の為にもフォローしとくわ。祐太郎が生まれたばかりだからと、元の世界に戻せとは頼んだそうよ。後ハーレムは無理矢理だから。異世界人の遺伝子は優秀だから取り込みたいそうよ。だから催眠薬に媚薬つき。団体の夜這いでなし崩したんだって。団体様4人全てご懐妊で、恥ずかしげもなく泣き崩れたそうよ。此方で子が出来たなら、異世界の妻子に顔向け出来ない。万が一にも戻れないって。英雄の筈の勇者様が団体で手込めにされる。今ではほぼ軟禁状態。異世界人は種馬じゃ無いのよ!全く恐ろしい世界よね。」
宰相…。全てあんたの策略なんだろうな。親父はチョロかった訳ね。
知りたくもない親父の下事情。しかも勇者様が夜這いで泣いちゃうんですか?
それより俺…。今凄く恐ろしい考えが頭に浮かんだよ。メチャ嫌だ!!
でも俺より母さんの方がショックだよな?だからこその返品不要か?
こら剣士!どさくさに紛れて、俺の大事なカレー食うな!
あー。宰相を殴りてー。
親父もな!
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