【完】俺魔王倒した勇者様。なのに母さん最強説。

桜 鴬

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異世界でお誕生会。

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母さんと俺は、今日はかなり早起きをした。自宅の方の厨房で、パーティーの料理を作る為だ。

勿論先代勇者たる、父さんの誕生日パーティーの料理だ。パーティーは昼食会を兼ねて行われる。その料理の一部を、ソニアさんに頼まれたのだ。

「あの人の大好きだったと言う日本食を、是非沢山作って戴きたいのです。私ではまだ…。」

ソニアさんの哀しげな笑顔。確かに直ぐに覚えられる事では無いだろう。この世界の料理とは、見た目も味もかなり違うのだから。

「でも今更何故誕生会なの?父さんが寝付いてたからしなかったのは解る。でも今更じゃない?快気祝いとかならわかるけど?」

「実は前勇者様が私と婚姻し、寝付いていたのも秘密なのです。なので養子に出された3人の子には、会えぬままなのです。」

・・・・・。

また宰相かよ…。

宰相は先の3人と約束した。勇者との赤子を身籠り産んだなら、相応の持参金を付け身分の高い貴族に嫁入りさせる。ソフィさんの妹を含む3人はその話に乗った。それぞれ嫁ぎ先は再婚ではあったが、その高い身分と報酬につられた。

生みの母親から離された赤子は、直ぐに養父母へ養子に出された。宰相は子に恵まれず欲しがっていた親戚に、現勇者の子だから優秀な筈だ。と恩をきせ手渡した。身内の中での己の地位を高める為に。その際3才になったらはめてくれと、同時にブレスレットをも手渡した。ブレスレットは父親からの物。異世界での護符の様な物だと言ったそうだ。

勇者はハーレムではしゃぎ過ぎ、魔王討伐の際の傷が悪化した。ほぼ寝たきりなので、ハーレムを解散し、子も要らぬと捨て置き失踪した。全く男として情けない。私はこのブレスレットも捨てたい位だ。しかし頼まれた上に護符らしい。子に罪は無い。この子達には未来が有る。次代の勇者と組めるかもしれない。好色で子を捨てる様な勇者の父など忘れさせ、大切に育てて欲しい。

そう宰相が養父母に説明したの?

宰相め。鬼だな。

「あれ?失踪した?」

「はい。前勇者様は体外的には、失踪した事になっています。ハーレムの女性の1人に刺されたからと、巷では囁かれてます。養父母もそれを信じていました。だから私はせめて、失踪では無く王兄様の様に、療養にしてくれと父に頼みました。孫の為にも前勇者様の、いえあの子達の父親の、名誉を回復して欲しいと。しかし父は…。」

失踪したという事を今更覆せない。ならば宰相たる私がみつけ、匿った事にする。そこでハーレムに居たお前と再会し、息子にも会い再婚した事にしろ。前勇者の名誉を回復したければ、そのお披露目会をすればよい。宰相たる私に発見され改心した前勇者。先代勇者に子供達と養父母に謝罪させろ。それで我慢しろ。これ以上の余計な事をしたら、先代勇者は再度監禁する。まあ、再婚披露会も何だから、身内だけだし誕生会にでもしろと。

宰相さんよ。嘘に嘘を重ねすぎじゃね?もう無理強い状態だよ。己で何を言ってるかも解らなくなってない?何もパーティー何て開かなくても、会わせて説明すれば良いだけでしょ?

・・・・・。

前勇者は嫌いでも、娘のソフィさんと孫の剣士は大事なのか?だからソフィさんの言う事を、無下に出来ないのかもしれないな。ソフィさんも、今までは宰相の言いなりだったという。しかし勇気を出し、頑張っている。父さんの魔道具が外されたのも、ソフィさんのおかげだからね。だから元気になったんだよ!

「成る程ね。確かに再婚披露会は止めた方が良いな。養父母からしたら、目出度くも何とも無い。子を可愛がってるなら尚更気分が悪くなるかもね。誕生会も今更感満載だけど、祝いだし目出度いから良いだろう。身内だけでも真実を知ろう。過去を清算して未来へ進もう。」

お礼を言いながら涙ぐむソフィさん。その横で、ウンウン頷いてるワンコ。

ほぼ正体がバレてるのに、名乗らぬ奴には、話を聞く権利は無い!誕生会に参加する資格も無いぞ。

「大丈夫よ。ワンちゃんの分の招待状も戴いたわ。急いで鬘も作らせたわ。」

ワンコは行く必要無いんじゃね?

しかも鬘は要らんだろ?

「備え有れば憂いなしよ。」

絶対に要らんわな…。

だってお湯被るんですかね?

*****

パーティーといったらやはりお寿司でしょ。って事で寿司桶にデカいしゃもじ!用意しました!しかし母さんの持ち出した非常用リュック。本当にお役立ち物だ。

しかしよくまあ、咄嗟にこんなデカいリュック持ち出したよなぁ。まあ助かってるけどね。勿論寿司桶は入って無かったぞ。ワサビ漬けが寿司桶見たいのに入ってた。それを参考にしたんだ。勿論ワサビ漬けも複製した。梅干しや缶詰もだ。

「非常用持ち出しカバンは、直ぐに持ち出せる所に無きゃ意味が無いじゃない。特に1人暮らしになってからは、祐太郎の部屋に置いてたのよ。玄関脇だしドアを開けとけば、位牌を突っ込んで逃げられるからね!」

「なら位牌は?」

「勿論突っ込んで来たわよ。でも生きてたからね。神様にいらないと渡したら、なら宰相にあげなさいと言われたの。」

何故宰相に?

「やだ!そうよ!すっかり忘れてたじゃない!勇者召喚の真実の影像だって。1度しか投影出来ぬから、最も効果的に使えと言われたのよ。位牌に細工してくれたの。もし見つかっても、奪われぬ様にってね。良し!これ使おう!」

神様…。神が介入できないのは解るよ。でも何で母さんが起爆剤なの?イレギュラーに任せて良いの?んがはっちゃけすぎない様に、俺が見張らなきゃ。

・・・・・。

おいワンコ!肩を叩くな!トントンって何だよ!貴様にだけはされたくないわ!ムカつくー。

*****

おいなりさんをワンコが。母さんはカラフルなのり巻きを巻く。俺は散らし寿司を飾る。魚介類が無いのが残念だが、先日の干した小エビが役に立った。

「握り寿司は高級品だから良いのよ。父さんは甘く煮たいなり寿司が好きだったわ。刻んだガリと白ゴマをご飯に混ぜるのが我が家流なの。あの頃はまだ、回転寿司何て無かったからね。」

何て話ながら、綺麗に飾りつけ盛り付けて行く。その他山盛りの筑前煮。小エビのかき揚げに野菜の天婦羅。魚のフライに唐揚げ。枝豆も用意した。

デザートには寒天と心太を桶に盛った。他に多種多様なトッピングを用意し、好きに食べられる様にする。母さんお得意の野菜のパウンドケーキも忘れない。寿司もデザートもおかず類も全て、大きな寿司桶に盛った。現地でデザートには水を張ったりすればよい。桶は重ねて置けば楽チンだ。

*****

料理を全て終了し、母さんは片付けをしている。俺は部屋に戻り最後の仕上げだ。

会場までは、馬車で寝かせて貰う事になっている。魔力回復ポーションを3本用意。

先ずは昨日の続き。ほぼ全魔力使用で4本出来た。だからこれで更に4本っと!良し!

ポーションを飲み、更に4本。これで1ダースだ。中身だけならかなり楽なんだけど、誕生会のプレゼントだからな。見た目が重要だ。そしてチマチマ複製していた小袋達。これらと一緒に箱にいれ包装し、再度ポーションを飲む。

さて!ラスト気合い入れるぞ!取り出したるはこの図鑑!母さんは何故この図鑑3冊を、非常用持ち出しリュックに入れたのだろう?サバイバルでもするつもりだったのか?

今日は出来る所は母さんに用意して貰った。後はメインを出すだけだ!

イメージだ!丸暗記した図鑑の説明を思い出せ!流石に丸ごとは無理だ。小さくても良い。3ランク出してくれ!

「ナムナミナムー。」

出たー。しかしやはり真ん中か。昨日は真ん中だけだったからな。次だ次!

「ナムチューナムー。」

出たー。背中来たー!色といい、艶といい良い感じですな。良しラスト!

「ナムビィックナムー。」

やったー!腹出たー!大成功だよ!母さん見て見てー!

「祐太郎お疲れ様。後は母さんがしてあげる。回復ポーションはもう飲んじゃダメよ。利かなくなるからね。勇者様なら知ってるわよね?」

「うん。有り難う。寝ればもどるから大丈夫。着いたら起こしてね。母さんサンキュー。お休みー。」

もう寝ちゃったわ。

祐太郎。お休みなさい。

*****


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