【完】真実をお届け♪※彷徨うインベントリ※~ミラクルマスターは、真実を伝えたい~

桜 鴬

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【よん・Ⅳ】

乙女ゲーム・第二王子様が!転生者編⑪

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 遺体に向き合い私は宣言する。

 「では始めます。皆様絶対に動かないで下さい。それでは……」

 私は指輪にキスをし己と遺体を、光のベールで丸く結界を張り巡らせる。死者の動かぬ心臓に己の手のひらをあて心を静め、結界内に魔力を糸のように張り巡らせてゆく。遺体と外界を繋ぐ、僅かに残存する微妙な魔力の先端。糸のように細いものを探し出し、私の魔力と寄り合わせてゆく。やがて寄り合わされた魔力と残滓は塊となり、死者の思念が私の中に集まってくる。私は己に念話をする形で、己の体の中の死者の意思を確認する。

 『はじめまして。私はミラクルマスター。貴方の意思を未来へ。そして残される者へ繋げる者です。出来れば私を殺そうとしたことは忘れて、貴方の伝えたいことを教えて欲しいの。姫様の護衛の魔道具使いに、インベントリの中身を任されたわ。公爵子息だった彼は、己の罪と父親の罪を公にした。もちろん貴方に強制は出来ないわ。でも死人に口無しなの。このままではすべての責任が貴方のものになる。姫様は貴方が自殺するはずはないと言ってる。でも真実は既に……なら貴方は本心を伝えなくてよいの? 心残りは? できる限り、私が伝えます」

 従者は私をジッと見ていた。なにも言わずにただジッと……すると結界の外で姫様が騒ぎだした。なにかをケンケンと怒鳴っている。私は結界の一部を薄くし、外の声を聞こえるようにした。
 「なによ! なんなのよ! どうして死ぬのよ! 私が口が悪いのなんてわかりきったことじゃない! 私が死んじゃえって言ったから死んだの? そんなのいつもの憎まれ口じゃないの! バカ! バカったれ! 私が素敵な王子様と結婚するまで、手助けしてくれると約束したのにー!」
 …………姫様は幾つなのかしら?たしか私より歳上だと聞いたような……これはきっと周囲の取り巻きが悪いのね。姫様はたしかに我が儘だけど、それを戒めてくれる人がいなかった。そして周囲の男性は、ご機嫌とりばかり。
 私は薄くした一部の結界を修復し、王子たちへ手を振り、姫様をおさえ座らせ黙らせた。
 「最初は……姫様を助けて怪我をするつもりなんてなかった。たまたまだったんだ。通りがかっただけ。目の前で人が刺されそうだったから助けただけ。貴族でもない私には、王族の専属護衛などおそれおおい。父がいないから、母と妹の面倒もみている。だからお城には詰められないと断った。なのに! 」
 断りに行ったときに、姫様の護衛の公爵子息につかまった。姫様からの贈り物だけでも受け取ってくれと、ブレスレットを装着された。本人も同じものをしていたから、魔道具だとは思わなかったのね。
 「それからは常に頭にモヤがかかっているようで……姫様の命令には逆らえなかった。しかし公爵子息と話しているときはモヤが薄くなる。それに彼は私に、命令する立場でありながらしなかった。さらに真実を伝えてくれ、私をなんとか解放してくれようとしていたんだ。だから私は信用し、母と妹のことを頼んだ」
 魔道具使いだから、なんとか従者への命令を打ち消そうとしていた。しかしモヤを薄めるまでしか出来なかった。しかも己のブレスレットには、父親からの命令には絶対に服従でならないと刻まれている。その命令のために、互いのブレスレットを外すことも出来ない。ならばせめてできることだけでもと……
 公爵子息は従者のお給料を、キチンと母親の元へ届くように手配していた。さらには時々代理だといい、従者のかわりに菓子折りなどを持ち、様子を見にいっていたという。きっと己の母と妹の姿を重ねていたのだろう。
 「貴方は誰かを恨んでいるの? 仕返しをしたい? インベントリの中身はどうしたいのかしら? 私は貴方の意思に従います」
 「公爵子息は……」
 「貴方のインベントリに、二人で掴んだ証拠があると言い残し、彼は奥歯に仕込んだ毒で死んだわ」
 「彼は自殺なんてしない。それは多分……」
 そのとき扉が開く気配がした。私は振り返り思わず絶句する。死んだとばかり思っていた公爵子息を、キングが車イスに乗せて連れてきていた。
 「……彼は即死ではなかったから、第二王子様の石が間に合ったのね。でも良かった……」
 「彼が生きているなら良いよ。彼も私と一緒だったから。しかも黒幕が実の父親だ。私より辛く葛藤もあっただろう。それでも私の意思を尊重してくれた。平民の私のね。姫様は私を引き立ててはくれたけど、扱いはペット同然だったから。私の家族への気持ちなんて考えもしない」
  姫様は子供過ぎたのね。一国の姫様や高位貴族のお嬢様たちは、政略結婚のときのために、かなり厳しく教育されるという。しかしこのは姫様はお姉様がたくさんいる上、魅縛のスキルで周囲を虜にしていたから、厳しい教育が抜けてしまったのでしょう。本人だけが悪いのではないのだけど……
 「ちなみに私にはなぜか、精神異常系統のスキルや魔法が完全には効かないんだ。だから姫様の魅縛にも完全にはかかっていない」
 「つまり魅縛に精神を完全には惑わされていないから、己の根底の意思は残っていて、状況を理解している。しかし命令には強制的に従わされてしまう。体が勝手に動いてしまう。だからあのとき哀しげな目を……」
 姫様はやはり、自称ヒロインと同じく魅縛のスキル持ちなの……そして従者はたぶん、精神異常(魅了や幻惑など)耐性の下位版のスキル持ち……
 「ミラクルマスター。君を殺そうとしてすまなかった。私は死んだ。だからもう恨み辛みは忘れよう。第二王子様には……出来れは私の命で許して貰えないだろうか? 黒幕たちも姫様も、因果応報に報いを受けるはず。死刑は簡単だ。しかし生きるのは辛い。だからこそ、生きて償い世のために尽くして欲しい。腐った我が国とは違い、この国の上層部は素晴らしい。王子様方によろしく頼んでください」
 従者からの念話が止まる。

 『了解しました。ではインベントリへの道を開きましょう』

私の掌に光が集う。残留思念は完全に私との同調をといた。そして道を開いてくれる。

「ラストオープン。我はミラクルマスター。ロストマスターより最期の権限を譲渡された。インベントリよ。今ここに己のマスターとともにすべてを具現せよ!」

 結界を突き抜け大きな魔方陣が上空に展開する。私の魔力がグングンと吸いとられて行く。グルグルと回転する魔方陣。その中心に影が徐々に現れる。私は立ちあがりもとの結界を外す。具現化した人物を確認する。

 姫様が従者の姿を認めて駆け寄ってくる。しかし彼は既に死亡している。今見えている姿は思念を具現化したもの。触れることも、喋ることも出来ない。周囲をグルグルと回り、相変わらずの憎まれ口を吐いている。具現化した従者は呆れたような、困ったような顔をしてした。彼には妹がいるという。きっと姫様のことを、我が儘な妹くらいに感じていたのだろう。公爵子息の苦悩や苦労も、理解し許している。立派な人だった。でなければ……己れが死ぬ原因となった人物を、そんなに簡単に許せるものだろうか?

 私が具現化した姿を認めると、相手も視線を返して頷いてくれた。
 「では開封します」
 私は魔方陣の真ん中めがけ、己の魔力を解き放つ。グングンと吸い込まれて行く魔力……
 やがて空中の魔方陣から、大きな箱が数個落下してきた。王子様たちが中身を確認する。確たる証拠ばかり。だれも言い逃れは出来ないでしょう。

 「従者の方の魔力がもうそろそろ切れそうです。私の魔力だけでは、これ以上は彼の姿を維持できません。王子様方にお願いです。これらの証拠で、必ず黒幕まで裁いて下さい。そして姫様の魅縛の調査を願います」

 王太子様を始め、すべての王子様が頷いてくれる。いつの間にか第二王子様も来ていて、具現化した従者と視線で会話をしていた。

 「私が生き証人だ! 間違いなくすべてを裁いて貰う。だから安心してくれ。家族も任せてくれ!運良く生き延びた命だ。残りは世の人のために使うと誓う。たとえ死刑となっても、私は最後まで大事に生きる! 」

 公爵子息の奥歯に埋め込まれていた毒薬は、時間が経つと溶けるタイプのカプセルに仕込まれていた。黒幕の父親は最後に自殺と見せかけ、彼を殺しすべての罪を擦り付けようとしていたらしい。しかし彼が生き残り、インベントリから証拠が出れば言い逃れは出来ません。

 「私もここに誓おう。従者よ。我が国の恥さらしは、私が必ず根絶やしにしよう。家族のことも心配はいらない。必ずやご遺族の要望に添わせる。どうか安らかに眠って欲しい。情けない我が国を許して欲しい……」

 姫様の国の宰相様が頭を下げた。たしかにもう内々では済ませられない状況だよね。第二王子様の派閥は……姫様も……まあこれ以上は私が考えることではないよね。

 ふと気付くと……従者の輪郭が徐々に薄くなり……やがて光の粒となり、空に向かい弾け飛んでゆきました。

*****

 この後両国は話し合い、我が国は多大な慰謝料をいただきました。姫様の従者だった彼は手厚く葬られ、生活は国に保証されました。インベントリの中の証拠と、それを集めた生き証人の元公爵子息。彼は庶民として市政におり、騎士団での経験をいかし、魔物を倒す辺境の討伐隊に入隊。生涯を魔物退治に捧げました。

 第五王子様の【真眼鑑定】で、姫様の魅縛も判明しました。やはり気づかずに垂れ流していたようで、スキルを封印した上、戒律の厳しい極寒の修道院へと送られました。性格が矯正されないならば、真っ白なあの地で死ぬしかありません。姫様には王子様方にたちから、一時の猶予を与えられました、しかしそれを無駄にし、従者の死の真相を公にしてしまった。たとえ自国が姫を庇い、他国へ嫁に出してお茶を濁そうとしても、どこの国でも嫌がるでしょう。なぜなら姫自らが国際問題にまで発展させてしまった。その責任は大きいのです。
 黒幕その一の公爵当主と関係者は、私的財産はすべて没収。爵位返上の上での鉱山送り。寝食は保証されますが、死ぬまで鉱山から出ることは叶いません。高位貴族として暮らしてきた人たちには、死ぬより辛い日々でしょう。本来ならば国への反逆罪で一族郎党が処刑となるはずでした。しかし今回血を流したのは、我が国の第二王子様と志望した従者。 従者の最後の言葉により、第二王子様は責任を求めず、関与していない者たちは省いた。

 ことの真相は……
  姫様の兄の第二王子を王太子へとしたい派閥が、我が儘な姫様で我が国を撹乱し、王子様たちか私を自営に取り込むつもりだった。
 私を取り込む方が簡単だと考えていた公爵は、公爵子息から従者に、隙があれば婚約者である第二王子様を殺せと命を出させていた。私を刺そうとしたのは、本当に偶然だったそう。ならば第二王子は担がれただけだったの?

 でもねー。なんで私なの?私を正妃にしたら、なぜ立太子に近づくの?

 …………ミラクルマスターには我が国の王家の庇護がある。魔力量も遺伝しやすい。それよりもなによりも……
 
 「正妃腹の王太子様への当てつけってなによ! 私が第二王子と結婚したら、彼が悔しがる? ふざけるなー!! 」

 のちほど姫様の近況と共に、王太子様からお手紙が届きました。それには姫様が修道院ですっかり大人しくなったこと。側妃と第二王子の処分が決まり、王室追放の上離宮に蟄居になったとのこと。(事実上の幽閉)

 そして私への謝罪と……

 赤面もののラブレター……

 これ……どうしよう。お返事必要だよね?

 …………なんだか視線が刺さるんですけど? おいこら! なんでコソコソしてるの?まさか!?

 *******

すみません。またまた終わる詐欺になってしまいました。しかしあと二話で必ず終了します。間違いなく予約とうこうしました。深夜零時と明日の早朝六時となります。お読みいただき、ありがとうございます。桜 鴬。

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